Tips/寄稿

CRM・SFA導入前に実施すべき課題整理の仕方~CRM・SFA導入のベストプラクティス02

CRM・SFA導入前に実施すべき課題整理の仕方~CRM・SFA導入のベストプラクティス02

組織課題の見える化を行い、業務改善を目指したシステム導入コンサルティングを実施するフライクが、システム導入の遅れがもたらす企業リスクについて改善する連載企画。前回は、CRM・SFAを導入していない企業におけるリスクについて解説をしました。

今回は、システム導入後の解像度が上がり、CRM・SFAの具体的な利活用イメージの解像度が上がることを目的に、「CRM・SFA導入前に実施すべき課題整理」について解説していきます。

目次

はじめに

企業がシステムを投資する原資は「利益」です。利益を投資に回して結果を出すには時間がかかりますが、

  • 長期的目線で売上を上げる
  • 業務効率に寄与し販管費を圧縮する

の2つの効果を出す必要があります。
そのためには事前準備が必要不可欠です。

また、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)やSFA(Sales Force Automation:営業支援)の機能を備えたシステムを導入した場合、初期コストに数百万円、ランニングコストに月額数万円〜数十万円のコストがかかります。
SaaS(Software as a Service)といって、インターネットを介してサービスを利用し、利用している限り半永久的に固定費としてランニングコストが発生します。

だからこそ、導入前にしっかりと何を解決してどのような状態になっておきたいか? をイメージする必要があります。

CRM・SFA導入前に実施すべき課題整理

3つの質問を用意しました。ぜひ読みながら考えて見てください。

質問(1)
現在の顧客に関連するあらゆる情報が蓄積しているツール・システムを教えてください。
そして、それらの情報が一元化された場合、どのような改善やチームメンバー、他部署との相乗効果が生まれますか?

質問(2)
営業が管理している案件・商談におけるプロセスや報告スタイルは共通化されていますか?
もし、共通化されていない場合、共通化された際には、案件・商談の進め方や共有方法、そして結果に変化は生まれそうですか?

質問(3)
顧客情報を扱うのは営業やサービスを提供する部署や契約更新担当のみと思っていませんか?
マーケティングや広報、法務や経理や総務などのコーポレート部門まで同一システムで顧客に関連するあらゆる情報が一元化されている場合、どのようなメリットが生まれそうですか? また、どのようなコミュニケーションスタイルになりそうですか?

では、一つ一つ深掘りをしていきましょう。

課題(1)顧客情報の管理体制

自社が保有する顧客情報がどういったツールに格納されているかを把握する。そして、それらをいつ、どこで、誰が記載しているかを洗い出す

解説

自社の資産となる顧客情報の格納先をしっかり洗い出します。ITシステムだけではなく、紙やファイルといったアナログなものもツールの一つです。
私達フライクでは業務フロー概要設計書というものを作成し自社の業務フローを見える化していきます。

洗い出しの方法としては右軸に業務の流れ、縦軸に登場人物とシステムを記載します。
ここでは例として「見込み顧客から問い合わせ、案件対応、受注までの流れ」(図表1)と「請求書送付、会計処理までの流れ」(図表2)を記載しています。

▼図表1:込み顧客から問い合わせ、案件対応、受注までの流れ

図表1:込み顧客から問い合わせ、案件対応、受注までの流れ(株式会社フライク)|BeMARKE(ビーマーケ)"

▼図表2:請求書送付、会計処理までの流れ

Miroに図表2:請求書送付、会計処理までの流れ(株式会社フライク)|BeMARKE(ビーマーケ)"

このように簡易的にではありますが、しっかりと「いつ」「どこで」「誰が」「どのシステム」に入力しているのかを洗い出すと、どのような情報がどこに格納され、さらにその情報が前後の領域における業務でどのように利活用されているのかを把握することができます。

なぜこの工程を実施するのか

CRM・SFAに限らず、システムを導入するときにありがちなのは、導入前における「機能比較」「価格比較」、そして導入後に発生するのは「この機能は誰も使っていない」「高いランニングコストの割に使いこなせない」事象です。

これらを発生させないようにまずは自社の業務フローを洗い出し、自社にとって何が課題で、何を解決すべきか、解決したらどのようなメリットがあるか?をしっかり洗い出したあとに、システム導入のためのツール比較に進むべきです。

課題(2)案件・商談におけるプロセスや報告スタイルの共通化

営業が保有する案件・商談における進め方やプロセスを共通化する。共通化されているのであればその粒度が現状の進め方に即しているかを再度ブラッシュアップし、共通化されていないのであればマネジャー層やトップセールスを集めてディスカッションをしましょう。

解説

前回の記事で紹介したSFAの機能「 【1】営業プロセスの共通化と可視化」「【2】成約率の向上」「【3】営業データの分析と予測」を実現するためにはまず社内の営業プロセスを定めることからスタートします。

私達フライクでは商談が発生したきっかけから受注までの流れ・変化を「フェーズ」という概念を用いて管理をしております(図表3)。

商談のフェーズでは

  • 4つの工程「問い合わせ〜初回面談」「二回目面談」「最終面談」「契約手続き」に分ける
  • その4つの工程の中を細分感して合計19個のフェーズに分ける

▼図表2:談が発生したきっかけから受注までの流れ・変化を「フェーズ」という概念を用いて管理

図表3:談が発生したきっかけから受注までの流れ・変化を「フェーズ」という概念を用いて管理(株式会社フライク)|BeMARKE(ビーマーケ)"

このフェーズは企業のビジネスモデルやサービスプロセスによって変わってきます。そして、どこに照準を合わせるかも重要です。
ここでいう「どこ」とは「新卒採用メンバー」「業界未経験の中途メンバー」「中堅・ベテラン社員」といった営業部におけるスキルセット×属性です。どこに基準値をそろえるかによって細かく分解するか大まかな管理をするかが変わってきます。
私達フライクでは「新卒採用メンバー」に基準を合わせています。これは入社した後、一人で商談を前に進められるための道しるべや教育に生かすためです。

なぜこの工程を実施するのか

SFAを導入するときに発生するのは「共通の進め方がない」がゆえにSFA導入が進まないという状況です。
営業の進め方やトレーニング方法が定まっていない企業が多く、OJT(On the Job Training)のみで商談・案件の進め方におけるスキルトランスファーをするといった企業も見受けられます。
SFAを導入する前に、まずは社内における案件の進め方の共通認識を取り、同じものさしを作成しましょう。

課題(3)顧客情報を扱っている部署と役割の把握

企業の組織図を使い、各部門や役職がどのような役割を担っているかを洗い出し、顧客に対して直接的または間接的に接点を持つ部署を整理しましょう。そのうえで、各部門が顧客対応のために必要とする情報を明確にすることが重要です。

解説

CRM・SFAを導入する際、営業部やサービス提供部門など顧客と直接接点を持つ部署のみ話し合いを進めがちです。しかし、企業全体で顧客に関連する情報を一元化するためには、組織図を活用して役割や顧客接点を明確にし、部署ごとに必要な情報を整理することが不可欠です。こうすることで、自部門で収集した情報を他部門と共有しやすくなり、組織全体での連携が強化され、業務効率も向上します。

具体的には以下のような方法で進めていきます。

1. 組織図をもとに役割の洗い出し

  • まず企業の組織図を確認し、各部門や役職がどのような責任や役割を担っているかを把握します。例えば、営業部は顧客獲得と契約管理、カスタマーサポート部は顧客からの問い合わせ対応、製品開発部は顧客ニーズに応じた商品開発といった具合です。
  • 役職単位で具体的なタスクを確認し、顧客と直接やり取りを行う部門と、間接的にサポートする部門を特定します。

2. 顧客接点の整理

顧客接点を「直接的な接点」と「間接的な接点」に分類します。
  • 直接的な接点:営業、カスタマーサポート、アカウント管理など、顧客と直接コミュニケーションを行う部門です。顧客の質問や要望にリアルタイムで対応し、他部門の情報も把握した上で顧客と対話することで、信頼性の高い対応が可能になります。. 直接的な接点:営業、カスタマーサポート、アカウント管理など、顧客と直接コミュニケーションを行う部門です。顧客の質問や要望にリアルタイムで対応し、他部門の情報も把握した上で顧客と対話することで、信頼性の高い対応が可能になります。
  • 間接的な接点:マーケティング、製品開発、品質管理など、顧客と直接やり取りはしないものの、顧客体験や満足度に大きな影響を与える部門です。例えば、マーケティング部は顧客のニーズを把握し、それを製品開発に反映する役割を担います。

3. 各部署に必要な情報の整理

  • 直接接点の部署には、顧客の基本情報、過去の問い合わせ履歴、契約情報などが必要です。こうした情報があることで、迅速かつ一貫した対応が可能になります。
  • 間接接点の部署には、市場調査データ、顧客満足度レポート、フィードバック情報などが役立ちます。例えば、顧客サポートからのフィードバックは、製品改善や新サービスの立案に有用です。

このように、各部門がどのような顧客情報を必要としているかを明確にすることで、必要なデータを効果的に集約し、データベースの設計や管理に役立てることができます。

なぜこの工程を実施するのか

「売上向上」と「業務効率化」の両方を達成するためです。営業やサポートなどの直接部門だけでなく、マーケティングや製品開発といった間接部門も顧客体験に大きく影響し、結果的に売上に貢献します。
また、顧客情報を一元管理し、部門間で情報を共有することで、無駄を省いたスムーズな業務運営が可能になります。組織全体で顧客を理解し連携を深めることで、効率的に売上と満足度の向上が期待できます。

いかがでしたでしょうか?
部署ごとに必要な情報や業務を洗い出すことが、導入前に必要になってくることがご理解いただけたでしょうか? 自社の業務フローを見える化することで改善箇所を明らかにすることができます。

次回は、「企業規模に合わせたCRM・SFA導入戦略」にいよいよ入っていきたいと思います。
>>>第3回 企業規模に合わせたCRM・SFA導入戦略

BeMARKE編集部より

貴社の得意領域やあなたのノウハウ・ナレッジをBeMARKEで発信してみませんか?

現在、BtoBマーケター・セールス担当者向けに、ノウハウやナレッジを披露していただける専門家の方を募集しています。
【募集要項】
■対象:BeMARKE読者に気づきや学び、課題解決に役立つ情報提供が可能な方。
■条件:月1回以上の執筆が可能であること。
■費用:記事掲載料請求はありません。無料での掲載が可能です。
■注意事項:自社サービスのプロモーションを主目的とした内容は掲載できかねます。
【申込み・お問い合わせフォーム】https://be-marke.jp/contact


この記事を書いた人

大瀧 龍
大瀧 龍 | 株式会社フライク 代表取締役

富士通株式会社にてシステムエンジニアとプリセールスエンジニアとしてキャリアをスタート。その後、地元福岡のセールスフォース代理店に転職し、SaaSツールの導入提案やITソリューションを活用した営業支援に従事。その後、freee株式会社で九州支社長および広島営業所長を歴任し、IPOも経験。2019年11月、3rdコンサルティング株式会社(現・株式会社フライク)を創業し、2021年に社名を変更。企業の「IT参謀」として、業務フローの最適化、課題の特定、ツール選定から導入後の伴走支援まで一貫したサービスを提供。大手から中堅・中小企業、ベンチャーまで多様なクライアントを支援し、事業成長を実現するITパートナーとして活動中。

著者の最新記事

もっと読む >

あわせて読みたい