基本ノウハウ
営業計画は属人的になりやすい営業活動を見える化し、効率アップや成果向上を目指す上で必要なものです。しかしいざ営業計画の立案・見直しを進めようとしても、なかなかうまく進まないとお悩みの方も多いでしょう。
本記事では営業計画とは何か、事業計画や行動計画との違いを踏まえながら解説します。立て方や役立つテンプレートサイトも、あわせて紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
営業計画とは営業戦略で定めた方向性に沿いながら、具体的なアクションなどを決めるものです。方向性がブレたり詰めが甘かったりすると、営業活動の成果が上がらないばかりか、逆に低下する可能性もあります。そのためさまざまなフレームワークを活用しながら、綿密な計画を立てることが大切です。
なお営業活動について定めるものは、営業計画を含め主に3つあります。
戦略は中長期的な方針を定め、プロセスでは営業活動の具体的な内容や流れを定めるものであり、営業計画はその中間にあたる立ち位置です。
営業計画と事業計画・行動計画の違いは、その大きさにあります。事業計画は事業全体に関する計画です。営業計画は事業計画を達成するために立案される、計画の1つといえるでしょう。また行動計画は1日や1週間など、その日その週に行う行動を明確化する、いわゆるスケジュールです。
営業計画と事業計画・行動計画は、いずれも営業部門における日々の業務に関わってきます。例えば営業マネージャーが、事業計画に沿って営業計画や営業プロセスを立案・設計するでしょう。個々の担当者は提示された営業計画や営業プロセスに沿って、日々の行動計画を立てます。
このように営業計画と事業計画・行動計画はその対象の大きさは違えど、営業活動を進める上で必要不可欠なものには変わりないのです。
ここからは営業計画の立て方について、9つの要素に分けて解説します。
それぞれ例文もあわせて記載しているので、営業計画の立案・見直しを進めている方は1つずつチェックしていきましょう。
営業計画でははじめに行動指針や将来的に実現したい姿を文章化し、自社や部門の理念を明示します。創業期・転換期など自社の歴史もあわせて記載することで、理念にいたった背景が理解しやすくなり、従業員の納得感が増します。具体的な例は、下表の通りです。
項目 | 例文 |
---|---|
理念 (ミッション・ステートメント) |
お客様に寄り添い、最適な解決策で最大の成果を創出します など |
将来的に実現したい姿 (ビジョン・ステートメント) |
揺るぎない信頼と安心で、お客様とつながり続ける営業部門でありたい など |
社史 | 当社は○○年に□□(所在地)で創業、以後〜…(自社の歴史を記載) |
従業員一人ひとりが理念を自分事として受け入れ、実現に向けて頑張ろうと思えるように分かりやすく書きましょう。
営業部門のメンバーを選出し、役割分担を明記します。そもそも人員が足りない、営業戦略の実現に向けて人員を補充したい場合は、別途採用計画も記載しましょう。
項目 | 例文 |
---|---|
営業部門のメンバー | ・責任者:○○□□(氏名)
・マネージャー:○○□□(氏名) ・△△地域担当者:○○□□(氏名) など |
部門リーダー | ・○○□□(氏名) (職歴、顔写真などを添付) |
採用計画 | ・採用人数:3人 ・掲載媒体:マイナビ ・採用コスト:180万円 など |
なお営業部門のメンバーや採用計画は、組織図や採用計画表の添付でも問題ありません。そのまま貼り付けると分かりにくい場合は既存の文書をベースとして、必要部分を抽出し概要をまとめると良いでしょう。
営業計画ではターゲティングや、ペルソナ設計についての明記も必要です。まず営業戦略の立案で、顧客リストの中からアプローチを強化する見込み顧客を抽出します。次に営業計画で見込み顧客に優先順位をつけ詳細なアプローチを設定することで、効率的に営業活動を進められるでしょう。
項目 | 例文 |
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ターゲット企業 | ・製造業で社員数50人以上
・◇◇地方に拠点があるIT系の中小企業 ・業務効率化に悩みを抱える運送業の企業 など |
ターゲットの担当者 | ・製造部門のマネージャー
・IT部門の課長 など |
ターゲットによって訴求する自社製品・サービスや、アプローチ方法が異なってきます。効率的かつ効果的に営業活動を進めるためにも、計画には属性や課題などをもとにターゲットを明記しておきましょう。
ターゲットが明確になったら競合他社と比較し、自社が優位に立てる位置を分析・設定します。3C分析やSWOT分析などを活用した場合は、その結果をまとめた図表を添付するのも1つの方法です。
項目 | 例文 |
---|---|
自社の強み | ・豊富な機能、自由度の高いカスタマイズ性
・導入しやすい料金プラン ・充実したアフターサポート など |
市場の状況 | ・オンラインツールを活用した業務効率化を望む企業が急増している
・市場全体の経営不振により、低コスト志向の企業が多い など |
なお「【3】ターゲットの抽出」や「【4】ポジショニングの設定」で活用できるフレームワークは、前述のもの以外にもSTP分析があります。定期的にSTP分析を実行し営業計画に反映すると、自社や競合、社会情勢の変化に対して臨機応変な対応が可能です。
アプローチする見込み顧客が明確になったら、自社製品・サービスの価格設定や販促企画などを定めるマーケティング戦略を営業計画に記載します。
ここで注意したいのが、営業活動は認知拡大や見込み顧客の獲得など商談前からすでに始まっている点です。そのためマーケティング部門と協力し、策定内容をすり合わせる必要があります。
項目 | 例文 |
---|---|
価格設定・販促企画 | ・サービスA ○○円から□□円へ変更
・サービスB ○月□日より1か月間△%オフキャンペーンを実施 など |
新規顧客の獲得戦略 | ・リードジェネレーション:Web広告、オウンドメディア など
・リードナーチャリング:メルマガ、セミナー(ウェビナー)開催 など |
同時にリードジェネレーションやリードナーチャリングなど新規顧客の獲得戦略もあわせて検討し、連携体制を整えておくと良いでしょう。
営業戦略で定めたKGIを達成するために必要な、営業目標(KPI)を設定します。KPIはゴール(KGI)から逆算して考えると、実現可能性が高く具体的な目標を立案できます。例えばKGIが売上20%アップの場合、KPIは「受注数→商談数→架電数」のようにさかのぼると目標達成に必要な具体的な数字が見えてくるでしょう。
項目 | 例文 |
---|---|
KPI | ・受注数○%アップ
・○月□日までに商談を△件設定 ・新規顧客を◇社創出 など |
なおKGIの達成には、複数のKPIの設定が必要になるケースがほとんどです。KGIとKPIの関係性は樹状図を用いて表現すると、より分かりやすくなります。
KPIが定まったら、達成するために必要な営業活動を見える化します。
営業活動の全体的な流れを決めるため、マーケティング部門はもちろん、アフターサポートに携わるカスタマーサポートとのすり合わせも必要です。計画に沿って営業活動を進めた際に責任の押し付け合いにならないよう、工程ごとの担当部門とKPIを明記しましょう。
必要に応じてCRM(顧客管理システム)やSFA(営業支援システム)など、業務効率や精度を上げるツールの導入を検討します。オンライン商談ツールなど、リモートワークの普及に対応する製品の導入もおすすめです。営業プロセスの設計にも関わる部分でもあるため、並行あるいは前もって選定を進めていくと良いでしょう。
項目 | 例文 |
---|---|
必要なツール | 部門内・部門間での情報共有における業務効率化のためにSFA(製品名:○○)を導入する など |
ツールの導入計画 | ・○月 A社とB社が提供するSFAの無料トライアルを受ける
・□月 見積もりを取り、導入するツールを決定する ・△月 導入、提供元のアフターサポートを受けながら従業員への周知徹底を進める など |
営業活動を進める上で必要な人員やツールなどに合わせて、予算を配分します。
項目 | 例文 |
---|---|
費用 | ・人件費:○円/月
・教育コスト:○円/人 ・ツールの導入費用:○円 ・ツールの運用費用:○円/月 ・アウトソーシング費用:○円/月 など |
営業計画の運用開始後は目標と現状を照らし合わせて、予算の増減を検討・実行する予算実績管理(予実管理)も大切です。特にツールの費用は高くなりがちなため、費用対効果をしっかり見極めながら運用を進めていきましょう。
「営業計画をうまく立てられない」と悩むケースでは、次のいずれかに該当している可能性が高いといえます。
それぞれの対策について詳しく見ていきましょう。
顧客や競合の情報など根拠となるデータが整理されていないと、正確な現状分析ができず効果的な営業計画を立てられません。
分析が不十分だと適切な目標(KGI、KPI)を設定できないため、実現性や再現性が低い計画になってしまいます。すると効果測定も正確にできず、「成果が出ていない→もっと対応数を増やそう」という短絡的な対策にとどまり、売上の未達が続く悪循環に陥るでしょう。
対策としては、主に次の3つがあります。
いずれも一朝一夕では実現できない対策のため、営業計画の見直しとともに時間をかけて準備していきましょう。
効果的な営業計画を立てられない原因には、初めから完璧を目指すあまり、時間がかかってなかなか進まないケースもあります。たしかに営業計画には綿密さが必要ですが、自社だけでなく競合の情報や社会情勢も関わってくるため、最初から完全に抜け漏れのないものに仕上げるのは不可能です。
対策としてはPDCAサイクルを回しながら、営業計画を徐々にブラッシュアップしていくことが挙げられます。定期的にチェックを挟めば、自社や競合などの状況が変わったときにも実情に合った効果的な営業計画が立案できます。
最後に営業計画の立案に役立つテンプレートサイトを、3つ紹介します。
それぞれ詳しくみていきましょう。
HubSpotは下記のように、10のセクションに分かれた営業計画の無料テンプレートを公開しています。
本記事で解説した営業計画に必要な要素が網羅されているため、一から立案する際も大いに役立つでしょう。これから営業計画を新たに作る場合だけでなく、既存のものに抜け漏れがないか確認したい企業にもおすすめのテンプレートになります。
素材ラボは長期的な営業計画だけでなく、日々の行動計画を立案する上で役立つテンプレートです。3C分析やSWOT分析の結果を記載する項目があり、自社の強みや立ち位置をその都度振り返りながらブレのない計画を立てられます。
実際にダウンロードした利用者からは、「雛形として使い勝手が良さそう」「一目で分かりやすい」などの声も少なくありません。特に日々の業務で確認しやすい簡潔な形の営業計画を作りたい場合に、おすすめのテンプレートとなっています。
[文書]テンプレートの無料ダウンロードは、A4サイズで印刷できる営業計画表です。訪問営業の計画と実績を、1か月単位で記載できます。どちらかというと行動計画の書式に近く、営業部門全体の計画を立てる際は前述のHubSpotなどと併用すると良いでしょう。
なお同サイトには、営業日報や企画書のテンプレートも取り揃っています。計画書だけでなく、営業活動に必要な書類をまとめて用意したい場合にもおすすめです。
営業計画は営業戦略に沿って、具体的なターゲットや目標などを定めるものです。提示した内容は個々の担当者が行動計画に落とし込み、日々の業務に生かします。
営業計画に定める内容は多岐にわたりますが、重要なのは担当者が自分の営業活動に反映できるよう分かりやすく記載することです。また「営業目標を達成するため」と単に担当者の業務負担を大きくするだけでなく、人員体制の整備やツールの導入など効率化を図る施策も取り入れる必要があります。
日々の営業活動をスムーズに進められるよう、実情に合わせて営業計画を立案・見直していきましょう。