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プロダクトセールスを極める!成果を上げる営業パーソンの流儀と実践

プロダクトセールスを極める!成果を上げる営業パーソンの流儀と実践

「価値の翻訳者」への道

営業で成果を出すには、製品やサービスを単に説明するのではなく、顧客が求める「価値」を具体的に伝える力が必要です。本記事では、特に「プロダクトセールス」に注目し、顧客視点に立った提案のコツを解説します。
今後の営業活動に自信を持ち、成果を上げたいと考える方は、ぜひ本記事をご覧ください!

  • 株式会社セールスのタクミ 代表取締役

    佐藤 匠

    大学卒業後、大手広告代理店に入社し、大手エンタープライズ企業向けの営業に従事、その後SaaS事業部での大手新規営業、新規事業開発に携わる。その後独立し、株式会社セールスのタクミを設立、代表取締役に就任。大手企業やスタートアップ向けに営業・マーケティング戦略の立案・実行支援を行う。国内唯一の展示会に特化したコンサルティングの「鬼速展示会」を運営し、国内外の累計展示会支援社数は、100社を超える。1展示会の1社獲得平均は207商談
    X(旧Twitter)アカウント:https://x.com/takumi_startup

目次

「プロダクトセールス」と「ソリューションセールス」の違い

営業の形態にはさまざまなスタイルがありますが、「プロダクトセールス」と「ソリューションセールス」では求められるスキルやアプローチがまったく異なります。
例えば、次のように考えてみてください。
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プロダクトセールス:飲食チェーン店(例:吉野家やマクドナルド)のように、限られたメニューの中から顧客を満足させる。
ソリューションセールス:個人経営の居酒屋のように、お客様の要望に合わせてオーダーメイドで提案する。
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プロダクトセールスは「提案営業」とも呼ばれ、自社商品を理解してその魅力をプレゼンして顧客に売り込みます。
一方で、ソリューションセールスは顧客との対話を通して顧客の課題やニーズを理解し、その解決方法を提供します。こちらは、顧客主体の“提案型営業”とも呼ばれ、顧客の課題解決に重点を置くのが特徴です。

この違いをよく理解することが、営業成果を劇的に向上させる第一歩です。

あなたの会社は「何屋さん」なのか?

営業活動において最も重要な前提は、自社が提供する価値を正確に把握し、それを顧客に適切に伝えることです。特に、BtoB向けのSaaSプロダクトを扱う場合、この前提が欠けていると、どれほど優れた製品でも顧客にその価値を認識してもらえません。

現在自社のサービスとして展示会営業支援を行っていますが、こちらは「プロダクトセールス」です。
ここでBtoB向けSaaSプロダクトの会社の「プロダクトセールス」を例に、セールスの流れを解説します。

現状理解(課題の明確化)

客が直面している課題や困難を正確に把握します。この段階では、顧客の声に耳を傾け、課題を深掘りすることが重要です。課題が明確にならないと、提供する解決策も不明瞭なものになり、結果として顧客に刺さりません。

解決策(価値)の提示

課題を解決することで顧客が得られる価値を定義します。この価値は、顧客の業務効率化、コスト削減、売上向上など、具体的な成果につながるものでなければなりません。ここでのポイントは、「どのように顧客を成功に導くか」を明確にすることです。

解決方法(その価値を実現する機能)の提示

解決策を実現する具体的な機能を説明します。単なる機能説明にとどまらず、その機能がどのように顧客の課題解決に貢献するのかをひもづけて伝えることが大切です。

機能を備えたプロダクト(サービス)の提示

最終的に、機能を搭載したプロダクトそのものを提示します。この段階では、サービスそのものの特長を説明するだけでなく、実際に使用することで得られる成果や体験をイメージさせることが効果的です。

営業パーソンが果たす役割

営業パーソンは、この流れを顧客に伝える「翻訳者」としての役割を果たします。

例えるなら、顧客にとってプロダクトは単なる「薬」であり、どんな機能や価値が含まれているかは、営業がしっかり説明しなければ理解されません。薬の効果(プロダクトの価値)を分かりやすく翻訳し、顧客に伝える役割を担います。「プロダクト→価値→機能→業務」の順番で情報を整理し、顧客が「この製品で自分の業務がこう変わる!」「このプロダクトをこう使うと、こんな効果が得られます」と明確にイメージできるように伝える力が必要です。

ここまで営業の流れを解説しましたが、果たしてこの提案で顧客は商品を買ってくれるでしょうか?

答えは「まだ足りない」です。

理由としては、企業は既存の投資対象には予算を確保しやすく、リプレイスやアップセルが進めやすい一方で、新しい価値の創出には慎重だからです。
特に、日本のエンタープライズ企業では、ROAS(Return On Advertising Spend、広告費用対効果)が明確でない提案は上申が難しく、厳しいルールにより採用されにくい傾向があります。つまり、企業にとって「いかにもうかるモノなのか」を語れない場合は却下されてしまうのです。

 営業パーソンは「価値の翻訳者」たれ

では、これらを意識した上でどう営業していけば良いのか?

営業パーソンは単なる商品説明者ではなく、顧客の課題を深く理解し、その課題を解決するための「価値の翻訳者」として行動する必要があります。
顧客は多忙であり、プロダクトの特性を自ら詳細に理解しようとする時間も労力もありません。プロダクトだけで価値を伝えるのには限界があります。
そこで、「顧客視点に立ってプロダクトの価値を具体的かつ簡潔に伝え」て、認識齟齬を防ぐのが営業パーソンの真の役割です。

例えば、SaaSプロダクトを提案する場合、以下のようなアプローチが特に効果的です。

トライアルの提供(実際に使い方をインプットする)

製品の良さを伝える最も確実な方法は、顧客自身に使ってもらうことです。言葉や資料でどれだけ説明しても、顧客がその価値を肌で感じなければ本当の意味で納得は得られません。トライアルを通じて顧客が実際に使用し、具体的な業務や課題に対して効果を体感することで、製品の価値がより説得力を持ちます。

ただし、トライアルを提供する際には注意が必要です。単に「使ってみてください」と提供するだけでは不十分であり、以下を意識することが重要です。

  • トライアル中にどのような効果を得られるかを明確に伝える。
  • トライアル期間中のサポート体制を整え、顧客が使いやすい環境を提供する。
  • トライアル後のフォローアップを行い、効果を振り返りながら次のステップを提案する。

具体的な活用方法の提示(効果的なフォーマットを教える、実際に業務ベースでどう提案するのかをリアルに提案する)

多くの顧客は、製品を見ただけではその全体像や可能性を理解できません。そのため、営業パーソンが「この製品をこう使えば、あなたの業務がこう変わります」と、具体的な活用シナリオを提案することが求められます。

例えば、SaaSの勤怠管理ツールを提案する場合、以下のような説明が有効です。

「日々の勤怠記録を簡略化し、管理者が集計に費やす時間を週に○時間削減できます」
「リアルタイムで勤務状況を把握することで、適切なリソース配分が可能になります」
さらに、「他社ではこのような使い方をしています」といった具体的な事例を共有することで、顧客にとっての活用イメージがより鮮明になります。これにより、顧客の思考を広げ、自社製品の可能性を最大限に伝えることができます。

顧客の課題を共に解決する「伴走者」でもある

営業パーソンは、プロダクトの価値を最大限に伝える「価値の翻訳者」であり、顧客の課題を共に解決する「伴走者」でもあります。
顧客が自分の業務や生活の中で製品の価値を実感できるよう導き、納得感を持って意思決定できるサポートを行うことが、営業活動の最終的な成功につながります。

成果を出す営業パーソンの違い

トップ営業パーソンとその他の営業パーソンの違いは、「この人から買いたい」と思わせる力にあります。この感情を顧客に抱かせることができるかどうかが、営業活動の成果を大きく左右します。
ただ製品を売るだけでなく、顧客の視点や感情に寄り添い、付加価値を提供できる営業パーソンこそが、トップのポジションを築けるのです。

以下のポイントを意識することで、他の営業パーソンとの差別化を図ることができます。

独自の活用提案:顧客の視点を広げる力

単なる商品説明ではなく、顧客が思いつかないような新たな活用方法や視点を提供することで、顧客の思考を広げる提案を行えることがトップ営業の特徴の1つです。

例えば、スカーフを売る場合、単に「首に巻いておしゃれに」という提案だけでなく、「バッグのアクセントに使う」「インテリアのワンポイントにする」など、多角的な活用方法を提示することで、顧客に驚きと感動を与えることができます。このような提案は、製品の価値を単純な用途以上に引き上げ、顧客にとっての満足度を高めます。

また、同じ製品でも、顧客の業種や業務に合わせて活用方法をカスタマイズする提案を行うことが重要です。

例えば、CRMツールであれば、営業部門には「顧客データ分析で営業効率が向上する」視点を、マーケティング部門には「キャンペーン効果の精密な測定が可能になる」視点を提供します。このように、顧客の役割や課題に応じた具体的な活用提案が、他の営業パーソンとの差を生み出します。

熱量と勢い:信頼関係を構築する力

顧客が営業パーソンを信頼し、「この人から買いたい」と思う理由の大部分は、その営業パーソンが見せる熱量と勢いにあります。

製品やサービスに対する情熱は、言葉の端々や態度に現れます。営業パーソンが心からその製品を信じ、自信を持っている姿勢は、顧客に安心感と信頼感を与えます。顧客にとって「この人が勧めるなら間違いない」と感じさせる要因の一つです。

例えば、展示会で他社製品と比較検討している顧客に対して、自社製品のメリットを熱量を持って伝えることで、顧客がその製品に興味を持つきっかけを作ることができます。「この営業パーソンなら、自分が抱える課題をしっかり解決してくれそうだ」と思わせることができれば、他社との差別化につながります。

特にDX担当者の多くは、ツールそのものよりも提案者への信頼感や熱意を重視している傾向が強い印象です。

まとめ:違いの分かるTOP営業パーソンの「プロダクトセールス」とは

トップ営業マンは、製品の価値をただ伝えるだけでなく、それを顧客にとっての「新たな気づき」に変える力を持っています。顧客の業務や課題に深く寄り添い、製品を通じて具体的な変化をもたらす提案を行うことが、営業成果の鍵です。

この記事を通じて、みなさんが営業の楽しさを再発見し、成果を上げるヒントとなれば幸いです。


この記事を書いた人

佐藤 匠
佐藤 匠 | 株式会社セールスのタクミ 代表取締役

大学卒業後、大手広告代理店に入社し、大手エンタープライズ企業向けの営業に従事、その後SaaS事業部での大手新規営業、新規事業開発に携わる。その後独立し、株式会社セールスのタクミを設立、代表取締役に就任。大手企業やスタートアップ向けに営業・マーケティング戦略の立案・実行支援を行う。国内唯一の展示会に特化したコンサルティングの「鬼速展示会」を運営し、国内外の累計展示会支援社数は、100社を超える。1展示会の1社獲得平均は207商談。
X(旧Twitter)アカウント:https://x.com/takumi_startup

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