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企業規模に合わせたCRM・SFA導入戦略~CRM・SFA導入のベストプラクティス03

企業規模に合わせたCRM・SFA導入戦略~CRM・SFA導入のベストプラクティス03

組織課題の見える化を行い、業務改善を目指したシステム導入コンサルティングを実施するフライクが、システム導入の遅れがもたらす企業リスクについて改善する連載企画。前回は、CRM・SFAの導入前に実施すべき課題整理について解説をしました。

今回は、「どの企業でも使ってほしいCRM・SFAのおすすめ3機能」「企業規模に合わせたCRM・SFA導入戦略」について解説をしていきます。

目次

本題に入る前に

企業規模や会社の成長の段階に応じてCRM・SFAを導入するときのハードルは大きく異なります。そのため、企業を3分類に分けて考えていきます。

  • 分類1:売上・社員数も急増!起業間もないスタートアップ企業
  • 分類2:安定志向の社員が多くなった事業開始から数十年の中堅企業
  • 分類3:システムへの投資を行ってこなかった創業数十年〜数百年の老舗企業

すべての企業に共通する基本機能の活用と、企業規模に応じた戦略を踏まえ自社にとって最適なCRM・SFA導入戦略を検討してみください。

CRM・SFAのおすすめ3機能とは?

CRM・SFAにはたくさんの機能が搭載されておりますが、どの企業にもおすすめしている機能やまた導入後に追加を検討してほしい機能を3つご紹介します。

  1. 全社で顧客情報を閲覧できる状況をつくる
  2. 次に取るべきアクション(Next Action)の管理
  3. 失注管理で次の機会を逃さない

おすすめ機能【1】全社で顧客情報を一元化する

顧客情報を一元管理し、全社で共有することで、部署間の壁を越えた円滑なコミュニケーションが可能になります。例えば、営業担当者が入力した、顧客との過去のやり取りや取引履歴を、他部門の担当者や管理職がリアルタイムで確認ができるようになる仕組みを導入することです。

他部門が入力した顧客情報を全社で共有することで、情報収集や重複確認にかかる手間が大幅に削減され、スムーズな対応が可能になります。これにより、従来は他部署の情報確認に費やしていた時間を削減し、顧客対応に専念できる環境が整います。

マネジャーや経営者目線でも、多くのメリットが期待できます。
顧客の状況や対応進捗が可視化されることで、問題や改善点が発生した際に迅速に適切な対応を取ることが可能です。また、各メンバーの作業負荷やリソース配分が見える化されるため、チーム全体のパフォーマンスを均一化し、負担を調整することも容易になります。

さらに、受注確度や購入意欲が見える化されているため、成約の可能性が高い顧客に優先的にリソースを配分するなど、より効果的な意思決定が可能になります。

このように、営業、マーケティング、製品開発といった各部門が一元化された顧客データを共有することで、全社最適化の視点から戦略を策定し、その実行に集中することができます。そして、これが最終的には顧客に提供する価値の最大化につながるのです。

おすすめ機能【2】次に取るべきアクション(NextAction)の管理

次に注目したいのは、「次に取るべきアクション(Next Action)の管理」です。この機能により、日々の顧客対応や案件進行において、優先順位を明確にでき、成果を高めやすくなります。

例えば、顧客や案件ごとの対応内容と予定日を明確にし、抜け漏れを防ぐことが挙げられます。複数の案件を同時に抱えると、対応の漏れが発生しがちです。Next Actionを管理することで、「再フォロー」「見積送付」「定期接点」といった次のアクションと対応予定日を一目で確認でき、抜け漏れを防ぎ、タイムリーかつ一貫した対応が可能になります。また、進捗が可視化されるため、必要に応じてチームメンバーからのフォローも得やすくなります。

また、顧客の対応に優先順位をつけることで、複数の案件がある場合でもチーム全体で連携をしながら効率的にプロジェクトを進行できます。

おすすめ機能【3】失注管理で次の機会を逃さない

最後におすすめしたいのは「失注管理で次の機会を逃さない」機能です。失注はビジネスにおいて避けられないものですが、適切に管理することで、それを単なる失敗に終わらせず、次のビジネスチャンスにつなげる仕組みをつくることができます。

現場では、失注理由や顧客の反応を詳細に記録・分析することで、他案件に必要な改善点が明確になります。例えば、「価格が高い」という理由が多い場合、次回の提案では競合との差別化ポイントやコストパフォーマンスを強調する準備を行えます。また、「競合他社の商品が選ばれた」というケースでは、自社の強みを明確に打ち出す戦略を立てることができます。

さらに、失注後も顧客との接点を継続管理することで、リピートや再提案の機会を逃さないようにすることができます。例えば「次年度予算のタイミングで再検討」「新製品発表後に連絡」といったリマインダーを設定することで、最適なタイミングで再アプローチができ、新たな機会損失を防ぐことが可能です。

こうした取り組みは、現場の業務改善にとどまらず、経営層にとっても大きな変化をもたらします。
失注理由が一元管理されるため、企業規模や案件タイプごとに見られる改善点や自社商品・サービスの課題が明確化します。例えば、競合の特定製品に対する弱みや価格に対する反応の違いなど、失注傾向が分かるため、営業戦略の改善がしやすく、全体を俯瞰しての戦略見直しが可能です。

また、失注管理により、再アプローチが有望な見込み顧客やリピート可能性の高い顧客が明確になるため、リソースの効率的な配分が可能になります。これまではルールやエリアに基づいた割り当てが多かった場合でも、失注・成約の傾向をもとに、最も成果を出しやすいメンバーを適切にアサインできるようになり、営業活動をより効果的にするための人員配置が実現します。

企業規模と成長に合わせたCRM・SFA導入戦略

次に、企業規模や会社の成長の段階に応じたCRM・SFA導入戦略を考えていきましょう。

売上・社員数も急増!起業間もない「スタートアップ企業」×CRM・SFA導入戦略

スタートアップ企業にとって、売上や社員数が急激に伸びる一方で、日々の業務に追われ、管理体制が後回しになる「あるある」も少なくありません。特に、Excelや手作業による顧客管理が主流の初期段階では、顧客数が増えるにつれて情報漏れやミスが生じやすくなり、それが売上に直結するリスクを抱えることになります。

このような状況を放置すれば、情報の漏れやミスが増えるだけでなく、業務の非効率が積み重なり、結果として成長スピードが鈍化してしまう可能性があります。これを防ぐためには、営業プロセスの効率化を図り、顧客に対して迅速かつ一貫性のある対応を行える仕組みを早急に整備することが必要です。その鍵となるのが、スタートアップの初期段階でのCRM・SFAの導入です。

特に、営業プロセスがまだ定まっていない段階でCRM・SFAを導入することで、効率的な営業フローを早期に確立し、成長にともなう増員時にも一貫した営業活動を維持しやすくなります。
さらに、成長著しいスタートアップでは、現在の業務効率化だけでなく、将来的な事業拡大に対応できる拡張性のあるシステムを選定することが不可欠です。

初期段階でCRMを導入することで、属人化しがちな顧客情報を一元管理し、漏れやミスを防ぐことで少人数でも効率的な顧客対応が可能になります。また、営業フローを標準化することで、事業拡大や人員増加時にも同じ営業プロセスをチーム全体で共有できるため、新メンバーが即戦力として活躍できる環境が整います。さらに、拡張性の高いシステムを選べば、急増する顧客やプロセスの変化にも柔軟に対応でき、成長を持続的にサポートする体制を構築できます。

売上・社員数も急増!起業間もない「スタートアップ企業」×CRM・SFA導入戦略(企業規模に合わせたCRM・SFA導入戦略~CRM・SFA導入のベストプラクティス03)|BeMARKE(ビーマーケ)

安定志向の社員が多くなった事業開始から数十年の「中堅企業」×CRM・SFA導入戦略

事業開始から数十年が経過した中堅企業では、安定志向の社員が増える一方で、成長にともなう新たな課題が生じます。

まず、売上や顧客数の増加により、従来のExcelや部署ごとの個別システムでは管理が追いつかず、重要な見込み顧客へのアプローチ漏れが発生し、機会損失のリスクが高まります。また、部署間で顧客データが分散していると情報共有が難しくなり、営業やサービスの現場での非効率が増加。さらに、担当者の退職時に顧客情報が引き継がれず、対応の遅れから顧客離れが進む可能性も高まります。

このような状況でも、CRM・SFAの導入が不可欠です。顧客情報を一元管理し、全社で共有することで、顧客対応の一貫性を確保しながら、経営判断や営業活動を迅速化できます。また、承認プロセスや見積書作成、契約管理などの業務を自動化することで、標準化と効率化が進み、業務スピードと正確性が向上します。

このフェーズにおける導入のメリットとしては、大きく2つに分けられます。
まず1つ目は、CRM・SFAの導入により顧客情報や営業プロセスが一元化されるため、従業員が本来の業務に集中できるため、売上増加にともなう人員追加を最小限に抑えながら、多くの案件に対応可能となります。これにより、一人あたりの生産性と利益率の向上が期待できます。

2つ目は、業務効率化によって生まれたリソースを戦略的な活動に振り向けることで、新たなビジネスモデルやサービス開発にも注力でき、成長機会を迅速につかむ体制を構築できます。

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システムへの投資を行ってこなかった創業数十年〜数百年の「老舗企業」×CRM・SFA導入戦略

創業数十年〜数百年の老舗企業では、長年の慣習からデジタル化が進まず、紙資料や手作業によるプロセスが依然として現場の負担となっています。この状況では、顧客対応や営業活動に時間と労力がかかりすぎ、競合に対して競争力が低下しているケースが少なくありません。さらに、部門ごとにデータが分散しているため、情報共有が難しく、意思決定の遅れや顧客満足度の低下につながっています。古いシステムの不便さが生産性の低下を招き、属人化や若手社員の育成不足といった課題も深刻です。

このような状況では、CRM・SFAの導入が顧客対応力の再構築と競争力の回復につながります。

システム再導入を先延ばしにすることは、競争力低下と直結し、顧客離れや売上減少といった具体的な損失に繋がるリスクが高まります。さらには、その状況のまずさに気づいた優秀な社員から会社を去る悪循環も。現在の古い管理体制に依存し続ける限り、競合と差を広げられるばかりであり、業績が悪化するリスクを抱え続けることになります。

CRM・SFAの導入により、顧客情報を全社で共有し、一貫した顧客対応が可能になります。これにより、顧客満足度の向上が期待できるだけでなく、老舗企業としての信頼を再構築し、競合との差別化を図る絶好の機会となります。

特に、長年後回しにしてきたデジタル化を今こそ導入することで、企業の豊富な顧客データやサービス履歴を一元管理し、業務の全体像が把握しやすくなります。老舗企業に蓄積された貴重な情報をデジタル化することで、個々の顧客ニーズや購入履歴に基づいたきめ細やかな対応が可能になり、顧客にとって自社が「選ばれる企業」としての魅力を発揮できます。これにより、単なる顧客対応にとどまらず、長期的なファンを増やし、さらなる利用促進やリピートにつなげる確かな基盤が整います。

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まとめ

このように、CRM・SFAの導入は、企業規模や成長段階に応じた戦略的な判断が求められます。それは単なる業務効率化にとどまらず、競争力の強化や成長基盤の確立においても欠かせない取り組みです。スタートアップ、中堅企業、老舗企業など、それぞれの成長フェーズに合わせて、自社の現状に最適なタイミングで最適なシステムを導入することが成功の鍵となります。

次回、第4回では、CRM・SFAの具体的な活用例として、著者が経営する株式会社フライクの自社事例を詳しくご紹介します。

BeMARKE編集部より

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この記事を書いた人

大瀧 龍
大瀧 龍 | 株式会社フライク 代表取締役

富士通株式会社にてシステムエンジニアとプリセールスエンジニアとしてキャリアをスタート。その後、地元福岡のセールスフォース代理店に転職し、SaaSツールの導入提案やITソリューションを活用した営業支援に従事。その後、freee株式会社で九州支社長および広島営業所長を歴任し、IPOも経験。2019年11月、3rdコンサルティング株式会社(現・株式会社フライク)を創業し、2021年に社名を変更。企業の「IT参謀」として、業務フローの最適化、課題の特定、ツール選定から導入後の伴走支援まで一貫したサービスを提供。大手から中堅・中小企業、ベンチャーまで多様なクライアントを支援し、事業成長を実現するITパートナーとして活動中。

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