基本ノウハウ
マーケティングにあたり、押さえておきたいMQLとSQLの知識。とくにMQLは創出することで、「営業活動の効率化」や「付加価値の高い提案」を実現できるというメリットがあります。そこで本記事ではMQLの意味やSQLとの違い、よくあるMQLとSQLの課題などについて解説します。最後にはMQLとSQLを増やした企業事例も紹介しますので、営業成績を向上させたいマーケティング担当者はぜひ参考にしてください。
MQL(Marketing Qualified Lead)とは、マーケティング活動により創出された、確度の高い見込み顧客を指します。どの程度の確度からMQLにするか、その基準は企業によって異なりますが、以下の見込み顧客はMQLと定義する企業が多いようです。
なお、MQLは「ホットリード」と呼ばれる場合もあります。
確度の高い見込み顧客であるMQLの創出プロセスは以下の通りです。
なお、抽出作業で対象外となった見込み顧客であっても、再度アプローチをかけることで、MQLになる可能性もあります。
SQL(Sales Qualified Lead)とは、営業部門が対応すべきと判断した、MQLよりも確度の高い見込み顧客のことです。MQLと同様に、どこからSQLに該当するか、その基準は企業によって異なりますが、例えば「見積もり依頼をしてきた見込み顧客」や「『このサービスを使えば当社の課題は解決できますか?』という趣旨の質問をしてくる見込み顧客」は、SQLに該当するケースが多いでしょう。
同じ見込み顧客であるMQLとSQLですが、両者の違いは簡単にいうと「見込み度合い」です。SQLの方がMQLよりも見込み度合いが高く、「すぐにでも関係性を構築・スタートできそうな見込み顧客」はSQLに分類されます。
一方で、MQLに分類されるのは「自社に興味は持ってくれているが、商品・サービスを購入してくれるかどうかは、まだ判断がつかない見込み顧客」です。その意味で、SQLはMQLの次のステージといえるでしょう。また両者の違いは、そのまま効果的なアプローチの違いにもつながるため、両者の区別は非常に重要です。
なお、マーケティング部門で精査・抽出したMQLは、営業部門へ引き継がれます。その後、営業担当者がニーズや予算、購入予定時期などについてヒアリングを行い、「購入する可能性が高い」と判断した際には、SQLに分類されます。
ではMQLを創出することに、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここではMQL創出が重要な理由を2点解説します。
マーケティング部門が創出したMQLを営業部門がフォローする体制を整えることで、営業活動の効率化を図れます。
そもそも営業部門がすべての見込み顧客へ営業活動をしていては、営業部門が疲弊してしまうリスクが生じるほか、効率はよくありません。なぜなら、購買意欲のない見込み顧客への対応にも、大きな時間が割かれてしまうからです。
一方で、MQLは一定の購買意欲が担保された見込み顧客です。そのため、営業部門はMQLのフォローを重点的にすることで、ニーズや課題が顕在化されていない見込み顧客に時間を取られることなく、効率的に案件化・顧客化を進めることができるのです。
MQLは一定の購買意欲はあるものの、どの商品・サービスを購入するか確定しておらず、またMQL側が自社の課題やニーズを把握し切れていないケースも珍しくありません。
そのため、営業部門はMQLのニーズをヒアリングしながら、MQLがなんとなく思い描いていた以上の、付加価値の高い商品・サービスを提案できます。特定の商品・サービスの購入をすでに決めているケースもあるSQLにはなかなかできない提案でしょう。
また予想を超える提案を受け、満足度の高い状態で商品・サービスを購入したMQLは、今後継続的に購入してくれるリピーターになる可能性も秘めています。
マーケティング部門が創出するMQLと、営業部門がアプローチするSQL。対応する部門が異なるために、そこには課題も生まれます。ここでは、MQLとSQLに関するよくある課題を2つ紹介します。
営業部門がMQLへのアプローチを後回しにする、もしくはフォローをせずに放置してしまうことがあります。これは、営業部門は商談化までに時間がかかるMQLではなく、少ない労力で案件化できるSQLへのアプローチを優先する傾向にあるためです。
しかし、これではマーケティング部門の頑張りが徒労に終わってしまうほか、競合他社へ見込み顧客を奪われ、将来的に大きな取引をしてくれる顧客を逃すことにもなりかねません。
こうした事態を防ぎ、営業部門に前向きにMQLへアプローチをしてもらうためには、マーケティング部門と営業部門とが連携し、コミュニケーションを活性化させることが大切です。具体的には、「営業部門はどのようなMQLに関する情報がほしいのか」「営業部門が希望する、MQLの基準は何なのか」などについて、よく話し合うようにしましょう。
マーケティング部門と営業部門の連携・コミュニケーションが不足していると、「営業部門がMQLを放置する」や「営業部門からマーケティング部門へ進捗報告が行われない」などの事態が発生します。
その結果、マーケティング部門のモチベーションが低下。良質なMQLの創出が滞り、ますます営業部門がMQLを後回しにする、という悪循環が生まれてしまいかねません。こうした観点からも、マーケティング部門・営業部門間の定期的な情報共有・コミュニケーションは必要なのです。
最後にMQLおよびSQLを増やすことに成功した、企業事例を2つ見ていきましょう。
ウェビナー活用により、MQLのSQL化率を改善させた、外資系セキュリティベンダーのA社の事例です。同社は展示会やWeb広告などを用いて見込み顧客(リード)を大量に集め、その中からマーケティング部門が絞り込みをかけてMQLを創出。そのMQLをインサイドセールス部門がSQLに育てていく、という工程を踏んでいました。
このときネックになったのが、見込み顧客からMQLを創出する工程です。同工程においてセミナーを活用していた同社ですが、リソースが足りずに、大きな負担がかかっていました。
そこで同社はリアルなセミナーより負担の少ないウェビナー活用に注力し始めます。そして、ウェビナーの目的を「見込み顧客のフェーズを一段階引き上げる」とし、講演内容を工夫することで、MQLからSQL化率を10ポイント向上させることに成功しました。
参考:オンラインプロモーションby ITmedia「大量リードから営業を動かすSQLを発掘する、Webセミナー活用成功のポイント」より
CRMの活用によりMQLの数を2倍に引き上げた、株式会社エヌ・ティ・ティピー・シーコミュニケーションズの事例です。同社は、問い合わせがあっても、そのユーザーがどのような経緯で流入したのか、またどの施策の結果として流入したのかが、十分に可視化されていませんでした。
そこで、CRMを用いて、これまで蓄積してこなかった「各媒体・接点で得たデータ」と、「営業部が独自で取得していたデータ」の一本化を推進。デジタルによるプロセスの可視化を進めつつ、顧客情報のセグメントをし、対象顧客へ月に2回のメール配信を行いました。
こうした取り組みにより、これまでとらえきれなかった層へのアプローチを実現でき、MQLの数字も約2倍に増加しました。
参考:HubSpot「【業界別】CRMの成功事例7選と、6つの活用ポイントを徹底解説」より
参考:MarkeZine「「インバウンド」思想の実践でWeb経由受注を1年で2倍に NTTPCのDX推進プロジェクト」より
MQLを創出し、営業活動の効率化や付加価値の高い提案を実現することで、営業成績の向上を図ることができます。一方で、マーケティング部門と営業部門のコミュニケーション不足により、営業部門がMQLへの対応を後回しにしたり、マーケティング部門のモチベーションが下がってしまったりする恐れもあります。MQL創出にあたっては、両部門の連携は欠かすことができないのです。MQL・SQLの違いを踏まえつつ、本記事で紹介した企業事例も参考に、MQL増加の施策を考えてみてはいかがでしょうか。