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競争力を高める営業オペレーションのデジタル化と改善手法

競争力を高める営業オペレーションのデジタル化と改善手法

本記事は、連載シリーズの第3弾です。第1弾では、日本と米国のSaaS導入状況を比較し、日本企業のデジタル化における課題と対策を解説しました。第2弾では、Sales Opsチームの役割と、テクノロジーを活用して営業チームを成功に導く方法について詳述しました。そして今回は、営業オペレーションの自動化と改善に焦点を当て、実用的なツールの紹介を交えながら実践的なステップを具体的に紹介します。

第1回:日米SaaS導入比較から考える、BtoB企業が成果を出すためのヒント
第2回:営業チームを成功に導くテクノロジーと専門チーム

目次

なぜ営業にテクノロジー活用が必要なのか

背景

現代の営業チームは、急速に変化する市場環境と多様化する顧客ニーズに対応するため、従来の営業手法だけでは限界に直面しています。特に、顧客の購買プロセスはデジタル化が進み、オンラインでの情報収集や意思決定が主流となりつつあります。このため、営業チームには、個々の顧客ニーズに迅速かつ的確に対応する能力が求められますが、手動での管理や情報共有では限界があります。

システムやツールを駆使してオペレーションを強化することが、営業効率を高めるために不可欠です。例えば、CRM(顧客関係管理)やSFA(Sales Force Automation)を導入することで、営業活動をデジタル化し、データに基づくアプローチを可能にします。これにより、営業活動の精度とスピードが向上し、より多くの成約機会を創出できます。

デジタル化が求められている要因=日本の営業の問題点

しかし、日本企業では、営業のデジタル化やデータ活用が依然として遅れています。多くの企業がスプレッドシートや手作業に依存し、最新ツールの導入に消極的です。例えば、HubSpotが2022年に行った調査によると、日本企業のCRM導入率はわずか35%にとどまっており、米国の91%と大きな差があります。 この遅れは、手作業による管理から抜け出せていない現状を反映しています。デジタル化の推進により、グローバル市場での競争力を高めることが喫緊の課題なのです。

現代の営業組織が直面する課題(株式会社Mer)|BeMARKE(ビーマーケ)"

競争力を高めるためのオペレーション構築をステップごとに解説

ステップ1: 現状の可視化と課題の特定

まずは現在の営業オペレーションを詳細に可視化することが重要です。Miroに代表されるオンラインホワイトボードツールなどを使用して、オペレーションの流れや手作業が発生している部分を洗い出します【下図参考】。

これにより、非効率な部分や手動作業が多く時間のかかる部分を特定し、自動化が必要なポイントを見つけ出せます。例えばたとえば、営業からマーケティングへのリード情報の引き継ぎが手間であれば、ツールを使った自動化が解決策になります。

Miroに代表されるオンラインホワイトボードツール(株式会社Mer)|BeMARKE(ビーマーケ)"

ステップ2: 必要なツールの選定

ツールの選定は、企業の規模、既存システムとの連携可能性、業務の特性を考慮することがポイントです。例えば、ノーコードでの作業を自動化・効率化するのに便利なMakeを使うことで、リード情報の収集を自動化し、CRMに自動転記するワークフローを数クリックで設定できます。これにより、営業チームはリードの管理にかける時間を大幅に削減できます。また、CRMプラットフォームのPipedriveを導入することで、営業オペレーション全体を見える化し、どのステージでリードが停滞しているかを簡単に把握できます。

ツール選定の際に注目すべきポイントは以下の3つです。

  1. iPaaSに対応しているか:
     異なるシステム間のデータ連携をシームレスに行うためには、iPaaS(Integration Platform as a Service)対応が欠かせません。
  2. APIが開放されているか:
    カスタマイズや高度な連携を実現するために、APIが利用可能であること。
  3. 必要なインテグレーション有無:
    既存のシステムや他のツールとの統合が可能であること。

これらのポイントのいずれかが欠けていると、システム間での情報の断絶(サイロ化)が発生しやすくなり、営業活動全体の効率が低下するリスクが高まります。そのため、ツールの選定時には慎重な確認が必要です。

▼参考:Merが3つの選定ポイントに照らし合わせて利用している主要サービス

Merが3つの選定ポイントに照らし合わせて利用している主要サービス(株式会社Mer)|BeMARKE(ビーマーケ)"

ステップ3: 自動化の設計と構築

ステップ2で選定したツールを、iPaaSやインテグレーションを用いて連携することで、データの統合やアクションの自動化を実現します。これにより、業務におけるムリ・ムダ・ムラを削減し、生産性を大幅に向上させることが可能です。

自動化の設計と構築(株式会社Mer)|BeMARKE(ビーマーケ)"

例えば、以下のような営業オペレーションの自動化が有効です。

  • リードデータの収集と分類:ウェブサイトから取得したリード情報を自動的にCRMへ登録し、セグメントごとに分類。
  • 問い合わせがあった顧客の過去接触履歴の自動参照: 顧客からの問い合わせを受けると、自動的に過去の接触履歴を確認し、最適なフォローアップ方法を提示。
  • 商談情報の自動アップデート: 商談の進展があるたびに、CRM内の情報を自動で更新し、最新の状況を営業チーム全体で共有。

これらを実行することで、営業担当者は手動でのデータ入力や初期対応にかける時間を削減し、より戦略的な業務に集中できるようになります。

AIやiPaaSの役割

AI(人工知能)は、データに基づく予測分析やパターン認識、非構造化データの整理・変換を得意とし、従来は人の判断が必要だった業務の自動化を実現します。例えば、AIを用いることで、過去の顧客データから最適なアプローチ方法を予測し、メールやチャットの対応内容を自動生成することが可能です。

一方、iPaaSは、異なるシステムやアプリケーションをシームレスに連携し、データの自動同期を可能にするプラットフォームです。これを活用することで、例えばCRMと会計ソフトを連携させ、受注が確定した際に自動で請求書を発行するといったオペレーションを構築できます。

さらに、AIとiPaaSを組み合わせることで、より高度な自動化が実現します。例えば、お問い合わせがあった顧客のサイトホームページを自動で解析し、属性情報や過去の接触履歴をもとに、顧客の現状の課題を推定します。そして、自社のサービスがどのように価値を提供できるかを判断し、初回アプローチ用の文面を自動生成、さらにその内容をもとに担当者へフォローアップタスクを割り当てることができます。このように、AIとiPaaSの協力によって、営業活動のスピードと正確性が同時に向上し、業務全体の効率化がさらに進みます。

ステップ4: 効果測定と改善のサイクル

Sales Opsチームの組成と適切な運用を通じて、効果測定と改善サイクルを構築することが、営業活動の効率化において重要な鍵となります。

※Sales Opsチームの解説はこちら
https://be-marke.jp/articles/tips-mer-saas2

まず、オペレーション改善の効果を正確に把握するためには、KPI(Key Performance Indicator)の設定が必要です。具体的には以下のような指標などが有効です。

  • 営業生産性の向上率: 営業担当者一人あたりの成約数や商談件数を測定し、生産性が向上しているかを確認。
  • リードから商談への転換率: リードジェネレーションの成果を数値で把握し、営業オペレーションがどの程度効果的かを判断。
  • フォローアップ対応時間の短縮率: フォローアップ業務の自動化によって、担当者が対応にかける時間をどれだけ短縮できたかを測定。

これらの指標をもとに、営業活動全体の改善が進んでいるかどうかを定期的に確認することが重要です。

また、PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)の導入も効果的です。特に、Sales Opsチームが中心となって以下のような流れを繰り返し実行することで、オペレーションの継続的な改善を促進します。

  1. Plan(計画):
    現在の営業オペレーションの課題を特定し、どの部分を改善すべきか計画を立てる。
  2. Do(実行):
    新しいオペレーションやツールを導入し、実際に改善施策を実行。
  3. Check(確認):
     KPIに基づいて改善効果を測定し、どの施策が成功しているか、どの部分にさらに改善の余地があるかを評価。
  4. Act(改善):
    評価結果に基づいて、次のアクションを計画し、さらにオペレーションを最適化。

これにより、常に営業活動が進化し続け、結果としてパフォーマンスが底上げされます。例えば、営業担当者の成果が均一化され、成果のばらつきを解消することで、チーム全体の生産性向上が期待できます。さらに、継続的にデータを分析し、ツールやオペレーションの効果を最大化することで、企業全体の営業活動が一段と効率化されるでしょう。

現場の声を取り入れる仕組みづくりの重要性

改善のサイクルを回す上で、現場の声を取り入れる仕組みを作ることも非常に重要です。例えば、可視化に優れた汎用型のプロジェクト管理ツールのMonday.comを利用して社内からの要望や改善アイディアを受け付けるフォームを用意し、タスク化することで、いつでも従業員が意見を出せる環境を整えることができます【下図参考】。

これにより、現場のニーズや改善点を迅速に把握し、適切に対応することが可能となります。

可視化に優れた汎用型のプロジェクト管理ツールのMonday.com(株式会社Mer)|BeMARKE(ビーマーケ)"

また、Sales Opsチームは定例ミーティングを開催し、上がってきた要望やアイディアを確認・精査しましょう。その場で、どの要望を実装するか、スケジュールをどう組むかといった判断を行い、実際の業務改善につなげていきます。このような仕組みを導入することで、現場の声が反映されやすい風通しの良い環境が生まれ、営業オペレーションの改善がさらに加速します。

こうしたステップを踏み、KPIをもとにした効果測定と、現場の声を反映する仕組みを組み合わせることで、営業活動の改善サイクルがより効果的に回り、企業全体の成長を支える基盤を築くことができます。

【オペレーション構築におけるステップ】
1:現状の可視化と課題の特定
2:必要なツールの選定
3:自動化の設計と構築
4: 効果測定と改善のサイクル

ケーススタディ: オペレーション強化の成功事例

実際にどのようにオペレーションを強化していけばよいのか、イメージがしやすいよう3社の事例を紹介します。ツール導入がゴールではなく、社内の体制を整備しながら長期的なパフォーマンス向上を目指すためにどのような点に注意すべきか、実行するのかをぜひ参考にしてみてください。

まとめ

営業オペレーションの改善やデジタル化を進める際、最新のツールを導入するだけではなく、実践と継続的な改善が重要です。変化の早いビジネス環境において、データの活用や自動化を適切に取り入れることで、競合との差をつけることが可能です。一歩ずつ社内体制を整え、現場のニーズに応える改善を進めていくことで、営業チームのパフォーマンス向上と長期的な成長が期待できます。焦らず、確実に進めていきましょう。

BeMARKE編集部より

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この記事を書いた人

 澤口友彰
澤口友彰 | 株式会社Mer 代表取締役

1988年、東京生まれ。経費削減や業務効率化支援を行うベンチャー企業に入社後、新規事業立ち上げや既存事業の拡大に尽力し、同社の執行役員に就任。その後、関連会社のビジネスサイド立ち上げに従事し、2020年に株式会社Merを設立。「営業活動の土台を創る」をミッションに掲げ、営業活動におけるデータ・基盤・仕組みを各プロダクトを通じて提供し、クライアントを支援。Pipedrive販売店として2年連続でAPAC一位を獲得。

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