基本ノウハウ
営業マネージャーや担当者などの中には、このような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。営業の案件管理は適切な方法で行うことで、営業活動を効率化し、成果を最大化させます。ただし、成果の出る案件管理を行うためには、適切なツールの導入が不可欠です。
本記事では、案件管理についての基礎知識や代表的な案件管理の手段、おすすめの案件管理ツール、選び方、導入ステップについて解説します。ぜひお役立てください。
案件管理とは、受注までの工程を分解して、フェーズ別にどこまで進んでいるかをリアルタイムで可視化することを指します。それぞれの案件の進捗度を可視化できていなければ、各フェーズでの判断が営業担当個人に任せられてしまい、組織的な対応が取れずにベストな選択ができません。
案件管理は会社の売上に直結するため、適切なやり方で行う必要があります。
適切な案件管理を実施すると、以下の3つのメリットにつながり、成果の最大化につながります。
この章では、案件管理によってどのようにこれらのメリットにつながるのかを解説します。
適切な案件管理を実施することで受注を最大化できます。案件管理によって企業全体の顧客情報と営業の進捗情報が可視化されれば、マネージャーやリーダーがそれぞれの営業の状況を確認しやすくなります。その結果、営業に対して適切な指示やサポートが可能です。
また、インサイドセールスから見込み顧客の情報を営業に引き継ぐ際に、案件管理によって情報を一元管理できていれば、営業担当は顧客とのやり取りの記録からどのようなアプローチをすれば良いか判断できるため、受注につながりやすくなります。
案件管理を行わなければ、営業担当が個別の判断で営業活動を行うことになってしまうため、個人の力量に頼った営業活動となり売上が安定しません。
営業の属人化を防止するための手立てとして案件管理が有効です。案件管理をすると、営業担当者全員のこれまで顧客に対して行ったアプローチを一覧できるため、前任の担当者から引き継いだ場合でもどのようなアプローチを行えば成果につながりやすいか判断しやすくなります。
また、営業担当者と顧客とのやり取りや成約までの流れが分かることで、成約率の高い営業方法も把握できます。さらに、案件管理は成約率の高い営業社員を可視化でき、営業方法をヒアリングすることでノウハウの蓄積も可能です。
案件管理を行わなければ、顧客に関する情報が分散して保管されてしまい、案件の引き継ぎの際に認識の相違から顧客とトラブルになったり、成果を出した営業が辞めてしまうことで売上の低下に直結したりといった問題が起きる可能性があります。
案件管理によって蓄積した情報を分析すれば、営業全体の業務改善に役立ちます。各ターゲットに対してどういったアプローチ方法であれば成約または失注につながりやすいのかを把握できるほか、どのフェーズに問題があって受注につながっていないのか自社の課題を特定でき、改善案を考えやすくなります。
案件管理を行わなければ、過去の案件を分析できず、ノウハウの蓄積や課題の特定ができません。自社の課題を放置してしまうことで売上の低下につながるなどの機会損失を引き起こす可能性があるでしょう。
案件管理の手段は基本的に以下の3つです。自社に合った適切な手段を選びましょう。
ツール | 費用 | 使用人数 | データの貯めやすさ | フェーズ別管理のしやすさ | 分析のしやすさ |
---|---|---|---|---|---|
エクセル(Excel)/Googleスプレッドシート | ◎ | ✕ | ✕ | ✕ | △ |
SFA/CRM | △ | ◯ | ◯ | ◎ | ◎ |
基幹システム・会計ソフトなどのその他ツール | ✕ | ◯ | ◯ | ✕ | △ |
1章でも触れたように、成果の出やすい案件管理のためには、フェーズ別の管理が必須です。SFA/CRMは案件管理に特化したツールですが、他のツールは案件管理が目的のツールではないため、基本的にはSFA/CRMを導入すると良いでしょう。
また、案件管理のやり方について知りたいという方は「案件管理のやり方|各手法のメリット・デメリットから実践知識まで解説」の記事をご覧ください。
この章では、それぞれの案件管理の手段の特徴について詳しく解説します。
エクセル(Excel)/Googleスプレッドシートは、業務に利用している企業であれば新規の契約や導入の必要がなく、最も手軽に案件管理できる方法といえます。社内でIT化があまり進んでいない、もしくは低コストで案件管理を実施したいと考える企業や、個人または少人数で働いている企業に向いています。
この管理方法のメリット・デメリットは以下です。
▼メリット
▼デメリット
エクセル(Excel)/Googleスプレッドシートは、コストがかからないことと自社に合ったカスタマイズができる点が強みです。一方、管理できるデータの範囲は広いものの案件管理に特化してはいないため、シートの切り替えや分析の際の手間など扱いづらい点が多いでしょう。
SFA/CRMは、案件に関する情報を社内で最も効率よく一元化できる方法です。大量のデータを扱う企業や、データを基に効率よく会社の営業活動を改善したい企業に向いています。
この手法のメリット・デメリットは以下です。
▼メリット
▼デメリット
SFA/CRMは案件管理を目的としたツールであることから、データの共有・管理・分析を効率的に行うための機能がついています。デメリットとして操作や費用面の問題がありますが、ツール提供企業が実施している導入後のサポートを受ければ、操作に慣れるまでの時間を短縮できます。また、案件管理によって営業活動の効率化が実現すれば、受注数がアップし、導入・運用費用以上の効果が期待できるでしょう。
基幹システムや会計ソフトなど他のツールを用いて案件管理する場合もあります。すでに基幹システムや会計ソフトを自社に導入していてこれ以上コストをかけられない企業や、案件管理だけじゃなく包括的な機能が入ったツールを活用したい企業に向いている案件管理方法です。
この管理方法のメリット・デメリットは以下です。
▼メリット
▼デメリット
基幹システム・会計ソフトなどのその他ツールは、他のシステムと併用する形で案件管理が行えます。そのため、案件管理よりも優先度が高いデータがある場合に効率的に管理できる良い方法です。ただし、多機能であるがゆえにコストがかさんでしまったり、データの管理や分析がしづらかったりする点は把握した上で活用する必要があります。
今回の記事では、営業向けの案件管理ツール・アプリとしておすすめのSFA/CRMをご紹介します。適切な案件管理を実施し、成果を最大化させるために、顧客のフェーズごとの状況を可視化できるSFA/CRMの導入を検討しましょう。
ここでは以下の7つをピックアップし、それぞれの特徴や機能について解説します。
クラウドサービスサスケ | |
---|---|
導入実績 | 1,000社以上 |
主な機能 | ・商談管理
・日報/週報管理 ・名刺管理 ・タスク通知 ・通話履歴/音声分析 など |
料金プラン | 50,000円/月~※1 |
モバイル対応 | ○ |
無料トライアルの有無 | ○ |
※1アカウント数や顧客登録数によって変動します
クラウドサービスサスケは、株式会社インターパークが提供する案件管理ツールです。継続率は98.9%と、利用している企業の満足度が非常に高くなっています。
最も特徴的なのはアウトバウンド営業に対応しつつ、インサイドセールスにも特化している点です。これにより営業活動に必要な情報を一括管理でき、より効率的に案件を管理できるようになっています。
Sales Force Assistant | |
---|---|
導入実績 | 要問い合わせ |
主な機能 | ・名刺管理
・商談管理 ・行動管理 ・日報/週報管理 ・対人サポート など |
料金プラン | ・クラウド型:3,500円/月~
・オンプレミス型:667円/月(5年利用月額換算)※2 |
モバイル対応 | ○ |
無料トライアルの有無 | ○ |
※2サーバー費用は別途かかります
Sales Force Assistantは、株式会社NIコンサルティングが提供する案件管理ツールです。「AI秘書で、営業を改革(DX)」をテーマに、現場の営業担当者が働きやすくなり生産性が向上するようアシスト機能が備わっています。
具体的にはAI秘書が顧客や商談の情報を蓄積・共有し、業務の抜け漏れや提案タイミングを教えてくれるのです。営業マネージャーによるメンバーの管理だけでなく、個々の担当者が効率的に案件管理を進める上で役立つツールといえます。
HubSpot Sales Hub | |
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導入実績 | 15万社以上(世界) |
主な機能 | ・商談管理
・行動管理 ・見積書発行 ・通話履歴/音声分析 ・MA連携 など |
料金プラン | ・Starter:2,160円/月~
・Professional:54,000円/月~ ・Enterprise:180,000円/月~ |
モバイル対応 | 要問い合わせ |
無料トライアルの有無 | ○ |
HubSpot Sales Hubは、HubSpot社が提供する案件管理ツールです。世界的なシェアを誇り、日本国内でもDeNAやマネーフォワードなどの有名企業が活用しています。
MAやCRMの機能も集約されているため、営業に必要な情報を一目で確認可能です。データを一元管理したい場合や、他部門との情報共有をよりスムーズに進めたい企業におすすめのツールとなっています。
ネクストSFA | |
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導入実績 | 要問い合わせ |
主な機能 | ・商談管理
・行動管理 ・見積書発行 ・日報/週報管理 ・ツール連携(MA、財務会計、名刺管理) など |
料金プラン | ・基本料金:50,000円/月
・MA機能利用料(任意):30,000円/月 |
モバイル対応 | ○ |
無料トライアルの有無 | ○ |
ネクストSFAは、株式会社ジオコードが提供する案件管理ツールです。見やすさや使いやすさを徹底的に追求し、誰でも簡単に操作できるUIになっています。
最も特徴的なのは、ツールが定着するまで充実したサポートを受けられる点です。設定やデータ移行はもちろん、マニュアル作成も支援してくれます。そのため案件管理のツールを導入するのは初めてだという企業も、安心して利用できるでしょう。
kintone | |
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導入実績 | 2万社以上 |
主な機能 | ・商談管理
・行動管理 ・見積書発行 ・日報/週報管理 ・承認プロセス など |
料金プラン | ・ライトコース:780円/月
・スタンダードコース:1,500円/月 |
モバイル対応 | ○ |
無料トライアルの有無 | ○ |
kintoneは、サイボウズ株式会社が提供する案件管理ツールです。業種や部門に合わせてカスタマイズできるため非常に使いやすく、営業データの入力や共有がよりスムーズになります。
また料金プランを確認できるページでは、費用対効果シミュレーターの利用が可能です。実際にどれくらいのコストや時間を削減できるか、予測を立てた上で導入の可否を検討したい企業にもおすすめのツールといえます。
Zoho CRM | |
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導入実績 | 25万社以上(世界) |
主な機能 | ・商談管理
・行動管理 ・タスク通知 ・AI予測 ・ツール連携(MA、BI、名刺管理) など |
料金プラン | ・スタンダード:1,680円/月
・プロフェッショナル:2,760円/月 ・エンタープライズ:4,800円/月 ・アルティメット:6,240円/月 |
モバイル対応 | ○ |
無料トライアルの有無 | ○ |
Zoho CRMは、ゾーホージャパン株式会社が提供する案件管理ツールです。CRMとSFAが一体化している上、MAをはじめとした複数のツールと連携できるため、Zoho CRM1つでさまざまな機能を使えます。
またZoho CRMでは営業プロセスや営業フローの設計・見える化もでき、PDCAの効率化に最適です。営業では業務を効率化し生産性を向上させるためには、PDCAサイクルを定期的に回す必要があります。営業におけるPDCAの重要性や効果的な回し方について知りたい方は、こちらの記事もあわせてチェックしてみてください。
Microsoft Dynamics 365 | |
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導入実績 | 要問い合わせ |
主な機能 | ・商談管理
・タスク通知 ・見積書発行 ・AI予測 ・通話履歴/音声分析 など |
料金プラン | ・Sales Professional:8,125円/月
・Sales Enterprise:11,875円/月 ・Sales Premium:16,875円/月 ・Microsoft Relationship Sales:20,250円/月 |
モバイル対応 | ○ |
無料トライアルの有無 | ○ |
Microsoft Dynamics 365は、日本マイクロソフト株式会社が提供する案件管理ツールです。同社の委託調査では「3年間の利用で費用対効果が215%」という結果が出るほど、コスト削減と売上アップに貢献しています。
このような成果が出ている要因は、AI予測によってインサイトを発掘しながら組織営業を推進できる点にあります。そのため営業部門の組織力を強化し、チーム全体の売上向上を目指したい企業におすすめのツールです。
案件管理ツールを選ぶ際に留意したい点は、3つあります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
案件管理ツールは製品によって使える機能が変わるため、まずは自社が求める使い方ができるか確認することが大切です。
中にはMAやCRMの機能が備わったものもあり、ツールの導入状況によって適した製品も変わってきます。例えば営業活動に関連したツールを初めて導入する場合は、MAやCRMも備わっている製品を選ぶと一石二鳥です。一方すでにMAなどがある場合は、バッティングしないようなツールを選ぶか、切り替えを検討しましょう。
また業務効率化を考える上では、名刺管理や財務管理など他のツールと連携できる機能も役立ちます。利用するツールの数が多く管理も煩雑になっている場合は、一元化できる製品に思い切って切り替えるのも1つの方法です。
案件管理ツールは無料トライアルや説明会などを通じて、見やすさや使いやすさをあらかじめ確認しましょう。導入後に使い勝手の悪さが発覚し有効活用できなければ、費用が無駄になるためです。
実際営業部門の管理者は、約6割が案件管理ツールの現場活用に課題を感じています。※3
※3出典:SFA導入経験がある従業員300名以上の管理職、約6割が「営業現場での活用に課題あり」より
課題として挙げられているのは、主に次の5つです。
上記からも使い勝手の悪さが、ツールの定着を阻害していることが分かります。このような事態を避けるためにも、導入するツールの選定は実際に使用する従業員が確認した上で決めるようにしましょう。
案件管理ツールはスマホ操作の可否も、重要な選定基準になります。前述したツールの現場活用における課題の中で、最も多いのが「入力の作業負担が大きい」という意見です。そのため外回りの多い営業担当者が入力しやすいように、スマホからでの簡単に操作できる案件管理ツールの導入が理想的だといえます。
モバイル対応であれば商談前に顧客や案件の情報を確認する、あるいは商談後に進捗状況を更新することも可能です。営業データをリアルタイムで共有できれば、その分各部門・担当者が取るべきアクションも早期に実行できます。
案件管理ツールを定着させ、営業全般の効率化を進めるためにも、スマホ操作の可否については必ず確認しておきましょう。
最後に案件管理ツールの導入手順を、3ステップに分けて解説します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
まずは案件管理ツールを導入する目的の明確化が大切になります。前述のおすすめツール・アプリでも解説したように、目的によって適したツールが異なるためです。導入目的としてよく挙げられるのは、次の5つがあります。
上長や現場の担当者が案件管理ツールの導入について納得し積極的に使用するよう、導入の検討に至った経緯や課題、見込まれる効果などもあわせて明確にしておきましょう。
無料トライアルでは、下記を中心に操作感などを確認します。
注意したいのが、意志決定者だけで無料トライアルを受けないということです。意志決定者が良い感触を持っても、現場の従業員からは使い勝手が悪いなど意見の相違が生じる可能性があります。このとき優先したいのは、実際に活用していくことになる現場の意見です。
案件管理ツールを定着させて費用対効果を上げるためにも、必ず現場の従業員がトライアルを受けて有効活用できそうか意見を交換しましょう。
導入する案件管理ツールが決まったあとは、提供元のサポートを受けながら少しずつ導入・運用を進めます。「ツールの連携ができない」「操作が難しい」などの理由で活用を断念することのないよう、サポートは有償であっても積極的に利用すると良いでしょう。
また担当者が変わってもとどこおりなく案件を管理するためには、マニュアルを作成しておくことも大切です。案件管理の量や質を維持できるよう、いつでも誰でも使える環境を整えましょう。
本記事では、案件管理についての基礎知識や代表的な案件管理の手段、おすすめの案件管理ツール、選び方、導入ステップについて解説しました。案件管理は、営業の成果を最大化させるために必要な取り組みです。適切な案件管理を実施するためにも必ず取り組むようにしましょう。
SFA/CRMは案件管理を目的にしたツールであるため、エクセル管理よりも導入のハードルは高まりますが、対応漏れの減少や受失注の分析などを通じて売上の増大が期待できます。案件管理をより効率的に行いたかったり、営業活動の生産性を向上させたかったりする場合は、本記事で解説した内容を参考に自社に合った案件管理ツールを選ぶようにしてください。