Tips/寄稿
前回、日米SaaS導入比較から考える、BtoB企業が成果を出すためのヒントという記事を執筆しました。この記事では、BtoB企業がどのようにしてSaaSを活用し、成功に結びつけるかについて詳述しました。今回は、その続編として、営業チームを成功に導くための具体的なテクノロジーや専門チームについてさらに深掘りして解説します。
営業チームを成功に導くためには、前回の記事で触れたように、SaaSの活用や自動化の構築が極めて重要です。これにより、営業プロセスの効率化や精度の向上が期待できます。
一昔前とは異なり、現代では複数のツールやデータを統合し、利活用する環境が一部の資本力のある大企業だけが膨大な費用を投じて構築するものではなく、スタートアップ企業や中小企業でも手軽に取り組むことができるようになってきました。そのため、現在多くの企業が複数のクラウドベースソフトウエアを使用し、それらをシームレスに統合することが求められています。これにより、企業はより効率的にデータを管理し、分析することが可能となり、結果として営業活動の質を高めることができます。
さらに、これらのツールを効果的に活用するための専門チームを導入する企業も増えています。専門チームは、各ツールの特性を理解し、最大限に活用するためのノウハウを持っています。これにより、営業チームはより高度な戦略を立て、実行することが可能となります。専門チームの導入は、企業の競争力を高めるための重要なステップです。
以上のように、営業チームを成功に導くためには、最新のテクノロジーと専門チームの導入が不可欠です。これにより、企業はより効率的かつ効果的に営業活動を行い、成果を上げることができるでしょう。
ZapierやMakeといったiPaaSツールは、ノーコードでの業務自動化を実現し、複雑なコーディングなしでさまざまなSaaSアプリケーションを連携させることができます。これにより、技術的な知識がなくても、業務プロセスを効率化し、自動化することが可能になります。
例えば、データの同期や通知の送信、タスクの自動化など、日常の業務をよりスムーズに進めるためのさまざまな機能を提供しています。これらのツールを使用することで、時間を節約し、人的エラーを減らすことができるため、企業全体の生産性向上にも寄与します。
さらに、iPaaSツールは、ビジネスの成長とともにスケーラブルなソリューションを提供します。新しいアプリケーションやサービスが追加されても、容易に統合することができるため、柔軟性が高まります。これにより、企業は迅速に変化する市場のニーズにも対応できるようになります。
また、これらのツールは、多くの場合ドラッグアンドドロップのインターフェースを提供しており、複雑なプログラミングスキルを持たないユーザーでも直感的に操作できます。
例えば、マーケティングチームが新しいキャンペーンを立ち上げる際に、顧客データを自動的にCRMシステムに同期させたり、営業チームがリード情報をリアルタイムで受け取るための自動化フローを作成したりすることができます。これにより、各チームがより効果的に連携し、業務を迅速に進めることができるようになります。
総じて、iPaaSツールは、業務効率の向上、時間の節約、人的エラーの削減という利点を提供し、企業全体の生産性を大幅に向上させる重要な役割を果たします。
こうしたテクノロジーを最大限に活用し、成果を引き出すために重要なのがSales Ops(セールスオペレーション)チームです。Sales Opsチームは、データ駆動の意思決定支援、業務プロセスの最適化、テクノロジースタックの管理を担当します。Sales Opsチームは、営業部門と密接に連携しながら、企業の営業活動を支える重要な役割を果たしています。
実際、Sales Opsチームを導入している企業は増加しており、Sales Opsチームを持つ企業は全体の63.9%に達しています。これは、Sales Opsチームの導入がもたらす多大なメリットを示しています。※参考:https://dealhub.io/glossary/sales-operations/
Sales Opsチームは営業戦略の立案や実行を支援し、企業全体の業績向上に寄与します。データに基づくターゲティングやリード管理、パフォーマンスモニタリングなどの業務を通じて、営業プロセス全体を最適化します。例えば、リードの質を向上させるためのデータ分析や、営業チームのパフォーマンスをリアルタイムで追跡するツールの導入などが挙げられます。この結果、営業活動の効果が高まり、企業の成長を促進します。
Sales Opsチームと先進的なテクノロジーの組み合わせにより、企業は営業の生産性を大幅に向上させ、競争の激しい市場での優位性を確保できます。
例えば、AIを活用した予測分析や、CRMシステムの高度なカスタマイズを通じて、より精度の高い営業戦略を構築することが可能になります。このように、Sales Opsチームは企業の営業活動のあらゆる側面で重要な役割を果たしており、その価値はますます高まっています。
一方で、Sales Opsチームは専門性が高く、リソース不足といった課題があります。2021年に公表された調査The State of Sales Operations - LinkedInで行われたSales Opsへの調査では、51%の人が自分の仕事について十分なリソースが不足していると答えました。また、89%のSales Opsが自分たちより頻繁に計画を立てることで、営業チームがより大きな成功をおさめられ、ビジネス全体にポジティブな影響を与えられると考えています。さらに、36%のSales Ops部門は、人材の採用に課題を感じているということが明らかになっています。
この調査結果から、Sales Opsチームが直面している課題は深刻であり、リソースの不足が彼らの業務効率に大きな影響を与えていることが分かります。特に、計画の頻度を増やすことで営業チームの成功を促進し、ビジネス全体に良い影響を与える可能性があると多くのSales Opsメンバーが感じていることは注目に値します。また、人材の採用に関する課題も無視できない問題であり、適切な人材を確保するための戦略が必要です。
総じて、この調査はSales Opsチームの重要性と彼らが抱える課題を浮き彫りにしており、今後の改善策を検討する上で重要な指針となるでしょう。
近年、日本企業でもSales Opsの導入が進んでいますが、その普及率は米国と比較するとまだ低い状況にあります。この背景には、専門知識を持つ人材の不足が大きな要因として挙げられます。
Sales Opsに求められる能力は多岐にわたります。
まず、最新のセールスやマーケティング技術を理解し、自社のシステムと効果的に統合できるツールリテラシーが重要です。また、正確なデータ の取得・分析や品質管理を行うデータリテラシーも不可欠です。 さらに、CRMやSFAなどのツールを活用して業務プロセスを最適化する能力や、セールス活動を深く理解した上で幅広いビジネス知識を生かして戦略を立案・改善する力も求められます。加えて、 多様なプロジェクトを管理し、さまざまなステークホルダーと調整できるプロジェクトマネジメント能力も重要です。
これらの能力を備えた人材を育成・確保することが、日本企業がSales Opsを効果的に活用する上での大きな課題となっています。
特に、最新技術を駆使してデータ駆動の意思決定を支援できる専門家の需要が高まっています。Sales Opsチームの充実は、営業活動の効率化や企業の競争力強化につながると期待されています。今後、日本企業がグローバル市場で競争力を維持・向上させていくためには、Sales Opsの戦略的な導入と、それを支える人材の育成が不可欠といえるでしょう。
Sales Opsに求められる能力は大きく5つあります。
セールス・マーケティング関連のテクノロジーは、近年急激に増えています。世界中にどのようなツールがあり、そのツールで何ができるのか、Sales Opsは常に最新のテクノロジーにアンテナをはり、自社のビジネスプロセスや既存システムとの整合性を加味し、最も適したツールを選定・導入し、最大限活用する必要があります。
リードや顧客とのタッチポイントがデジタル化し、セールス活動に活用できるデータの量は格段に増えました。しかし重要になってくるのが、必要なデータが記録されているか? 誤ったデータや重複したデータは記録されていないか? といった点です。
このような問題が起きていると、オペレーション上の事故や誤った意思決定を招く可能性があります。それゆえ、Sales Opsには高いデータリテラシーが求められます。
データを使って何がしたいのか? そのために必要なデータとは何か? そのデータを正しく取得するためにはどうすればいいか? といった業務プロセスのグランドデザインを構築する力がSales Opsには 求められます。
実際の現場では、CRM/SFAやMAなどさまざまなツールを活用するわけですから、異なるデータの定義や取得方法なども加味しながら業務プロセスを設計し、正しい分析を行う力も必要不可欠です。
Sales Opsは必ずしもセールス経験者である必要がありませんが、セールスメンバーとのコミュニケーション、セールス業務の実態把握なくして、セールス組織の成果を最大化する戦略立案や改善は行えません。
またSales Opsの役割や掌握範囲は、セールス組織の枠を超えることが往々にして発生します。そのため、セールスと近しいマーケティングはもちろん、バックオフィスなど総合的な基礎知識も求められます。
Salles Opsは大小さまざまな、そして多くの組織と共にプロジェクトの進行を行う必要があります。多岐にわたるプロジェクトの工程管理やステークホルダーとの調整といったプロジェクトマネジメントスキルも求められ ます。メンバーを巻き込むリーダーシップも必要とされます。
営業チームの成功には、最新のテクノロジーと専門チームの導入が不可欠です。特に日本市場では、Sales Opsの専門人材の採用や育成は困難な現状があります。
日本企業がSales Opsの導入と運用を成功させるためには、以下の点が重要です。
最新のセールス技術やマーケティングツールに精通した人材を育成することが必要です。社内トレーニングや外部研修を活用し、データ分析やCRMシステムの運用に関するスキルを持つ人材を育てることが企業の競争力を高める鍵となります。
データ分析に基づく意思決定により、営業プロセスの最適化と成果の最大化が可能になります。顧客データや市場データを活用してターゲティングを行い、効率的なリードジェネレーションを実現することが求められます。また、パフォーマンスモニタリングを通じて営業チームの活動をリアルタイムで把握し、迅速なフィードバックを行うことが重要です。
企業のニーズに合わせた柔軟なテクノロジー導入は、現代のビジネス環境において非常に重要です。適切なテクノロジーを選び、効果的に活用することで、業務プロセスの効率化が図れます。これにより、営業チームは日常的な業務負担を軽減し、より戦略的な活動や顧客との関係構築に集中できます。また、柔軟なテクノロジーの導入は、企業の競争力を高め、市場の変化に迅速に対応する能力を向上させるための鍵となります。
営業チームだけでなく、マーケティング、カスタマーサポート、IT部門など他部門との連携を強化することが、Sales Opsの成功には不可欠です。特にマーケティングと営業のシームレスな連携により、顧客体験の向上と売上の最大化を図ることができます。
市場環境や顧客ニーズは常に変化しています。そのため、Sales Opsも柔軟に対応し、継続的な改善を行うことが求められます。アジャイルなアプローチを取り入れることで、迅速な意思決定と実行が可能となり、競争力を維持できます。
これらの取り組みを通じて、日本企業はSales Opsの効果を最大限に引き出し、競争の激しい市場で優位性を確保できるでしょう。今後もSales Opsの役割と重要性は増していくと考えられ、企業全体の成長と成功に寄与することが期待されます。
また、Sales Opsの導入には企業文化の変革も伴います。データドリブンの意思決定を行うためには、全社的なデータリテラシーの向上が求められます。また、テクノロジーを活用した新しい営業プロセスを受け入れる柔軟性も重要です。これらの変革を成功させるためには、経営層のリーダーシップと全社員の協力が不可欠です。
自社のリソースのみでこれらを行うことが困難な場合、弊社が提供するSales Opsの伴走型コンサルティングdiverのような外部リソースを活用することも有効です。diverは、企業のSales Ops活動を支援し、業務フローの再設計から必要なツールの選定・設定、各種ツールの統合や自動化の構築まで包括的なサポートを提供します。これにより、企業はリソース不足やスキルギャップを補い、より効率的で成果を上げる営業組織を作り上げることができます。
総じて、Sales Opsの導入と運用は、日本企業が競争力を高め、持続的な成長を実現するための重要な要素です。最新のテクノロジーと専門チームの力を最大限に活用し、効果的な営業プロセスを構築することで、企業の成功を支える基盤を築くことができるでしょう。
>>>第3回 「競争力を高める営業オペレーションのデジタル化と改善手法」へと続く
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