Tips/寄稿
組織課題の見える化を行い、業務改善を目指したシステム導入コンサルティングを実施するフライクが、システム導入の遅れがもたらす企業リスクについて改善する連載企画。前回は、CRM・SFAを導入していない企業におけるリスクについて解説をしました。
今回は、システム導入後の解像度が上がり、CRM・SFAの具体的な利活用イメージの解像度が上がることを目的に、「CRM・SFA導入前に実施すべき課題整理」について解説していきます。
企業がシステムを投資する原資は「利益」です。利益を投資に回して結果を出すには時間がかかりますが、
の2つの効果を出す必要があります。
そのためには事前準備が必要不可欠です。
また、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)やSFA(Sales Force Automation:営業支援)の機能を備えたシステムを導入した場合、初期コストに数百万円、ランニングコストに月額数万円〜数十万円のコストがかかります。
SaaS(Software as a Service)といって、インターネットを介してサービスを利用し、利用している限り半永久的に固定費としてランニングコストが発生します。
だからこそ、導入前にしっかりと何を解決してどのような状態になっておきたいか? をイメージする必要があります。
3つの質問を用意しました。ぜひ読みながら考えて見てください。
質問(1)
現在の顧客に関連するあらゆる情報が蓄積しているツール・システムを教えてください。
そして、それらの情報が一元化された場合、どのような改善やチームメンバー、他部署との相乗効果が生まれますか?
質問(2)
営業が管理している案件・商談におけるプロセスや報告スタイルは共通化されていますか?
もし、共通化されていない場合、共通化された際には、案件・商談の進め方や共有方法、そして結果に変化は生まれそうですか?
質問(3)
顧客情報を扱うのは営業やサービスを提供する部署や契約更新担当のみと思っていませんか?
マーケティングや広報、法務や経理や総務などのコーポレート部門まで同一システムで顧客に関連するあらゆる情報が一元化されている場合、どのようなメリットが生まれそうですか? また、どのようなコミュニケーションスタイルになりそうですか?
では、一つ一つ深掘りをしていきましょう。
自社が保有する顧客情報がどういったツールに格納されているかを把握する。そして、それらをいつ、どこで、誰が記載しているかを洗い出す
自社の資産となる顧客情報の格納先をしっかり洗い出します。ITシステムだけではなく、紙やファイルといったアナログなものもツールの一つです。
私達フライクでは業務フロー概要設計書というものを作成し自社の業務フローを見える化していきます。
洗い出しの方法としては右軸に業務の流れ、縦軸に登場人物とシステムを記載します。
ここでは例として「見込み顧客から問い合わせ、案件対応、受注までの流れ」(図表1)と「請求書送付、会計処理までの流れ」(図表2)を記載しています。
▼図表1:込み顧客から問い合わせ、案件対応、受注までの流れ
▼図表2:請求書送付、会計処理までの流れ
このように簡易的にではありますが、しっかりと「いつ」「どこで」「誰が」「どのシステム」に入力しているのかを洗い出すと、どのような情報がどこに格納され、さらにその情報が前後の領域における業務でどのように利活用されているのかを把握することができます。
CRM・SFAに限らず、システムを導入するときにありがちなのは、導入前における「機能比較」「価格比較」、そして導入後に発生するのは「この機能は誰も使っていない」「高いランニングコストの割に使いこなせない」事象です。
これらを発生させないようにまずは自社の業務フローを洗い出し、自社にとって何が課題で、何を解決すべきか、解決したらどのようなメリットがあるか?をしっかり洗い出したあとに、システム導入のためのツール比較に進むべきです。
営業が保有する案件・商談における進め方やプロセスを共通化する。共通化されているのであればその粒度が現状の進め方に即しているかを再度ブラッシュアップし、共通化されていないのであればマネジャー層やトップセールスを集めてディスカッションをしましょう。
前回の記事で紹介したSFAの機能「 【1】営業プロセスの共通化と可視化」「【2】成約率の向上」「【3】営業データの分析と予測」を実現するためにはまず社内の営業プロセスを定めることからスタートします。
私達フライクでは商談が発生したきっかけから受注までの流れ・変化を「フェーズ」という概念を用いて管理をしております(図表3)。
商談のフェーズでは
▼図表2:談が発生したきっかけから受注までの流れ・変化を「フェーズ」という概念を用いて管理
このフェーズは企業のビジネスモデルやサービスプロセスによって変わってきます。そして、どこに照準を合わせるかも重要です。
ここでいう「どこ」とは「新卒採用メンバー」「業界未経験の中途メンバー」「中堅・ベテラン社員」といった営業部におけるスキルセット×属性です。どこに基準値をそろえるかによって細かく分解するか大まかな管理をするかが変わってきます。
私達フライクでは「新卒採用メンバー」に基準を合わせています。これは入社した後、一人で商談を前に進められるための道しるべや教育に生かすためです。
SFAを導入するときに発生するのは「共通の進め方がない」がゆえにSFA導入が進まないという状況です。
営業の進め方やトレーニング方法が定まっていない企業が多く、OJT(On the Job Training)のみで商談・案件の進め方におけるスキルトランスファーをするといった企業も見受けられます。
SFAを導入する前に、まずは社内における案件の進め方の共通認識を取り、同じものさしを作成しましょう。
企業の組織図を使い、各部門や役職がどのような役割を担っているかを洗い出し、顧客に対して直接的または間接的に接点を持つ部署を整理しましょう。そのうえで、各部門が顧客対応のために必要とする情報を明確にすることが重要です。
CRM・SFAを導入する際、営業部やサービス提供部門など顧客と直接接点を持つ部署のみ話し合いを進めがちです。しかし、企業全体で顧客に関連する情報を一元化するためには、組織図を活用して役割や顧客接点を明確にし、部署ごとに必要な情報を整理することが不可欠です。こうすることで、自部門で収集した情報を他部門と共有しやすくなり、組織全体での連携が強化され、業務効率も向上します。
具体的には以下のような方法で進めていきます。
このように、各部門がどのような顧客情報を必要としているかを明確にすることで、必要なデータを効果的に集約し、データベースの設計や管理に役立てることができます。
「売上向上」と「業務効率化」の両方を達成するためです。営業やサポートなどの直接部門だけでなく、マーケティングや製品開発といった間接部門も顧客体験に大きく影響し、結果的に売上に貢献します。
また、顧客情報を一元管理し、部門間で情報を共有することで、無駄を省いたスムーズな業務運営が可能になります。組織全体で顧客を理解し連携を深めることで、効率的に売上と満足度の向上が期待できます。
いかがでしたでしょうか?
部署ごとに必要な情報や業務を洗い出すことが、導入前に必要になってくることがご理解いただけたでしょうか? 自社の業務フローを見える化することで改善箇所を明らかにすることができます。
次回は、「企業規模に合わせたCRM・SFA導入戦略」にいよいよ入っていきたいと思います。
>>>第3回 企業規模に合わせたCRM・SFA導入戦略
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