Tips
本連載では、BtoB企業への営業支援を行う株式会社ブレーンバディが、これまで6回にわたり、インサイドセールスの組織づくりのポイントをお話してきました。
どんなに完璧だと思われるようなインサイドセールス組織をつくっても、構成しているのは人間です。なかなかアポイントが取れない、断られてばかりでモチベーションがあがらない、思ったような成果が得られないとき、徐々に組織は燃え尽き症候群のような状態に陥ります。
大切なのは、モチベーションが下がりやすいことを前提として、モチベーションを維持できる仕組みを構築することです。連載最終回の今回は、インサイドセールス組織の燃え尽き症候群を防ぐための施策についてご紹介いたします。
インサイドセールス含め営業職は、成果が分かりやすく可視化される職種です。成果が出たときの喜びが大きい一方で、うまくいかないときは焦りも感じてしまいます。
例えば、新しく配属されたインサイドセールスが、アウトバウンドコールで、1日何十件、何百件と電話をかけているのに断られ続けてしまう。何日も結果が出ないと、だんだんとモチベーションが下がってしまうかもしれません。
なぜ、モチベーションが下がってしまうのか。それには大きく2つの原因が考えられます。
1つ目は、目的が不明確な状態で仕事をしていること。「何のために、こんなにつらい気持ちで仕事をしているんだろう」、このように思っていると、モチベーションは低下してしまいます。
2つ目は、疑念がある状態で仕事をしていること。自社や自社のサービス・製品のことを良いと思えない、自分のやっている仕事に自信がない、このような状態でもモチベーションの低下を招きます。
100件断られても、自信を持って101件目のアウトバウンドコールができる人材を育てるには、企業側が、仕事の目的を明確に説明し、自社と自社のサービス・製品の理解を促す必要があります。
モチベーション低下の2つの原因とモチベーションを維持させるための施策について、もう少し詳しく見ていきましょう。
まず「目的」ですが、目的には、「業務の目的」と「自分のキャリアにつながる目的」の2つがあります。
「業務の目的」を明確にしてもらうためには、今自分のやっている目の前の業務が、何につながっていて、お客様をどう変えるのか、そしてその先に会社がどうなっていくのか。1つの点のように思える業務が、お客様や会社のどんな未来に続いているのかをしっかりイメージしてもらうことが重要です。
架電業務から、いきなり会社の未来を想像するのは難しいかもしれません。その場合は、架電業務の一つ先に何が続いているのか、またその先に何があるのか、一つひとつの点を丁寧に結び、現在の業務の延長線上にある目的を理解してもらいます。
インサイドセールスは、単なるアポ取り部隊ではありません。インサイドセールスのおかげで、顧客からの生の声など、定性的なデータを収集することができます。リードを商談につなげるだけでなく、断られた理由が蓄積されることも、自社にとっては大きな資産です。インサイドセールスがいるから、お客様への価値提供が最大化できていることを伝えていきましょう。
目的の2つ目、「自分のキャリアにつながる目的」を明確にするには、会社がいくつかつモデルケースを提示することが有効です。
この仕事をやりきったら、どのようなスキルが身に付き、どんな経験が積めるか、そうするとどういうキャリアを歩めるか。「インサイドセールスで成果を出した先輩は、今こういうことをやっているよ」「A,B,C,D……こんな先輩たちがいるけど、あなたはどうなりたい?」など、身近な先輩を例にあげてイメージしてもらうと、キャリアビジョンが描きやすいと思います。
自分がどうなりたいか、明確なイメージを持てていない方も多いので、ゼロから自分のキャリアを描くのではなく、理想となる先輩を目指してもらうのです。
「A先輩のようにマーケティング部門で活躍するためには、インサイドセールスでこういう経験を積む必要がある」、と目標ができれば、前向きに仕事に取り組めます。
業務の目的と、自分のキャリアにつながる目的は、2つともが明確になっている必要があります。
業務の目的を理解していても、自分の思い描くキャリアにまったくつながらない仕事であれば、やる気は起きません。また、自分のキャリアにつながるとわかっていても、やっている業務自体の目的が理解できていなければ、思うような成果は出ず、苦しい日々が続きます。
業務の目的を理解してもらうこと、業務の先に自分のキャリアを描いてもらうこと、この2つができているか、企業側は定期的に確認していきましょう。
インサイドセールス組織の燃え尽き症候群を引き起こす理由の2つ目は「疑念がある状態」です。
自社が信用できない、サービスや製品を良いと思えない、自分のやっている仕事が正しいのか分からない、そのような状態では、取れる契約も取れなくなってしまいます。
会社やサービス・製品については、会社側が丁寧に説明していくことで理解が深まります。なぜこの会社が存在するのか、この会社はどこを目指しているのか、この会社が大事にしていることは何か。この会社だからこういうサービスを取り扱っていて、このサービスはどういう人にどのような価値を提供しているのか。提供した先ではどういう課題を解決しているのか。
このような説明は、入社時に行うことが多いかもしれませんが、行動指針となるくらいまでメンバーに落とし込むことが理想です。日頃から業務の中で意識してもらう仕組みを作ると良いでしょう。
例えば、日報が一つの例として挙げられます。行動指針をしっかりと言語化し、会社として掲げた上で、日々の日報を通じて実践の振り返りを行います。これにより、メンバーが行動指針に基づいて行動できたかを確認し、常に意識する仕組みを作ることができます。
このプロセスにより、メンバーは日常業務の中で企業理念やサービスの理解を深め、それに基づいた行動を取ることができるようになります。
自社と自社のサービスに自信が持てると、お客様へサービスを勧める自分の行動は正しいものだと思うことができます。すると、自分の発言にも自信が持てるので、自社のサービスで課題解決できるお客様に対してきちんと売れるようになっていきます。
オンボーディングに時間をかけずに、「ミッションはこれだから、自分で考えてやってみて」というようなケースは、モチベーション低下を引き起こすことが多いです。よくサービスを理解しないまま、あるいは間違った理解をしたままでは、目標を達成するのは難しいからです。
また、トークスクリプトやマニュアルだけを渡して、ひたすらマニュアル通りに作業をやってもらうケースも要注意です。目的がわからない状態で、ただ成果を出すことだけを求められることでモチベーションを下げてしまいます。
前回までの6回の連載では、インサイドセールス組織づくりのテクニカルな部分を中心に説明してきました。もちろん、テクニカルな要素はとても大切です。
しかし、組織の中にいるのは人間です。何のフォローもしなければ人はモチベーションを保ち続けることが難しくなってしまいます。組織が燃え尽き症候群に陥ってしまうと、どんなに素晴らしいマーケティング施策を取り入れても有効ではありません。また、洗練されたトークスクリプトや良いリードを供給したとしても、それをうまく活用することはできないでしょう。
インサイドセールス組織をうまく運用し続けるには、組織の枠組みだけではなく、組織がエンパワーメントしている状態か、エンゲージメントが高い状態か、組織の内側にまでしっかりと目を向ける必要があります。
現在、BtoBマーケター・セールス担当者向けに、ノウハウやナレッジを披露していただける専門家の方を募集しています。
【募集要項】
■対象:BeMARKE読者に気づきや学び、課題解決に役立つ情報提供が可能な方。
■条件:月1回以上の執筆が可能であること。
■費用:記事掲載料請求はありません。無料での掲載が可能です。
■注意事項:自社サービスのプロモーションを主目的とした内容は掲載できかねます。
【申込み・お問い合わせフォーム】https://be-marke.jp/contact