基本ノウハウ
専門的な知識がなくともサイトを作成できるシステム「CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)」。CMSと一口にいっても、メリット・デメリットの異なる3種類のCMSがあります。そこで本記事では、3種類のCMSの概要および、おすすめのCMSを活用事例とともに紹介していきます。ぜひ自社に最適なCMSを選定する際の参考にしてください。
CMSは、以下3種類に分かれます。
ここではそれぞれの特徴について、順に解説していきます。なお「そもそもCMSって何?」と疑問に持つ方は、ぜひ以下の記事を参考にしてください。
関連記事:CMSとは? メリット・種類・選ぶ基準などわかりやすく解説
「オープンソース型」とは、プログラムのソースコードが無償で一般公開されているタイプのCMSです。商用・非商用を問わず、誰でも自由に利用・修正・配布できます。有名なオープンソース型CMSに「WordPress(ワードプレス)」があります。
オープンソース型は大半が無料で利用できるほか、プラグイン(拡張機能)が豊富で、カスタマイズ性の高さが特徴です。
一方で、ベンダー(製造元・提供元)からのサポートが受けられないほか、ソースコードが公開されているが故にセキュリティリスクが高い傾向にある点には注意が必要です。
「クラウド型」とは、CMSの機能をインターネット上で利用できるタイプのCMSです。クラウド型CMSは自社でサーバーを用意する必要がなく、インターネット環境さえあればすぐに導入できます。費用についても、後述する商用パッケージ型CMSより低コストです。加えて、セキュリティ対策も提供元が行ってくれます。
一方で、機能やデザインのカスタマイズ性が低いほか、自社にサーバーがないため、トラブル発生時の対応はベンダー頼みになってしまう点には注意しましょう。
「商用パッケージ型」とは、ベンダーが独自開発したCMSライセンスを購入し、自社サーバーにインストールして利用するタイプのCMSです。法人利用を想定して開発されており、カスタマイズをしなくても豊富な機能を利用できます。加えて、ベンダーから手厚いサポートが受けられる点も特徴です。
一方で、オープンソース型・クラウド型と比べると費用が高くなってしまうほか、導入期間が場合によっては数カ月~8カ月程度かかってしまう点がデメリットです。
3種類のCMSのメリット・デメリット、おすすめの企業をまとめてみました。
オープンソース型CMS | クラウド型CMS | 商用パッケージ型CMS | |
---|---|---|---|
メリット | ・コストを抑えられる ・カスタマイズ性が高い |
・スピーディに導入・利用できる ・サーバーやソフトウェアのメンテナンスの必要がない |
・搭載機能およびサポートが充実している ・提供元がアップデートやトラブルに対応してくれる |
デメリット | ・サポートが受けられない ・セキュリティ対策が必要 |
・デザインやレイアウトのカスタマイズ性が低い ・海外製が多く、日本語サポートが受けられない可能性あり |
・導入までに時間がかかる ・コストが高い |
おすすすめの企業 | サイト制作・運用ができる人材やノウハウがある企業 | ・CMSの管理負担を抑えたい企業 ・CMSをすぐに導入したい企業 |
大規模なサイトを構築したい企業 |
どのCMSが自社にマッチしているのか、上記の表をぜひ参考にしてください。
実際にCMSを選ぶ際には、何に着目すれば良いのでしょうか?3つのポイントを紹介します。
CMSを選ぶ前に、自社の課題と解決したいこと、目的をまず洗い出しておきましょう。それに合わせて選定基準を考える必要があります。
一般的に、CMSの導入を検討する企業は、大まかに以下の3つのような課題を持っています。
どんな課題を中心に据えるかによって、CMSに求める機能や優先度が異なります。
「1.マーケティングで成果を出したい場合」は、マーケティング戦略に役立つコンテンツの制作や分析、SEO対策などの機能が必要です。
「2.現状のWebサイトの運用面に課題がある場合」は、その課題を現在のシステムでは解決しにくいならば、機能が限られていてもより操作が簡単で扱いやすいものや、特別な知識の必要ないノーコードCMSなどが選択肢になります。
「3.コストを削減したい場合」には、絶対に必要な機能を厳選してより安価なCMSを検討する必要があります。
また企業サイトの場合、ビジネスに利用するためのデータ解析やSEO対策など要求される機能が多く、コンテンツを充実させようとすれば複数人での運用や更新も必要です。そのため、技術力がない場合はオープンソース型のCMSで内製しようとしても満足できる仕上がりにならないケースが多くあります。コストを削った結果サイトの質を落とす結果にならないよう、前提を見失わずに検討することが重要です。
操作性を確認しておくことも重要です。多機能なCMSは一見魅力的ですが、表示や操作が複雑で使いこなせないケースがあります。使いにくいCMSを導入してしまうと、Webサイトの運用に想定外の工数や人件費がかかったり、更新頻度が落ちたりして、導入の効果が十分に発揮されない恐れがあります。
候補に挙がっているCMSに無料のデモ体験や試用期間が用意されている場合は、積極的に利用しましょう。
自社の保有している人材や能力とのバランスを考え、サポート体制を確認しておきましょう。運用に関する知識やリソースがない企業にとっては充実したサポート体制が重要ですが、ある程度自社で対処できるノウハウのある企業なら、必要な範囲のサポートが受けられれば良いという考え方もあります。コストとのバランスも大切です。
いずれにせよ、困ったときにサポートが利用できないようでは、問題が起こったときにWebサイトの運用に差し支えるため、サポートが受けられる範囲を事前に確認しておくことが重要です。加えて、サポートが有料か無料かも確認しておくと、コストの計算がしやすくなります。
ここでは、おすすめのオープンソース型CMSを2つ紹介します。
5万種類以上のプラグインとテーマを備える拡張性・自由度の高さと利用者の多さが特徴 |
「WordPress(ワードプレス)」は、初級者から上級者まで多くの人に愛用されているオープンソース型CMSです。ウェブサイトの42%がWordPressで構築されており、世界で最も人気のCMSといえるでしょう。5万種類以上のプラグインとテーマ(サイト全体のテンプレート)があり、拡張性・自由度の高さが特徴です。また、利用者が多いためWordPressに関する情報をインターネット上で容易に取得でき、サイト制作に慣れていない人でも自力で問題を解決しながら、サイト構築を進めることができます。
某大手電機メーカーは、サイトからの問い合わせ数・資料ダウンロード数の増加および老朽化したデザインの刷新を目的に、BtoB向けサービスサイトをリニューアル。その際、CMSはWordPressで構築した。リニューアルの結果、アクセス数・リード獲得数を伸ばし、リニューアルしたカタログのデザイン・Webリーフレットも好評を博している。
参考:インスパイアデザイン「WordPress解決事例」より
「多言語対応」、「強固なセキュリティ」、「標準機能および追加できる機能の豊富さ」などが特徴 |
「Drupal(ドゥルーパル)」は、大企業から政府機関、大学、NGOなどの大規模なサイトで活用されている、オープンソース型CMSです。標準で100近くの言語に対応する「多言語対応」や政府機関でも利用されているほどの「強固なセキュリティ」、「標準機能および追加できる機能の豊富さ」などが特徴です。Drupalが用いられたサイトには例えば、スイスの高級時計メーカー「TAG Heuer(タグ・ホイヤー)」やアメリカの歌手「レディー・ガガのウェブサイト」などが挙げられます。
外国人に向けて日本発・海外行きの航空券をオンライン販売する「H.I.S. Flight Search」では、Drupalの多言語化機能を用いて、英語・中国語・韓国語に対応。旅行商品の検索やクレジットカードによるオンライン決済などの機能をDrupalのコンテンツ管理機能で実現した。
参考:Drupalナビ「H.I.S. Flight Search」より
続いて、おすすめのクラウド型CMSを2選見ていきましょう。
豊富なテンプレートや24時間対応のカスタマーサポート、高機能なSEOツールと制作のための情報量の多さが特徴 |
「Wix(ウィックス)」は、世界190ヵ国、2億人以上に利用されている無料のクラウド型CMSです。800種類以上の豊富なテンプレートや24時間対応のカスタマーサポート、高機能なSEOツールなどを搭載している点が特徴です。また、Wix公式ブログでは、サイト制作に関するさまざまな情報が発信されています。例えば、「Wixを使ったサイト作成手順」や「Webデザインの基本」などについても、分かりやすくまとめられており、初心者でもそれらの情報を参考にしながらサイト制作を進めることができます。
軽井沢・白馬のキャンプ場「ライジングフィールド」のサイトは、Wixのオンライン予約機能、Wix ブッキング(予約システム)を用いて、制作された。下記参考サイトによると、集客をWix ブッキングに集約したことで、予約の9割がオンライン経由になったそう。
参考:Wix公式ブログ「Wix で作られたおしゃれなホームページ参考事例 20 選」より
専門スキルの要らない簡単な操作とSNS連携の容易さが特徴 |
「ジンドゥー(Jimdo)」は、世界3,200万以上のサイト作成に使用されている、無料のクラウド型CMSです。「ブログ運営」や「ネットショップ運営」、「アクセス解析」などの機能が搭載されています。同CMSは幅広い業種で利用されていますが、中でも小売・流通・製造業(17.8%)、教室・教育(13.2%)、医療関係(12.5%)の業界でより多く活用されています。日本語サポートもあるほか、使い方が分からない際には各種相談ができる「JimdoCafe」を利用することも可能です。
学習塾「緑塾 泉佐野長滝校」では、ジンドゥーを使い、保護者が気になる情報をコンパクトに発信するサイトを制作。同サイトではジンドゥーのブログ機能で積極的なブログ運用をしている。なお、同塾がジンドゥーを選んだ一つの決め手が、「ノウハウがインターネット上で多数発信されているため、分からないことがあっても自己解決できそうだから」。
参考:ジンドゥー「【活用事例 #12】学習塾のホームページの作成ポイントと効果的な運用術とは」より
ノーコードで直感的に操作できるUIとチームでの共同作業、日本語対応が特徴 |
「STUDIO(スタジオ)」は、2018年にサービスリリースし、2020年にCMSなどの機能を搭載したWebデザインプラットフォームです。2021年には累計利用者数が15万人を超え、スタートアップから有名企業、官公庁まで幅広く利用されています。コーディングを必要としないノーコードの直感的な操作でWebページを作成でき、日本語にも対応している点が特徴です。複数人のスタッフで共同作業が可能であり、制作作業をSTUDIO上で完結できます。
KDDIのグループ企業株式会社medibaでは、DTUDIOを導入してコーポレートサイトを作成。もともとオープンソースの脆弱性によるトラブルを抱えていたが、エンジニアが工数を割けない状態だったため、ノーコードのツールを採用した。エンジニアのリソースを使わずにWebページを作成できるようになったほか、トラブルの原因をエンジニア以外の社員でも把握しやすくなったという。
参考:STUDIO 導入事例「mediba デザイン性の高さや運用のしやすさだけではなく、セキュリティ性も高い。STUDIO導入でオープンソースの課題を網羅的に解消」より
最後に、おすすめの商用パッケージ型CMSを2つ紹介していきます。
「SiTEMANAGE(サイトマネージ)」は、株式会社セブン&アイ・ホールディングスや株式会社セガといった有名企業を含む、600以上のサイトで導入されている商用パッケージ型CMSです。同CMSには100以上のプラグインや、使いやすく工夫が施されたコントロールパネルが用意されています。また既存プラグインにない機能の開発も可能です。導入企業からは「作業効率が大幅に上がった」「担当者に電話をすれば何でも分かってくれて、すぐに対応してくれる」という声も挙げられていました。
参考:株式会社シフト「サポート・お客様の声」より
「SMBCコンシューマーファイナンス株式会社」の金融経済セミナーポータルサイトをSiTEMANAGEで制作。メインビジュアルに動画を配置し、動画教材や活動レポートといったコンテンツも発信している。
参考:商用CMS決定版パッケージSiTEMANAGE「制作事例」より
「NOREN(ノレン)」は、2002年に発売された商用パッケージ型CMSです。導入実績は790社以上、継続利用率は96%を誇ります。また、NOREN利用企業の87%がサイト運営を内製化できており、専門的な知識がなくとも利用できる「使いやすさ」に定評があります。そのほか、大規模サイト運営にも考慮した機能があるほか、静的CMS※であるが故に外部からの攻撃や障害に強い点もメリットです。
※静的CMS:ユーザーがサイトにアクセスするページを、CMSが事前に生成し、サイトへ転送を行うCMSのこと
大日本印刷株式会社は2018年8月、NORENを用いて、大日本印刷グループのサイトをリニューアル。NORENの活用により、HTMLの知識を持たない社員であっても、最適なページレイアウトでWebコンテンツを制作できるようになり、各事業部門での分散運用が実現した。
参考:NOREN「7年ぶりにWebサイトをリニューアルCMSのフル活用と改善への意識改革で新しい企業価値を発信」より
CMSには、メリット・デメリットの異なるオープンソース型・クラウド型・商用パッケージ型の3種類があり、それぞれ適する企業が異なります。
CMSを導入することで、専門的な知識不要でサイト作成ができるほか、コスト削減の効果も期待できます。上記3種類のおすすめ企業の傾向を踏まえ、自社に合ったCMSの選び方や、本記事で紹介したCMSの情報を参考にしながら、導入を検討し、Webサイト関連の課題を解決してください。