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テクノロジーの進化によって、効率的で生産性の高い営業活動が可能になりました。
インサイドセールスにおいても、さまざまなデータを活用して、より戦略的なアプローチがとられています。さらにAI技術を駆使することで、今後インサイドセールスの質はますます向上していくでしょう。
では、そんなAI時代に必要とされる営業のスキルとはいったいどのようなものなのか。営業が発揮できる価値とは……
BtoB企業への営業支援を行う株式会社ブレーンバディが、インサイドセールス組織について解説する連載企画。第6回は、テクノロジーと共に進化するインサイドセールスの在り方とAI時代に必要とされる営業スキルについてお話します。
ひと昔前のインサイドセールスは、リストから網羅的にテレアポやDM、手紙などを送り、とにかく1件でも多くのアポを獲得して商談につなげる、という手法が一般的でした。
しかし、テクノロジーの発展により、現在はより効率的で生産性の高い手法に変わっています。
まず、探客の段階では、インテントデータなどを活用することで、ニーズの高そうなリードを見つけることができるようになりました。インテントデータとは、顧客が現在どのようなことに興味関心を持っているかを示すデータです。
例えば、企業のWeb検索、サイト閲覧など、Web上での行動履歴データを分析すると、リードが今抱えている課題やニーズを推測したり、どのようなソリューションの購入を検討しているのかを把握できます。
顧客の興味・関心・意向などを可視化できるデータは他にもあります。
採用に積極的な企業は、事業成長に力を入れている可能性が高いため、求人広告を盛んに出している企業のデータから、自社のソリューションを必要としているリードを見つけることができるかもしれません。あるいは、資金調達のプレスリリースを集約して、企業が力を入れている分野を特定した上で、分野を絞ったアプローチをすることもできるでしょう。
このように顧客のWeb上での行動データや顧客の公開情報から、ニーズの高そうなリードを見つけられるようになったのは、探客段階での大きな変化です。
探客以降の顧客育成の段階では、ハウスリストに入ってきたリードにどのようなアプローチをするかが重要です。
ハウスリストのリードに、セミナー案内やホワイトペーパーをメールで送った場合、「それを閲覧した」、「実際にセミナーに参加した」など、リードの反応をデータで収集できます。つまり、「今このリードで強いニーズが発生している」「このリードが、次のプロセスに移行した」など、検討フェーズに入ったリードがデータから分かるようになりました。
リードの今の状況を可視化し、それに応じた適切なアプローチができることで、何のニーズも発生していないリードにしつこく電話をかけてしまうようなことがなくなります。自社にとって、リードへの無駄なアクションが減って、効率的な営業活動ができる点はメリットといえます。
しかし、それ以上に注目したいのは、顧客体験が向上するメリットがある点です。求めていない営業電話があると、顧客体験は悪化してしまいます。また、一度断ったのにもかかわらず、何度も電話がかかってくると不快に感じてしまう顧客も多いでしょう。相手の状況に合わせたアプローチをすることが顧客体験に大きく関係するのです。
それでは、AI技術がインサイドセールスに今後どのような影響を与えるのか。ここからは、私の予測も交えてお話していきます。
今までは、どのような顧客の購入単価が高いか、どのような顧客がリピートしているかなど、受注後のいわゆる「結果のデータ」から受注傾向を分析し、それに基づく営業戦略を考えていました。ここにAIを導入することで、結果のデータだけでなく、結果に至るまでのプロセスデータも活用できるようになるでしょう。
例えば、年間100万円の取引がある顧客、A社とB社があったとします。同じ100万円の売上でも、A社のリードタイムが1カ月、B社のリードタイムが1年であれば、とるべき営業戦略が変わるのは明白です。
しかし、このような結果のデータだけでなく、どんな営業が、どれくらいの頻度で、どんなタッチポイントで顧客と接触し、各タッチポイントでどのような提案をし、どのような資料や情報を提供したか。
こうした受注に至るまでの詳細なプロセスデータも分析できるようになると、よりリードに即した営業戦略の立案が可能になります。
全営業社員のアクションデータ、プロセスデータを基に、「Cというリードが発生した際、このタイミングではこの資料を送って、次のプロセスではこのようなデータを共有して、次のタイミングではこのような提案をしましょう」と、細やかにアプローチ方法が提示されるようになるのです。もっと進むと、アプローチ自体も自動化されます。
現在でも、リードが入ってきたタイミングで、挨拶メールやセミナー案内を自動配信することは可能です。今後は、同じタイミングで資料請求をしたリードでも、リードによって配信されるメール内容が変わるなど、各リードに違う体験を設計することが自動でできるようになります。個々のリードに対する個別化されたアプローチがAIで自動化されるのです。
リードに合わせた個別のアプローチまでAIでできてしまうと、営業に残された価値にはどのようなものがあるでしょうか。
それは、データに表れない顧客のニーズや思いをくみ取り、その顧客に合わせた課題解決をすることです。
AIを使えば、100社の課題を傾向値で10通りくらいに分類して課題解決策を提案することが簡単にできます。しかし本来は、100社あれば100通りの課題があるはずで、課題解決策も100通りあります。AIをうまく使いながらも、その顧客オリジナルの課題解決ができる営業が必要とされるでしょう。
AIを活用すれば、このプロセスではどのようなコミュニケーションが効果的か、どのようなコミュニケーションをとるべきかを提示してくれます。この提示されたコミュニケーションをきちんと実践できるかどうかも大切です。
「人には優しくすべきだ」と分かっていても、実際に人に優しくできるかどうかは別の話です。同様に「このようなコミュニケーションをすべきだ」と言われても、その通りに実践できるとは限りません。
AIによる自動化が進んでも、「人間にしかできないこと」は残されるはずです。営業プロセスでいえば、社内調整や最終意思決定といった部分は、人間の仕事として残るでしょう。
最後の決め手となるひと言や、直接訪問で伝える熱意は、AIで自動的に作られた体験とは違う、人間ならではの武器です。高級料亭では配膳ロボットを使わないように、このような人間同士のコミュニケーションも含めて、顧客体験の向上につながるのではないでしょうか。
インテントデータなどの活用で、リードに対して、求められているタイミングで求められているアクションをとれるようになりました。
しかし、すべての顧客が自ら積極的にWeb上で情報収集をしているわけではありません。
したがって、こちらから「こういうサービスがありますよ」と働きかけるアウトバウンドの手法も無くなることはないでしょう。
インテントデータを活用すればするほど、競合との競争が生まれ、マーケティングコストはかかってしまいます。同じ傾向を持つリードを、同様のアプローチで取り合うことになってしまうからです。そうすると、1人の顧客を獲得するまでのコストがどんどん高くなります。
そこで当社では、インテントデータでは出てこないリードを可視化するツールを開発しているところです。このようなアウトバウンドにおけるテクノロジー活用のニーズは今後ますます高まることが予想されます。
今回は、インサイドセールスがテクノロジーによってどのように変化したか、またAI技術によってどのように変化していくのかをお伝えしました。
営業プロセスにうまくテクノロジーを取り入れることで、自社の生産性・効率性を向上させ、さらに顧客体験も向上できます。しかし、意思決定の最終段階で必要となってくるのは、人間同士のコミュニケーション。適切なタイミングで適切なコミュニケーションをとり、顧客に合わせた課題解決ができる営業が、今後も必要とされるでしょう。
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