基本ノウハウ
獲得した顧客情報を一覧化したハウスリストは、顧客のニーズにあわせた営業活動やマーケティング活動に役立ちますが、適切に作成・運用できている企業はそう多くないのではないでしょうか。ハウスリストの有効活用には、言葉の意味や運用方法に関する正しい知識が必要不可欠です。ここではハウスリストの概要や顧客情報の収集方法、適切に作成・運用するための3つのステップなどについて解説します。
企業が保有すべき重要な資料の1つに、ハウスリストがあります。まずはハウスリストとは何なのか、その定義について解説していきます。
ハウスリストとは、過去に商談などの接触があった見込み顧客の情報をまとめたリストのことです。接触があったすべての見込み顧客をハウスリストという場合もあれば、その中でも特に将来の受注の可能性が高い見込み顧客をまとめたものをハウスリストという場合もあります。企業によってその定義は多少異なりますが、基本的にはアプローチできる(すべき)見込み顧客のリストと認識しておくと良いでしょう。
ハウスリストに記録する代表的な情報には下記のようなものがあります。
ハウスリストとは異なる見込み顧客リストを表すものとして、コールドリストという言葉もあります。ハウスリストが接触のあった見込み顧客リストを指しているのに対し、コールドリストは過去に接触がなかった企業リストを指して使われます。例えば電話帳をもとに集めた見込み顧客リストや、名簿から抽出した見込み顧客リストなどは、代表的なコールドリストといえるでしょう。
コールドリストは過去に接点がないため、相手の状況やニーズが一切不明な状態です。そのためアプローチしても受注につながるかどうかが分からず、また受注に至るまでの時間も長くかかってしまいやすい傾向があります。
次に、ハウスリストが重要である理由について見ていきます。
ハウスリストを作成・保有することには、下記のようなメリットがあります。
ハウスリストが充実していれば、それだけ多くの見込み顧客にアプローチできます。例えばメールアドレスが含まれるハウスリストが100件あれば、短時間で一気に100件のメールマーケティングを実行できますし、住所や担当者名を知っていればDMマーケティングを行うことも可能です。逆にハウスリストが少なければ、新たにリストを作成したり、確度の低いところに無理やりアプローチしたりしなければならず、効率的な営業はできなくなってしまうでしょう。ハウスリストの数は、そのまま取れる施策の数に直結するのです。
ハウスリストに顧客との過去のやり取りや状況、課題といった情報を入れていれば、相手の見込み度合いに応じた施策を打てるようになります。商品やサービスについて理解し比較的検討が進んだ顧客であれば、キャンペーンのようなお得な情報に興味を持ってもらえるかもしれませんし、あまり関係性が深くない顧客であれば、基本的な商品紹介をすることで興味の度合いを高められるかもしれません。整理された情報をしっかりと活用することで、一つひとつの施策の質を高めれば、受注の確度も上げやすくなるはずです。
ハウスリストによって顧客の情報を整理し可視化すれば、機会損失の危険を回避できます。一口に見込み顧客といっても、フォローすれば今後の受注が見込める顧客もいれば、タイミングの問題で受注できなかった顧客、以前に取引があったものの直近では関係が築けていない顧客など、その状況はさまざまです。そうした中で、フォローしておけば受注につながった顧客をみすみす逃してしまったり、再びタイミングを逃したりしていては、大幅な機会損失は免れません。顧客の可視化により、そうした取りこぼしの防止につながるのです。
ハウスリストは顧客情報がなければ作成できません。ここでは、顧客情報の収集について以下の3つの方法を紹介していきます。
展示会や対面営業で名刺を獲得するのは、顧客情報収集の代表的な手法です。自社商品・サービスのテーマやターゲットにマッチした展示会への出展、セミナー開催により獲得したリードは、質が高く今後の売上につながる可能性も高くなっています。また、対面営業で自社の強みやメリットを紹介した上で獲得した良質なリードも、売上創出への貢献が期待できるでしょう。ハウスリスト作成の際は「いつ、どこで、何をきっかけに交換した名刺か」という情報を記録することで、その後の商談を効率化できます。
展示会や対面営業で獲得した名刺は、ハウスリストを作成した後も管理しましょう。例えば担当者や連絡先が変わった場合や、商談などのアプローチ履歴は最新情報に更新し、適切なアプローチができる状態を維持します。
顧客情報収集では、インバウンド施策を有効活用することが重要になります。インバウンド施策とは、資料請求や問い合わせなど、顧客側からのアクションを促す施策のこと。代表的なインバウンド施策としては、オウンドメディアやSEO、ホワイトペーパー、SNSマーケティングなどがあげられます。自社が積極的に情報発信することで見込み顧客にリーチし、そこからアクションを促して顧客情報を得るのが狙いです。
インバウンド施策で獲得した見込み顧客は、自社の商品やサービス、扱っているテーマに対して興味があるといえます。問い合わせ内容やアクセス履歴の情報を記録すれば、ニーズの度合いを推測しやすく、効果的なアプローチができる質の高いリストづくりにつながるでしょう。
リード獲得についての詳細は「リードジェネレーションとは?手法やナーチャリングとの関係も解説」でも解説しています。
調査会社から自社ターゲットに沿う属性のリストを購入したり、インターネットを使って自らの手でリストを作成したりして、これまで接点を持てていない企業に対して最初のアプローチを行ってみましょう。電話やメールなどでアプローチしつつ、何かしらの反応が得られればそれをリストに加えていくことで、ハウスリストの件数を増やしていくことができます。大切なのは、リストを作るにしても作ってもらうにしても、自分たちのターゲットを明確にしておくことです。ハウスリストを増やすためだからといって、顧客になりえないであろう相手へのアプローチは効率的ではありません。条件に合った企業をリストアップするようにしてください。
ハウスリストを効率的に作成し、運用するための3つのステップは以下の通りです。
【STEP1】所有している情報を整理する
【STEP2】リストへの入力作業を行う
【STEP3】定期的に更新する
それぞれのステップについて詳しく解説していきます。
まずは所有している顧客情報を整理します。展示会やアポイントで交換した名刺、問い合わせフォームに寄せられた顧客情報など、各部署の営業活動やマーケティング活動で獲得した情報を購買フェーズごとにまとめましょう。この作業を行うことで、社内に点在する情報を一覧化でき、営業日報や手帳からその都度情報を引き出す手間を省けます。
名刺や顧客情報の数が多い場合は、ツールを活用することをおすすめします。「名刺管理システム」であれば、スマホや専用のスキャナーで名刺情報を読み込み自動でデータベース化が可能です。
営業支援ツールの「SFA」は、購買フェーズごとのセグメント分けが効率化できたり、アプローチ履歴の共有が簡易化できたりします。入力作業に時間がかかる場合や予算に余裕のある場合は、情報の入力代行を外注すると良いでしょう。
次に、リストへの入力作業を行います。
リストにどのような項目を入力するか、事前に明確なルールを決めておきましょう。各担当者が自由にリストに入力すると、入力項目に差が出て活用しづらいハウスリストとなってしまいます。その際注意すべきなのが、入力項目を増やしすぎないことです。あれもこれもと情報入力すると、その後のリスト管理の工数が増えて活用されなくなってしまうリスクがあります。自社にとって必要十分な項目を精査し、適切に管理するようにしましょう。
また、入力ミスを防ぐためのルールづくりも重要です。顧客情報にミスがあれば、相手へ多大な迷惑をかけてしまったり、自社の信頼を損ねてしまったりするおそれがあります。ダブルチェック体制を整えるなど、ミスを防ぐ体制をつくりましょう。
リストの顧客情報の重複を防ぐためには「名寄せ」を行うことも大切です。名寄せとは、データベース上に複数存在する同一企業のデータを一つに統合する作業のことです。社名に無駄なスペースが入っていたり、正式名称で登録されていなかったりした場合、同一企業に複数のメールやDMを送付してしまうことになりかねません。名寄せを行って重複データを整理し、適切なアプローチがとれるようにしましょう。
名寄せについては、「名寄せとは?BtoB企業が実施すべき理由と実施の流れを紹介」でも詳しく解説しています。
ハウスリストは一度作成したものを使い続けるのではなく、定期的に最新情報に更新しましょう。契約につながった顧客や断られた顧客に営業をかけるとトラブルに発展する恐れがあります。また業界の動向や見込み顧客の近況なども反映すれば、今後のアプローチをより効果的に行えます。更新のタイミングとしては、四半期、半期などで定期的に行いつつ、担当者や連絡先の変更、見込み顧客側から連絡があった場合など、すぐ反映すべき情報はその都度アップデートするようにしてください。
ハウスリストの概要や顧客情報の獲得方法、ハウスリスト作成・運用の方法について解説してきました。ハウスリストは一度作成して終わりではなく、見込み顧客へのアプローチ履歴を反映したり、最新の連絡先などを更新したりと、適切に管理することが重要です。ハウスリストの運用ルールをしっかりと整備し、そのルールにのっとって営業活動やマーケティング活動に活用してみましょう。