Tips
近年、デジタル化とクラウド化が世界中のビジネスの中心となり、企業の業績向上や生産性の向上に大きな影響を与えています。特に、米国ではSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)の活用が進んでおり、日本との比較では大きな差が見られます。この記事では、日本と米国のSaaSの活用状況を比較し、その違いと原因、また日本がどのようにしてこの差を埋めることができるのかについて考察します。これを通じて、日本の企業がどのようにデジタル化とクラウド化を進めていけばいいのか、そのヒントがあるかもしれません。
株式会社Merでは、「営業活動の土台を創る」というミッションを掲げ、2つのセールステックプロダクトの提供と、Sales Opsの伴走型コンサルティング「diver」を提供しています。まだ日本では珍しいSales Opsという役割を提供している中で見えてきた日本におけるデジタル化やクラウド化における課題や対策も交えてご紹介していこうと思います。
Gartner社が行った調査「パブリッククラウドへの支出率からみた2022年の世界国別ランキング」によれば、日本のクラウドサービスへの支出はIT全体の4.4%にしか達していないのが現状です。これは米国(14%)と比較すると非常に大きな差となります。このような日本のクラウドサービス導入の遅れには、特に3つの大きな要因が考えられます。
1.オンプレミスへの強い信頼
過去にデータセンターへの大量投資が行われてきたこと、そして情報セキュリティへの深刻な懸念から、日本の企業はオンプレミス環境への依存を続けています。これはクラウドサービスへの移行を阻む大きな要因となっています。
2.レガシーシステムとの互換性の問題
さらに、既存のレガシーシステムとの互換性の問題や、それに伴う移行コストが、クラウド化への道のりを困難にしています。
3.人材不足
そして最後に、クラウド環境の構築・運用に必要な専門的なスキルを持つ人材が日本には不足しています。これはクラウドサービスの導入を促進するための重要な要素であり、人材の確保が急務となっています。
これらの要因により、日本はクラウドに対する抵抗勢力として位置づけられています。事実、現在の状況では米国に対して7年も遅れてしまっているという報告があります。この問題を解決するためには、上記の3つの要因を克服する必要があると考えられます。
では、各企業がどれほどの量のSaaSを導入しているのかを示す数値、つまりSaaSの導入数が各国でどのように異なるのかを比較することで、その差異を探ってみようと思います。特にアメリカの事例を取り上げてみましょう。
アメリカの企業における一社あたりのSaaS導入数の平均は、なんと130という数値に達しています。これは、2015年以降のわずか7年間で、その数値が16倍以上に跳ね上がったことを示しています。この急激な増加は、テクノロジーの進化とともに企業がデジタル化を進め、業務効率化やサービス改善のためにSaaSを積極的に導入してきた結果と言えるでしょう。
しかし、年間の成長ペースが鈍化傾向にあることから、すでに多くの企業がアプリケーションやアカウントの統合フェーズに入っている可能性があります。これは、導入したSaaSの管理と効果的な利用に焦点を当てるための一環と考えられます。
さらに深く掘り下げるために、従業員数規模別の状況を見ると、アメリカの企業界において、中堅企業がSaaS導入数の成長を牽引していることが明らかになります。この中堅企業とは、大企業と比較して、新しいSaaSを追加するペースが速く、また2022年の成長全体の大部分を占めている企業群を指します。
一方、大規模な企業たちは今年、平均で410のSaaSを使用していますが、驚くべきことに、これは2021年よりも微減しています。この現象の背後には何があるのでしょうか?
企業が既存のSaaSポートフォリオを最適化し、SaaSの乱立をよりよくコントロールしようとしているからだと思われます。これは、アプリケーションやアカウントの統合が進んでいるためで、これにより企業は効率的な運用と管理の実現を目指しているのです。
日本の企業におけるSaaSの導入状況を詳しく見てみると、コロナ禍と比較して11個以上のSaaSを導入しているという企業が増加しており、デジタル化の進行を示しています。しかし、これをアメリカの状況と比較すると、まだまだ導入数は少ないと言えます。
具体的には、アメリカの2020年の平均SaaS導入数は80とされています。これに対して日本の導入数はそれよりも大幅に少ない状況にあります。したがって、日本におけるSaaSの普及や導入はまだ途中段階であり、今後の成長が期待されています。
冒頭で日本のクラウドサービス支出の遅れの要因を3つ挙げました。
オンプレミス信仰の根強さ:過去のデータセンター投資や情報セキュリティへの懸念から、オンプレミス環境への固執が根強く残っています。
レガシーシステムとの互換性:既存のレガシーシステムとの互換性や移行コストの課題が、クラウド化を阻む壁となっています。
人材不足:クラウド環境の構築・運用に必要なスキルを持つ人材が不足しています。
しかし、近年アメリカでは、SaaSを主体として運営している組織が増えてきています。これは、SaaSを活用したワークプレイスはデジタル・トランスフォーメーションが最も進んでいるとされ、これを目指す企業が増えているからです。このトレンドは続くと予想され、最終的には全ての職場がSaaSを利用するようになると見られています。
デジタル・トランスフォーメーションが実際にどの程度の影響をもたらすかについて、具体的な差分を見ていきましょう。米国においては、データを活用した結果として売上が増加したという報告が7割前後の企業から出ています。これは、データを効果的に活用することでビジネスに大きな利益をもたらす可能性を示しています。
一方、日本においては、データ利用による売上増加効果を経験したという報告は2割前後の企業からしか出ていません。これは、米国の企業と比較して著しく低い数値であり、日本の企業がデータを十分に活用できていないことを示しています。これは、日本の企業がデータ活用による売上増加の潜在能力を完全には引き出せていない現状を反映しています。
データの利活用における差が生じる要因は多数ありますが、その一つとして、SaaSの導入数に伴うデータ利活用に関する技術の活用状況の違いが挙げられます。
具体的には、日本はまだ「データ整備ツール」や「マスターデータ管理」など、データ利活用の基礎段階のツールや技術に焦点を当てている状況です。これは、データの整理や管理を行う初期段階のツールや技術への依存度が高いことを示しています。
一方、米国では、より発展した段階である「データハブ」や「データ統合ツール」など、複数のデータを統合して活用するためのツールや技術の利用が進んでいると言われています。これは、データの集約や統合、業務の自動化を通じて、より効率的で、より高度な分析や洞察を得るための取り組みが進んでいることを示しています。
近年、IT自動化のメリットを最大限に享受し、手間をかけずに効率的に業務を遂行しようとする企業の数が増加しています。これは、自動化によって時間の節約が可能となり、その時間をより戦略的なタスクに割くことができるからです。
現在、定型的なSaaSオペレーションプロセスの約3分の1がすでに自動化されているというデータが存在し、これは自動化の波が広がっていることを示しています。
そして、この自動化の波は今後も止まることはないと予測されています。具体的には、今後数年間で、SaaSオペレーションの自動化はほぼ倍増すると見込まれています。これは、企業がIT自動化の重要性を認識し、さらにその導入を進めていくことを意味しています。これらの動きは、効率的なビジネス運営における自動化の役割が今後も増していくことを示しています。
近年、政府は「クラウド・バイ・デフォルト」原則を掲げ、官公庁のクラウド化を積極的に推進しています。また、民間企業でも、デジタルトランスフォーメーションの加速やコスト削減効果を求め、クラウド導入を検討する企業が増えています。
クラウド化を成功させるためには、以下の点が重要です。
Gartner社は、日本のクラウドサービス市場は今後5年間、年平均23.8%の成長率で拡大すると予測しています。政府の推進や企業の意識改革により、日本企業のクラウド採用は今後ますます加速していくでしょう。
参考:
・Cloud Adoption: Where Does Your Country Rank?(Gartner)
・DX白書2023(独立行政法人情報処理推進機構)
>>>「営業チームを成功に導くテクノロジーと専門チーム」へ続く
現在、BtoBマーケター・セールス担当者向けに、ノウハウやナレッジを披露していただける専門家の方を募集しています。
【募集要項】
■対象:BeMARKE読者に気づきや学び、課題解決に役立つ情報提供が可能な方。
■条件:月1回以上の執筆が可能であること。
■費用:記事掲載料請求はありません。無料での掲載が可能です。
■注意事項:自社サービスのプロモーションを主目的とした内容は掲載できかねます。
【申込み・お問い合わせフォーム】https://be-marke.jp/contact