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マーケティングコンテンツにも生かせる「調査PR」で成果を出すためのコツ

マーケティングコンテンツにも生かせる「調査PR」で成果を出すためのコツ

PRと言われる手段にはさまざまなものがありますが、「調査PR」と言われるとみなさんはどんなものをイメージされるでしょうか? 調査PRとは、「製品やサービスに関連する調査を行い、その調査結果をもとにメディア露出や話題化を図るPR手法」のことです。ときに自社のビジョン・社会的意義を伝える手段としても調査PRはとても有効な手段になります。また、調査コンテンツは、ホワイトペーパー・営業資料・ウェビナーなどのマーケティングにも活用できるのです。

そこで今回、調査PRで成果を出すための3つのポイントをまとめました。
調査PRの基本から、良い調査PRと悪い調査PRの違い、また、成果につながる調査PR作成のポイントなどを解説していきます。これから調査PRに着手しようとしている方、“成果の出る調査PRのコツ”を知りたい方必見です。

目次

調査PRとは?

調査PRとは?|マーケティングコンテンツにも生かせる「調査PR」で成果を出すためのコツ・渡雄太氏|BeMARKE(ビーマーケ)

そもそも「調査PR」とは前述の通り、企業が自社・サービスに関連する調査を行い、プレスリリースとして配信することです。調査にもいくつか種類があり、自社サービスのユーザーに対してのアンケート形式のものや、対象となる一般消費者への市場調査・実態調査形式のものなどがありますが、一般的に調査PRでよく行われるのは後者です。

さまざまな業界業種の企業が調査PRを活用し、客観的なデータにもとづいた結果や考察を発信することで、自社やサービスの認知・信頼獲得につなげています。

調査PRの価値とは?

では改めて、「調査PR」の価値とはなんでしょうか? 企業側からすると、自社のサービスやユーザーの新たなインサイトを知ることで顧客理解を深めることができたり、その市場や業界の成長性や特徴を把握したりするのに役立ちます。一方で読み手側も数値を根拠にした新たな発見や気づきを得られるという価値があります。
つまり「調査PR」は企業側にとっても読み手にとっても価値のあるwin-winな施策といえるのです。

また、副次的な価値として、定量的なデータをもとにした有益な情報をユーザーに届けることで、企業そのものの信憑性が高まることも期待できます。
そして、自社サービスや商品に関する調査を行うことで、「自分たちが取り扱っているものは世の中が必要としているサービスである」ということを、根拠を持ってアピールすることが可能になるのです。

調査PRの価値|マーケティングコンテンツにも生かせる「調査PR」で成果を出すためのコツ・渡雄太氏|BeMARKE(ビーマーケ)

調査PRのメリット

実は、「調査RP」には先ほどご説明した自社・サービスの認知向上や信頼獲得の他にも、メリットがあるのです。

調査PRのメリット|マーケティングコンテンツにも生かせる「調査PR」で成果を出すためのコツ・渡雄太氏|BeMARKE(ビーマーケ)

【1】業界・メディアからも信頼を得られる

新たなトピックスのメディア掲載だけでなく、市場や顧客の調査を実施しているという事実から、業界やメディアからも「○○については、この企業がよく知っている」という信頼を得ることができます。メディアにベンチマークされることで、情報をタイムリーに取り扱ってもらうことができたり、他メディアへ転載されたりと、広報の役目としてもよりいっそう影響をもたらすことができます。

【2】マーケティングコンテンツの資産になる

調査したコンテンツを「調査PR」として発信するだけでなく、ホワイトペーパー・営業資料・ウェビナーなどのマーケティングに活用できます。読み手はデータをもとにしたネタを好む傾向が強く、数字的な根拠があることでサービスの説得力も高まります。

【3】顧客のインサイトを得られる

PR目的の調査であっても、結果そのものは、新たな顧客理解のきっかけになります。今後のサービス開発・マーケティング戦略を立てるための基礎情報になり、企業資産としてとても重要なものになります。

良い調査PRと悪い調査PRの「差」

企業にとっても読み手にとっても非常に価値の高い「調査PR」だからこそ、世の中には多くの調査PRが出回っています。しかし、中にはその価値を十分に発揮しきれていない“悪い調査PR”があるのも事実です。では実際「調査PR」の“良し悪し”はどのような点で分れるのでしょうか?

ずばり、良い調査PRといわれるものは、読者にとって「What’s new(気づき)」を与えることができている調査PRです。

情報があふれる世の中だからこそ、ターゲット(読み手)に刺さるためには情報の整理や、新たな視点での分析、考察を代わりに行うことで、読み手に「気づき(=What's new)を与える」ことがとても重要です。

つまり「調査PR」の良し悪しを決める分かれ目とは、
× NG:ただ調査結果を羅列しただけで誰に、何を伝えたいのかが分からない資料
○ OK:読み手に結果から得られる気づきを与え、何が伝えたいのかハッキリと分かる資料  

ということになります。

良い調査PRと悪い調査PRの「差」とは|マーケティングコンテンツにも生かせる「調査PR」で成果を出すためのコツ・渡雄太氏|BeMARKE(ビーマーケ)

ここは今回のポイントになりますのでよく覚えておいてください!

では具体的にはどういうことなのか?悪い調査PRと良い調査PRの事例を見比べて、その違いを検証していきましょう。

悪い調査PR例

悪い調査PR例|マーケティングコンテンツにも生かせる「調査PR」で成果を出すためのコツ・渡雄太氏|BeMARKE(ビーマーケ)

この調査ではテレワークとツール利用に関する結果を発信していますが、みなさんはどこが“NGポイント”なのか分かりますか?

正解は、先ほどもご説明した通り「ただ調査結果を羅列するだけでは伝えたいことが伝わらない」のでNGです。調査結果を並べているだけでは、読み手に本当に伝えたい内容が伝わらなくなってしまいます。
(図中のプレスリリースの)タイトルで少し触れている通り、有意差があったのであれば、どのくらい差が開いていたのかを具体的に数字で表すことや、その結果から何が言えるのかを明記することで読み手の興味を引きつけ、気づきを与える必要があります。

良い調査PR例

良い調査PR例|マーケティングコンテンツにも生かせる「調査PR」で成果を出すためのコツ・渡雄太氏|BeMARKE(ビーマーケ)

良い調査PRの例としてマッチングアプリの調査PRを挙げていますが、まずタイトルから読者にとって新鮮な驚きがあり、今回の調査PRを通して伝えたいことが一目で分かるという意味でとても良い構成になっています。タイトルで読み手(記者・サービス利用者)を引きつけ冒頭から「What`s new(気づき)」を伝えています。

また、リード文の下に「今回の調査のサマリ」を設置することで「このPRで何が分かったのか」「何を伝えたいか」が分かります。結果を先に伝え、その根拠を以降で詳細に伝えることで、今回伝えたいことの論点が明確になり、読み手も理解しやすくなります。

見せ方のポイントとしてグラフは、見てほしい数字を目立たせるよう配色(事例ではオレンジ色)に配慮して作成しています。調査PRは分析結果をグラフで表すことも多く、多くの情報の中から読み手に読んでほしい情報をこちらがコントロールすることで、調査の中で重要な情報が届きやすくなるのです。

良い調査PRを作るためのコツとは?

読者に「What’s new(気づき)」を与える調査PRにするために、まず打ち出したい結論を決めておきます。読み手にとって有益な情報とは何かを常に意識でき、伝えたい結論(=ゴール)を見失わず調査を進められます。

ポイントは次の3つです。

調査PR作成のための3つのコツ(ポイント)|マーケティングコンテンツにも生かせる「調査PR」で成果を出すためのコツ・渡雄太氏|BeMARKE(ビーマーケ)

ポイント1:設計

調査したい内容から設計するのではなく、「打ち出したいタイトル・リリース」から逆算して、調査項目を設計するようにしましょう。調査したい内容から設計すると伝えたいことと、調査内容の整合性が合わなくなり、最終的に伝えたい内容から逸れてしまう可能性があります。

ポイント2:調査

調査実施の前に「仮説」を立てていきましょう。「利用している人は約80%」など具体的な数値まで描くことで、当初の設計と調査後の結果の何が異なっているのかが明確になります。

ポイント3:リリース

リリースとしてまとめるのは、結果ではなく結果から得られる「考察」です。仮説からどう深掘りができるか、をあらかじめ描いておきましょう。

実例をもとにポイントを生かしたプロセスをご紹介

ここでは先ほどのポイントをどうプロセスで活用するのか、具体的な事例を用いてご紹介していきたいと思います。

今回は、アウトバンドセールスのプロセスにおいて、コロナウイルスによるリモートワークの発達や非接触の流れ、さらにAIなどのテクノロジーの発達といった要因から、営業担当と接触する前に、購買決定に関わる情報にリーチしている決裁者は8割程度存在するのではないかと考えたと仮定します。

実施背景としては以下のようなものです。

【実施背景】
  • 2012年Google社とCEB社が発表した『Digital Evolution in B2B Marketing』にて「実際の商談の前にセールスプロセスの57%が完了している」という調査をもとに実施。12年経過した現在かつ日本の市況については、以前よりもその傾向が加速しているのではないか
  • 新型コロナウイルス感染症の影響で、リモートワークや非接触の傾向から、さまざまな情報やコンテンツがオンラインで集められるようになった
  • 決裁者がどの情報源により購買を決定したかや、どのフェーズで購買決定をしているかを明らかにし、好機ととらえて、スピーディーに売上拡大のための策を講じたい

【実施プロセス】企画~調査実施

このプロセスでは特に「設計」の部分を意識しながら、調査PRの骨子を組み立てていきます。伝えたい内容に対しての設問や結果の仮説と、そこからどんな考察が考えられそうかを事前段階で十分に検討します。

1.PRの完成形を作成

まずは調査の目的や対象を整理し、打ち出したいテーマを決定します。今回はアウトバウンドセールスにおけるオンラインコンテンツの影響度、決裁者が意思決定に至った情報源などについての仮説を立て、リリース原稿を細部まで練り込んでいきます。

2.調査対象・設問内容の具体化

次に調査対象・設問内容を具体化していきます。今回の調査対象は直近1年以内でBtoB商品を購入したことがある25〜59歳の決裁者(※性年代、業種での割り付けなし)に定め、サンプル数として500人に設定しました。ちなみにサンプルサイズは属性によって異なりますが、平均的に300〜500のサンプル数があれば問題ないかと思います。

調査概要の例|マーケティングコンテンツにも生かせる「調査PR」で成果を出すためのコツ・渡雄太氏|BeMARKE(ビーマーケ)

また、設問文についても検討していきます。ゴールから逆算し今回得たい回答結果やリリースで必要なものを設問項目に落としていきます。

3.スクリーニング/本調査の実施

そして実際にスクリーニング、本調査を実施します。

【実施プロセス】集計~リリース

【実施プロセス】集計~リリース|マーケティングコンテンツにも生かせる「調査PR」で成果を出すためのコツ・渡雄太氏|BeMARKE(ビーマーケ)

ここからのプロセスでは考えていた仮説と実際のデータをもとに考察を深めていきます。当初の設計と比較し、何が違うか、その背景などを考察しながら形にしていきます。

4.集計結果を確認・考察

今回の場合は、実施したアンケート調査から下記のような結果が得られました。

調査結果の例)
BtoBでの購買プロセスにおいて、

  •   顧客の約7割が営業担当との接触以外で購買の意思決定を行っている
  • 顧客の約8割が営業担当との接触前に購買決定に関わる情報に触れている
  • 広告、 HP、営業資料といったオンラインでのタッチポイントが以前より活用されている
  • 購入決定をする際の情報収集では、「手軽さ」「見やすさ」「企業の独自性」が重要視されている  

5.PRの原稿を仕上げる

考察の例)

  •  人材不足やテクノロジーの発達により「営業担当を介さない購買決定」が主流に
  • オンラインにて顧客とのタッチポイントを設けることが今後より重要になる
  • 「見やすい/分かりやすい」「独自性が見える」コンテンツづくりが求められる
  • 「手軽に情報が手に入る」ためのWeb動線設計が求められる 
まとめと考察|マーケティングコンテンツにも生かせる「調査PR」で成果を出すためのコツ・渡雄太氏|BeMARKE(ビーマーケ)

データやグラフなどの見せ方も意識しながら、最終的な仕上げをしていくことを忘れないようにしましょう。

6.プレスリリース配信

最終チェックをしてプレスリリースを配信し完了です!

まとめ

企業にとっても読み手にとっても有益なPR手段である「調査PR」ですが、メリットが大きい分、多くの企業が情報を発信しています。世の中にあふれる情報の中でしっかりと伝えたいことが読み手に伝わり、「What’s new(気づき)」を得てもらうための基本的なコツを今回お伝えさせていただきました。

何が聞きたいかを洗い出し、聞きたいことから質問に落とし込んでリリースを書くと、途中でゴールを見失い、時間もかかってしまいます。

読み手に伝わる内容にするための、まずは打ち出したいリリースを書き、リリースに必要なことを質問に落とし込んでリリースと調査結果を照らし合わせて仕上げることで、ゴールが明確になり時間短縮にもなります。ぜひ調査PRに挑戦したことがない人も、これを機会にチャレンジしてみてください!

効果的なサーベイPRのコツ|マーケティングコンテンツにも生かせる「調査PR」で成果を出すためのコツ・渡雄太氏|BeMARKE(ビーマーケ)

おわりに

ここまで読んでいただきありがとうございました。普段から気をつけていることばかりかもしれませんが、相手に伝わる「調査PR」を書くためには事前準備や設計力、タイトルやグラフなどの資料の見せ方が非常に求められてきます。
また、調査PRはメディアでの発信のみならず、ホワイトペーパーなどにも転用してさまざまなコンテンツとして活用することも可能です。

BeMARKE編集部より

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この記事を書いた人

渡 雄太
渡 雄太

東北大学経済学部卒業。双日株式会社を経て、2014年から一貫してBtoBスタートアップの事業開発に携わる。株式会社ユニラボ(現・PRONI)取締役、株式会社キャスター執行役員などを歴任。2023年以降は自身が立ち上げた株式会社wibにて、資料作成サービス「スゴシリョ」、インサイドセールス代行「スゴアポ」などのスゴスギシリーズを展開。 sugosugi.jp
東北大学 スタートアップ事業化センター 特任准教授(客員)、経済産業大臣登録 中小企業診断士 としても活動。プライベートでは3児の父。 

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