基本ノウハウ
GTM戦略は、新たに市場に参入しようとする企業にとって重要な戦略です。しかし、GTM戦略の意味や具体的な実施方法までは分からないという方も多いのではないでしょうか。
本記事では、新規事業を成功に導くGTM戦略の意味から構築・実行までを解説します。GTM戦略について学びたい方、実際に計画し実行したいと考えている方は参考にしてみてください。
GTM(Go to market)戦略とは、自社の製品・サービスを市場に投入する際に、顧客にどのように提供すべきかの流れをまとめた戦略です。日本語では「市場進出戦略」を意味します。
主に企業が新規製品をリリースする際や、新規市場に進出する際に策定します。マーケティング全体の行動計画を示す「マーケティング計画」の中の一部であるといえるでしょう。
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GTM戦略が必要とされる理由として、下記の2点が挙げられます。
新規事業を立ち上げたり、製品を新規市場に投入したりといった活動には、製品の開発やマーケティングに大きな費用がかかります。特に新規製品を新規市場で販売しようとすれば、経験のない市場であるため実際に投入してみないことにはユーザーの反応を読みづらく、コストを回収できないリスクも大きくなります。GTM戦略の立案は、適切なターゲットや市場の選択に寄与し、リスクの軽減につながるのです。
また、GTM戦略によって自社の強みを生かした適切なターゲットや市場の選択が行えれば、競争上の優位獲得が期待できます。ただし、市場環境は時流とともに急速に変化するため、過去の事例をそのまま流用できるとは限りません。事業を成功させるために、企業は自社や市場の状況に即した戦略をつど立てる必要があるのです。
GTM戦略を実践しようとするときどのように進めていくのか、手順について解説します。
「自社の製品・サービスを市場に投入する際に、顧客にどのように提供すべきか」を考えるGTM戦略では、まず「誰に提供するのか」、つまりターゲットを定義する必要があります。
ターゲットは以下の観点から検討します。
BtoBビジネスの場合、一社あたりの受注額は大きく、取引社数は少なくなる傾向にあります。顧客によって受注額に大きな差が出るため、自社の目標受注額を度外視したターゲティングでは事業が成り立ちません。自社製品を必要とする顧客で、かつ「業種・売上規模・企業サイズ」などの企業の属性面からもターゲットを絞り込みましょう。
これらの情報をSTP分析やペルソナ作成などを通して整理し、BtoBビジネスの場合はターゲットとなる企業像・購買関係者像を設定して社内に共有します。この段階でいかに顧客解像度を高められるか、その後の施策に反映できるかが重要です。
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ターゲット企業に所属する複数の購買関係者に対し、製品が課題解決に役立つことを端的に伝えるキーメッセージを、関係者別に具体化します。
BtoBビジネスでは、ターゲット企業の中でも現場の利用者、窓口となる社員、決裁権を持つ役職者など、複数人が購買の意思決定に関わるため個別の訴求が重要です。レイヤーの異なる購買関係者に、一律に同じ提案を行っても受注は期待できません。個々のニーズに基づいて作成したキーメッセージが社内で共有されていれば、その後のアプローチにおいてもチームで一貫した方針をとることができます。
バイヤージャーニーを作成し、ターゲットへの具体的なアプローチ方法を検討します。バイヤージャーニーとは、顧客が自社の課題に気づき、解決策として製品・サービスの購入に至るまでの流れを可視化したもので、カスタマージャーニーマップとほぼ同義です。
ターゲットに適切なタイミングで適切なコンテンツを提示し意思決定を促すため、ジャーニーの段階に応じてターゲットと接触するチャネルやコンテンツを決定します。
バイヤージャーニーの段階 | 段階別の意識 | 主なチャネル・コンテンツの例 |
---|---|---|
認知段階 | 問題を抱えていることを自覚する | Webサイト、SNS、Web広告、オウンドメディア |
検討段階 | 課題を特定し解決策を検討する | 記事、ウェビナー、ニュースレター、動画、FAQ |
決定段階 | 解決策を決定する | 見積もり・問い合わせ、導入事例、製品比較表、価格表 |
チャネルを決定する際には、「ターゲットの属性」と「自社製品の単価」を参考に検討しましょう。どのチャネルが最適かは、ターゲットの価値観や行動習慣などによって異なるためです。例えば多くの企業がWebマーケティングを有力な手法としている昨今でも、ターゲットがWebで情報収集を行わない業種であれば、アナログな業界紙やFAXDMなどのチャネルを選択した方が有効に働く場合もあります。
また、単価の低い製品の場合は、採算を考えると行える施策にどうしても限りがあります。市場に流通させるまでのコストも考え、価格設定は慎重に行う必要があるでしょう。
作成したジャーニーマップに基づき、ターゲットに製品をどのように販売するか、具体的な計画(販売戦略、グロースモデルなど)を策定し実行します。
営業計画を立てる上で基本となる販売戦略の例として、下記が挙げられます。製品をどのように販売するか、作成したジャーニーマップに対して最適と考えられるモデルを組み合わせましょう。その後、社内リソースをどう割り当てるか、施策の優先順位をどうするか、実行スケジュールなどを細かく決定していきます。
販売戦略のモデルタイプ | 内容 |
---|---|
セルフサービス | 顧客がみずから判断し、電子商取引で製品を購入するモデル。基本的にWeb上で完結する。マーケティングへの投資が必要。 |
インサイドセールス | インサイドセールスが見込み顧客に電話やメールを利用する非対面のアプローチを行い、購入を促すモデル。 |
フィールドセールス | フィールドセールスが見込み顧客を訪問するなど直接接触し、大きな受注獲得を目指すモデル。営業活動への投資が必要。 |
チャネル | パートナー企業・代理店が製品を販売するモデル。 |
また、BeMARKEでは製品・サービスのターゲットの規模やソリューション提案の数を軸にして、ビジネスモデルと、各ビジネスモデルに対応したマーケティング戦略を8パターンに分類しました。各パターンにおいてどのような施策が有効かを具体的に解説しているため、自社が当てはまる戦略パターンは何か確認してみてください。
関連記事:「取るべき施策が分かるBtoBマーケティング8パターンの戦略」
GTM戦略においては、営業計画を実行するだけではなく、営業そのものを強化して成果を高めるための取り組みも並行して実施します。再現性の高い営業体制を構築するために、成功体験を資料やプレイブックに落とし込み、「型化」を行うのです。反対に、うまくいかなかった場合であっても、その失注要因を分析して資料やプレイブックに反映します。
型化が進めば、新入社員の教育や、既存社員のスキルの底上げにも型を活用できるようになり、営業スキルの標準化につながります。また、SFA/CRMなどのツールを利用したナレッジ共有や可視化のしくみづくりを行うことで属人化を防ぎ、業務の効率化が可能です。
これらは、いわゆる「セールスイネーブルメント」の取り組みです。GTM戦略を成功させるためには、セールスイネーブルメントによって営業の強化を図り、持続的な営業成果の創出を目指す必要があります。
関連記事:「セールスイネーブルメントとは? 必要とされる理由や実施の手順を解説」
GTM戦略の達成度を評価する指標として、下記が挙げられます。GTM戦略の目標値を設定する際や、どれだけ成果が出ているのかを可視化したい場合に参考にしましょう。
指標の例 | 内容 |
---|---|
KGIに対するKPI | KGI:受注◯◯◯万円だったとき KPI:リード獲得数、商談獲得数、受注数など |
市場占有率(マーケットシェア) | 企業が特定の市場において持っているシェアを示す指標。 |
LTV(顧客生涯価値) | 顧客が生涯にわたり企業にもたらす利益を指す指標。 |
ROI(投資対効果) | 投資に対してどの程度利益をあげられたかを示す指標。 |
CAC(顧客獲得費用) | 新規顧客の獲得に要した費用を示す指標。 |
NRR(売上継続率) | 既存顧客からの売上を保持できているかを示す指標。アップセル・クロスセル・追加購入が考慮される。 |
GRR(総収入継続率) | 既存顧客からの収益を保持できているかを示す指標。アップセル・クロスセル・追加購入は考慮されない。 |
CARR(年間経常収益の総計) | 契約した顧客から繰り返し得られる収益。定期更新料やサブスクリプションなど。 |
GTM(Go to market)戦略は、新規製品で市場に参入しようとするとき、また新しい市場開拓に乗り出す際など、特にベンチャー企業においてはリスクを軽減し大きな成果を上げるために不可欠な戦略といえます。
GTM戦略は、ターゲットの明確な定義から始まり、ターゲット別のキーメッセージの整理、バイヤージャーニーの作成、営業計画の立案と実行に至る5つのステップで構成されています。いずれにしても顧客解像度を高めた上での立案が重要です。指標を活用し、戦略の達成度を定量的に評価しながら、戦略のブラッシュアップを繰り返して成果の最大化を図りましょう。