Tips
「営業資料を作ってみたけど、なかなか成果が上がらない……」「メンバーに活用してもらえず、営業資料が作りっぱなしになっている……」
このような課題を抱える経営者、営業マネージャーは多いのではないでしょうか。
筆者が所属する株式会社Coneの資料作成代行サービス「c-slide」は、オウンドメディアや広告運用を通して毎月100件程度の問い合わせをいただきますが、受注する案件はすべてインバウンド経由です。
特筆すべきは、営業資料を用いた商談を実施してから受注率が50%を超え続けている点です。今回は受注率を向上させ、どの営業メンバーでも売れる状態を生み出すインバウンド特化の営業資料の作り方と活用方法について解説していきます。
営業メンバーのマネジメント方法を含めたセールスイネーブルメントについては以下の記事で紹介しているので、興味ある方はぜひご覧ください。
営業資料を作成しても、成果につながらなければ意味がありません。はじめに、営業資料の活用を通して受注率を高める3つのポイントについて解説します。
営業資料作成の推進者が完璧だと思う資料を作成しても、現場で活用されなければ何の意味もありません。また、見込み顧客と一番近い距離にいるのは現場の営業メンバーであり、マネジメント層よりも解像度高く顧客のニーズなどを理解している可能性も十分あります。
そのため、営業資料作成の際は、現場の営業メンバーの感覚や意見を第一優先にするようにしましょう。資料は作って終わり、ではありません。一番活用するメンバーの声を聞き、資料の改善に役立てる必要があります。
c-slideでも、営業メンバーのヒアリングを定期的に行い、約2年で10回程度の改善を行っています
アウトバウンド営業では、ニーズが顕在化していない状態で商談を行うため、ニーズを引き出すためのトークが必要となりますが、インバウンド営業ではニーズが顕在化している状態で行う商談がほとんどです。
インバウンド経由で獲得する見込み顧客は、顕在化しているニーズ・課題に対しての解決策を模索しているため、「どうやって課題を解決し、どんな効果を得ることができるのか」を明確に伝えられるかが受注率を高めるポイントとなります。
そのため、インバウンド特化の営業資料では“ヒアリング部分に厚みを持たせる”ようにしましょう。ヒアリングの質によって提案の質が左右されるため、資料に沿ってヒアリングをするだけで解決策を提示できる状態を目指すことが大切です(詳細後述)。
ちなみに、約100ページあるc-slideの営業資料のうち20ページ近くがヒアリングについての内容で占められています。
見込み顧客の導入意欲を高めるためには、導入事例を見せ「自社と同じ課題を抱える企業はこんな効果を得られたんだ!」と思ってもらう、解決イメージの解像度を上げることが重要です。
また、すべての企業にそのまま当てはまる課題解決は存在しないため、ヒアリング内容をもとに見込み顧客に訴求しやすい事例を選択して提案することが必要です。
事例の提案の幅を広げるために、導入事例ページは常に追加し続けるようにしましょう。c-slideの営業資料も事例を追加し続けており、現在約60ページまで増えています。
受注率を高めるポイントを踏まえて、営業資料の作成方法について解説していきます。
営業資料作成のポイントは、成果を出しているメンバーのトークフローを資料に落とし込むことです。見込み顧客と一番距離が近いのは現場の営業メンバーであり、その中で成果を出せているメンバーのトークをカンペ的に資料に落とし込むことでトーク内容の統一化を図ることができます。
営業資料の作成は以下の順番で取り組みましょう。
ロープレだけでは把握できないトークなどもあるため、実際の商談に同席します。資料を活用せずに商談をしている場合はトークの流れに着目し、既存の営業資料を活用している場合は「よく使うページ」や「使っていないページ」に着目するようにしましょう。
また、商談終了時に「なぜこの話し方をしたか?」や「どんな狙いで商談を行ったか」などの背景・意図を確認してください。
これらの情報はステップ3.の「構成に落とし込む」工程で非常に重要なポイントとなります。
商談に同席後、実際のトークフローの文字起こしを行います。
商談の最中は先述のポイントに着目する必要があるため、メモ程度で構いません。オンラインで商談をしている場合は録画、オフラインの場合は録音を行い、商談実施後に文字に起こしましょう。
構成に落とし込むことを考える必要はなく、営業トークの流れを意識して作成しましょう。
構成の作成は一番重要な工程です。以下を参考にまずは構成の骨子を作成し、各ブロックのページの順番や各ページに入れ込む情報は文字起こししたトークフローを参考に挿入して構成に落とし込みましょう。
先述の通り、インバウンドではヒアリングが受注率を高めるポイントとなります。顕在化しているニーズに対してクリティカルなソリューション提案を行うためには、依頼背景や現状の課題感の詳細をヒアリングする必要があります。
c-slideでは以下のページを活用し、依頼背景のヒアリングと案件に対するヒアリングを行っています
また、商談相手に言質を取るためにもヒアリング内容をその場で記載することができるデザインにしています。
このヒアリング内容をもとに最適なプランの提案(=ソリューションの提案)を行います。
なお、c-slide(資料作成代行サービス)はサービス内容がシンプルなため、「効果的な資料に仕上げてくれる」と理解してお問い合わせをする見込み顧客がほとんどです。そのため、サービスについての説明は行わず、ヒアリングの後にプランの紹介を行っています。
骨子が完成すれば、各ブロックにどんなページをいれるか、各ページにどんな情報をいれるかを記載し、構成案を作成しましょう。全体の流れを頭に入れながら作成できるよう、構成案はパワーポイントではなく、WordやNotionを用いて作成することをおすすめします。
c-slideのインバウンド用営業資料の構成案
構成案が完成したら、パワーポイントに起こして資料の形にしていきます。
サービスサイトに掲載するダウンロード資料などの場合は、資料が独り歩きしても内容が伝わるようにリード文や詳細情報の挿入が必要となりますが、営業資料は口頭ベースでの活用となるため、すべての情報を網羅する必要はありません。
このように情報を図解するだけのページで構いません。あえて情報を減らすことで、対話ベースでページを進めることができ、先方が退屈に感じる一方的な説明になることを防げます。
資料のデザインに困ったら以下記事を参考に作成してみてください。営業資料で必要になるページの参考デザインを見つけることができます。
パワーポイントのデザインパターン集。資料作成時に使える39のアイデア | シースラ!!
インバウンド特化の営業資料をどう活用すれば良いのか。商談中と商談後に分けて解説します。
商談ではヒアリングが重要ポイントとなり、お問い合わせの背景や抱えている課題感、検討状況などに認識の齟齬がある場合、クリティカルなソリューションの提案ができなくなってしまいます。
また、ヒアリングでは深掘りのスキルが必要となるため、項目を用意するだけではメンバーによっては深いヒアリングができない可能性があります。そのため、ヒアリング内容はその場で記入するようにしましょう
何かを覚えるためには紙に書くことが効果的と言われるように、ヒアリングした後にその場で記入を行うことで、一度自分の頭の中で理解してからアウトプットを行うため、不明点が明確になりヒアリングの深掘りにつながりやすくなります。
認識の齟齬が生まれている場合は商談相手も視覚的に認識することができ、補足説明や訂正を行ってくれる可能性が高まります。
商談のほとんどはその場での受注・契約ではなく、社内のメンバーへの共有や稟議が必要となります。この社内共有や稟議を行う際、商談と同じ内容を伝えることができる方はほとんどいません。
伝言ゲームのようにサービスの内容や提案内容が決裁権者にうまく伝わらず受注できないということ自体はBtoB営業ではよくあることです。この現象をできるだけ減らし、受注率の底上げにつなげることができるのが社内検討用資料です。
社内検討用資料は新規で作成する必要はなく、サービス紹介資料と営業資料からのページ抜粋で作成することができます。
サービスの概要やサービスの説明はサービス紹介資料から抜粋して作成します。ヒアリング内容の整理では商談中に記載したヒアリング内容をコピーし、社内検討用資料にペーストするだけで完成します。
プランの提案や今後のフローは営業資料から抜粋し、事例紹介はあらかじめさまざまな事例ページを挿入しておき、商談中に提案した事例のみを残して他事例を削除するだけで完成です。
商談後5分で商談相手にカスタマイズした社内検討用資料を作成することができる上に、先方社内のメンバーへの共有や稟議の際の伝言ゲーム現象が起こりにくくなります。
営業資料を作成・運用しただけで受注率が格段に上がることはありません。先述の通り、実際に運用している営業メンバーの声に耳を傾けて改善することが重要であり、自社の営業スタイルに合わせてカスタマイズすることで徐々に受注率が向上・安定してきます。
営業資料を作成した直後は1〜2カ月に1回、受注率が安定してきたら3〜4カ月に1回のペースで以下のポイントを押さえて改善を行いましょう。
資料を作成しても、営業メンバーが効果を感じることができていなければ意味がありません。運用している実際の様子を把握するために商談に同席したり、「使いやすい部分はどこか?」「使いづらい部分はどこか?」を定期的にヒアリングしたりするようにしましょう。
c-slideの初期段階では「依頼背景などのヒアリングはしやすくなったが、依頼資料のヒアリングをどうすればいいのかわからない」という声から詳細ヒアリング項目の追加改善を行いました。
すべての資料ジャンルに合わせてヒアリング項目を用意することはできないため、相談をもらう回数が多い8つの資料ジャンルごとに詳細ヒアリングページを作成しました。
受注率が安定してきた段階では「LTVを上げるための提案をしたいが、どうすればいいのかわからない」という声が営業メンバーから上がったため、資料の活用事例ページの追加改善を行いました。
このような改善を繰り返すことで、営業メンバーが使いやすくかつ見込み顧客に刺さりやすい内容にカスタマイズでき、受注率が20%→30%→40%→50%と向上していきました。
冒頭でも解説した通り、受注率を高めるためには導入事例の拡充が必要になります。見込み顧客の抱える課題や業種、サービスなどに近しい導入事例を紹介することで導入効果のイメージを抱いてもらいやすくなり、受注につながりやすくなります。
また、誰もが知っている大手企業や特定の業界のトップ企業などの事例を見せることでサービスに対する信頼感の醸成を行うこともできます。
c-slideの場合、納品物と活用支援の2つの軸で約50種の事例を用意しています。
最初から数十個の事例を用意することは難しいため、以下の優先順位で事例を拡充させていきました。
1〜3までは支援内容や社内での知名度から企業を選定することが可能ですが、4の特定業界のトップ企業は業界が違う人間であれば判断がつきません。そのため「企業名を検索し、他サービスサイトで導入事例として載っているか」を判断基準とし、事例の拡充を行っています。
事例の拡充はマーケティング側のメンバーともコミュニケーションを取り、常に追加し続けることを意識しましょう。
営業資料の作成方法やテンプレートなどは世の中にたくさん情報がありますが、作るだけでは成果を上げることはできません。運用方法を工夫し、営業メンバーに耳を傾けた改善を行うことでメンバーの利用促進と成果向上を実現できます。
c-slideも最初から完璧な営業資料を使っていたわけでも、最初から受注率が50%を超えていたわけでもありません。定期的なヒアリングからの改善を繰り返した結果、100ページを超える資料となり、受注率の向上にもつながっています。
本記事を参考に営業資料の作成・運用・改善を行い、少しでも皆さんの事業の成長にお役に立てれればとてもうれしく思います。
※本記事は、「全101ページにおよぶ、c-slideのインバウンド特化型営業資料を徹底解説 | ConeTent(コーンテント)」をBeMARKE読者向けに内容を一部編集したものです。
現在、BtoBマーケター・セールス担当者向けに、ノウハウやナレッジを披露していただける専門家の方を募集しています。
【募集要項】
■対象:BeMARKE読者に気づきや学び、課題解決に役立つ情報提供が可能な方。
■条件:月1回以上の執筆が可能であること。
■費用:記事掲載料請求はありません。無料での掲載が可能です。
■注意事項:自社サービスのプロモーションを主目的とした内容は掲載できかねます。
【申込み・お問い合わせフォーム】https://be-marke.jp/contact