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スキルマップは、業務に必要なスキルを洗い出し、従業員のスキルレベルを可視化するためのツールです。
従業員のスキル向上のための施策として取り入れられることが多いですが、組織の行動水準を定義するものとして、スキルマップは重要な意味を持ちます。
本記事では、インサイドセールス組織の質を高めるスキルマップの作り方について、BtoB企業へ営業支援を行う株式会社ブレーンバディが、詳しく解説していきます。
これまでの連載では、インサイドセールスの立ち上げのポイントや成果を出す組織づくりについても説明していますので、あわせてご確認ください。
第1回:インサイドセールス導入のポイントをプロが解説!役割、指標、組織体制の決め方とは
第2回:インサイドセールス成功の秘訣は「導入目的を顧客起点で考えること」【プロが解説】
第3回:強いインサイドセールス組織をつくるには? プロが語る、リードの案件化数を高める戦略
インサイドセールス組織において、スキルマップは、組織の行動水準を定義するものとして重要な意味を持っています。
製造業、接客業、エンジニアなどの内勤業務でも、必ず求められるQCD(品質・コスト・納期)があります。製造業の場合は、QCDは製品として表れますが、無形商材だとメンバーの行動やスキルがQCDを左右します。
したがって、インサイドセールス組織の質を高いレベルで担保するためには、スキルマップの活用が有効なのです。
インサイドセールス組織の行動水準も、顧客起点で定義していく必要があります。まず、ビジネスプロセスやバリューチェーンを分解し、各プロセスで求められる行動を言語化していきます。
営業プロセスでの具体例をあげると、商談フェーズをいくつかの段階に細分化し、この状況の顧客に対しては、どのような活動を行うべきか、その活動を行うために必要な知識やスキル、ツールは何かなどを一覧にしていくのです。これを当社では、Sales How Bookと呼んでいます。
次に、各フェーズで必要なスキルを細かく可視化していきます。当社ではレベルマップと呼んでいますが、これが一般的に言うスキルマップです。
当社では、インサイドセールスのレベルを1~11まで設定しており、各レベルで求められる状態を定義しています。例えば、レベル1では「ブレーンバディを説明できる状態」、レベル2は「インサイドセールス業務について説明できる状態」、レベル3は「顧客の商材について説明できる状態」などです。各レベルの抽象的な状態を言語化できたら、更にその状態を定義にズレが無いように詳細に分解します。
当社の例をご紹介しましょう。
例)【レベル4】
求められる状態:システムを使える状態
● 架電システム上で、ログインからコールの作業までひとりで行える
● 架電システム上で、自身の架電音声を聴ける
● 架電音声のダウンロードができる
【レベル5】
求められる状態:トークスクリプト通りに顧客と会話できる状態
● 2秒以上止まることがなくスプリクト通りにトークができる
● 不在時及び対応不可の場合に、次回架電可能日時をスプリクト通りに聞くことができる
● アポイント獲得後、スクリプトに記載のヒアリング項目が聞ける
このように、求められる状態について、具体的な行動を明示することが大切です。各レベルの状態を、ここまで明文化できていれば、セールステックなどのスキル管理ツールを利用しても良いでしょう。
しかし、スキルマップは状況に即して変化していくべきものなので、ある程度完成されたスキルアップになるまではExcelなどアナログな方法で管理していく方が効率的かもしれません。
スキルを評価するときに気を付けなければならないことは何でしょうか。
よくある失敗例としては、商談数、商談化率、担当者/決裁者への通電率、受付ブロック率など、スキルの評価基準に定量的なものだけをおくケースです。客観的に評価できるように思えますが、数値指標だけでは、スキルの全体像を正確に捉えることはできません。数値で示されたスキルが、実際の状況や業務にどれだけ適しているか、そのコンテキストにおいてどのように発揮されているのかが明確ではないからです。
そこで、定性的な評価基準が必要となります。しかし、ここでも注意が必要です。評価者の解釈によって評価が変わってしまう指標を作らないようにしましょう。例えば、「分かりやすく話せているか」「迅速なアクションがとれているか」といった指標は、評価者によって解釈がさまざまです。評価者の解釈によってぶれてしまうような指標では、適正なスキル評価ができません。
数値指標はおきながらも、解釈の分かれない定性指標を設定していくことが大切です。
では、評価者によって解釈の分かれない定性指標とはどのようなものでしょうか。誰が評価しても同じになるような評価基準として当社の例を紹介します。
当社ではロープレチェックシートを作成し、上司とのロープレでメンバーのスキルを判断しています。ロープレチェックシートでは、先ほど例にあげた「2秒以上止まることがなくスプリクト通りにトークができる」というチェックポイントに対して、「句読点、意味の切れ目以外で止まった箇所が何回あるか」「詰まったり、言い間違えが何回あったか(目安5回程度)」など、客観的な数値で判断できるように評価基準を設定しています。定性的な指標でも、具体的な数値を目安におくことで、評価者に依存しない評価が可能になるのです。
スキルマップと同様に、スキルを評価するための基準の設定も、作成には時間を要します。しかし、評価者の感覚に依存せず、暗黙知のないような形で公正な評価基準を設定することは、組織全体のスキルアップを計るうえでも重要でしょう。
メンバーのスキルの評価頻度は、企業によってさまざまだと思います。当社の場合は、基本的には週次、最低でも月1回はスキル評価を行っています。
上司に自身のスキルを定期的に評価してもらう機会を設けることは、メンバーのモチベーションアップにつながるでしょう。特に、当社の場合、アルバイト、パート、インターン生は、スキルマップのレベルによって給与が変動する仕組みを取っています。レベルアップすれば翌月の給与に反映されるので、スキル向上に意欲的に取り組めるのです。
ただし、評価することが目的となってはいけません。顧客の課題解決のためにスキル向上が必要なのです。顧客への価値提供レベルを高めるためには、どのスキルを伸ばす必要があるのか。それを明確にするための評価ということを忘れないでください。
スキルマップを活用することは、従業員のスキル向上のためにも有効ですが、自社のサービスや製品の品質が標準化されるので、顧客起点で考えても価値のあるものです。
特に、営業において、営業スキルの標準化は顧客体験に直結します。「いい製品/サービスを作りましょう」「このような売り方をしましょう」といった表層的な部分より、
営業スキルの土台を揃えたり、高めたりすることの方が、顧客体験の向上に直接的な効果があるのです。
スキルマップの施策についても、顧客起点であることを忘れてはいけません。
質の高いインサイドセールス組織をつくるには、顧客起点で組織の行動水準を定義し、その行動水準が標準化されるようにスキルマップを作成することが重要です。また、スキル評価の際にも、数値を交えた具体的な評価基準を設定し、個人の主観に依らない評価ができるような仕組みを作る必要があります。
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