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労働力減少時代に人材獲得、雇用形態にこだわらないハイブリッドな営業組織構築の戦略

労働力減少時代に人材獲得、雇用形態にこだわらないハイブリッドな営業組織構築の戦略

少子高齢化にともなう労働人口の減少で、インサイドセールスを含めた営業職の人材確保も困難な状況が続いています。今後、さらに人手不足が深刻化する日本では、正社員だけでなく、副業、業務委託、インターンなど、従業員のニーズに応じたさまざまな働き方ができるハイブリッドな組織構築が求められるでしょう。

BtoB企業へ営業支援を行う株式会社ブレーンバディは、副業や業務委託人材だけでなく、長期インターン生を採用、育成しています。今回の記事では、多様な雇用形態を強みにする新しい営業組織のつくり方について、当社の事例をもとに解説します。

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目次

深刻な人手不足の中で人材を確保するには

営業職も外部人材を活用する時代

労働人口の減少により、さまざまな職種で人手不足が深刻化していますが、営業職も例外ではありません。

求職者1人に対して、何人分の求人があったかを示す有効求人倍率。厚生労働省の公表値によると、2022年度の営業職の有効求人倍率は1.91倍、2023年度(4月〜12月)は2.11倍でした(※1)。つまり2社に1社は必要な営業人材を確保できていない状況なのです。

副業・兼業の増加受け入れを検討している職種(株式会社パーソル総合研究所「第二回 副業の実態・意識に関する定量調査」をもとにブレーンバディが作成)

このような背景から、特にコロナ禍以降、副業や業務委託での営業職の需要が増えています。株式会社パーソル総合研究所が2021年3月4日〜8日に行った「第二回 副業の実態・意識に関する定量調査」によると、企業が、副業を受け入れている/受け入れを検討している職種で最も多いのは「営業(19.6%)」でした。(※2)【上写真右側参照】

ライティングやデザイン、動画作成やバナー作成など、納品物が明確な職種での副業や業務委託はよく耳にしますが、営業職ではまだあまり馴染みがないかもしれません。

しかし、営業職においても、リモートワークやセールステックの普及、インサイドセールス/フィールドセールス/カスタマーサクセスなど営業プロセスにおける役割の細分化が浸透したことにより、ジョブを細かく切り分けて担当できるようになりました。

営業プロセスの中の細かいジョブを渡せる環境が整ってきたことも、企業が、営業職の外部人材を求めるようになった要因の1つといえるでしょう。

外部人材にもカルチャーフィットが重要

外部人材を活用する場合、即戦力を求めるあまり、その人のスキルの部分だけを重視して採用を決めてしまいがちです。

しかし、採用時は、「スキルと担当業務がフィットしているか」だけでなく「考え方が企業のカルチャーにフィットしているか」も重要な視点です。

スキルだけで採用を決めると、組織に馴染めなかったり、風土やカルチャーが合わなかったりして短期で離職してしまう可能性があります。また、カルチャーに合わないことで、ハレーションを起こしてしまう、持っているスキルを十分に生かすことができない、なども考えられます。

企業が、「外部人材には切り分けたジョブを渡すだけで良い」と考えている場合、このようなミスマッチが起こってしまう恐れがあるので注意が必要です。

外部人材を採用する際のポイント

面談で人間性や人柄を見る

外部人材を採用する際に、自社のカルチャーと合うかどうかを見極めるには、面談などを通じて人柄や人間性をしっかり把握しなければなりません。

仕事に対してどういう考え方を持っているか、どのような価値観を大切にしているか、その考え方は自社のカルチャーと照らし合わせてどうかまで、面談での発言から見ていく必要があります。

外部人材の採用も正社員の採用もポイントは同じです。特に最近は、リモートワークを取り入れている企業も多いので、正社員だからコミュニケーションが密に取れるとか、正社員だから帰属意識が強い、といった既成概念が無くなりつつあります。

長く活躍してもらうためには、雇用形態に関係なく、カルチャーにフィットしているかどうかが大切なのです。

なりたい姿を実現するストーリー面談とは

相互理解のための取り組みとして当社の施策を1つご紹介しましょう。

当社では、メンバーと上司が1on1で、四半期に1度「ストーリー面談」を行っています。面談では、メンバーが事前に記入したストーリーシートをもとに、中長期(5カ年)と短期(半年)の人生ストーリーについて話し、それを実現するために自身は何をすべきかを考えます。そして上司は、会社としてどのような支援をしていくかを伝えます。

この面談の目的は、メンバー個人の人生の目標と会社の目指す方向性が合致しているかを確認することです。自分の人生で成し遂げたいことやありたい姿と、会社の目指す未来がリンクしていると感じられることで、仕事に対して、自分の人生のために取り組んでいるという実感が生まれます。このような実感が、従業員エンゲージメントの向上にもつながると考えています。

インターンの採用で組織を活性化する

インターンを採用するときのポイント

当社は創業当時から、長期インターン生を採用し、育成しています。

インターン生を受け入れる大きなメリットは、カルチャーフィットが高まり新卒採用につながる点と、学生ならではの視点や発想で組織が活性化する点でしょう。

ただし、インターン生を採用する際は、正社員や外部人材の採用とは違った視点も必要です。まず、学生であるため、大前提として仕事で生計をたてている社会人とは仕事へのコミットメントが違います。その点を頭に入れてコミュニケーション設計をしなければなりません。そのうえで、学生特有のインサイトを掴むことが重要です。

例えば、インターンをする目的が、「就職活動でガクチカ(学生時代に力を入れたこと)としてアピールしたいから」という学生と、「就職後を見据えて、このスキルを身につけておきたいから」という学生では、活躍ぶりが違うのは想像できると思います。しかし、インターンを通じて前者が後者の考え方に変わる場合もあり得ます。

ここで大事なのは、企業と学生の双方がWin-Winの関係になっているのかを、定期的に確認しながらコミュニケーションを取っていくことです。当社では、インターン生にもストーリー面談を実施して、個人の目標と会社の目指す方向性にずれが生じていないかを見るようにしています。

インターンのマネジメント

経験やスキルがある社会人の採用と違って、全く営業経験がない学生を営業職として受け入れるには、教育制度をしっかり整備しておくことも重要なポイントです。

企業理解、営業職や営業プロセスの理解、自分が行うプロジェクトの理解、扱うツールやシステムの操作方法の習得、PDCAを回して日々業務の質を高めていくためにはどうすれば良いか……少なくとも、これらの項目までは育成体制を設計しておくべきでしょう。

また、当社が、インターン生の主体性を高める施策として実施しているのが、インターン表彰制度です。例えば「Best Buddy賞」では、当社の掲げる6つのValuesを最も体現した人が表彰されます。また、Valuesの体現度を数値化し、それにより等級が決まる等級制度もあります。サブディレクターの等級になると、プロジェクト内のインターン・業務委託のメンバーを統括し、チーム全体が成果を出すためにやるべき戦略を立案します。

もちろん、インターン生の育成は時間も労力もかかるものです。しかし、インターン生が活躍できる組織は、多様な人材がパフォーマンスを発揮できる組織でもあります。

正社員だけで営業組織をつくるのは困難な時代。さまざまな働き方や雇用形態のメンバーが、互いに良い影響を与えながら成果を出せる組織をつくることは重要な経営戦略ではないでしょうか。

まとめ

営業人材の確保が困難な今、さまざまな働き方や雇用形態のメンバーがいるハイブリッドな営業組織が増えています。

ハイブリッドな組織をつくるときのポイントは、次の2つです。

1つは、働き方や雇用形態に関係なく、メンバーが企業カルチャーにフィットしているかを定期的に確かめること。これによって人材の流出を防ぎます。そして、2つ目は、未経験でもチャレンジができるような育成体制を整えておくこと。これによって必要な人材を育てるのです。

ぜひ、参考にしていただき、多様な人材が活躍する営業組織づくりを目指してください。

【数値引用】
※1 政府統計の総合窓口(e-Stat)|一般職業紹介状況(職業安定業務統計)|~令和5年12月|表21「職業別労働市場関係指標(実数)(平成21年改定)(令和4年4月~)」https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?tclass=000001213540&cycle=1&year=20230&month=24101212(参照 2024-02-04)  
※2 パーソル総合研究所|第二回 副業の実態・意識に関する定量調査|公開日2021年8月16日 https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/sidejob2.html (参照 2024-02-04)  

BeMARKE編集部より

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この記事を書いた人

大矢剛大
大矢剛大 | 株式会社ブレーンバディ 代表取締役

株式会社リクルート出身。その後、HRスタートアップに事業責任者として創業から携わり、営業組織の構築を行う。2021年4月、本格的にセールス・イネーブルメント事業を行うべく株式会社ブレーンバディを設立。学歴、職歴、働く場所、年齢などに関わらず、「一人でも多く、パフォーマンスを発揮できる機会を提供する」というミッションの実現を目指す。

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