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マーケティングの成果を引き出す課題の見つけ方と解決策

マーケティングの成果を引き出す課題の見つけ方と解決策

企業のマーケティング担当者のなかには、「より良い成果を出すためにはマーケティング施策を改善した方が良いのは分かっているが、どこから見直せば良いのか分からない」などの悩みをお持ちの方もいるのではないでしょうか。

課題分析の方法を把握してマーケティング課題を見つけ出し、解決することで、成果を最大化することができます。原因を特定せずに対処していては、原因不明の症状に手当たり次第薬を処方するようなもので、根本的な解決ができないばかりか、誤った対策により逆に成果を下げてしまうリスクがあります。

ここでは、マーケティング課題の見つけ方からよくある課題例と解決策まで詳しく解説します。成果が出ない原因を特定し、効果的な対策を行いましょう。

目次

1.マーケティング課題を正しく把握する必要性

マーケティングにおいて成果を上げるためには、課題を正しく把握することが重要です。マーケティングとは商品やサービスが売れるための仕組みを作ることですが、「売れる」ということは「ターゲットの求めるニーズを理解し、ニーズに対する解決策を提供する」ことであり、そこから効率的に利益を上げるしくみを作ることがマーケティングの役割です。つまり、マーケティングはそもそも課題解決のプロセスでもあるといえます。

<マーケティングの基本的なプロセス>
【1】調査・分析 顧客分析・自社分析・競合分析など
【2】戦略設計 戦略立案・計画
【3】計画策定・実施 具体的な行動・目標の設定
リードジェネレーション(獲得)
ナーチャリング(育成)
クオリフィケーション(絞り込み)
【4】効果測定・改善 施策に対するPDCA

したがって、マーケティング課題を正しく特定することは、【4】効果測定・改善をプロセス全体に対して改めて行うことであり、マーケティングの土台となる戦略策定に直結します。いわば自社の売上の土台となる部分の課題を見つけることです。土台となる部分の課題は成果に影響している可能性が高く、早急な解決が必要とされます。

適切なマーケティング戦略を立て、実行し、成果を上げるための第一歩として、マーケティング課題を正しく把握することは不可欠なのです。

2. マーケティング課題の見つけ方

マーケティング課題を見つけるには、フレームワークや各種のデータを用いて現状を分析することが有効です。3つの視点から分析方法を紹介します。これらのうち複数を組み合わせて分析することで、より正確に課題を特定できます。

課題の見つけ方1:マクロ分析(環境の分析)

社内・社外の環境条件を分析します。各種のフレームワークを活用し、各要因に分けて調査・分析することで課題のありかを見つける方法です。

内外環境の課題発見に役立つフレームワークとして、SWOT分析を紹介します。

SWOT分析は、「Strengths(強み)」「Weaknesses(弱み)」、「Opportunities(機会)」「Threats(脅威)」の4つの要素を整理し、分析するフレームワークです。

SWOT要素内容
Strengths(強み)内部環境・プラス要素自社や自社の商品・サービスの優れたところ
Weaknesses(弱み)内部環境・マイナス要素自社や自社の商品・サービスの劣るところ、改善が必要なところ
Opportunities(機会)外部環境・プラス要素自社や自社の商品・サービスの強みが発揮できる社会や市場の状況・変化
Threats(脅威)外部環境・マイナス要素自社や自社の商品・サービスの障害となる社会や市場の状況・変化

関連記事:「SWOT分析のやり方とは?効果的に実施するためのポイントや事例を紹介

また、これらの要素を導き出すためのフレームワークとしては、3C分析やPEST分析が役立ちます。

3C分析は、「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Comapany(自社)」の3つの要素について、自社と周辺の状況を整理するフレームワークです。

3C 内容(例)
Customer(市場・顧客) ・市場規模
・トレンド
・顧客が抱えている課題
・ユーザーニーズ
Competitor(競合) ・競合の業績
・サービス・コンテンツの自社との差異
Comapany(自社) ・年間売上額
・自社の案件化率、商談率、受注率、失注率など
・自社サイトの流入状況
・現状の施策

関連記事:「【具体例付き】3C分析とは?目的・やり方を分かりやすく解説

PEST分析は、「Politics(政治)」「Economy(経済)」「Society(社会)」「Technology(技術)」の4つの要素について、大きな世の中の動向を分析するフレームワークです。

PEST内容(例)
Politics(政治)法律、税制、政権の方針、国際情勢など
Economy(経済)株価などの景気動向、物価指数、賃金など
Society(社会)人口動態、価値観、流行、世論の変化など
Technology(技術)技術革新、特許など

環境条件を分析し、自社の商品・サービスの位置付けや強み・課題、今後目指すべき方向性などを把握しましょう。

課題の見つけ方2:ミクロ分析(定量分析)

定量的なデータ(数値化できるデータ)を分析し、目標値とのギャップを可視化して課題を見つける方法です。利用できるデータには、次のようなものがあります。

  • Webサイトのアクセス解析
  • 選択式アンケート
  • ABテスト
  • 商談数
  • 成約率
  • 顧客単価
  • リードタイム

これらのデータのほか、問い合わせ数やメルマガのクリック率など、行っている施策によって利用できる数値はさまざまです。それらの数値の目標値を最終目標から逆算し、目標値に達していない部分を分析します。

関連記事:「アクセス解析ツールを使うと何が分かる?解析の目的や実施方法、ツールを紹介

あらかじめ課題部分に仮説がある場合などは、新たにアンケートやABテストを行って仮説を検証するのも手です。具体的な課題箇所と数値が特定できれば、解決するための目標を設定できます。

なお、課題を見つけるにあたり、マーケティングの工程を分割してどの部分に課題が存在しているのか、それぞれの工程のKPIなどから探ることも有効です。例えば、Webサイトの流入数やCV率が低くて見込み顧客(リード)獲得数が足りていないのであればその部分を改善する必要がありますが、見込み顧客の獲得数は実は十分で、その後の段階で関係を維持できず脱落する顧客が多いのであれば、課題があるのはナーチャリング(育成)段階の施策です。一方、商談数は十分なのに成約率が低いという場合は、営業の分野に問題がある可能性もありますが、マーケティングのクオリフィケーション(絞り込み)が不十分である可能性もあります。

定量データからは、まずどの部分に課題があるのかを明確にし、その原因を探っていきましょう。

課題の見つけ方3:ミクロ分析(定性分析)

定性的なデータ(数値化できない質的なデータ)を分析し、目標や想定とのギャップを可視化して課題を見つける方法です。利用できる手法には、次のようなものがあります。

  • インタビュー
  • 自由回答式アンケート
  • 口コミなど

これらのデータを分析することで、顧客理解を深められます。特にインタビューを行うことで、顧客のリアルな声を聞いて戦略に役立てることができます。

インタビューの手法には、デプスインタビューとグループインタビューがあります。デプスインタビューとは1人の対象者を相手とする方式で、意見や感想をより深く聞き取ることができます。一方のグループインタビューとは複数人を相手とする方式で、一度のインタビューで多くの意見を集めることができます。

これらの定性的な分析を行うことで、定量的な分析ではわからない課題や顧客のニーズを洗い出すことができます。

関連記事:「コンテンツマーケティングを成果につなげる「見込み顧客インタビュー」のすすめ

3. 課題解決の優先順位

課題解決の優先順位は、その課題が根本的なものであればあるほど高くなります。例えば、マーケティングの戦略設計そのものに課題がある場合、その中身である施策をいくら改善しても、全体の方向性が間違っているため成果が上がらないということもあり得ます。

特に、戦略立案に必要な要素が疎かになっていると、成果の最大化からは遠ざかってしまいます。必要な要素とは、以下の3つです。

  • 顧客への深い理解
  • 部署間の連携
  • 目的の明文化

顧客への理解が不足していると、ニーズに合った提案やサービスの提供ができません。部署間の連携が取れていないと、最終的な目標や結果が共有できません。目的が明文化されていないと、方針がぶれたり、手段が目的化してしまったりする原因になります。

こうした根本的な課題がある場合は、まずそれを解決する必要があります。そこから戦略を立て直し、企業の長期的および短期的なビジネス目標、利用可能なリソース、市場の動向、競合の状況などを考慮しながら、以後の施策を見直しましょう。

関連記事:「BtoBマーケティングは戦略が重要!立案に必要な要素を解説

4. よくある課題例と解決策

ここからは、マーケティングのよくある課題例とその解決策をセットで紹介します。

見込み顧客が獲得できない

インターネットの普及によって見込み顧客(リード)との接点にオンラインのアイテムが増え、一方で展示会やセミナー、DMなどのオフラインの接点も残っていることから、接点は多様化しています。多様化した接点を扱いきれなかったり、接点を設けてはいるものの顧客が獲得できなかったりと、見込み顧客の獲得に課題を抱えている企業は多いでしょう。

解決策

まず、自社の商品・サービスとターゲット層が合致しているか、そのターゲット層に響く情報を発信できているかを確認します。この2点に不安がある場合は、【1】調査・分析と【2】戦略設計の段階で正しい設定や計画が行われているか見直す必要があります。

これらに問題がなければ、次のような対策を行い接点を増やしましょう。

  • ターゲット層に合わせた質の高いコンテンツを充実させる
  • ターゲット層がよく利用するチャネルの情報発信を強化する

予算が確保できない

マーケティング施策が多様化し、成果を出すためにはより多くの施策を行いたいのに投入する予算がなかなか確保できない、という企業も多いようです。特にマーケティングの効果を可視化し社内に展開できていない状況では、必要な予算の確保が難しいかもしれません。

解決策

限られた予算内でマーケティングへの投資を増やしてもらうには、実績と必要性を可視化する必要があります。そのためにはマーケティング施策のROIを、説得力のある方法で算出する必要があるでしょう。数値を分析しやすいツールを導入するのも一手です。

社内の理解を得るためには、低コストで実現できる小さな改善から始めて実績を積むのも有効な手段です。成果に大きく影響するものではなくても、目に見える実績や変化が示せれば理解が得やすく、予算も確保しやすくなります。

関連記事:「中小企業の営業現場から始める クイックウィンの営業DX【セミナーレポート】

予算確保のための働きかけと併せて、限られた予算でマーケティング活動を最適化するための効率化も必要となります。各施策の費用対効果を定期的に計測し、随時改善していく仕組みを作りましょう。

必要なデータが取れていない

マーケティングには市場データや顧客データ、これまでの施策の結果など、さまざまなデータが不可欠ですが、データ不足やデータの活用方法に課題を抱えている企業も多くあります。データの分析はマーケティングのフローの初期フェーズに位置しているため、データの収集に不備があると効果的なマーケティング施策の実行が難しくなります。

解決策

マーケティングに必要なデータを整理し、不足がある場合は、データの入手と蓄積の方法を検討します。場合によってはツールやプラットフォームを見直したりバージョンアップしたりして、データの取得や管理ができるようにする必要もあるかも知れません。顧客理解を深めるために、アンケートやインタビューなどを行って生の声を聞き取り、定性データを集めることも有効です。また、市場などのマクロなデータが足りない場合は、調査レポートの購入など、サードパーティからのデータ入手も検討しましょう。

人手と時間が足りない

労働市場全体が人手不足となっている現在、人手や時間が足りないという課題を持つ企業は多くあります。人手不足によりマーケティング施策が十分に行えていない場合、機会損失につながる恐れもあります。今後少子高齢化が進み労働人口がさらに減少すると見込まれる中、人手不足は深刻化していくと考えられています。

解決策

人手不足が避けられない以上、一人ひとりの生産性を上げる業務効率化を行う必要があります。MAなど、デジタルツールを利用して情報管理の省力化や業務の効率化を行うのが有効でしょう。ただし、ツールを導入する際は、目的や運用方法などを確認し、明確にしてから行うことが重要です。

また、分析やコンテンツの作成など、マーケティング分野でも生成AIが活用できるとして注目されています。取り入れてみるのも良いでしょう。

関連記事:「MA(マーケティングオートメーション)とは?機能や選び方のポイントを解説

知識を持つ人材が足りない

マーケティングの改善に取り組みたくても、知識やスキルを持つ人材が足りないというケースも少なくありません。特にDXが推進される昨今では、マーケティングと同時にデジタル関連の知識も持った人材は重宝されます。デジタルツールを導入したくて知識を持った人材を探しているが、なかなか採用できない、といったケースもあるでしょう。

解決策

人手不足感が高まり、採用自体の難易度が上がっています。関連部署との情報共有をして採用の手法を見直すなど、会社全体で考える必要があります。また、採用に依存するのではなく、自社の社員のリスキリングに取り組むことも有効です。すぐに成果が必要な場合は、外部の専門家の助けを借りるなどの手段も検討する必要があります。

他の部署との連携ができていない

営業部門やその他の部署と連携が取れていないというケースもあるでしょう。周囲の部署と連携できずにマーケティング領域だけで戦略を立ててしまうと、方向性や目標、顧客の情報などが共有できず、成果につながりにくくなります。

解決策

顧客と接する営業部門やカスタマーサクセス部門と連携し、一貫して顧客との関係性を築くとともに、目標を共有して全社的に行動することで成果が出やすくなります。それぞれの役割を明確にし、相手部門の仕事を理解しながら積極的にコミュニケーションを取る必要があります。また、成果に対する認識を合わせ、部門間で受け渡す情報の条件や定義を明確化・共有することが重要です。例えばマーケティング部門から営業部門に顧客を引き継ぐ際、アプローチの対象になる顧客の定義がずれていると、営業部門にとって有用でないデータを渡すことになり、部署間の摩擦が起きる原因になります。このような事態を招かないよう、目標に対し各部署が達成すべき条件や定義を明確にしておきましょう。

5.まとめ

マーケティングにおいて、課題の発見と解決は成果の最大化のために欠かせないものです。データを分析して課題のありかを正しく把握し、根本的な問題から解決しましょう。また、一度きりの改善ではなく、変わっていく状況に合わせて、常に分析と課題の把握、解決を図っていくことが重要です。マーケティングの課題を解決し、成果の最大化を目指してください。


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BeMARKE編集部
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