基本ノウハウ
案件管理の効率化は、営業活動における生産性を向上させる上で必須です。しかし担当者や管理者の中には、「課題があるとは感じるが、どのように変えれば良いか分からない」という方もいるでしょう。
本記事では案件管理のやり方における具体的な手法や、設定すべき項目について解説します。上手に進める上で押さえておきたいコツや成功事例も、あわせて紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
案件管理のやり方は、主に次の3つです。
それぞれのメリット・デメリットについて見ていきましょう。
エクセルやGoogleスプレッドシートは、最もスタンダードな案件管理のやり方です。実際顧客の管理をしているツールについて尋ねた調査では、53.2%※1がエクセルを使っています。
※1出典:SFA導入経験がある従業員300名以上の管理職、約6割が「営業現場での活用に課題あり」より
エクセルやGoogleスプレッドシートで案件を管理するメリットは、低コストかつ使える人が多いために導入しやすい点です。一方デメリットは、同時編集が難しいところにあります。Googleスプレッドシートは複数人による並行作業が可能ですが、データ量が多くなるほど動作が重くなり作業効率の低下を招きかねません。
またどちらもデータの種別ごとに、シートやファイルの切り替えが必要です。例えば案件の進捗状況と顧客の情報を参照したいとき、データ間を行き来する手間がかかってしまいます。
エクセルやGoogleスプレッドシートは導入しやすい反面、扱う情報が多くなるほど管理しにくくなるツールといえるでしょう。
SFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理)は案件管理において、エクセルの次によく活用されているツールです。2つは扱う情報の関連性が高く、セットになっている製品も少なくありません。
SFAやCRMで案件管理を進めるメリットは、営業に関連するさまざまな情報を一元管理できる点にあります。過去の情報から受注失注の要因・原因を分析できる上、情報をリアルタイムかつ正確に共有することが可能です。そのため担当者の不在時に問い合わせがあった際も、他の従業員が適切なアクションを取れます。
デメリットとしては導入・運用費用がかかる、操作に慣れるまで時間がかかるといった点が挙げられるでしょう。
しかしSFAやCRMによって案件管理の効率が上がり営業活動の生産性が向上すれば、導入・運用費用以上の売上が期待できます。操作も直感的で簡単なツールが増えているため、それほど大きなデメリットは感じないでしょう。
案件管理のやり方は、次のような方法があります。
上記に挙げるようなツール・システムのメリットは、案件管理以外の機能も利用できる点です。またツールによっては、営業以外の部門も有効活用できます。例えばMAやメール配信システムであればマーケティング部門、ERPパッケージなら財務・人事も含めた全部門の業務効率化が可能です。
一方デメリットは案件管理に特化したツールではないため、効果的に使うためにはローカルルールを設定・周知が必要な点にあります。またツールによっては多機能ゆえに、高額になりやすいところもネックになりやすいでしょう。
導入に失敗しないためにも慎重な比較検討はもちろん、無料トライアルを通じて自社が求める機能があるか、使い勝手は良いかなどを確認することが大切です。
案件管理の実践的なやり方として、設定すべき項目を3つ解説します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
基本情報として最低限設定しておきたい項目は、下表の通りです。
設定項目 | 設定の目的 | 例 |
---|---|---|
自社の担当者 | 担当者が抱えている案件数や案件内容を確認するため | 営業部門 ○○□□(氏名) |
取引先の情報 | ・訪問営業の事前準備に役立てるため
・過去の営業履歴を検索・分析し、アプローチ内容へ反映するため |
・株式会社●●
・所在地 ×××× ・営業部門 ○○□□(氏名)様 ・関連顧客 株式会社▲▲ |
案件名 | 案件内容が一目で分かるようにするため | ・■■(サービス名)購入 |
発生日 | アプローチ開始時期を確認するため | 202×年2月10日 |
次回予定日 | 次に起こすアクションの抜け漏れを防ぐため | 202×年3月20日 |
受注予定日 | ・売上の予測を立てるため
・予定日から逆算して効率的な営業スケジュールを立てるため |
202×年7月1日 |
受注確度 | ・確度によってアプローチの手法や回数を変えるため
・売上の予測を立てるため |
・A:当確(80~100%)
・B:やや高い(50~80%未満) ・C:やや低い(30~50%) ・D:低い(0~30%) |
基本情報は営業担当者だけでなく、マーケティングやカスタマーサポートにとっても重要なデータです。正確かつ最新の情報を共有できるよう、こまめに更新しましょう。
進捗状況として最低限設定しておきたい項目は、下表の通りです。
設定項目 | 設定の目的 | 例 |
---|---|---|
商談の進行度 | 商談の対応状況を共有し、効率的なリソース管理につなげるため | ・担当者と面談 ・見積もり提出 ・価格交渉中 など |
要望 | アプローチ内容に反映し、受注確度を上げるため | ・◎◎してほしいとのこと |
課題 | アプローチ内容に反映し、受注確度を上げるため | ・△△について課題を感じているとのこと |
受失注 | 案件の終了状態を共有するため | ・202×年7月1日に受注 |
次回予定日 | 次に起こすアクションの抜け漏れを防ぐため | 202×年3月20日 202×年5月3日に失注 |
受失注の要因 | 要因を分析し、受注率を上げる・失注率を下げる施策を検討するため | ・予算と見積もりが合致して受注 ・他社製品を選択されて失注 |
進捗状況は単に営業活動の進み具合を確認できるだけでなく、効率的・効果的なアプローチ方法を編み出す上で役立ちます。特に受失注の要因は売上アップに向けて、必ず記載しておきたい項目の1つです。たとえ失注しても原因をよく分析してアプローチ方法に反映・共有することで、部門全体の売上アップが期待できます。
金額情報として最低限設定しておきたい項目は、下表の通りです。
設定項目 | 設定の目的 | 例 |
---|---|---|
売上 | ・売上の予測を立て、営業目標の到達・未達を把握するため
・担当者ごとの売上状況を確認するため |
100,000円 |
売上日 | ・売上が上がった時期を確認するため
・売上が上がりやすい時期を分析し、アプローチのタイミングを検討するため |
202×年7月1日 |
利益 | 費用対効果を検証するため | 50,000円 |
上記のうち、売上は営業担当者のパフォーマンスを見定める際にも役立ちます。特定の担当者に売上が偏っている場合は、個々の営業スキルをアップさせるような教育体制の見直しが必要です。
案件管理のやり方で押さえておきたいコツを、3つ解説します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
案件管理で検討するスケジュールはカレンダー通りではなく、営業日を元に考えることが大切です。BtoB企業の場合、営業活動ができるのは平日の5日間であり、日付ベースで考えると「意外に動ける日数が少ない」という事態になりかねません。
さらに祝日などのイレギュラーな日程も想定しておく必要があります。例えばGW(ゴールデンウィーク)のスケジュールで考えてみましょう。4月24日の時点で、ある営業活動の期限を5月9日に設定したとします。
この場合カレンダーの日付で考えると2週間以上の猶予がありますが、実際の営業日は祝日や土日を除いた9日間です。さらに祝日に挟まれた5月1日や5月2日を休みにし、大型連休にする会社や個人も多いでしょう。そうすると結果7日ほどしか営業日がないことが分かります。また個人でGWの混雑を避け、祝日明けにお休みを取る場合も想定されます。確認する相手や、納品先がある場合は、担当者のスケジュールを事前に確認しておくことも大事になります。
こちらは極端な例ですが、この他にもお盆や年末年始なども考慮しておく必要があります。
スケジュール管理を見誤るとアクションが遅れる、あるいは急ぐあまり営業活動の質が下がるといった事態が起きます。このような事態を避けるためにも案件管理でスケジュールを考えるときは、営業日ベースで曜日を確認しながら進めましょう。
案件管理のやり方を効率化したい場合は、ツールやアプリの活用がおすすめです。BtoBはBtoCよりもターゲット数が少ないとはいえ、見込み顧客を顧客化するまでに対応する数は膨大になります。すると従来のような、エクセルを使った手作業による管理だけでは対応しきれないケースも出てくるでしょう
案件管理のやり方はエクセルやツールなどさまざまありますが、いずれにしても正確な状況把握のためには営業ステータスの定義が必要です。例えば一口に商談中と言っても、「電話やメールでの問い合わせがあった」「対面での説明や話し合いをした」とでは状況が全く異なります。
また案件情報を入力するタイミングが明確でない場合、日々忙しい営業担当者は面倒だと感じて先延ばしにしてしまうケースも少なくありません。そのまま入力を忘れると、対応漏れが発生し失注につながる恐れもあります。
そのため入力のタイミングもステータスと同様に、明確なルールを定めておきましょう。例えば「AMの商談は当日、PMの商談は翌日中に入力する(翌日が非営業日の場合は月曜日)」とし、記入忘れがあった場合はアラート表示すると抜け漏れを防げます。
営業担当者から入力の負担が大きいといった声がある場合は、外回り中もスマホから入力できるモバイル対応のツールやアプリの導入がおすすめです。商談までの待機時間などで簡単に入力できれば担当者のフラストレーションを減らしつつ、案件の最新情報をより素早く共有できるでしょう。
最後に案件管理のやり方が成功した事例を、2つ紹介します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
株式会社AGENTは、システムのテストサービスやセキュリティ分野のソリューションを提供する企業です。すでにSFAを導入していたものの、使い勝手の悪さなどから十分に使いきれていない現状がありました。
そこで新たに利用を開始したのが営業管理とMAが融合した、ネクストSFAです。案件や行動履歴の見える化により、営業担当者自ら適切なアクションをスムーズに判断・実行できるようになりました。その結果案件の取りこぼしがなくなり、顧客の安心感や信頼感の構築にもつながったとのことです。
エネチェンジは、電力・ガス関連のサービスを提供する企業です。以前は数千もの顧客をスプレッドシートで管理していたものの詳細な分析や管理が難しく、対応の抜け漏れが多い状況にありました。
そこで利用を開始したのが、業種・部門にあわせて自由なカスタマイズが可能なkintoneです。導入後は顧客情報を一括管理でき、対応の抜け漏れが減少しました。また案件管理の効率化により対応が迅速化した結果、法人案件数は15倍になり、売上アップにも貢献したとのことです。
案件管理のやり方はエクセルやGoogleスプレッドシートのほか、SFAなどツールを活用した方法もあります。いずれにおいても基本情報や進捗状況などを随時共有し、各部門が適切なアクションを迅速に取れるような体制づくりが大切です。
また案件管理を進める際は、スケジュールの組み方や記載のルールを明確にしておく必要があります。ただし入力作業の負担が大きくなりすぎないよう、ツールやアプリの導入もあわせて検討しておきたいところです。
営業活動の効率を上げるためにも、自社の実情に合わせて案件管理のやり方を見直していきましょう。