基本ノウハウ
顧客管理は見込み顧客の獲得だけでなく、既存顧客へ継続的にアプローチする上でも重要な行為です。しかしマーケティング初心者の方からすると、「顧客管理とは何?」「どのように進めれば良いのか」などの疑問があるでしょう。
本記事では顧客管理とは何か、実施するメリットや代表的な方法とともに解説します。顧客管理システム(CRM)の主な機能一覧やタイプの種類はもちろん、具体的なアプリや選び方もあわせて紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
まずは顧客管理とは何か、実施するメリットや代表的な方法とあわせて確認していきましょう。
顧客管理とは蓄積した情報をマーケティング戦略へ生かし、顧客の獲得や維持を図る行為です。獲得した顧客と良好な関係性を保ち、安定的な売上を確保するために行います。
顧客管理で扱う情報の例は、次の通りです。
蓄積した顧客情報は、さまざまな分析を通してマーケティング戦略へ還元されます。顧客分析について詳しく知りたい方は、こちらの記事もぜひ参考にしてみてください。
関連記事:「顧客分析とは?データの集め方から活用できるフレームワークまで解説」
顧客管理を実施するメリットは下記のように、蓄積した顧客情報や分析をもとに確度の高いアプローチが可能になる点です。
インターネットが普及した現代では、顧客自らが製品やサービスの情報を調べ、比較検討をするようになっています。そのため「場当たり的」「数打てば当たる」のようなマーケティング戦略では、成功しにくい現状です。売上が伸びないばかりか、顧客の獲得・維持コストがますます上がり経営を圧迫しかねません。
このような事態を避け企業が成長し続けるためにも、顧客管理体制は早期に整えることが大切です。
顧客管理の代表的な方法は、次の3つになります。
それぞれのメリット・デメリットは、下表の通りです。
顧客管理システム | エクセル | ノート | |
---|---|---|---|
メリット |
・部門内外の情報共有がスムーズになる ・各部門の業務が効率化する ・レポーティング機能などにより、顧客分析を進めやすい ・スピーディーな対応が可能になり、顧客満足度が上がる |
・導入コストが低い ・操作に慣れている従業員が多い |
・誰でも利用できる ・手元にあれば、時間・場所を問わず記録できる |
デメリット |
・導入コストが比較的高い ・人員体制の整備やマニュアル作成などの準備が必要 |
・複数人での同時編集ができない ・データ容量が多くなると、動作スピードが下がる ・ファイルの階層構造が複雑になると、希望するデータを見つけにくい |
・情報の更新や編集がやりにくい ・希望するデータへのスピーディーなアクセスが難しい ・持ち運びの手間がかかる |
エクセルやノートのメリットは魅力的ですが、無料版あるいは安価かつモバイル対応の顧客管理システムでも得られます。以上を踏まえると、顧客管理体制を構築・見直す際にはシステムの導入が一番といえます。
とはいえ予算などによっては、ツールの利用になかなか踏み切れないケースもあるでしょう。その場合はノートよりも情報共有しやすい、エクセルの活用がおすすめです。
ここでは顧客管理システムの主な機能や、タイプについて解説します。
顧客管理システムの主な機能は、下表の通りです。
機能 | 内容 |
---|---|
顧客情報管理機能 | 顧客に関連するあらゆる情報の一元管理 |
名刺管理機能 | 名刺の読み込みや詳細データとのひも付け |
メール配信機能 | メール配信機能 |
分析・レポーティング機能 | 受注傾向・商談内容などの分析や記録の出力 |
外部ツール連携機能 | SFAやMA、BIなど外部ツールとの連携 |
顧客管理システムには、マーケティングや営業の業務効率と成果を上げる機能が多くそなわっていることがよく分かります。なお似たようなツールとしてSFAやMAがあるものの、「どのように違うかよく分からない」という方もいるでしょう。
各ツールの役割や活用場面について知りたい方は、こちらの記事をぜひ参考にしてみてください。
関連記事:「MAとSFA/CRMの違いとは?各ツールの役割と活用場面を解説」
顧客管理システムのタイプは、クラウド型(SaaS)とパッケージ型(オンプレミス型)の2つです。クラウド型とはインターネットを介して利用しますが、パッケージ型はパソコンにインストールする必要があります。それぞれのメリット・デメリットは、下表の通りです。
クラウド型(SaaS) | パッケージ型(オンプレミス型) | |
---|---|---|
メリット |
・初期費用が安い ・常に最新版を使える ・スマホやタブレットからも利用できる |
・長期的に見るとコストは低い ・提供元からのサポートが手厚い |
デメリット |
・従業課金制のため、利用期間が長くなるとコストがかさむ ・汎用性が高い分、カスタマイズ性はやや低い |
・初期費用が高い ・最新版を使うためには、バージョンアップが必要になる ・社外で利用できない |
顧客管理システムを初めて利用するという企業は、使いやすく費用の安いクラウド型がおすすめです。無料トライアルを利用できるツールも多いため、使用感を確認しながら導入する製品をじっくり検討すると良いでしょう。
では実際にどのような顧客管理システムがあるのか、BtoB向けの製品を3つ紹介します。
またこちらの選び方ガイドの利用もおすすめです。より多くの顧客管理システムを比較検討したい場合は、ぜひ参考にしてみてください。
関連記事:「【2022年版】BtoBマーケにおすすめのCRM選び方ガイド!機能・価格・立ち位置を解説」
導入企業の例 |
・日産自動車株式会社 ・日清食品グループ ・住友不動産株式会社 など |
導入タイプ | クラウド型 |
料金プラン |
・ライトコース:780円/月 ・スタンダードコース:1,500円/月 |
主な機能 |
・顧客リスト作成 ・案件管理 ・問い合わせ管理 ・アンケート機能 ・自社セミナー管理 など |
kintoneは顧客管理機能を持つ、サイボウズ株式会社の業務改善プラットフォームです。業種や部署ごとにカスタマイズが可能なため、部門横断的に活用できます。連携可能なサービスや拡張機能は200種類以上にもなり、開発期間やコストを大幅に削減することも可能です。
例えばリーグル株式会社は他社の顧客管理システムを利用していたものの、高コストとカスタマイズにおける柔軟性が欠ける点に課題を感じていました。そこで同ツールへ乗り換え、既存の情報や資料などをすべて集約します。その結果運用費用を10分の1にまで圧縮しつつ、年間400時間も業務時間を削減できたとのことです。
導入企業の例 |
・株式会社リコー ・富士フイルム和光純薬株式会 ・アイティメディア株式会社 など |
導入タイプ | クラウド型 |
料金プラン |
・スターター:27,500円/月~ ・グロース:110,000円/月~ ・エンタープライズ:330,000円/月~ |
主な機能 |
・顧客/案件/行動管理 ・企業データベースによる自動入力 ・取引先の階層管理 ・AI予測 ・モバイルアプリ対応 など |
Mazrica SalesはSFA(営業支援システム)も内包した、株式会社マツリカの顧客管理システムです。集約できるのは商談など、顧客と接点を持った際の情報だけではありません。プレスリリースや財務などの企業情報も、自動で収集し統合できます。
例えば株式会社翻訳センターはエクセルで顧客管理を行っていたものの、記録件数が1,000件を超えたあたりからパフォーマンスの低下を感じていました。そこで同ツールを導入し顧客管理を効率化しつつ、既存顧客をフォローする仕組みを構築します。その結果対応漏れがなくなり、解約率1桁台を維持しているとのことです。
導入企業の例 |
・JA全農 ・エレコム株式会社 ・さわやか信用金庫 など |
導入タイプ | クラウド型/オンプレミス型 |
料金プラン |
【利用人数31人以上】Remix Cloud ・スケジュールシェア:3,000円/月 ・ナレッジシェア:6,000円/月 ・スタンダード:10,000円/月 【利用人数30人以下】Remix MS ・グループ:1,000円/月 ・スタンダード:3,500円/月 |
主な機能 |
・顧客管理 ・名刺/人脈管理 ・案件管理 ・分析機能 ・基幹システム/データ連携 など |
eセールスマネージャーもSFAを内包した、ソフトブレーングループの顧客管理システムです。一般的なCRM/SFAは定着率が約20%とするなか、同ツールは185業種以上で継続率95%を誇っています。
例えば日本粉末薬品株式会社は、利用するツールが散在し顧客情報の把握に時間がかかる状況でした。そこで同ツールで情報の一元管理を進め、業務効率化や顧客対応の迅速化を図ります。その結果従来は最長1日以上かかっていたクライアント対応が最短30分程度で可能となり、顧客満足度も向上したとのことです。
最後に顧客管理システムの選び方におけるポイントを、3つに分けて解説します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
顧客管理システムを選ぶ際に注目したいポイントの1つは、カスタマイズ性です。BtoB企業の受注にはマーケティングや営業、カスタマーサポートなど各部門の連携が必要になります。そのため部門ごとにカスタマイズでき、豊富な情報を蓄積・活用できる顧客管理システムがおすすめです。
また既存の業務フローに合わせて、カスタマイズできる製品もあります。しかし既存の業務フローに合わせすぎると、逆に業務効率が低下するケースも少なくありません。例えばエクセルで顧客管理してからシステムに転記するなど、ツールを導入したにもかかわらず有効活用できないケースもあります。
顧客管理システムの導入で業務効率化も進めたい場合は、ツールの仕様に業務フローを合わせながらカスタマイズできるものを選ぶと良いでしょう。
マーケティング戦略に生かしやすい仕様かという点も、ツール選びで重要なポイントです。顧客管理の目的は情報管理だけでなく、その情報をもとに効果的なマーケティング戦略を展開することにあります。そのため以下のようなポイントを中心に、顧客管理システムを比較するのもおすすめです。
例えば分析・レポーティング機能やAI予測などがあると、上記の条件を満たしやすくなります。無料トライアルを通して、実際に顧客分析やマーケティング戦略の立案を実践してみるのも1つの方法です。
顧客管理システムを導入する際は、使い勝手を必ず確認しましょう。どれだけ良いツールでも使い勝手が悪ければ従業員に定着せず、導入コストが無駄になります。特にエクセルやノートでの顧客管理に慣れた従業員は、新しいツールに抵抗を感じやすいものです。
そのため顧客管理システムは見やすく、直感的な操作が可能なものを選ぶと良いでしょう。例えばクリックやドラッグ&ドロップで操作できる項目が多いと、簡単に使用できスムーズな定着が期待できます。顧客管理の効率や精度を上げるためにも、従業員全員が問題なく扱えるようなツールを選びましょう。
顧客管理とは顧客情報を集約・整理し、マーケティング戦略や営業活動に生かす行為を指します。新規顧客の獲得はもちろん、既存顧客への継続的なアプローチや休眠顧客の掘り起こしにも効果的です。
代表的な方法としてはエクセルやノートがあるものの、効率や成果を考えると顧客管理システムの導入が一番といえます。特にカスタマイズ性が高く、使い勝手の良いツールは部門問わず従業員に浸透しやすく、効果的なマーケティング戦略の立案に役立ちます。
売上アップのために顧客との関係性を改善・維持したい企業は、管理体制を整えていきましょう。