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導入企業数No.1の電話代行サービス「fondesk」がユーザーを獲得した戦略~サービス認知のカギは「記事広告」

導入企業数No.1の電話代行サービス「fondesk」がユーザーを獲得した戦略~サービス認知のカギは「記事広告」

本記事はBPOサービス比較サイト「b-pos」を運営する著者が、各BPO業界で名を馳せる企業に「事業を拡大する上で取り組んだマーケティング施策の裏側」に迫る企画です。いわゆるサービス紹介を目的とした導入事例のインタビューではなく、マーケティングのさまざまな課題解決に資することを目的にしています。

本企画第1弾は、電話代行サービス「fondesk」を運営する、株式会社うるるのfondesk事業部 事業部長 上口徹也(うえぐち・てつや)さん【下写真】にご協力いただきました。
「何を目的に、どのような施策を実施し、どのような成果を得られたのか」をインタビューしているため、認知拡大やユーザー獲得に悩むBtoB企業のマーケティング担当者に少しでも参考になればうれしく思います【聞き手:株式会社Cone湯淺春樹】。

*導入企業数No.1: 2024年4月期 指定領域における市場調査において(日本マーケティングリサーチ機構

株式会社うるるのfondesk事業部 事業部長の上口 徹也(うえぐち てつや)さん|BeMARKE(ビーマーケ)

目次

電話代行サービス「fondesk」とは?

— まずは「fondesk」のサービス内容についてご紹介いただけますか。
「fondesk」は300名近くのオペレーターが企業の代わりに電話を受け、その内容をメモにまとめて各種チャットツール(Chatwork / Slack / LINE など)へお送りするというサービスです。

fondeskのサービスサイト|BeMARKE(ビーマーケ)

出所:fondeskのサービスサイトより

総務などのバックオフィスの方々は自分の業務があるにも関わらず、電話の応答や取次業務に時間を取られているのが企業の現状だと思います。また、外回りの多い仕事の場合だと即座に電話に出ることもできません。
fondeskはこうした企業の電話に関する課題を解決することでコア業務に集中できる環境の整備や業務の効率化を実現しています。

また、サービスの利用開始に必要なフローはすべてオンラインで完結しますし、導入後も管理画面から受付時間や自動応答メッセージの編集もできるので、そういった手軽さからさまざまな業種、業界の企業に導入いただいてますね。

— とても革新的なサービスですよね。そもそも「fondesk」が生まれた背景をお聞きしたいです。
「fondesk」は5年前の2019年2月18日にリリースしたのですが、私はその半年前に株式会社うるるに入社しました。
その時に配属されたのがフレックスコール事業部(現在のfondesk事業部)なのですが、その当時は電話を受ける業務と電話をかける業務をやっていました。電話を受ける業務も現在の一次取次(要件のみを聞く)サービスではなく、ECショップの問い合わせ窓口・コールセンターのようなイメージです。

コールセンター運営は対応してくれるオペレーターを探すのが難しい上に、途中で辞めてしまう人が出てきたり、最後まできちんと納品するだけで大変だったので、「このままアウトバウンドコールを伸ばしていくのは厳しいかもしれない」と感じ始めていました。
そんな中、Chatworkさん(現 株式会社kubell)と一緒に取り組んでいた「Chatwork 電話代行」という電話代行サービスが順調に業績を伸ばしており、「注力すべきはアウトバウンドコールではなく、電話代行なのではないか」と思ったのがきっかけです。

コロナの影響もあって、電話代行の市場が拡大

— リリース当時って「電話代行」という市場は存在していたんですか?
「電話代行」という市場自体は5年前も存在はしていました。ただ、それぞれの会社専属のオペレーターが電話を取るというようなサービス内容が主流で、今の電話代行とは少し異なっていて、大企業向けのコールセンターみたいな形でした。

— 今の電話代行サービスの需要が伸びたタイミングはいつ頃ですか?
コロナが流行り始めた2020年くらいのタイミングですね。コールセンター型の電話代行はオペレーターがオフィスに出社しての電話応対が必要だったので、コロナ禍では運営することが難しい状況になったんですよね。

コールセンター型の電話代行会社は、運営体制を変更することが強いられたんですが、「fondesk」は、当初からオペレーターは在宅で受電業務をしていたので、運営の形を変える必要なく、コロナ禍での電話代行業務にも対応できていました。
そもそもほとんどの企業が出社義務を撤廃してリモートワークを推奨し始めたことで、代表電話への対応ができにくい状態になったことで一気に電話代行サービスの需要が伸びていきました。

— 需要が伸びれば競合も増えると思いますが、競合優位性はどのように築いたんですか?
おっしゃる通り、コロナ以降に類似した後発サービスが多く出てきましたね。ただ、うるるは元々BPO事業からスタートしている会社なのでオペレーターの採用や研修・育成のコツなどのノウハウを独自で保有していました。この独自ノウハウを生かした安定的な稼働の実現が競合優位性になっていました。

今では「AIによる電話代行」も登場していますが、現状のAIは対話ではなく自動音声での対応になっていますし、聞き取りが不正確な場合も多く、現場に負担がかかっている場面があるので、「人による対応」の需要はまだまだあると感じています。

— 単純な興味なのですが、ロゴにペリカンが起用されている理由をお聞きしたいです(笑)。

fondeskのサービスロゴ|BeMARKE(ビーマーケ)

よく聞かれます(笑)。

サービス名を決めるときにさまざまな案をチームで出し合ったのですが、その中で「fondesk」と「ペリカン」が残りました。海外のアニメで、手紙を運ぶキャラクターとして「ペリカン」が郵便屋さんの格好をして登場するシーンがとても頭に残っていて、私が「ペリカン」という案を出しました(笑)。「fondesk」は電話の内容を手紙のようにチャットツールへ送るサービスなので、そこと「ペリカン」が重なったんですよね。

ただ、名前としては「fondesk」の方が良いという結論に至り、「ペリカン」はキャラクターとして残そう!という判断になりました。これがfondeskのロゴにペリカンがいる理由です。

リリース直後の顧客獲得のカギは「記事広告」による認知獲得

— 今でこそ契約数が5,000を突破しているfondeskですが、リリース直後はどう顧客を獲得していったのですか?
リリース直後は認知が取れていない状態なのでやみくもに広告を打っても見込み顧客に響かないと思っていました。そこで、まずは指名検索数増加を目的とした「認知獲得」施策が必要だと考え、記事広告を実施することにしました。

複数社の話を聞きながら、fondeskを使いそうなターゲットが多い印象だったLIGブログさんにお声がけし、記事広告を依頼しました。

fondeskの記事広告(LIG)

出所:LIGの記事広告より

LIGの担当者に実際にfondeskを使っていただいて、レビューを記事に起こしていただいたのですが、この記事の評判がかなり良く、公開から1年が経ってもその記事から「fondesk」の利用を開始されるケースがありました。最終的にはこの記事から150件ほどの契約が生まれています。
また、サービスリリース前には導入してくれそうな方へ「こんなサービスをやろうと思っているんですけど、どうですか?」というインタビューも行っていましたね。

実際にリリースした後に使ってもらっていたんですが、そのうちの数名はSNSで拡散力のある方もいたので、「fondeskいいよ!」という口コミを拡散してくれました。
そのため、リリース直後にはすでに土壌がある程度できている状態ができていたのは大きかったです。順調に契約件数も伸びていき、最初の1年で350件ほど契約いただきました。

— 先述のコロナによる電話代行の需要拡大も大きな要因となっていますか。
おっしゃるとおり、リリースから約1年後にコロナが拡大し、リモートワークへの移行に伴ってオフィス電話の代行需要が高まりました。そこから一気に契約件数が伸びて、約3カ月で1,000件を超えましたね。

逆に契約が増えすぎて当時は広告を一時的に止めていました。電話が来ても十分な受電率を担保できるだけのオペレーターが足りなくなりそうだったので、その時はオペレーターの確保を優先していましたし、本当にやばい時はメンバー全員で電話を取っていました(笑)。

— 話が若干逸れるのですが、fondeskさんはnoteもやっていますよね?どんな目的で運用しているんですか?
今は少しお休みしている状態ですが、noteも記事広告と同じく「認知獲得」を目的に運用していましたね。オウンドメディアでSEOコンテンツを量産することも考えたのですが、「やり始めたら辞められないな……」と思ったんですよ(笑)。

fondeskのnote|BeMARKE(ビーマーケ)"

出所:fondeskのnoteより

当時はサービスサイトへの流入を増やすよりもサービスの認知を獲得する方が重要度は高かったので、noteでの運用を開始しました。「fondesk面白いね」みたいな意見が拡散するのが当時はTwitterだったので、Twitterと相性の良いnoteを選びましたね。

社内で担当を一人付けて月に1回ほどの企画会議で案を出し合いながら、みんなで記事を書くという事を決めて約1年間運用していました。今は当初の目的を終えたので、少しお休みしている状態です。

マーケティングは仮説検証。施策実行と改善の繰り返しで精度を高める

— 認知獲得がある程度できてきたタイミングからはどのようなマーケティング施策をされていますか?
検索広告やSNS広告などのWeb広告から、TVCMや新聞広告などのマス向けの広告も実施しましたね。タクシーCMに挑戦したこともあります。

— ひと通り実施されてますね(笑)。施策を実施される中で意識していることはありますか?
どのチャネルにフィットするかはやってみないと分からないので、実施して効果検証をして、効果が悪ければ訴求軸を改善する、などの実行と改善の繰り返しを意識していますね。

Meta広告では常に新しいクリエイティブで効果検証できるように「これ面白いかも」という遊び心を絡めながら社内メンバーでディスカッションして、全く違う軸を見つけています。

— 本物のペリカンを使ったfondeskさんのクリエイティブをたまに見かけるんですが、とても印象に残っています(笑)。
僕らが「リアルペリカン」と呼んでいるやつですね(笑)。これもメンバーでディスカッションをしているときに「本物のペリカンを出してみようか」という話になって、「リアルペリカン」のクリエイティブをつくりました。

これは本当にインパクトがあって効果がとても良いので、今でもたまに出したりします。

ペリカンを使ったfondeskのクリエイティブ|BeMARKE(ビーマーケ)

— その他に改善をもとに効果を実感できている施策はありますか?
テレビCMですかね。fondeskでは合計3回CMを打っているんですけど、最初に打ったCMは期待している効果は得れなかったですね。
関西エリアでCMを打ち、効果を見ながらエリアを拡大していくことを予定していたのですが、「その電話、ビジネスチャンスだったかも」というテーマのクリエイティブの効果があまりよくありませんでした。

この訴求軸では効果を高められないと感じて、訴求軸を改善するために実際に「fondesk」を使ってくれているユーザーに実際のCMを見てもらいながらヒアリングを実施しました。客観的な意見をもらいながら改善したテーマが、今配信している「代表電話に誰が出るのか」です。

参考:fondesk「代表電話 誰が出るのか篇」30秒

改めてマーケティング施策は、効果検証を実行しながら改善を行う必要があると感じましたし、ユーザーの声を参考にする重要性も感じましたね。

意見広告「TELハラ」で露出度を高め、さらなる認知を獲得

— 施策は検証と改善が大切というお話がありましたが、逆に当初の想定よりも効果の良かった施策は何かありますか?
2021年の3月に実施した「TELハラ」という言葉を普及させた新聞広告ですね。

「TELハラ」は私たちが作った言葉で、「重要ではない電話を大切な新入社員に取らせていませんか?」や「暗黙の了解でバックオフィスの社員に電話を取らせている状態になっていませんか?」という意見広告を掲載しました。

fondeskが出した意見広告「TELハラ」|BeMARKE(ビーマーケ)"

出所:意見広告「TELハラ」

会社にとって電話は生産性の高いツールじゃないにも関わらず、「3コール以内に出なければいけない」とか「出社したら誰かが絶対に取りなさい」といった習慣があり、その習慣が一向にアップデートされていないと感じていました。
こういった習慣にまつわる調査※も実施し、社会人の66.3%が「会社宛の電話を受けることに対し、業務の中断や時間消費にストレスを感じている」ということが分かりました。

今後ますます人口が減っていくと懸念される中で生産性を高めるためには、習慣を変えることが必要だと思い、議論を積み重ねた結果「TELハラ」という言葉を使って意見広告を打ち出しました。結果的に、この「TELハラ」という言葉がフックとなり調査リリースがテレビなど、たくさんメディアで取り上げられましたね。

また、X(旧Twitter)では国内トレンドの2位も取ることができ、掲載される度に「fondesk調べ」という出所が表示されるので「fondesk」自体の認知獲得にもつながりました。
ペイドパブリシティとなると何千万円とかかるような媒体にパブリシティで数多く掲載されたのは大きかったですし、今でも新入社員シーズンの春になると、報道番組で「TELハラ」について取り上げてくれているので、当初の想定を超えた効果を得られています。

※プレスリリース:新年度に向けて、職場の電話対応の実情を調査 社会人の6割以上が会社宛ての電話に、“不要な電話/ストレスを感じる”と回答 「fondesk」が年齢や肩書によって電話対応を押しつけられる状態を「TELハラ(テルハラ)」と命名

電話対応の「当たり前」を変えるために

— これからもマーケティングを軸に多くの企業にfondeskを提供し、どのように電話対応の「当たり前」を変えていくのか、非常に楽しみです。
そうですね。「fondesk」は2024年7月末時点で有料契約件数が5,000件を突破していて、順調に成長してきています。ゆくゆくは10,000件突破を目指しています。
世の中では会社にかかってくる電話は「自社で取るのが当たり前」という文化がまだまだ強いので、「電話代行という手段があるんだよ」という事を知ってもらうための取り組みに注力していきたいと考えています。

また、「fondesk」の電話代行は「人」が電話に出るという良さもあるんですが、他のソリューションを求めている方も中にはいらっしゃいます。
「オフィスの電話周りでこういうストレスがあるので解消してほしい」みたいなものがあれば、そういうニーズにも向き合い、そこに対するプロダクトなども開発していく予定です。

今の「fondesk」の形はあまり変わらないかもしれませんが、「fondesk〇〇」のような姉妹プロダクトをどんどん増やしていって、最終的には多くの会社に「fondesk」のペリカンマークがついたサービスが導入されている状態が作れれば良いなと思っています。
「fondesk」のリリースから5年がたちましたが、今後もサービスを拡大し、電話対応における「当たり前」を変えられるように頑張っていきます!

— ありがとうございました!

さいごに

4年くらい前からfondeskさんのことはSNSやWeb上でたくさん目にしていて、自社の事業のマーケティングでも参考にさせてもらっていました。インタビューでも聞かせていただいたMeta広告の配信やnoteの運用は特に参考にしていました。
そんなfondeskのサービスリリースから現在に至るまでの考え方、マーケティング手法はマーケティングで悩む担当者の参考になったのではないかと思っています。

特に「マーケティングは仮説検証。施策実行と改善の繰り返しで精度を高める」という考え方はどの企業でも大切な考え方だと感じています。

マーケティング施策が多くある中、“実施して終わり”ではなく、効果を高めるための改善を前提に取り組む必要がありますし、これを続けることで自社にフィットするチャネルを発見することができると思います。


この記事を書いた人

湯淺春樹
湯淺春樹 | 株式会社Cone 取締役COO

動画制作を起点としたWebマーケティング支援を行う制作会社に入社後、WebCMなどの動画プロデュースや広告運用を経験。その後、テーマパーク事業を運営する会社へ入社。物販の販売管理等を経験しながら個人事業主として資料作成代行を開始。2021年に取締役COOとして株式会社Coneに入社後、資料作成代行サービス「c-slide」を立ち上げ、リリース3年で850社以上の資料作成を支援。現在はBPOサービス比較サイト「b-pos」の事業拡大に従事。
X(旧Twitter)アカウント:https://x.com/yuabin_cone

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