基本ノウハウ
マーケティング活動は企業が売上拡大を目指す上で必須となりつつありますが、いざマーケティングに取り組もうというとき、また既にマーケティングに取り組んでいるもののすべて外注しているとき、「内製化すべきか」の判断に迷う方も多いのではないでしょうか。
外部委託から自社内でのマーケティング活動への移行は、スピーディな意思決定やノウハウの蓄積など多くのメリットをもたらす一方で、リソース確保の難しさや適切な戦略の立案などの課題もともないます。
本記事では、マーケティングの内製化とは何か、そのメリットとデメリット、そして内製化を進める際のポイントについて解説します。
マーケティングの内製化とは、マーケティングの業務を外部に委託せず自社内で行うことです。インハウスマーケティングとも呼ばれます。
マーケティング活動に取り組むためには、マーケティング支援会社に依頼して業務を委託するいわゆる「外注」か、社内の人材でマーケティング活動を完結させる「内製」の2パターンに分かれます。それぞれにメリット・デメリットがあるため、企業は自社の状況に見合った方法はどちらかを検討した上で、マーケティング活動を進める必要があるでしょう。
マーケティングの業務内容は多岐にわたります。内製化を図りやすいマーケティング業務の例としては下記が挙げられます。
内製化を目指したいマーケティング業務 | 内容 |
---|---|
マーケティング戦略設計 | マーケティング全体の戦略設計・課題の発見・計画策定などを行う。 |
Webサイト | コーポレートサイトやオウンドメディア(自社が保有するメディア)などの自社サイトを定期的に更新する。 |
Web広告 | オンライン上で展開するリスティング広告・ディスプレイ広告・SNS広告などの出稿・運用を行う。 |
SNS | X、Instagram、Facebook、LINE、YouTubeなどSNSを運用して広報活動や集客活動を行う。 |
コンテンツ拡充 | ホワイトペーパー、メルマガ、記事コンテンツ制作、パンフレット制作など、自社ブランド確立やリード獲得・育成のためのコンテンツを拡充する。 |
SEO | 検索流入数を増やすためのSEO対策、特にコンテンツSEOを行う。 |
関連記事:「インハウスマーケティングとは?インハウス化のメリットと注意点から成功させるポイントまで紹介」
マーケティングの内製化には、下記に挙げられるような3つのメリットがあります。
マーケティングを内製化すると、外部とのやり取りを挟まず社内で意思決定ができるため、状況の変化にともなう施策の変更にも素早く柔軟に対応できます。
例えば自社製品・サービスに関連したとあるトピックが世間で突発的に話題になったとき、そのトピックを取り入れたWeb広告の出稿やLPの制作をいちはやく行えれば、その後の売上や認知度拡大が期待できます。外部に企画・制作を委託している場合と比較すると、内製化している場合の方が、販売機会を逃さずに即時の対応を取りやすいでしょう。
また、顧客の属性やニーズなど、顧客理解を深めるために必要な最新の顧客情報には、自社の営業やCSが最も多く接しています。マーケティングを内製化できていれば、最新の顧客情報に基づいて高度な意思決定を行えるほか、施策に対する顧客の反応もリアルタイムで把握しやすく、PDCAを回しやすくなります。
マーケティングの内製化に取り組めば、マーケティングのノウハウを社内に蓄積できるため、今後の施策の立案・実行や社員育成に活用できます。
マーケティングに取り組むとき、企業は顧客データや商品データに向き合い、徹底的に顧客理解を進めた上で施策を実行し、結果に基づいてさらに改善を重ねることを繰り返します。マーケティングの内製化は、こうした一連のノウハウを社内で定着させられるため、マーケターや営業を社内で1から育成しやすくなるのです。
また、データと日々向き合い、その変化に基づいた対応を検討する過程で、自社製品・サービスの質を向上させる取り組みにもつながります。
内製化によって、代行などを担うマーケティング支援会社に支払う金銭的コストや、指示出しのための時間的コストを削減できます。
例えばマーケティング活動の一環として自社サイトの更新を業務委託していた場合、情報を頻繁に更新する必要があるときには、依頼している会社につど連絡を取って指示を出す必要があります。指示出しの作業にも時間を要する上、契約条件によりますが更新のたびに料金が発生するケースもあるでしょう。どのような業務を委託しているかにもよりますが、こうした時間的コストや、数十万円から数百万円に及ぶ金銭的コストを内製化によって削減できる可能性があります。
ただし、内製化する場合は外注していた作業を社内で行う必要があるため、人件費が大きくなる傾向にあります。マーケティングにおいてコスト削減を重視する場合は、外注と内製のバランスが重要です。
マーケティングを内製化する際に、下記3つのデメリットが挙げられます。
マーケティングを内製化するデメリットとして、リソースの確保が難しい点が挙げられます。
マーケティングの業務範囲は広く、学ぶべき領域も多岐にわたります。マーケティングを自社でやろうとする場合、兼務では成果を出すことが難しいため、マーケティングに精通した専任の担当者が必要です。社内に担当者がいない場合は採用するか1からの育成が必要になりますが、優秀な人材の雇用は簡単ではなく、育成にも時間がかかります。
株式会社Piece to Peaceが公開した「中小ベンチャー企業のマーケティングの内製化に関する実態調査」によると、内製化の課題として最も多い回答が「優秀なマーケターの確保ができない」(36%)でした。優秀なマーケターを雇用し、社内でマーケティングを完結させられるだけのリソースを確保することは、内製化における大きな課題といえるでしょう。
マーケティングを内製化すると、ノウハウが不足していた際に適切な戦略を立てられないおそれがあります。
外注であれば、マーケティング支援を数多くこなしているコンサル会社に依頼できるため、客観的な視点から専門的な知識に基づくアドバイスや支援を受けられます。内製の場合は戦略立案から実行まで自社でこなす必要がありますが、知見のない状況で最初から成果を出すのはハードルが高く、うまくいかない場合の判断や軌道修正も難しくなります。
マーケティング業務には専門知識が必要であり、最初は1名~数名程度の少人数で回す企業が多いことから、1人あたりが受け持つ業務も広範囲になるため属人化を招きやすい業務といえます。
属人化が進むと、担当者が離職した際にノウハウが失われてしまい、引き継ぎもできずに成果を出せなくなるおそれがあります。各業務がどのような手順で行われているのかを可視化し、マニュアルを整備するなど属人化を防ぐしくみづくりが必要です。
メリット・デメリットを考慮し、マーケティングの内製化を進めることを決断した場合に、どのように進めるべきなのでしょうか。実施にあたってのポイントを解説します。
マーケティングを内製化するにあたっては、最初から自社内で1から始めようとせず、まずは外部のマーケティング支援会社を頼りましょう。初めは外注から始めて、支援を受ける過程でマーケティングの考え方や手法を学び、自社が内製すべき範囲を見極めて徐々に内製化していくのです。
マーケティングはすべて内製化しなければならないわけではなく、自社のリソースによっては委託した方が費用対効果が優れている場合もあります。今後マーケティング部門で力を入れていきたい領域は内製化し、それ以外の一部領域は業務委託にするなど、外注と内製のバランスを取ってマーケティングを進めていくと良いでしょう。
マーケティング支援会社によっては内製化支援(インハウス支援)のサービスを行っているため、積極的な利用をおすすめします。
関連記事:「BtoBマーケティング支援会社おすすめ14選|サポート内容から選び方まで解説」
マーケティングの内製化はリソースの確保が鍵になるため、リソース不足に対応できるように、データの蓄積や施策実行のしくみづくりを行わなければなりません。
具体的には、SFA/CRMやCMS、MA、ChatGPTなど、マーケティング活動を効率化できるツールの導入を検討します。特にSFA/CRMやMAなどのツールは、マーケティング活動に不可欠なデータの収集・蓄積・分析に役立ちます。ただし、ツールをやみくもに導入しても活用しきれない可能性があるため、どのような課題を解消するために導入するのかなど、目的を明確にしておきましょう。
また、マーケティング活動は一部門のみで完結する業務ではなく、営業チームやCSチームなど複数の部門との協力が必要な、全社的な取り組みです。マーケティング活動をどのような体制で行うのか、仮にマーケティング部門を設置するのであれば施策実行の上で最も望ましい組織図は何か、他部門からもマーケティングの理解を得るために何ができるか、どのツールであれば皆でノウハウを蓄積・共有できるかなどを検討し、内製化の環境を整えましょう。
社内でマーケティング組織を立ち上げる際の組織図の例やコツについては、下記の記事を参照してください。
関連記事:「マーケティング組織とは?立ち上げ方からよくある課題・解決策まで解説」
マーケティングの内製化は、社内に知見を蓄積するためにも徐々に行っていくべきですが、最初から内製で行おうとすると短期では結果を出しづらい側面もあります。まずは外部からノウハウを習得し、内製すべき範囲を見極めながら、データ蓄積や施策実行のしくみづくりを行うことが重要です。内製化にともなう課題を克服し、効果的なマーケティング活動を目指しましょう。
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