インタビュー
エンタープライズセールスとは、大企業や公的機関など大規模組織に向けた営業手法を指します。製品やサービスの導入が決まれば大きな売上を期待できることから、エンタープライズセールスに注力するIT、SaaS企業は増えています。
しかしSMB向けセールスと同じ戦略や体制では売上につなげることは難しいでしょう。エンタープライズセールスを成功させるためにはポイントを押さえる必要があります。
大企業への効果的な提案法から関係構築の鉄則まで、プロである株式会社openpage代表取締役の藤島誓也氏に解説いただきました。
株式会社openpage 代表取締役
株式会社ビズリーチにて当時日本で一早くカスタマーサクセスチームの立ち上げを経験し、2018年株式会社openpageを設立。顧客取引のDXソリューション「openpage」を提供、米国流のカスタマーサクセスやセールステックについて最先端の情報を国内で広く啓蒙。著書に「実践カスタマーサクセス BtoBサービス企業を舞台にした体験ストーリー」(日経BP、2023年)。ITmedia ビジネスオンライン「新時代セールスの教科書」にて連載中。
――エンタープライズセールスは取り組みのハードルが高いといわれますが、具体的にどのような点が難しいのでしょうか。
まず大企業では「大きな組織を動かそうと思えるほどの話題」でないと話を聞いてもらえないという、始めに超えねばならない壁があります。組織規模が大きくなればなるほど、新たな取り組みや取り引きに対するハードルが高くなります。30人の会社と3万人の会社では、行動に至るスピードやハードルの高さがまったく異なります。
小規模組織では、代表に口頭共有した上でプロジェクトを進められることもあるでしょう。しかし大企業では、企画書を作成し上司やチームに相談しながらPoCや相見積もりなども意識して…と複数の関係者の合意を得るための時間を要します。
これだけの“重い腰を上げる”に値するような提案でなければ、そもそも相手にされないという点がエンタープライズセールスの難しさといえるでしょう。
そのため提案のポイントは、大企業における超重要課題や、役員たちが日常的に話題にしていること、新たに動き出したプロジェクトといった、企業としての優先事項に絡めた提案を持っていくことが重要です。
――大きな組織を動かすには大企業にとっての重要課題を把握する必要があるのですね。
そうですね。大企業のなかでもそのような重要課題を「認識するキッカケ」があるはずです。企業内から出た声によって認識することもあれば、社外のメディアやベンダーの発信により自社の課題を認識する場合もあります。例えば「DX」は、どちらかといえば後者だと思います。
このような第三者が作った経営トレンドの発信がきっかけとなり、「自社はどうなんだ?」と課題を見直すことで重要課題が顕在化することもあります。
大企業の業務課題を理解することはもちろん、大企業に響くトレンドは何かを押さえる必要があります。