基本ノウハウ
営業目標を達成するためには業務の効率化を積極的に進め、担当者の生産性を上げる工夫が必要です。しかし業務内容が多岐にわたるため、「どこから効率化すれば良いか」とお悩みの方も多いでしょう。
本記事では営業業務を効率化する方法や、体制づくりについて解説します。役立つツールも成功事例を交えながら紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
早速ですが、営業業務を効率化する方法を3つに分けて解説します。
上記は営業担当者を対象にした実態調査で、ムダだと感じている人が多い業務のトップ3です※1。同調査では「働く時間の25.5%がムダと回答」という結果も出ており、営業効率化の施策がいかに必要か良く分かります。
※1出典:HubSpot Japan株式会社|日本の営業に関する意識・実態調査より
では実際にどのような方法で効率化するか、それぞれ見ていきましょう。
社内会議を効率化したい場合は、次の3つを明確にしてから開催することが大切です。
よくある社内会議のムダは回数が多い上にダラダラと続く、対面での開催にこだわるなどが挙げられます。このようなムダを省くためにも、会議の目的やゴールが「意見を集める」「何かを決定する」のいずれなのか明確にし、達成された時点で終了しましょう。
また開催時間をあらかじめ決めておき、終了時間になったら潔く切り上げるのも1つの方法です。会議が途中になった場合やわざわざ会議を開くまでもない内容は、稟議書を活用すると良いでしょう。
さらにWeb会議ツールを活用すれば、誰でもどこからでも会議への参加が可能です。集まる手間や時間、開催場所のブッキングが不要になり、営業業務の効率化に一役買ってくれます。
社内報告や情報共有を効率化したい場合は、書類のテンプレート化や案件管理システムの導入による進捗状況の見える化などが有効です。
よくある社内報告・情報共有のムダに、作成する書類が多い一方で書式が決まっておらず、毎回一から作るケースです。また他部門への情報共有は営業部門が活用するシステムからエクスポートし、メールへの添付やUSBの手渡しで対応しているケースも少なくありません。
上記のような手間はテンプレートなどを活用して、積極的に削減していきましょう。
外回り営業を効率化したい場合は、マーケティング部門やインサイドセールスとの協力が不可欠です。よくある外回り営業のムダとして、次のようなシーンが挙げられます。
上記のようなムダを省くためには見込み顧客の検討段階を引き上げ、受注確度が高まってから外回り営業の担当者(フィールドセールス)にパスしてもらう体制づくりが大切になります。細かい部分の効率化としては、オンライン商談ツールによる移動時間や交通費の削減も有効です。
また営業担当者自身がスキルアップできれば自然と効率化が進む上、一人ひとりのパフォーマンスが上がれば部門全体の成果も向上します。
営業業務の効率化は個々の担当者に高パフォーマンスを求めるだけでなく、組織単位での工夫が必要です。具体的な施策としては、次の2つが挙げられます。
それぞれ詳しく解説します。
営業担当者が売上に直結する顧客へのアプローチに集中できるよう、営業支援組織を設置しましょう。営業支援組織とは下記のような営業活動の周辺業務を担当する組織です。
営業支援組織自体も特定の業務に集中・特化することで、効率と品質の向上が期待できます。ただし営業支援組織へ業務を移管する際は、あらかじめ営業プロセスなどを明確化しムダがないかチェックすることが大切です。そのまま移管すると支援組織での効率・品質が上がりにくくなり、本来の目的が達成できません。
マーケティング部門と営業部門を橋渡しする組織がない場合は、インサイドセールスを構築しましょう。インサイドセールスではマーケティング部門が発掘した見込み顧客を育成し、受注確度が高まった時点で営業担当者へパスする組織です。
MAなどを活用して顧客情報の収集・分析・抽出も行い、質の高い顧客リストの作成も可能となります。すでにインサイドセールスと同等の業務にあたっている従業員がいる場合は、より効率的に進められるよう人員の増員やツールの導入を積極的に進めていきましょう。
営業業務の効率化を進める手順を、3ステップに分けて解説します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
まずは営業担当者がどの業務でどのようなムダを感じているかヒアリングし、課題を整理します。前述した実態調査の結果を踏まえると、社内会議や情報の共有方法についてムダを感じている担当者が少なくありません。
しかし上司が把握していないところで、意外なムダが発生している可能性もあります。現状を正確に分析するためにも先入観を押し付けず、現場の声をすくい上げる気持ちで丁寧にヒアリングしましょう。
【1】によって整理された課題に対する改善策を検討し、営業プロセスに反映します。課題が複数発見された場合は優先順位を付け、順に解決を図っていきましょう。最も取り組みやすいのは、シンプルな定型業務の効率化です。現場の担当者が業務の効率化へ積極的に取り組めるよう、繁忙期を避けると良いでしょう。
場合によってはツールの導入や体制づくりなども視野に入れ、中長期的な視点で改善策を検討することも大切です。
最後にPDCAサイクルを回しながら課題の解決度合いを定期的に確認し、改善策をブラッシュアップしていきましょう。いきなり100%を目指すのではなく、徐々に最適解へ近づけるイメージです。PDCAサイクルを回すなかで効率化を実感できれば、営業担当者のモチベーションアップによる生産性向上も期待できます。
最後に営業業務の効率化に役立つツールを、7つ紹介します。
それぞれの特徴や成功事例を見ていきましょう。
顧客リスト作成ツールとは、アプローチする営業先を自動でリスト化できるツールです。代表的な製品としては、次のようなものが挙げられます。
例えば株式会社セールスフォース・ジャパンはSPEEDAを導入後、営業前の調査時間が4分の1にまで短縮し、インサイドセールスの商談供給数が大幅にアップしました。ターゲットリストの精度も高まったことで、商談化率も向上したとのことです。
テレアポ対応ツールとは、架電内容の録音・記録・分析ができるツールになります。代表的な製品は、次の3つです。
例えば株式会社ユーザベースはMiiTelを利用して架電時のトークスクリプトをアップデートした結果、新人を中心にアポ獲得率が1.3倍に向上しました。トップセールスの架電内容を見える化したことで、新人にも実践的なナレッジを共有でき成果につながった例となります。
オンライン商談ツールとは、Web上で商談を行えるツールです。代表的な製品としては、次のようなものが挙げられます。
例えば株式会社WORK SMILE LABOはmeet inの利用を開始してから、1日あたりの商談数が従来の4〜5件から10件ほどに増加しました。オンライン商談で見込み顧客の温度感を確認してから訪問営業へ移行するようになり、営業の空振りも大幅に減ったとのことです。
MA(Marketing Automation)とは、リードナーチャリングといった見込み顧客への対応を自動化するツールです。代表的な製品としては、次のようなものが挙げられます。
例えば全農物流株式会社はホットプロファイルを導入後、約4か月間で2,000件以上の営業データが登録・蓄積されました。68もの拠点が同ツールでつながったことで情報共有や見込み顧客への対応が迅速になっただけでなく、従業員同士の心理的距離が近づきモチベーションもアップしているとのことです。
CRM(Customer Relationship Management:顧客管理システム)とは、基本情報や商談履歴などの顧客情報を一元管理できるツールになります。代表的な製品は、次の3つです。
例えば株式会社ミツバはZoho CRMを導入後、営業リードタイムや報告書の作成時間が3分の1にまで短縮しました。エクセルによる顧客管理から脱却したことで営業活動の属人化が解消され、営業のDX化に成功した例となります。
SFA(Sales Force Automation:営業支援システム)とは、営業データの一元管理や定型業務の自動化ができるツールです。代表的な製品としては、次のようなものが挙げられます。
例えば東亜薬品工業株式会社は2016年からSales Force Assistantを利用しており、目標や営業プロセスの管理を徹底した結果、売上が239%増加しています。SFAは単に案件管理できるだけではなく、売上や企業の成長につながる重要なツールといえるでしょう。
RPA(Robotic Process Automation)とは、データの取得や転記など大量処理が必要な定型業務を自動化するツールです。代表的な製品としては、次のようなものが挙げられます。
例えば豊田油気株式会社はBizRoboを導入後、受注処理など11業務を自動化し、年間約2,000時間ものリソース創出に成功しました。同ツールへの理解は利用開始から半年が経過したころから徐々に広がり、今では社内からRPA化の希望が多く聞かれるようになったとのことです。
営業業務の効率化を進める際は、まず現場の担当者がどの業務にムダを感じているか正確に把握することが大切です。多くの営業担当者は会議や報告といった業務の効率化を望んでおり、従来のやり方を思い切って変える、あるいはツールの導入や体制づくりが必要になります。
また効率化の施策は課題の解決を一気に目指すものではなく、PDCAを通して小さな改善を重ねると良いでしょう。役立つツールはさまざまあり、特にSFAやCRMは営業業務の効率化に大きく貢献してくれます。
課長やマネージャーなどの上長は売上目標の達成を目指して、営業部門全体の業務効率化を図っていきましょう。