Tips

“販売施策”から脱却しよう〜製造業におけるマーケティング課題とは?

“販売施策”から脱却しよう〜製造業におけるマーケティング課題とは?

近年、BtoBマーケティングに関する情報は書籍・ネットメディアなどを通して目にすることが多くなってきましたが、「こと製造業となるとあまり情報がない......」というお声をお聞きします。
筆者が代表を務めるMonointive株式会社では「製造業に特化したBtoBマーケ・営業支援」を提供しており、その立場から製造業におけるマーケティングの課題から実践場面で押さえるポイントを連載でご紹介する予定です。

目次

製造業のマーケティングの現在地

 斉藤拓真 | Monointive株式会社 代表取締役社長|BeMARKE(ビーマーケ)
Monointive株式会社 代表取締役社長 斉藤拓真氏

製造業全般にわたった悩みとして、「マーケティングがなかなか進まない」というお話をよく伺います。まずは、このあたりの理由や背景について考えてみましょう。

この問題には大きく「ツール導入」と「マーケティングの定義」の2つの観点があると考えています。

CRM・SFA・MAなどのツール導入推進があまり進んでいない

1つ目の「ツール導入」ですが、製造業においてはSaaSなどのIT業界などに比べるとCRM・SFA・MAなどのツール導入推進があまり進んでいないのが現状です。本質的にこれらのツール導入が必要かについての理解が進んでいないことが背景だと考えています。

製造業の多くは工場や生産設備など巨額な投資が必要であることから、参入障壁が他の産業に比べるととても高いと言われています。従って、レガシーな企業が多く、歴史を重ねる中で業務が複雑化したことで、情報が分散したり社内のシステムが部分最適の状況になってしまっているケースが散見されます。

また、IT投資の多くを製造・物流・会計に進めた結果、どうしてもマーケ・営業系のツールの優先度が上がらずに導入がなかなか進まないというご相談をいただきます。

「マーケティングの定義」が曖昧

2つ目の「マーケティングの定義」が曖昧になってしまっていることも製造業のマーケティングを進める阻害要因だと考えています。

マーケティングには大きく「プロダクトマーケティング」と「セールスマーケティング」がありますが、「ものづくり」が主流な製造業では前者が重視されがちです。
新規リードを獲得し、ナーチャリングをして商談送客を行う「セールスマーケティング」の役割はほとんど外勤営業が担っているのが現状です。

購入製品の納品やトラブル時の一次対応を含め顧客対応を全方位的に行う営業スタイルを「先発完投型」と呼んでいますが、現在、マーケ・営業の潮流とされている「分業型組織」に変革し「セールスマーケティング」を推進していく上では、長年染み付いてしまった営業スタイル・それに付随した業務を今一度整理するところから始める必要があると考えています。

これらの変革が難しい点はボトムアップ型の提案では限界があるということです。

しかし、成熟した国内市場の現状を考えると、営業・マーケの上層レイヤー、あるいは経営層 が戦略的にこれらを推し進めることは日本の製造業にとっては喫緊の課題と言えるでしょう。

製造業の営業組織とマーケティングは相性が悪い?

ご支援する中で感じているのは、 「モノ」を扱う製造業ならではの営業体制の変革は容易ではないケースが多い点です。では、課題解決に向けて、他の業界では徐々に一般的になりつつあるインサイドセールス(内勤営業)のような仕組みの導入が、製造業においても進んでいるのか。

この点についてもなかなか進んでいないという認識です。

1年後の商談よりも明日までの見積もりが優先

現状をお伝えするために、「展示会後のフォロー」を例にとって考えてみましょう。

企業規模などによって大きく変動はありますが、100〜数百件規模のリードが会期の後、週明けにどさっと営業に振り分けられるものの、製造業の商談リードタイムは1年以上かかるものも多いため、「要商談」対応とされているリードであっても対応の優先度が下がってしまいがちです。

私自身が営業に従事していた頃も同様でしたが、1年後の商談よりも明日までに提出の必要な見積もり対応が優先されるのは致し方ないことだと思います。これは先ほど述べている「先発完投型営業」の影響と言えます。

その結果、ニーズが顕在化していない新規リードは放置されてしまっていることも多く、知らない間に機会損失が発生してしまっています。

企業特性にマッチした形でインサイドセールス導入が必要

その解決策として、獲得リードに対してフレッシュなうちにインサイドセールスが架電する方法が考えられますが、製品の特性上、専門性の高い説明を求められることが多く、「ちゃんと説明できるのか?」「誤った説明したことにより顧客からお𠮟りを受けることがないか?」という懸念が先行してしまい、社内理解が進まないケースがあります。

一方、先述した機会損失を防ぎマーケティング施策のROIを高める上では、製造業にもそれぞれの企業特性にマッチした形でインサイドセールス導入が必要です。

長年築いた営業スタイルを変えていくことは時間を要しますが、小さな成功体験を通して、むしろ外勤営業の方にメリットがあることについて少しずつ社内理解を進める必要があると思います。

製造業のマーケティングにおいてデータ活用が進まない理由とは?

マーケティング・営業活動のツールとしてデータ活用が重要であることは一般的に言われますが、製造業でも同じことが言えるのでしょうか。

顧客情報管理として名刺ツールを使っている製造業の会社はかなり増えてきていますが、次に挙げるようなデータ(情報)が、部門別のシステムで管理されていることから、「データがサイロ化してしまっている」ケースが見受けられます。

製造業のマーケティングにおいてデータ活用が進まない理由|BeMARKE(ビーマーケ)

特に受発注データやアフターサービスの対応履歴は、アップセル・カスタマーサクセス・リプレイス提案などにはとても重要です。

一方、長年使われているシステムでSFA-CRMとの連携が難しいのも事実であるため、いきなりすべての情報をデータベースごとつなげるよりも、まずは各システムの情報を定期的に営業側のツールにインポートしながら運用方針を固めていく方が現実的かもしれません。

少し遠回りに見えるかもしれませんが、顧客情報の一元管理の仕組み化を地道に進めることで、MA活用やインサイドセールスの推進の突破口になり得ると考えています。

“販売施策”から脱却しよう!

製造業におけるマーケティング・営業の課題は他業界と比べると、一足飛びには解決が難しいものも多いことが分かります。そうした中で、最初に手をつけるとすれば、どのようなことから始めれば良いのか。

いわゆる販売企画・営業推進と言われている部門が立案する販売施策を営業組織にそのまま展開するのをやめること、「脱・販売施策」から始めるのはどうでしょうか。

たとえば、営業戦略で「◯◯市場の新規顧客開拓」が挙げられたとした時に、関連企業のリストアップを行い、顧客獲得を外勤営業だけに任せてしまうと営業マンの既存業務の量に応じて進捗が変動してしまうため、施策の有効性を振り返ることが難しくなってしまいます。

一方、展示会や特定業界向けのWeb媒体を活用するなど、外勤営業に依存せずに見込み客(リード)を獲得する施策を行うことで、ターゲット市場において新規リード獲得が期待できますし、さらにインサイドセールスによるナーチャリングをすることで新規顧客における商談獲得も可能です。

さらには一連の情報をCRM/SFAでデータ化することで、各施策の効果測定もダッシュボードを用いて視覚的かつ、客観的に行い、マネジメント業務を効率化することもできます。

弊社では、本日解説したマーケ・営業の全般に上流の戦略設計から個別施策の実行まで幅広くご支援させていただいております。
無料の相談会を随時承っておりますので、こちらのリンクからお申し込みください。

まとめと次回予告

あらためて製造業のマーケティングにおける課題を整理してみると、取り組むべきことが多すぎて少し暗い気持ちになった方もいらっしゃるかもしれません。
ただ、裏を返せばそれだけポテンシャルがあるという見方もできます。「モノの売り方づくり」の実現に向けてマーケティングの力を効果的に取り入れることで、日本の製造業における売り上げ拡大の余地はまだまだあると考えています。

そのための、具体的な取り組みにつながるヒントを、残り3回の記事で紹介していきたいと思います。

次回は「製造業におけるマーケティングを進める上での着眼点」について解説する記事をお届けする予定です。実は製造業の場合、「製品の機能・性能の訴求」ではマーケティング活動はうまくいきません。では、どこに視点を置くべきか……次回、詳しくお伝えします。

BeMARKE編集部より

貴社の得意領域やあなたのノウハウ・ナレッジをBeMARKEで発信してみませんか?

現在、BtoBマーケター・セールス担当者向けに、ノウハウやナレッジを披露していただける専門家の方を募集しています。
【募集要項】
■対象:BeMARKE読者に気づきや学び、課題解決に役立つ情報提供が可能な方。
■条件:月1回以上の執筆が可能であること。
■費用:記事掲載料請求はありません。無料での掲載が可能です。
■注意事項:自社サービスのプロモーションを主目的とした内容は掲載できかねます。
【申込み・お問い合わせフォーム】https://be-marke.jp/contact


この記事に関連するお役立ち資料

この記事を書いた人

斉藤拓真
斉藤拓真 | Monointive株式会社 代表取締役社長

2011年、オリンパス株式会社に入社し、製造業向けの研究開発や品質保証のための解析・測定装置の販売に従事。その後、マーケティング部門へ異動し(同事業は株式会社エビデントへ分社)、BtoBマーケティング機能の立ち上げや各種ツールの導入などを経験。製造業のBtoBマーケの遅れと、分業型の営業・マーケ体制の可能性を感じ、2024年にMonointive株式会社を創業。現在は、「製造業向けのBtoBマーケ・営業支援」と「マーケ・営業関連ベンダー向けのクライアント支援」をおこなっている。

著者の最新記事

もっと読む >

あわせて読みたい