Tips/寄稿
さまざまなサービスが続々とリリースされ、会社・サービスの差別化が難しくなっている昨今、企業としての競争力を高めるために新規事業の立ち上げに取り組む企業は多いのではないでしょうか。筆者が所属する株式会社ConeではBtoBのコンテンツ制作支援を行っており、「新規事業を立ち上げたからサービス紹介資料が欲しい」とご依頼をいただくこともあります。
一方で、新規事業の営業は既存事業営業に比べると難易度が非常に高く、「新規事業の営業で成果が出ないから営業資料を刷新したい……」とご相談いただくケースも多くなってきています。
本記事では、新規事業の営業で成果が出ないと悩む営業担当、経営者の方向けに、営業資料をベースに新規事業営業を成功に導く4つのステップについて解説。新規事業として立ち上げてから1年で150社以上の企業が導入しているBPOサービス比較サイト「b-pos」の実際の成功事例も交えながら紹介します。
既存事業ではトップの成績を上げていた営業担当でも新規事業の営業に配属されると急に成果が出せなくなるという事象は多くの企業で起こりがちです。
その理由は”新規事業の営業と既存事業の営業の違い”を理解できていないという点にあります。新規事業の営業は既存事業の営業と同じ戦い方をしても成果を上げることはできません。
新規事業の営業を成功させるには、まずは既存事業の営業との違いを理解し、新規事業に合った営業戦略を描くことが重要です。ここでは既存事業営業の3つの違いについて解説します。
既存事業営業との違いの1つ目は、商談獲得チャネルが安定していないという点です。
BtoB企業が商談を獲得するための手法は大きく分けてアウトバウンド施策とインバウンド施策の2つに分けられ、多くの企業はテレアポや展示会などのアウトバウンド、もしくはWeb広告やオウンドメディアなどのインバウンドでリード獲得・商談獲得を行っています。
既存事業の場合、すでに効率の良いリード・商談獲得の方法が定まっていることが多いため、担当者は商談獲得の方法を模索する必要なく、商談実施に集中できます。また、マーケティング担当と営業担当が別れている場合も多く、リード・商談獲得について施策を講じる必要がない場合もあります。
一方で新規事業の場合、リソースが限られているためリード・商談獲得から商談実施、いわゆるマーケティングからセールスまで担当者1人で実施しなければいけない場合も多くあります。
アウトバウンド施策がベストなのか、インバウンド施策がベストなのか、その中でもどの施策が最も獲得効率は良いのかを模索しながら商談獲得を行う必要があるため、既存事業に比べると商談獲得のハードルが高くなる上に商談に割ける時間も限られてきます。
また、中小企業の場合はホールディングス企業のようにグループ会社から顧客を紹介してもらうなどの施策もないため、より商談獲得のハードルが高くなってしまいます。
既存事業営業との違いの2つ目は、勝ちパターンを確立できていないという点です。
既存事業の場合、「この業界のお客さまにはこの訴求が刺さる」「この課題がある場合はこの提案が刺さる」のような勝ちパターンが社内にノウハウとして貯まっていることがほとんどです。
一方で新規事業の場合は利用している企業が存在しないため、すべて仮説ベースで動く必要があります。「この業界のお客さまにはこの訴求が刺さるのでは?」「この課題がある場合はこの提案が刺さるのでは?」と常に仮説を持った上で、商談時に検証をする必要があります。
検証した結果、場合によってはプラン内容の変更やサービスの提供価値の変更が必要になる場合もあります。この感覚を持たずに既存事業と同じように営業をしてしまうと、誰の課題も解決できないサービスになってしまう可能性があり、いつまでたっても成果が上がらない事態に陥ってしまいます。
既存事業営業との違いの3つ目は、支援実績が存在しないという点です。
既存事業はすでに利用している企業が存在するため、実際の支援実績をもとに支援内容や得られた成果をお客さまに提示して具体的な導入イメージを持ってもらうことができます。
一方で新規事業の場合は利用している企業がいないため、支援実績は存在しません。そのため、導入を検討するお客さまは「本当に成果につながるのか?」「お金を払う価値があるのか?」と不安を感じる可能性が高まります。
この不安を払拭するために、成果につながる仕組みの説明やロジック、新規事業にかける思いなど、既存事業では説明していなかった情報などもお客さまに提供する必要が出てきます。
上記で解説した既存事業営業の違いを踏まえて、新規事業営業に必要な3つのポイントについて解説します。
既存事業営業との2つ目の違い「勝ちパターンを確立できていない」で解説した通り、新規事業営業は勝ちパターンを見つけるための仮説検証が必要になります。
刺さるポイントの仮説を立て、精度高く検証を行うためには、どの商談でも同じ説明や訴求ができるように検証環境を整える必要があります。その際に効果的なのが営業資料です。
サービス説明ができる営業資料をまずは準備し、仮説検証したいポイントが出てきたタイミングで既存ページの修正や新規ページを追加することで、商談相手への説明の質をそろえることができます。
また、今後セールスに他のメンバーが加わった際、資料を共有するだけで同じクオリティの営業ができるというセールスイネーブルメントの側面*もあります。
この2つの観点から、新規事業営業の改善は営業資料をベースに行うことが重要です。
*参考 “完全内製”で営業力向上。セールスイネーブルメント~コストをかけない7つの取り組み
また、訴求軸の変更やよりスムーズな商談実施のための営業資料の改善時は、顧客の声をもとに行うようにしましょう。
顧客の声には、実際のフィードバックだけではなく「顧客の反応」も含まれています。商談の最後にサービスに対するフィードバックをもらえるのが改善する上ではベストですが、必ずしも全員が丁寧なフィードバックをくれるわけではありません。
そのため、直接フィードバックをもらわなくても改善を行うことができるように、商談中の相手の反応から提案が刺さっているのか、刺さっていないのか、サービス理解ができているのか、できていないのかをくみ取ることが重要なポイントになります。
最後は”新規事業営業=事業開発”という視点を持つことです。
新規事業営業は既存事業営業とは異なり、サービスの強みや料金体系は「ターゲットに刺さるであろう」という仮説に基づいて設計されていると思います。
実際に営業をしてみると、商談相手に提案が全く刺さらない、そもそもターゲット層が想定と違う……といった事態が生じる可能性が大いにあります。そのため、最初に立てた仮説に執着せず、時には提供内容や料金体系の変更が必要になる場面も出てきます。
この視点を持たずに「あらかじめ決まった内容で売る」ことをしてしまうと、営業し続けても成果につながらない状態に陥ってしまうため、「時にはサービスの提供内容を変える」という事業開発の視点も必要だという認識を持つようにしましょう。
ここまで解説した内容を踏まえ、新規事業の営業を成功させる4つのステップについてご紹介します。実際にb-posで実施した事例を交えて紹介しているので参考にしていただければと思います。
STEP 01 | サービスについて話せる資料を準備する | 商談実施前 |
STEP 02 | 訴求ポイントを改善する | 商談数:10~20件程度 |
STEP 03 | 刺さる提案内容を確立する | 商談数:30~40件程度 |
STEP 04 | 支援事例を用意する | 受注数:5~10件程度 |
まずは最低限のサービス内容について話せる営業資料を準備しましょう。
資料がなくても話せる方もいると思いますが、先述の通り営業を成功させるためには「顧客の声をもとに改善する」ことが重要です。些細な顧客の反応の違い(=顧客の声)を見極めるためにはどの相手にも一定同様のサービス内容を話す必要があります。
商談相手によって話し方や商談の進め方を変えることも必要ですが、サービス説明部分の大枠はずらさないように、最低限の資料は準備しましょう。
b-posでは以下の資料を準備しました。
基本的には「よくある課題」「サービス内容」「料金・導入フロー」が入っていればサービスについての説明はできますが、実績はない状態で導入したい!と思ってもらうにはサービスのコンセプトや想いに共感してもらうことも重要です。
そのためb-posでは「サービスの想い」や「開発の背景」を挿入して共感を得られる構成にしていました。また、「市場の動向」もいれることで提示している課題の説得力を高めることもできます。
10〜20件程度の商談を実施したタイミングで、顧客の解像度を高めるために訴求ポイントの改善を行いましょう。実施した商談の中で得られた顧客のフィードバックや反応から、よくある課題やサービスの訴求方法を変更するイメージです。
b-posでは「マーケティング活動でよくある課題」という訴求をしていたページを「BPO企業(ターゲット企業)が陥りがちな課題」という訴求内容に改善を行いました。当初はターゲットの抱える課題を具体的に把握できていなかったため、抽象度高く課題を挿入していましたが、顧客との対話を重ねて解像度が高まり、ターゲットの課題が具体的になったためです。
また、サービス説明部分も以下のように変更を行いました。
とりあえずサービス説明ができる状態で資料を準備しましたが、サービス内容がうまく伝わらず説明したはずの内容の質問をされたり、商談相手が理解できていないような反応が多々ありました。そのような顧客の声をもとにサービス説明部分の改善を行いました。
2. 訴求ポイントを改善する、でターゲットに刺さりやすい課題想起や認識齟齬が起こりにくいサービス説明ができるようになれば、刺さる提案を確立させましょう。
30〜40件程度の商談を実施し、「比較検討において商談相手が何を重要視しているのか」が分かり、顧客の解像度が高まってきたタイミングで営業資料内に新規で提案ページを挿入するイメージです。
具体的には、サービスの活用イメージや競合比較ページなどが効果的です。
b-posでは「質の高いリードがほしい」と考えるターゲットに向けて、質の高いリードを獲得するための活用イメージページや、活用が向いている企業の説明ページの追加などを行いました。
刺さる提案内容を確立できれば、支援を通して成果につながっているのかを訴求するための支援事例を用意しましょう。受注数が5〜10件まで増え、狙い通りの成果を得ることができたタイミングでの実施がおすすめです。
支援先の企業に以下の内容をインタビューし、営業資料・サービスLP内に挿入しましょう。
支援事例は、導入意思決定を後押しする重要なコンテンツです。見込み顧客が感じる「本当に成果につながるのか」という不安を払拭できれば、より受注率を高めることができます。
参考までですが、b-posでは支援事例公開後は公開前に比べて受注率が約1.5倍向上しています。
新規事業営業と既存事業営業の違いから、新規事業営業を成功させる4つのステップについて解説しました。新規事業のビジネスモデルやサービス内容は企業によってさまざまだと思います。ただ、どんな事業内容だったとしても営業資料をベースに顧客の声を聞き続け、改善を繰り返すことは商談数、受注数増加のためには重要になってきます。
新規事業営業は事業開発が必要だという視点を忘れずに、時には支援内容や料金体系の変更を行いながら、まずは目の前のお客さまの成果を出すことにフォーカスしていきましょう。そうすることで、自然と自社が提供できる価値やメインターゲットが明確になり、導入したい!と思ってもらう企業が増えてくるはずです。
※本記事は「中小企業の新規事業営業を成功に導く4つのステップ。成功事例を交えて解説」をBeMARKE読者向けに内容を一部編集したものです。
現在、BtoBマーケター・セールス担当者向けに、ノウハウやナレッジを披露していただける専門家の方を募集しています。
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