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「コンテンツマーケティング」はよく耳にすると思いますが、「コンテンツセールス」とはあまり馴染みがない言葉ではないでしょうか。
それもそのはずで、コンテンツセールスとは本記事の著者が運営する株式会社Coneが提唱する営業手法です。弊社はBtoBコンテンツ制作支援を展開する企業であり、資料コンテンツの活用提案を通して、企業の営業活動の標準化を支援しています。
その支援実績・経験をもとに「資料を変えればみんなが売れる」ようにできる仕組み・ノウハウを見出すことができてきたため、それをコンテンツセールスと呼ぶことにしています。
そこで本記事では、そのコンテンツセールスとは何なのか、どのように実践するのか、事例も含めて紹介していきます。
コンテンツセールスとは、架電などの「人」の力ではなく「コンテンツ(資料など)」を用いてコミュニケーションを行う営業活動のこと。属人的な営業活動から脱却し、チーム全員が同じように成果が出せるようになる営業手法です。
商談で営業資料を使って自社サービスを説明する、のもコンテンツセールスの1つですが、考え方としてこれまで人が直接介在して営業していた部分をコンテンツに置き換えるイメージです。
人による営業 | コンテンツセールス |
---|---|
展示会獲得リードに商談打診する | 「業界別導入事例集」を送付する |
架電で検討状況を伺う | 「検討用資料」を送付する |
契約終了時に次の更新について提案する | 「成果レポート資料」「更新提案資料」を送付する |
というように、資料などのコンテンツが中心となってコミュニケーションを行うのがコンテンツセールスです。
資料以外にも、記事・動画も活用できるコンテンツですが、かんたんに編集できる資料が取り組みやすいので、最初は資料を用意・改善することから始めるのがおすすめです。
コンテンツマーケティングとは、
読者にとって価値あるコンテンツの制作・発信をとおして見込み顧客のニーズを育成、購買を経て、最終的にはファンとして定着させることを目指す一連のマーケティング手法
「読者」にとって価値あるコンテンツの制作・発信。「読者」とは、自社の潜在顧客のこと。潜在顧客のニーズを顕在化して顧客にするための一連の活動。
コンテンツセールスをコンテンツマーケティングの説明文を流用して説明すると、
顕在層/リードにとって価値あるコンテンツの制作・提供をとおして見込み顧客のニーズを育成、購買を経て、最終的にはファンとして定着させることをめざす一連の営業手法
つまり、見込み顧客にとって価値のあるコンテンツを制作し、メールや架電で届けて、顧客化すること。
1対Nの潜在層向けのコミュニケーションなのか、1対1の顕在層向けのコミュニケーションなのかという認識が分かりやすいですね。
昨今DX化が進み、オンライン商談やWebでの情報収集が当たり前になってきています。Web上で必要な情報にアクセスしやすくなった結果、比較検討を行う企業の導入担当者は、売り手からの情報収集(打ち合わせなど)までに、購買行動の60%以上を終わらせてから企業に問い合わせるといわれています。
つまり売り手の主観での説明で判断したくなく、「営業されたくない」「自分たちで決めたい」ということ。そのため「営業する」のではなく「コンテンツによる情報の提供」が効果的になってきます。
とはいえ、まだイメージが湧いていない人もいるかもしれません。そこでコンテンツセールスという概念を理解しやすいように例を出して説明していきます。
例えば、以下の営業スタイルを取っている企業も少なくないのではないでしょうか。
資料請求 | 資料Aを送付 |
商談 | 資料Aを投影しながらトーク |
商談後 | 資料Aを送付 |
しかし、実際のBtoBセールスの現場では、資料Aを使い回すだけでは成果が出にくいことなど、皆さんご存じ通りです。プロセスごとに別の資料を用意する必要があります。
営業プロセスごとの見込み顧客の感情経路は以下のようになっていることが多いです。
資料請求 | ・このサービス/会社をもう少し詳しく知りたい ・料金/サービスの特徴などをもう少し詳しく知りたい → サービスの特徴や料金を紹介しているダウンロードして読む用の資料 |
商談 | ・なるほど、自社が活用するにはどんな形が良いかを知りたい ・実際はどれくらいの費用がかかって、どれくらいで回収できるのか? ・自社に近い状況から成果を上げた事例はありそうなのか? → 類似事例やコストシミュレーションなどの実際に導入イメージを説明する資料 |
商談後 | ・上司に相談してみよう ・他の競合他社/サービスはどんな感じなんだろうか → 社内で検討するために、商談で話したことや競合他社の情報が載っている資料 |
営業プロセスの各段階で、顧客が知りたいことをコンテンツ化し、適切に送付することで、商談化・受注を目指します。
コンテンツセールスに取り組むことで得られるメリットを2つ紹介します。
コンテンツによる情報提供は「人の能力に左右されない」のが特徴の1つ。
一般的に、初回商談で自社サービスの紹介をしたあとに、インサイドセールスが架電やメールで「現在の検討状況はいかがでしょうか?」などの後追いをすると思います。
しかし、その追いかけ方法がバラバラだったり、トークやテンションが担当ごとに異なるために成果が左右されることも。追いかけ業務を標準化して、だれでも同じように成果が出せるようにするには「全員が同じヒアリング・トークができるように」ならなければなりませんが、教育コストやリソースを要してしまいます。
そこで、追いかけ業務を、見込み顧客が「知りたい情報別に資料コンテンツを作成し、知りたいタイミングで送付する」ことで成果を標準化することができます。最適な情報を統一されたフォーマットで伝えることができるため、人による成果のブレや追いかけ漏れを防ぐことができます。
コンテンツマーケティングが難しいのは、潜在顧客のニーズの解像度が低いからです。当たり前ですが、顕在層よりも潜在層が感じている課題感のほうがとらえるのが難しくなります。
一方でコンテンツセールスは、普段、見込み顧客と接している営業が、顧客の知りたいことを把握して「資料にして送る」だけ、なので顧客ニーズを把握しやすいのが特徴。
例えば、
・検討に必要な情報はなにか?
・競合比較しているなら「なに」で比較しているのか?
・類似企業の事例はあるのか?
など、顧客が知りたがっていることを掴むのは比較的カンタンです。
コンテンツマーケティングは、見えない多数の潜在層のニーズを想像しないといけない。のに対して、コンテンツセールスは、目の前の一人の顕在層のニーズを聞けばいい。
この1対Nの想像ではなく、1対1の対話によって生み出されたコンテンツ(資料)を、他の同じような状況の見込み顧客にメールで送付 or 架電して送付すれば、商談が獲得できる可能性があります。
そうして、評価の高い・成果につながった資料コンテンツをホワイトペーパー化することで1対1のために作った資料が1対Nのホワイトペーパーになり、「みんなが知りたいこと」をコンテンツにしたコンテンツマーケティングに展開することもできます。
では、どんなコンテンツを用意すれば良いのか。今回は「受注」を目的としたセールスコンテンツを5つ紹介します。
サービスサイトやLPからダウンロードされる「読む用」の資料です。マーケティング部が活用することが多いものになります。どの企業もこのサービス紹介資料は用意している場合が多く、すぐにイメージができると思います。
特定の見込み顧客と、類似の状況・課題・企業規模の支援事例を1つにまとめて事例集にした資料です。獲得したリードを商談化するために、ただ架電するのではなく、メールでこの事例集を送付し、商談打診を行うためのものになります。
こちらは説明不要かもしれませんが、商談で活用する資料のことです。初回商談で使う資料、二次提案で使う資料、どちらも営業資料となります。ただし、初回商談で使う営業資料は、どの顧客でも対応できる1対N用の汎用的なものを作成するのに対し、二次提案で使う営業資料は、初回商談でヒアリングした内容をもとに提案を作り込み、資料に反映させる必要があります。
社内検討用資料とは、商談後に見込み顧客に送付する用に、営業資料とは別で作成する資料のことです。(「適切なプロセスで適切なコンテンツを提供する」部分で説明したものです)「検討する際にこの項目を比較した方が良いですよ」だったり「競合サービスとの一覧比較表」だったり、見込み顧客の代わりに検討に必要な情報を整理して送付します。
商談で顧客が発していた悩みや検討を次のステップに進める上での懸念材料を解決する内容を記載したお役立ち資料(ホワイトペーパー)のようなコンテンツです。これは、確度がまだ低いものの、獲得したい案件の担当者に送付する資料になります。「もう一度商談を打診する」のではなく「前回の商談での悩みを払拭するコンテンツを送付する」ことで検討ステップを前に進めることができます。
具体的なセールスコンテンツの種類を紹介しましたが、今後取り組みたいと考える皆さまのために「取り組む順序」を紹介します。
まずは自社の営業プロセスを可視化していきます。整理したプロセスごとに自社課題を洗い出します。また、プロセスごとに活用している資料を整理します。
プロセスごとの課題が整理できたら、新しくコンテンツをつくる前に、課題に応じて現行資料の改善を行います。
ポイントは、受注・売上に近いところから改善を進めること。上の図の場合は商談プロセスの「営業資料」の改善から着手します。
営業資料の「作り方」と「改善」についての詳細は今回省略しますので、以下記事をご参照ください。
→ 営業資料の作り方と必須4ページ。構成やデザインも解説(テンプレート付)
→セールスイネーブルメントとは?資料を用いた実践方法を7つのステップで解説
現行資料の改善が実施できたら「人」が実施している営業活動を特定します。その営業プロセスに最適なコンテンツを洗い出します。
その際、見込み顧客や既存クライアントに「なにが知りたいですか?」と聞いてみると、どんなコンテンツを用意すれば良いのかのヒントが得られるため、できれば下記のようなヒアリングを行いましょう。
などが分かれば、それを資料に落としこんでいきます。
最後に、資料を改善・制作する前とした後で「KPI」に変動はあったかどうかを見ていきます。また、抱えていた課題は解決されたかどうかも確認します。
改善されていなければ、コンテンツの調整を繰り返し行い、営業活動を再三再四コンテンツ面で最適化していきます。
これが人のトークだと感覚での改善となるため、改善自体がブラックボックス化してしまいますが、コンテンツであれば改善・変更が記録できるため、運用がしやすいのもコンテンツセールスの特徴のひとつとなっています。
コンテンツセールスの成功事例を2つ紹介します。
THE MODELなどの分業体制を敷いている企業では、インサイドセールスとフィールドセールスで追いかけるKPIが異なります。DORIRU社は各プロセスごとに最適な資料を作成し、適切に活用することで各KPIの向上を図っています。
まずは受注率を向上させるために営業トークに特化した営業資料を制作。次にカスタマーサクセスチームが活用する、解約率を低下させるためのキックオフ資料を作成。また、商談後の比較検討の勝率を上げるために、営業資料とは別に社内検討用資料を制作。最後に、商談トス数を増加させるために、インサイドセールスが送付するための業界・業種ごとのページを制作。
「インサイドセールス」「フィールドセールス」「カスタマーサクセス」がそれぞれ活用する資料を統一化し、同一の方法で営業活動を展開することで各セールスKPIの向上を図っています。
詳細⇒プロセスに応じた資料コンテンツの整備による各セールスKPI向上
トップ営業の商談の流れを営業資料に反映して、だれでもトップ営業と同じ流れで商談を進めていけるように資料を改善。また、切り口を増やすためのフック資料を作成。サービス特性上、さまざまな業界の企業に提案することが多く、業界ごとに業務内容は異なるので、営業の切り口も変わってきます。そこで業界ごとの課題に沿った営業資料を作成し、商談時・インサイドセールスの送付用として活用。
商談時は、土台となる営業資料に顧客に応じてフック資料を差し替えることで、その場の営業トークではなく、どの見込み顧客セグメントでもだれでも同じように話せるような資料へと改善しています。
詳細⇒資料を用いた営業ノウハウの体系化で、スキルの脱属人化と教育コストの削減に繋がりました。
今回は、営業活動を「人」から「コンテンツ」に置き換える、コンテンツセールスという営業手法について解説しました。
コンテンツセールスは、コンテンツを「つくる」前に設計が非常に重要になります。どのタイミングでどんなコンテンツでコミュニケーションをとっていくのか、まずは整理から始めましょう。
※本記事は、「コンテンツセールスとは?取り組むべき理由と事例、始め方まで|Cone-osナレッジ」をBeMARKE読者向けに内容を一部編集したものです。
現在、BtoBマーケター・セールス担当者向けに、ノウハウやナレッジを披露していただける専門家の方を募集しています。
【募集要項】
■対象:BeMARKE読者に気づきや学び、課題解決に役立つ情報提供が可能な方。
■条件:月1回以上の執筆が可能であること。
■費用:記事掲載料請求はありません。無料での掲載が可能です。
■注意事項:自社サービスのプロモーションを主目的とした内容は掲載できかねます。
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