基本ノウハウ
競合分析は、マーケティング戦略の立案時に必要な工程の1つです。しかし初めて競合分析に携わる方は、「何から始めれば良いのか」「どのような項目を見るべきか」など疑問が多いでしょう。
本記事では競合分析とは何か、目的や分析項目を踏まえながら解説します。具体的な進め方や、役立つフレームワークもあわせて紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
まずは競合分析の概要や、目的を解説します。基礎知識を押さえたい方は、1つずつチェックしていきましょう。
競合分析とは自社と似たような製品・サービスを展開する企業を特定し、以下のような項目について調査や評価を実施する工程です。
直接的な競合他社だけでなく、同じ市場で競争する複数の企業を分析することで、市場全体の構造把握にも役立ちます。競合他社や市場の変化を把握するためには、最低でも1年に1回の実施が必要です。
なお競合分析は、主に3C分析というフレームワークの中で行われます。3C分析の基礎知識や進め方について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてチェックしてみてください。
関連記事:「【具体例付き】3C分析とは?目的・やり方を分かりやすく解説」
競合分析を行う目的は、主に以下の3つです。
上記が達成できるのは、競合分析で次のようなことが分かるためでもあります。
事業目標をクリアし、企業成長も促すという意味でも、競合分析は欠かせない工程といえるでしょう。
競合分析の流れを、5つのステップに分けて解説します。
まずは分析対象となる、競合他社を特定しましょう。基本的には直接競合がメインとなりますが、ブランド提供価値が同じ間接競合もリストアップすると、抜け漏れのない分析・戦略立案につながります。なお競合の主な種類は、下表の3つです。
競合の種類 | 概要 | 例(ユニクロの場合) |
---|---|---|
直接競合 | 自社と似たような製品・サービスを展開し、直接比較される企業 | H&M、無印良品など |
間接競合 | 自社と同じカテゴリの製品・サービスを展開している企業 | Amazon、Adidasなど |
代替競合 | 製品・サービスは自社と異なるが、ニーズを満たす選択肢として選ばれる企業 | メルカリ(中古販売)、メチャカリ(服のサブスク)など |
また検索結果上の競合は、「競合サイト」と呼ばれます。ただし「事業や商材上の競合=Webサイト運営における競合」とは限りません。競合サイトの探し方や分析項目について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてチェックしてみてください。
関連記事:「競合サイト分析チェック必須の7項目|流れから役立つ無料ツールまで解説」
競合他社を特定したら、以下のような情報を集めます。
まずは下記の項目について、競合サイトや業界データなどで情報を集め、一覧化しましょう。
また4P(マーケティングミックス)も簡単にまとめると、戦略の概要が見えやすくなります。
4Pの分析項目 | 内容 | 例 |
---|---|---|
製品(Product) | 展開している製品・サービスの機能性や品質など | 高機能、多機能、高品質など |
価格(Price) | 製品・サービスの価格設定 | 高い、低いなど |
流通(Place) | 流通チャネルや在庫管理、物流など | オンラインのみ、実店舗ありなど |
販促や広告(Promotion) | 販促企画や広告、PR活動など | SNS、対面イベント、雑誌への出稿など |
つまり4Pで分かるのは、「何をいくらで、どのように、どこで売るか」という実行戦略です。戦略の方向性などを決めるSTP分析を具体化した要素のため、競合他社の意図がより鮮明になります。
なお近年では、以下の3項目を追加した7Pでマーケティングミックスを検討・評価するケースも増えてきています。
4Pあるいは7Pは戦略を具体化したものであり、競合他社の意図を想定しやすくなる分、これからの動きもある程度推測できるようになるでしょう。
製品・サービスの情報は、次のような方法で収集できます。
特に以下の項目は自社・競合他社ともに調べ、シンプルかつ具体的な数値を用いた一覧表にすると比較しやすいでしょう。
また下表のように、競争の構図を分析すると競合他社の戦略がより鮮明になります。
競争地位の分類 | 内容 | 例 |
リーダーブランド | 市場をけん引している競合他社 | ユニクロ |
チャレンジャーブランド | リーダーとの差別化を重視する競合他社 | H&M |
ニッチブランド | 専門性を強みにしている競合他社 | 無印良品 |
フォロワーブランド | リーダーやチャレンジャーの模倣を強みにしている競合他社 | GU |
効果的な差別化戦略を打ち立てるためにも、競合他社の現況を丁寧に把握していきましょう。
マーケティング資源も、競合分析に役立つ情報となります。投入する量や質によって、成果が大きく変わってくるためです。具体的には、下表に挙げる4つの資源について情報収集すると良いでしょう。
マーケティング資源 | 項目の例 |
---|---|
ヒト | 人員数、人材の能力、組織内のカルチャーなど |
モノ | 技術、設備、販売拠点など |
カネ | 各種予算(開発/設備投資/販促など) |
ブランド | 認知度、評判、信頼性など |
ただしマーケティング資源は、外部から把握するのには限界があります。人脈を駆使して有識者などから聴取する、あるいは競合他社の顧客へインタビューするといった地道な活動も必要です。
市場調査は【2】までに得られなかった、あるいは不十分な情報を補完するために行います。調査方法と収集できる情報の例は、下表の通りです。
調査方法 | 収集できる情報の例 |
アンケートやインタビュー | 自社や製品・サービスの認知度、満足度、購入や利用に至った理由など |
口コミやSNS調査 | レビュー、SNSのフォロワー数やエンゲージメントなど |
購買データ分析 | 購入時期、購入者の属性、リピート率など |
市場調査の詳しいやり方や役立つマーケティングツールについて知りたい方は、こちらの記事もぜひ参考にしてみてください。
関連記事:「【2023年最新】市場調査のやり方10ステップ~種類や計画方法まで徹底解説」
またユーザーインタビューの進め方は、以下の記事で解説しています。ユーザーが持つ本音を引き出すコツなどを知りたい方は、あわせてチェックしてみてください。
関連記事:「【3STEP】ユーザーインタビューのやり方|目的や種類から成功させるコツまで解説」
【3】までに得た情報は、SWOT分析を活用して整理します。ただし本格的に分析する際は、PEST分析や5F分析といった自社内外の環境なども詳しく見る必要があるため、この時点では簡単な表にまとめましょう。なおSWOT分析の分析項目は、以下の4つです。
SWOT分析の詳しいやり方や事例を知りたい方は、こちらの記事もぜひ参考にしてみてください。
関連記事:「SWOT分析のやり方とは?効果的に実施するためのポイントや事例を紹介」
また戦略の根幹となるKFS(重要成功要因)の発見には、3C分析の各項目を掛け合わせるクロス3C分析もおすすめです。
市場・顧客のニーズを満たし、競合他社を上回る自社の魅力を抽出していきましょう。
最後に市場の構造を可視化し、空白地帯の発見につなげます。自社と競合他社の立ち位置をマッピングする方法は、主に以下の2つです。
価格とベネフィットの比較は最低限行い、切り口を変えたい場合は顧客目線を踏まえた競争軸で比較すると良いでしょう。競合分析後は抽出された強みや課題などを放置せず、STP分析から4Pを経て自社の戦略や施策の立案に生かします。
STP分析の具体的なやり方や注意点について知りたい方は、こちらの記事もあわせてチェックしてみてください。
関連記事:「【具体例付き】BtoBのSTP分析とは?やり方や注意点を徹底解説」
最後に競合分析で見る項目を、3つに分けて解説します。
競合サイトや業界データなどから、下記をはじめとした企業の情報を収集します。
なお口コミはレビューサイトだけでなく、SNSからソーシャルリスニングをすることで、より幅広い意見を聴取できるでしょう。
具体的な施策の競合分析では、下表に挙げるような項目について情報収集します。
分析対象 | 分析項目の例 |
---|---|
Webサイト | ・サイトURL ・メインメッセージ ・製品やサービスの特長 ・主要コンテンツ ・導入事例 など |
アクセス(広告) | ・PV数 ・指名検索数 ・流入キーワード など |
SNS | ・各SNSのアカウントURL ・各SNSのフォロワー数 ・主な投稿内容 など |
またプロモーション分析として顕在層や潜在層などターゲットごとの施策も比較し、空いているチャネルを見つけ出すことも大切です。
営業ヒアリングでは、評判や価格について情報収集します。例えば評判であれば、評価が高い事項を洗い出すと、自社や競合の強みが見えてきます。
また価格は金額だけではなく、値引き交渉の有無や程度も見ることが大切です。最後に情報を一覧化し、最も評価されている点を抽出しましょう。
競合分析は自社の戦略を立案する際に、不可欠な工程の1つです。特定した競合他社からさまざまな情報を収集するなかで、市場の構造や競合と自社の強み・弱みなどが明らかになってきます。
ただし分析項目は多岐にわたるため、相応の時間と労力がかかるのは必至です。時には自ら顧客や有識者のもとへ赴き、地道に情報を収集する必要もあります。その分Web上からだけでは得られない、新たな意見や気づきも得られる可能性も少なくありません。
差別化戦略で事業を成功させたい企業は、競合分析を丁寧に進めていきましょう。