基本ノウハウ
営業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)化が進む日本企業において、注目を集めている「インサイドセールス」。「自社でも立ち上げたい」と考えている担当者も少なくないでしょう。インサイドセールスを導入することで、営業効率および生産性の向上が期待できます。そこで本記事ではインサイドセールス立ち上げのステップや導入時のポイントを解説します。また最後には、実際にインサイドセールスを導入した企業事例も紹介しますので、自社の実情と比較しながらぜひ参考にしてください。
インサイドセールスを導入することで、営業活動の効率化および属人化の防止など、さまざまなメリットが期待できます。ここではそんなインサイドセールス立ち上げ・導入の具体的な5ステップについて解説します。
最初にインサイドセールスを立ち上げる役割や目的を定めます。両者を明確にしなければ、活動の軸ができず、インサイドセールスがただのテレアポ部隊になりかねないためです。
具体的には、インサイドセールスの立ち上げによりどのような課題を解決したいのかを考えることで、役割・目的も見えてくるでしょう。
<インサイドセールスの役割・目的例>
上記は「受注数が少ない」という課題に対し、役割・目的を明確化した例です。まずは課題を洗い出すことから始めてみましょう。
次に、インサイドセールスでは「どのようなターゲット(だれに)」「いつ」「どの情報を」、見込み顧客に提供するのかを考えましょう。手当たり次第、かつおのおのが独自のやり方でアプローチしては、業務の属人化が発生したり、ノウハウの蓄積ができなかったりとさまざまなデメリットが生じるためです。
<例>
上記の通りに対応した結果、商品案内メールが開封された場合には、例えば「さらにキャンペーン告知を送る」というアプローチも考えられます。このように「だれに」「いつ」「どの情報を」という3つの項目を土台とし、有効なシナリオを設計することもできます。
KPIとは「重要業績評価指標」と訳され、簡単にいうと「中間目標」のことです。インサイドセールスの立ち上げ時も職種ごとにKPIを設定し、目標を明確化しましょう。
インサイドセールスの職種例 | 役割 | KPI例 |
---|---|---|
SDR(Sales Development Representative) | マーケティング部門が獲得した見込み顧客へアプローチをかけ、商談機会を創出する | 有効商談化率 |
BDR(Business Development Representative) | ターゲット企業を定め、能動的にアプローチする | 商談数 |
オンラインセールス | 訪問はせずに、オンライン上でクロージングまで完結させる | 資料送付数 |
また、KPI設定時には、業務内容が被らないように、最低限インサイドセールスと業務が接するカスタマーサクセスおよびフィールドセールスとの合意は取るようにしましょう。
KPIの設定をしたあとは、インサイドセールス人材の確保および選定を進めましょう。ここでいうインサイドセールス人材とは、部門の責任者と実際にインサイドセールスを行う人材を指します。
またインサイドセールス立ち上げ時には、ルールや役割の変更などに対し、柔軟かつスピーディーに対応できるように、少人数で始めることがポイントです。なお、社内で人材確保が難しい場合は、求人募集をかけ、社外より経験者を採用しても良いでしょう。
最後にインサイドセールスで利用するツールを選定し、導入しましょう。ツールには例えばSFA(営業支援ツール)やMA(マーケティングオートメーション)があります。
これらのツールを活用することで、業務の効率化のほか、インサイドセールスには欠かせない「他部門との情報共有」も、手間なく進めることができます。
インサイドセールスの立ち上げステップが分かったところで、続いては立ち上げ・導入時に押さえておきたいポイントを3点解説します。
人によって成果の差が出たり、インサイドセールスでの業務が属人化したりする事態を防ぐためにも、事前にトークスクリプトを作成しておきましょう。作成時には、優秀な営業員のトークを参考にするのも有効です。
ただし、スクリプトは初めから完璧なものを作る必要はありません。最初から完璧なものなど作れず、時間がもったいないためです。スクリプトは実務を通して知見を蓄積していき、改善を重ねていきましょう。
一般的に、まだまだ「インサイドセールスの役割が分からない」「部門を立ち上げるメリットは何?」という意識の人も少なくありません。そのため、組織の立ち上げ時には、フィールドセールスやカスタマーサクセスなど、とくにインサイドセールスと関わりの深い部門に、インサイドセールスの意義・目的を十分に周知しておきましょう。他部門に意義・目的をしっかり認識してもらうことで、意思疎通がしやすくなるほか、立ち上げ後の連携もスムーズになります。
インサイドセールス=テレアポ、という認識の人もいるかもしれません。そのため、両者の違いを明確にし、部門のメンバー全員にインサイドセールスの意義・役割を正しく認識してもらう必要があります。
<インサイドセールスとテレアポの違い>
テレアポの目的が「商品説明+アポイントを取ること」に対し、インサイドセールスの目的は「コミュニケーションをつうじて、顧客を育成すること」。
両者の違いを認識せずに、インサイドセールスでアポイントの獲得に注力してしまった場合、「現時点ではアポイントは取れないが、将来的に商品・サービスを購入する可能性のある見込み顧客」を逃すことになるかもしれません。
インサイドセールスで成果を上げるためにも、部門のメンバーにテレアポとの違いを理解してもらうことが大切です。
ここまでインサイドセールス立ち上げのステップや導入時のポイントを解説してきましたが、担当者によっては「部門を立ち上げるリソースもノウハウも足りない」という方もいるでしょう。
そのような場合、インサイドセールスの立ち上げ支援を行う会社に依頼するのも1つの方法です。支援内容としては、例えばインサイドセールスの設計やトークスクリプトの作成支援、研修・トレーニングなどがあります。
自社のリソース状況に応じて、上手に外部の力も利用しましょう。
最後にインサイドセールスを実際に立ち上げた企業事例を2社見ていきましょう。
株式会社オンリーストーリーは、審査制・決裁者マッチングプラットフォームを運営しているセールステックカンパニーです。同社は、社長の「インサイドセールスを立ち上げておいて」という一言により、当時のインターン生の男性一人で部門立ち上げに奮闘したという、ユニークな経緯でインサイドセールスが導入されました。
このインターン生の男性は立ち上げ準備期に、ネットや本でインサイドセールスについて学習し、取り急ぎインサイドセールスとして、「マーケティングが取ってくる見込み顧客をフィールドセールスへ良い状態でパスすること」が必要だと判断。ヒアリング項目をまとめたり、SFAの一つ「Salesforce」を活用したりし、その役割を果たすことに尽力しました。
そして2022年7月現在、同社のアカウントの大半はインサイドセールスとマーケティングとが連携して開拓した顧客で構成されています。
参考:インサイドセールスの手引き「【対談前半】チラCEOの急成長の裏側!株式会社オンリーストーリーの事業部長竹中氏に聞いたインサイドセールス組織立ち上げ秘話と効果的な施策2選」より
株式会社etikaは、山口県・福岡県を中心に、eコマース運用支援やCRM導入支援を行っている企業です。当初はインサイドセールスという部門・役割のなかった同社ですが、「商談が得意な営業員には商談に集中してほしい」という思いから、アポイント獲得担当と商談担当とを分業化します。これがインサイドセールス立ち上げの最初の取り組みでした。
同社は、アポイント獲得担当と商談担当、それぞれに適切な人員配置を行うことで、インサイドセールスをうまく機能させることに成功させます。また、その後は受注までの全営業プロセスをインサイドセールスに割り振るという、チャレンジングな取り組みも行ったそうです。
参考:インサイドセールスの手引き「【対談前半】元株式会社イノベーションの事業責任者が語る!リストファインダー立ち上げ時期のインサイドセールス体験談」より
インサイドセールスは立ち上げることを目的にしてはいけません。本記事で紹介した、5ステップおよび立ち上げ時の3つのポイントを踏まえて、うまく機能する組織を立ち上げることが大切です。うまく機能しさえすれば、効率的な営業活動を展開できるでしょう。インサイドセールス立ち上げ支援サービスの活用も検討しつつ、インサイドセールス立ち上げのステップを進めてみてはいかがでしょうか。