インタビュー
カスタマーサクセスは、ベンチャー企業からブームがはじまりましたが、大手企業も注目している取り組みです。しかし、大手企業が同じ考え方でカスタマーサクセスに取り組むのは難しく、従来と異なる考え方が必要です。カスタマーサクセスの現状や、大手企業における最適な導入方法について、プロである株式会社openpage代表取締役 藤島誓也氏に解説いただきました。
株式会社openpage 代表取締役
株式会社ビズリーチにて当時日本で一早くカスタマーサクセスチームの立ち上げを経験し、2018年株式会社openpageを設立。顧客取引のDXソリューション「openpage」を提供、米国流のカスタマーサクセスやセールステックについて最先端の情報を国内で広く啓蒙。著書に「実践カスタマーサクセス BtoBサービス企業を舞台にした体験ストーリー」(日経BP、2023年)。ITmedia ビジネスオンライン「新時代セールスの教科書」にて連載中。
――藤島さんの得意領域といえばカスタマーサクセスです。最新の概況を教えてもらえますか?
カスタマーサクセスは、もともとは「SaaS企業」、多くは「ベンチャー企業」が取り組んでいたもので、これは一周回ったかなと思います。
カスタマーサクセスには「有名なフレームワークや理論」があります。カタカナが多くて恐縮ですが(笑)。
例えば、オンボーディング(導入開始)、アダプション(定着)、エクスパンション(契約拡大)といった顧客の「ジャーニーモデル」。また、ハイタッチ(人)、ロータッチ(研修)、テックタッチ(デジタル)といった顧客に対する「タッチモデル」。これらに習って「SaaSのほぼすべての会社」が自社にカスタマーサクセスを導入しました。
もちろん、すべて完璧ではないですが、今のSaaS企業はどこも「ハイタッチ」で「オンボーディング」の工程を作り込むようなことは出来ていて、次は「エクスパンション(契約拡大)」や「デジタル化」への投資を意識していますね。
――そもそも、カスタマーサクセスはどのような役割なのでしょうか。
「契約後のTime toサクセスを早める、最大化する」ことがカスタマーサクセスの役割です。
サクセスというと抽象度が高いのですが、いうなればその製品を購入するときに期待していた「価値」や「効果」ですね。発祥はBtoBのSaaSからなので、これにおいては、主に「仕事における成果」となります。
「取引後の効果について、速く、深く結果を出すための業務や職種、施策」がカスタマーサクセスです。効果が出るからこそ、顧客はより大きく投資しよう(=取引金額を高めよう)と思うので、契約金額を拡大していく効果があります。
最近のトレンドは、提供チャネルのデジタル化ですね。米国では「デジタルファーストなカスタマーサクセス」が今年の合言葉でした。カスタマーサクセスのためのサイトやナビゲーションなど、デジタル接点の強化で提案をDXするわけです。
――カスタマーサクセスのテーマが一段階上がった、というわけですね。
はい。そしてさらにもう一つのトレンドでいうと、このカスタマーサクセスの活動自体に「ROI」が求められるようになりました。
要は、「カスタマーサクセスに投資してなんぼ儲かるの?」という話です。組織を作ったり、施策を強化したりするのにお金がかかりますから。
そして会社においてリターンというと、「営業売上」を立てるしかないんですね。そこで、「エクスパンション」と呼ばれる契約後の取引拡大工程の注目度が上がっています。
これに関する最新のトレンドは、「コンパウンド・スタートアップ戦略」です。格好つけずにいえば「DX事業のクロスセルの推進」です。
――コンパウンド・スタートアップ戦略とは何ですか?
コンパウンドとは「混合物」を意味する英語で、組み合わせるとか、複利にするとか、そういう意味があります。