基本ノウハウ
Webマーケティングに取り組む企業が増え、実行のためのマーケティング組織を立ち上げる企業も増加傾向にあります。しかし「営業組織とは別に設置する必要性とは何か」「立ち上げるとしたら、何から始めれば良いのか」といった疑問を持つ方もいるでしょう。
本記事ではマーケティング組織とは何か、役割や基本的な業務内容などを解説します。ケース別の組織図や立ち上げ方のほか、よくある課題と解決策もあわせて紹介しています。ぜひ参考にしてください。
まずはマーケティング組織とは何か、以下の3つを解説します。
そもそもBtoBマーケティングとは何をする活動なのか、基礎知識を振り返りたい方はこちらの記事もあわせてチェックしてみてください。
関連記事:「BtoBマーケティングって何するの?注目される背景や基本の流れを解説」
マーケティング組織の役割は「製品・サービスを売り上げるための仕組みを作ること」です。その内容は各企業のマーケティングの定義や、どのような業界・業種なのかによっても異なります。
重要なのは、いずれのマーケティング組織も顧客への深い理解が重要な業務である点です。マーケティング組織は、自社にとっての顧客を定義し、顧客のニーズを知り、顧客に接触できる方法を探し、顧客の態度変容を促すための施策を実行します。また、顧客への理解に基づいた施策を、営業やカスタマーサクセスなど部門を横断して共有し、全社的に「売り上げるための仕組みづくり」を実現するのです。
特にBtoB企業におけるマーケティング組織は、リード(見込み顧客)の情報を収集し、リードの自社製品への興味・関心を育成し、受注の可能性が高いリードを絞り込んで営業に渡す「デマンドジェネレーション」の実行役として働くケースが多くあります。デマンドジェネレーションによって営業組織の生産性を向上させ、会社全体の売上を拡大するための仕組みづくりを行うのです。
関連記事:「デマンドジェネレーションとは?リードジェネレーションをはじめとする3つの要素を解説」
マーケティング組織の業務は、主にマーケティング戦略の立案と実行、その他の推進のための活動に分けられます。マーケティング組織に必要な人員やスキルは戦略によって異なり、その方向性は企業の業界や規模などによって変わってきます。
主な業務は、下表のとおりです。
分類 | 業務内容の例 |
---|---|
マーケティング戦略の立案 | ・顧客や市場の分析 ・ターゲットの抽出 ・施策の選定 |
マーケティング戦略の実行 | ・コンテンツ制作 ・プロモーション施策 ・顧客関係管理 ・効果測定と改善 |
マーケティング戦略の推進 | ・部門間の調整 ・体制の整備 ・予算やリソースの調達 ・社内浸透のための活動 |
なお、マーケティング戦略を実行する際は、具体的なアクションをまとめた計画も必要です。マーケティング計画の立て方やテンプレートを知りたい方は、こちらの記事もあわせてチェックしてみてください。
関連記事:「【テンプレート付き】マーケティング計画とは?戦略との違いから具体的な立て方まで解説」
マーケティング組織の参画メンバーは、下表のとおりです。
参画メンバーの例 | 担当業務 |
---|---|
マーケティングマネージャー | マーケティング組織の責任者 |
マーケター | マーケティング戦略の立案、コンテンツ制作の計画など |
ディレクター | コンテンツ制作の進行管理 |
ライター | コンテンツ制作のライティング業務 |
デザイナー | コンテンツ制作のデザイン業務 |
コーダー | コンテンツ制作のコーディング業務 |
アナリスト | 各データの収集・解析業務 |
広報 | PR業務 |
ただし最初からこうしたメンバーをそろえられる例は少なく、初期はマーケティングマネージャーがマーケターとアナリストと広報を兼ねているなど複数の役割を1人で担っているケースが多くあります。実施するマーケティング戦略の規模や内容によっても必要な職種は変わるため、マーケティング戦略から参画メンバーを考えていきましょう。
社内のリソースや保有ノウハウによっては、自社だけではなく下記に挙げる社外の組織・人員へ外部委託するケースもあります。
委託先は、実績や料金などさまざまな観点で比較しながら慎重に選定することが大切です。マーケティングを支援する会社の種類や選定方法について知りたい方は、こちらの記事もぜひ参考にしてみてください。
関連記事:「マーケティング支援会社とは?種類と選び方、依頼の際の注意点まで解説」
マーケティング組織の立ち上げが重要な理由は、以下の3つです。
マーケティング組織の立ち上げは、購買プロセスの変化に対応する上で必要です。
従来は営業担当者1人が購買プロセスの全フェーズに対応し、飛び込みや電話のアポ獲得で商談を取っていました。しかしインターネットの発達により、現代は顧客が自ら情報収集し、営業の接触前に意思決定が行われるケースも増えています。
つまり意思決定がされる前に見込み顧客に接触し、関係を築く活動と人員が必要です。とはいえ営業が個別に対応できる範囲には限界があります。売上拡大に向けて営業担当者が受注活動に専念する上で、マーケティング専門の組織を別途立ち上げる必要性が増しているのです。
マーケティング組織の立ち上げが重要な理由の1つは、成果向上を目指す上で全社的な取り組みが必要なためです。
マーケティングを成功させるためには活動を強力に進め、部門横断的な連携を促す必要があります。例えばマーケティング戦略には顧客理解が重要であり、顧客理解を深める上では顧客を直接知っている営業部門などの協力が欠かせません。しかしマーケティングは従来のやり方を転換するため、昔からのやり方に慣れた他部署からは反発されるケースが多くあります。全社的なマーケティング体制を構築するためには、マーケティングを強く推進するマーケティング組織を作り、他部署と合意形成する取り組みが大切です。
合意形成が不十分でアプローチの整合性が取れないままでは、顧客に一貫した訴求を行えず、マーケティングで大きな成果を上げるのは難しくなるでしょう。最終的な事業目標を共有し、組織同士の連携を密に取ることでマーケティングは初めて成功するといえます。
デジタルマーケティングに精通した人員の獲得や育成のためには、マーケティング組織の立ち上げが重要です。
近年はWebやITツールを活用したデジタルマーケティングが台頭し、専門知識とスキルを持つ人材や効果測定を継続的に行う人員が求められています。市場の変化や競争の激化に迅速に対応するためにも、社内に専門性が高い人員を確保しなければなりません。
マーケティング組織の立ち上げによってデータの収集やノウハウの体系化が進めば、デジタルマーケティングの実践機会も多く得られ、人員育成を効率的に行えます。
デジタルマーケティングの基礎知識を振り返りたい方は、こちらの記事もあわせてチェックしてみてください。
関連記事:「BtoBにおけるデジタルマーケティングとは?5分でメリットまで解説【BtoBマーケ手法23選を無料ダウンロード】」
ここではマーケティング組織がどのように設置されるか、ケース別に見ていきましょう。
マーケティングや経営といった特定の事業部内や、他事業部と並列する形で単独の推進チームを設置するケースです。全社的なマーケティングを統括するリーダーとして、各事業部を支援する形となります。
推進するポジションが明確であるため事業を進めやすい一方で、マーケティング組織が単独で設置されているため、支援される側の事業部は他人事になりかねません。他の事業部から積極的な協力を得にくい、依頼に対して活発な意見交換が難しいといった点はデメリットになるでしょう。
特定のプロジェクトに関してマーケティングを進めるために部門横断でマーケティング組織を設置するケースです。
参画メンバーは各事業部から選出されるため、各事業に関しての専門的な知識を有しており、部門間連携が行いやすくなっています。ただし、本来属する事業部の業務と兼務する場合もあり、マーケティング業務にあまり時間を割けないケースも少なくありません。
経営陣直轄の位置に、独立したマーケティング組織を設置するケースです。社長や役員がリーダーとなって中核となるプロモーションを実行し、細やかな施策の運用や分析は各部門にゆだねる形となります。
決定権を持つ人員がリーダーとなるため、予算などの検討事項が決まりやすく、プロジェクトの進行がスムーズです。ただし経営陣にマーケティングの知見がない場合、自社に適した戦略を立案できないデメリットも生じやすいでしょう。
「事業部を横断して設置するケース」と似ているものの、各部署の連携が薄いケースです。
事業部ごとにマーケティング組織が設置されるため、おのおのの目的遂行に向けて動きやすい点は大きなメリットです。一方で各事業部の機能が重複するにもかかわらず連携が取れないために、全社的な効率は上がりにくい傾向にあります。その分費用対効果が低下しやすい点は、本ケースのデメリットといえるでしょう。
マーケティング業務の実行を、外部に委託するケースです。
一口にアウトソーシングと言っても、以下のようにさまざまな形があります。
一般的には戦略の立案など土台となる部分は自社で進め、各コンテンツの制作など社内では対応できない業務をアウトソースします。いずれにおいても委託先には専門の知識やノウハウがあり、効果を上げやすい点がメリットです。
橋渡し役となる人員の確保や体制の整備を進めると、委託先と各部門がスムーズに連携できるでしょう。
マーケティング組織の立ち上げで最初にやるべきことは、以下の2つです。
マーケティング組織の立ち上げ前に、全体戦略を明確にしましょう。戦略が不明瞭なままだと、以下の判断が難しくなります。
どのような戦略を取るのかによって、マーケティング業務全般に精通した人員と、特定の手法やトレンドに詳しい人員、どちらが必要かは変わってきます。人やモノといった経営資源の不足を理由に実行が先送りにならないように注意しましょう。
機会損失を避けるためにも、マーケティング組織づくりの前に戦略を策定しましょう。
マーケティング組織の立ち上げ前には役割を言語化し、部署内外に共有する工程も必要です。「マーケティングをします」だけでは具体性に欠け、目標やゴールがイメージできません。すると部署間の連携がうまくできず、戦略の実行がとどこおる可能性も高まります。
マーケティングとは具体的に何をどうすることなのか、マーケティング組織は何を目指すのかといった認識や方向性を事前にすり合わせましょう。
マーケティング組織の立ち上げ時には、以下のような課題が起こりがちです。
マーケティング組織の立ち上げ時には、専門的な人材を確保しにくい傾向にあります。そもそもマーケターは少なく、優秀な人材はさらに希少なためです。事業に対して理解があり、かつマーケティング経験の双方を持つ人物の採用はさらに難易度が高くなります。
そのため最初はアウトソースを活用し、人材の採用が決まったら内製化へ徐々に移行すると良いでしょう。優秀な人材を1〜2人確保できるだけで、マーケティング業務の効率と生産性は大幅に向上します。
将来的な成果向上を実現するためにも、内製化は後回しにせずアウトソースと並行して進めましょう。
マーケティング組織を立ち上げようとしても、他部署から理解を得られないというのも起こりがちな課題です。他部署から反発される、立ち上げ後も協力を得られず組織間で分断が起きるケースも少なくありません。解決策の例は、以下の4つです。
企業全体で顧客理解を深めつつ、得られた情報も共有し、マーケティングの必要性と成果を感じてもらうと良いでしょう。
営業とスムーズに連携できないのも、マーケティング組織の立ち上げ時に起こりうる課題です。マーケティング活動で営業に引き渡したリードが受注につながらず、成果が出ないケースも多くあります。
解決策としては、まず引き渡し条件や商談の定義などの明確化や共有が必要です。定義が明確化していない場合、営業にとってアプローチ開始の対象にならない見込み顧客を引き渡してしまう可能性があり、部署間の亀裂を大きくするためです。
また営業目標を理解し、マーケティング組織が貢献すべき数値は何かを抽出することも大切です。売上目標に合致したMQLを創出できれば、営業組織の信頼を勝ち取り、マーケティング施策への協力も得やすくなるでしょう。
マーケティング組織と営業組織の間で起こりがちな対立や改善方法について知りたい方は、こちらの記事もぜひ参考にしてみてください。
関連記事:「営業・マーケはなぜ対立する?売れる組織にする「型」とは|ワンマーケティング 垣内氏に聞く【前編】」
マーケティング組織は、購買プロセスが変化した現代において効率的にマーケティングを進めるために必要です。見込み顧客の獲得や育成を進め、営業担当者が商談に集中できる環境を作る役割があります。
組織図は企業によってさまざまですが、最も理想的なのは部署問わず連携を取れる形です。ただし社内のリソースやノウハウが不十分な場合は、外部へ業務の一部を委託するといった臨機応変な対応も必要になります。
マーケティングにこれから着手する企業や成果を高めたい企業は、マーケティング組織の立ち上げを検討しましょう。
文章での価値創出に関心があり、製造業から転身後、BeMARKE編集部でBtoBマーケティングを専門に年間およそ70本の記事執筆・編集を担当。「読者に分かりやすく品質の高い記事を届けること」をモットーに日々制作に励んでいる。