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BtoBマーケティングの1つの施策として、「比較サイトの活用」は多くの企業が実施しています。効率良くリード獲得ができるチャネルとして活用する企業がいる一方で、自社のサービス・事業内容によっては効果的に活用できていない企業も少なくありません。
そこで本記事では「比較サイトを使っているけど費用対効果が合わない……」「活用してみたいけど有効な手段か分かっていない……」という悩みを抱える企業様向けに、これまで200社以上のBtoB企業のコンテンツマーケティング支援を行ってきた筆者が、BtoBマーケティングにおける比較サイトの役割から効果を高めるための活用方法までを解説します。
比較サイト活用を検討している方、すでに活用しているが成果が出せていないと感じる方は本記事をぜひ参考にしてみてください。
マーケティングの相談をいただく企業へのヒアリングでも「以前使っていたけど費用対効果が合わずに頓挫した」「検討の土台には上がるものの、本当に有効なのかが分からず活用に踏み切れない」といった声をよく耳にします。
一方で、以下記事のように、月100件以上のリードを獲得し、比較サイトを活用して期待した成果をあげている企業も存在します。
開始2か月で月100件以上のリードを獲得!秘訣は毎月1本以上の資料追加による顧客理解にあり|ガラパゴス様事例インタビュー|LISKUL
なぜ、「比較サイトは費用対効果が合わない」と感じる企業がいるのか、その理由について解説していきます。
まずは比較サイトがどのように集客を行っているかを理解していきましょう。
比較サイトへユーザーが流入するチャネルはメルマガやリスティング広告などがありますが、基本的には「〇〇ツール 比較」のようなキーワードによるオーガニックでの流入がほとんどです。
例えば「勤怠管理システム 比較」と検索すると、以下のようにほとんどの上位表示記事が比較サイト上のメディアの記事(画像の赤枠内)となっています。
「勤怠管理システム 比較」と検索するユーザーは「勤怠管理システムの導入を検討していて、どのサービスが良いかを比較したい」と思っている見込み顧客です。
そのため、上位表示されている記事ではその思いに応えるよう「勤怠管理システムとは?」のようなサービスの概要説明から、おすすめサービスの比較までを行っています【下画像】。
そのような流入経路、ユーザーのニーズから比較サイト上で獲得することのできるリードは「比較検討層」、いわゆる準顕在層と呼ばれる”特定のソリューションに興味を持ち、比較検討を行っている見込み顧客”になります。
「比較検討層」と言ってもニーズの深さはさまざまです。具体的に導入を検討して資料をダウンロードするユーザーもいれば、今後発生しうる課題解決のための情報収集として資料をダウンロードするユーザーも存在します。
そのような理由から、資料ダウンロード発生時にアプローチをしてすぐに商談化できるリードもあれば商談化できないリードも存在するため、後者の場合は顧客の導入意欲を高めるためのリードナーチャリングが必要となります。
リードナーチャリングはインサイドセールスによる架電やメールマガジンの送付、ウェビナー開催などの手段があります。これらの手法は時間をかけて徐々に導入意欲を高めていくアプローチになるため中長期的に取り組む必要があり、時間・労力・コストが継続的に発生します。
SaaSプロダクトやITツールの場合、継続利用前提かつ利益率が高いためナーチャリングコストをすぐに回収することができますが、受託型やコンサル型など属人性の高いビジネスモデルのサービスの場合、ITサービスに比べて利益率が低くかつ単発での依頼も多いため、ナーチャリングコストを回収できない可能性が高くなります。
そのため、後者の企業は「できるだけコストをかけずに契約企業を獲得したい」とリードに対して「即効性」を求めてしまいがちです。「即効性」を求めるべきは比較検討層のリードではなく、特定のサービスに興味を持っている顕在層のリードです。
このように、比較サイトで獲得できるリードはナーチャリングが必要な比較検討層であるにもかかわわらず、顕在層と同様に「即効性」を求めてしまうという事実によって「比較サイトは費用対効果が合わない」と感じる企業がでてきてしまうと言えます。
では、「即効性」を重視する企業は比較サイトを効果的に活用できないのか――。そんなことはありません。比較サイトを「未接点顧客のナーチャリング」としてとらえることで、費用対効果を高めることができます。
比較サイトの仕組み上、ほとんどの比較サイトはSEOコンテンツでの集客を行っているため、掲載時は「〇〇代行 比較」のようなキーワードで表示される比較記事への掲載が可能です。
この比較記事内では各サービスの比較を行っているため、ユーザーは自身のニーズにあった最適なサービスを見つけやすくなっています。
「すぐに比較検討をしたい」と思うユーザーはその場で資料ダウンロードを行いますが、すべてのユーザーが必ず資料をダウンロードするとは限りません。次のようなアクションで「本当に興味のあるサービスのみの情報収集」を行うユーザーも存在します。
このようなユーザーは記事閲覧によって”特定のソリューションに興味を持っている状態”から“特定のサービスに興味を持っている状態”へと引き上げられ、導入意欲が高い状態にあることでサービスサイト上から問い合わせへと行動を起こします。
サービスサイト上で直接問い合わせをする顕在リードは比較検討リードよりも商談化率・受注率は格段に高まります。記事閲覧で「比較検討層」から「顕在層」へ引き上げる「未接点リードのナーチャリング」として比較サイトをとらえることで「即効性」を重視していながらも効果を実感できるようになります。
比較記事の掲載以外にも、未接点顧客のナーチャリングとして自社のオウンドメディア施策やTVCMやWebCMなどのマーケティング手法も存在します。これらの手法との大きな違いは自社発信ではなく、第三者の発信しているコンテンツであるという点です。
ある調査によると、近年ではユーザーの購買行動の60%は営業担当に接触する前に自身による情報収集で完結しているといわれていますが、自社発信のコンテンツは情報収集のソースとして約20%しか活用されていません。
一方で、第三者からの情報は約50%を占めているといわれています。「他社サイト」「レビューサイト」に含まれる比較サイトは約30%を占めているため、自社発信のコンテンツよりもユーザーの購買行動への影響力が大きいと言えます。
比較サイトを未接点顧客のナーチャリングとしてとらえ、比較記事へ掲載するだけでサービスサイトへのお問い合わせが増加するわけではありません。見込み顧客の取りこぼしを防ぎ、効果を最大化させるためには、次の2つの施策に取り組む必要があります。
見込み顧客がサービスサイトに訪問しても離脱してしまえば意味がありません。離脱を防ぎ、お問い合わせを起こしやすくするために以下を意識してサービスサイトを整えましょう。
記事閲覧後にサイトへ流入する見込み顧客は、「もっと詳しくサービス内容について知りたい」という心理を抱いています。知りたい情報は料金なのか、実績なのか、導入効果なのか、さまざまなであるため、どの情報にもアクセスできるようなサービスサイトにしましょう。
また、いくら導入意欲を高めても「お問い合わせボタン」が容易に見つけられなければ離脱する可能性が高まります。「資料ダウンロード」「お問い合わせ」の2つのCVポイントを設置し、ヘッダー・ファーストビュー・中腹部にCTAボタンを設置して導線を確保するようにしましょう。
顧客の導入意欲が高まったとしても、その場でサイト流入につながるとは限りません。ニーズが浅く、情報収集として閲覧していた顧客の場合、1カ月後・2カ月後・6カ月後の「ニーズが高まったタイミング」でサイト流入を起こす可能性があります。
その際に取りこぼしを防ぐ施策として、並行して実施しておくと効果的なマーケティング施策を一部紹介します。
指名キーワードでの検索広告 | 指名検索時に他サイトへの流入を防ぐ |
MetaなどSNSでのバナー広告 | 単純接触回数を増やして第一想起を獲得する |
CVに近いキーワードでの検索広告 | 他のキーワードでした際の取りこぼしを防ぐ |
記事を一度閲覧しただけではサービス名を完全に覚えきれていない可能性も高いため、バナー広告での接触回数の増加によるサービス認知の向上や、検索広告による他社サイトへの流入防止を実施するようにしましょう。
未接点顧客のナーチャリングとして比較サイトを活用するには、どの比較サイトに掲載するかの選定がとても重要になります。
ここでは、比較サイト活用を検討している方向けに、数ある中から自社に合った比較サイトを選定するための3つのポイントについて解説します。
比較サイトは必ずしも全領域を網羅しているわけではなく、SaaSに特化したサイトやITツールに特化したサイトなど、サイトごとに特化している領域が存在します。
SaaS特化型 | SaaSプロダクトに主軸を置いた比較サイト | ボクシル、SaaSLogなど |
ITツール特化型 | ITツール全般を掲載する比較サイト | アスピック、ITレビューなど |
マーケティング特化型 | Webマーケティング系サービスを掲載する比較サイト | LISKUL、ferretなど |
業界特化型 | BPOや製造業など、業界特化で掲載する比較サイト | b-pos(BPO)、イプロス(製造業)など |
特化している領域以外のカテゴリが存在する比較サイトもありますが、どの比較サイトも特化領域に属するカテゴリのほうが記事への流入数やカテゴリ全体のPV数が多くなる傾向にあります。
そのため、検討している比較サイトがどの領域に特化しているかを確認し、自社に合ったカテゴリでの掲載に適しているかを確認するようにしましょう。
自社に合ったカテゴリがあったとしても、比較記事が自社の取りたいキーワードでの検索時に上位表示できていなければ見込み顧客へリーチできないため、掲載する意味がありません。
例えば、人事領域のクラウドサービスを提供する企業が労務管理システムを拡販したいと考えている場合、掲載した比較サイトが「勤怠管理システム」のキーワードでの上位表示を取れていても「労務管理システム」のキーワードで上位表示を取れていなければニーズとマッチしません。
サイト選定の際は自社で獲得したいキーワードを明確化し、どの比較サイトが上位で表示されているかをリサーチした上で問い合わせをするようにしましょう。
比較サイトの料金体系は大きく分けて2つに分類されます。
成果報酬型 | リード発生時に1~2万円程度のリード獲得単価が発生 |
月額固定型 | 成果報酬は発生せず、掲載費として毎月固定の金額が発生 |
リードが発生しない月にコストがかからない点が魅力的ですが、資料ダウンロードリードが10件、20件発生した場合は10~30万円程度のコストが発生するため、予算取りがしにくい、費用が高額になるというデメリットもあります。
リード発生以外に余計なコストが発生しないため、自社にナーチャリングの体制が整っていて比較検討層のリードでもとにかくたくさん欲しいと考えている企業におすすめです。
相場は1.5万円から最大でも10万円程度となっているため、成果報酬型に比べて費用を抑えられる点が魅力です。一方で、資料ダウンロードリードが発生しない場合でも費用は発生する点がデメリットになります。
継続的な掲載で未接点顧客のナーチャリングを行い、熱量の高いリードだけが欲しいと思っている企業におすすめです。
各料金体系のメリット・デメリットを理解した上で、自社のニーズから逆算して費用対効果を高められる比較サイト選定を行いましょう。
成果報酬型、月額固定型に分けておすすめの比較サイトを紹介します。
出所:アスピック
アスピックは650社・900サービス以上が利用する、SaaS・ITサービスの比較サイトです。
クラウドサービス全般を掲載することができる上に「〇〇システム」「〇〇システム 比較」などの検索キーワードでは多くの記事が上位表示されています。
比較記事内ではただサービスの紹介を行うだけではなく、「中小企業向け」「大企業向け」などのようにサービスをタイプ分けした上で紹介しているため、他サイトに比べてユーザーへの訴求力も高くなっています。
初期費用は一切かからずリード単価は1万円とリーズナブルな料金体系になっています。
特化領域 | ITサービス全般 |
料金体系 | 成果報酬(10,000円 / 件) |
強み | 「〇〇システム」などのキーワードでの上位表示率はトップクラス |
サイトURL | https://asu.aspicjapan.org/lp/ |
出所:LISKUL
LISKULは月間80万PVを有する、Webマーケティング領域に特化した比較サイトです。
300以上の記事が検索結果3位以内に表示されており、Webマーケティング以外の記事も公開しているため、幅広いジャンルのサービスが掲載することができます。
最大の特徴は1サービスにつき1つまでなら無料で資料掲載ができ、ダウンロードユーザーの情報まで閲覧可能な点です。複数サービスを掲載したい場合も成果報酬のみで利用できます。
特化領域 | Webマーケティング関連 |
料金体系 | 成果報酬(要問い合わせ) |
強み | 1サービスにつき1資料を無料で掲載・リード情報の閲覧まで可能 |
サイトURL | https://liskul.com/resources/free |
出所:b-pos
b-posは150以上の代行・外注サービスが掲載する、業界で唯一のBPO領域に特化した比較サイトです。
BPO領域の豊富なカテゴリで代行・外注サービスをほとんど網羅しており、「〇〇代行」「〇〇代行 比較」のようなキーワードでの上位表示記事を多く公開しています。
最大の特徴は、b-pos上での資料ダウンロードリードの発生は重視しておらず、ユーザーが本当に欲しいと思ったサービスへのサイト流入を提供価値としている点です。記事内にサイトリンク設置が可能なプランもあり、未接点顧客のナーチャリングに効果的な比較サイトです。
特化領域 | BPO(代行・外注サービス)領域 |
料金体系 | 【月額固定】ライト:10,000円 / 月(資料掲載のみ)、スタンダード:30,000円 / 月(記事内でのサービス紹介)、ハイエンド:50,000円 / 月(サイトリンクの設置)、プレミアム:100,000円 / 月(複数記事への掲載が可能) |
強み | b-pos内での資料ダウンロード導線が弱く、サービスサイトへの送客を重視 |
サイトURL | https://b-pos.jp/lp/ |
出所:比較ビズ
比較ビズは2005年に開設された士業に特化したビジネスマッチングサイトです。現在では士業だけではなくさまざまな領域での掲載が可能になっています。
比較サイトとは異なり、一括での見積もりが発生した際に発注者とやりとりを行い、契約を獲得する仕組みですが、集客のための記事コンテンツづくりも行っているため、比較記事への掲載も可能です。
比較サイトに比べて運用工数は発生しますが、月額料金15,000円程度でリーズナブルに利用することができます。
特化領域 | 士業から始まり、現在はさまざまなカテゴリが存在 |
料金体系 | 月額固定(約15,000円 / 月) |
強み | ニーズが顕在化しているユーザーへのアプローチが可能 |
サイトURL | https://www.biz.ne.jp/seller/ |
※比較サイトの情報は2024年8月調査時点であり、コメントも調査時点の情報に対して行っています。
本記事では、費用対効果を高める比較サイトの活用方法から比較サイトの選定ポイントまで解説しました。
比較サイト上で獲得できるリードはあくまでも「比較検討層」であり、すぐに受注につなげたいという「即効性」を重視しすぎると費用対効果は合わなくなります。
即効性を重視する企業は、比較サイトを「未接点顧客のナーチャリング」としてとらえ、顕在層に引き上がった見込み顧客をサービスサイトで刈り取ることで費用対効果を高めることができます。
また、比較サイト活用を検討している企業は「自社に合ったカテゴリが存在するか」「上位表示を取れているか」に注意してサイト選定を行うようにしましょう。
本記事を参考にしていただき、マーケティング・リード獲得に悩むBtoB企業の皆様のお役に立てればうれしいです。
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