基本ノウハウ
「御用聞き営業はダメだと言われるけれど一体何が悪いの?」「営業活動が行き詰まっているけれど、何を改善したら良いの?」そんな疑問を抱くBtoB営業担当者は多いのではないでしょうか。
この記事では、御用聞き営業のメリット・デメリットに触れた上で、従来の営業スタイルからの脱却方法としてソリューション営業への移行について解説しています。ソリューション営業への移行のステップと必要なスキルも紹介していますので、参考にしてみてください。
御用聞き営業とは、営業担当者が客先を定期的に訪問し、顧客の注文を受けて商品を納品する営業スタイルです。文字通り、顧客の御用を聞いてそれをかなえる受け身の営業方法です。
御用聞き営業の分かりやすい例として、サザエさんに登場する三河屋さんが挙げられます。昭和の酒屋や醤油屋にとって「御用はございませんか?」と顧客に声をかけて受注する御用聞き営業は、BtoCだけでなくBtoBでも一般的な営業スタイルでした。
もっとも、一口に「御用聞き」といっても、サザエさんの三河屋さんは、顧客との日常会話から顧客の好みを把握して新商品を提案したり、調味料の減り具合を見て「砂糖持ってきましょうか?」と声かけをしたりしています。三河屋さんは単なる御用聞きではなく、提案営業を行っているといえるでしょう。
御用聞き営業のメリットの1つは、安定性です。なじみの既存顧客から定期的に注文を受けて納品するため、安定的に受注を確保できることが、御用聞きの強みです。
また、単なる御用聞きなら高度なスキルが不要な点も、営業する側にとってはメリットといえるでしょう。営業担当者は、顧客から発せられるリクエストを聞き取ってそれをかなえれば良いのですから、積極性や情報分析力は不要です。
以上のメリットがあるため、御用聞き営業はいまだ営業担当者の多くが実践し続けている営業方法です。
ところが社会が変化するにつれ、御用聞き営業の3つのデメリットが浮き彫りになってきました。
1つ目のデメリットは、競合との価格競争に陥りやすいという点です。
御用聞きは、商品の種類も供給元の選択肢も少なかったかつての社会では、重宝される存在でした。商品について知るための情報源も限られていたため、商品に詳しい御用聞きは、顧客にとって実際役に立つ存在だったのです。
ところが、モノがあふれ、商品の選択肢も多様化している今の時代、競合他社の安価な商品に顧客が流れてしまうリスクが常につきまといます。また、インターネットやECサイトの普及によって、御用聞き営業の「情報提供」という価値も薄れています。
かつては安定性がメリットだった御用聞き営業ですが、競合が増加し、顧客の情報源が豊富になった時代において、そのメリットは失われつつあります。
2つ目のデメリットは、新規開拓に不向きということです。
御用聞き営業は、確立した信頼関係のもとに成り立つ営業スタイルです。すでに信頼関係があるからこそ、背極的に提案したり改めて顧客の課題をヒアリングしたりしなくても、継続的に受注できます。
しかしながら、新規顧客の開拓には受け身の御用聞き営業は通用しません。新規開拓するには、まず受け身の姿勢から脱する必要があります。
3つ目のデメリットは、新規・既存を問わず、顧客の潜在ニーズを引き出せないという点にあります。
御用聞き営業の主眼は、顧客の要望をかなえることにあります。つまり、顧客自身が気づいていない潜在ニーズを掘り下げることはないのです。
1つ目のデメリットで述べた通り、今の世の中にはモノがあふれ、競合他社がひしめき合っています。そんなビジネス環境下で生き残るには、顧客の潜在ニーズを発掘し、自社商品が課題解決になるとアピールできることが重要です。
顧客の潜在ニーズを引き出せないというデメリットは、ビジネスの存続を左右する大きな欠点といえるでしょう。
このように、現在のビジネスシーンにおいて御用聞き営業を貫く営業スタイルには、いくつものデメリットがあります。そこで、御用聞き営業から脱却して提案営業に移行することをおすすめします。
提案営業には、商品提案とソリューション提案の2種類があります。
商品提案は、顧客のニーズを把握した上で、一歩先回りして自社商品を売り込む営業スタイルです。顧客のリクエストを受け身で待つ御用聞き営業に比べて、密なコミュニケーションと積極性が求められます。サザエさんの三河屋さんの営業スタイルは、実質的にはこの商品提案営業に該当します。
ソリューション提案は、顧客の悩みや課題に寄り添い、課題に対する解決策(ソリューション)の一環として自社商品を売り込む営業スタイルです。
ソリューションを提案するには、顧客の悩みを丁寧にヒアリングすることが前提となります。また、商品そのものの販売よりも解決策の提示という部分に焦点が当たります。よって、ソリューション提案は、御用聞き営業や商品提案と比較して、顧客との信頼関係を築きやすいのです。
ソリューション営業へのステップは、次の通りです。ぜひとも御用聞き営業から脱却して、長期的な信頼関係につながるソリューション営業を目指しましょう。
ソリューション営業の第一歩は、顧客の情報収集です。
ソリューション営業では、受け身の御用聞き営業と比べて、きめ細かな顧客とのコミュニケーションが求められます。営業活動の手数も必然的に増すので、作業効率の向上が欠かせません。まずは、散在している顧客情報を一元管理しましょう。
タイミングを逃さずに顧客にアプローチするには、情報の鮮度も大切です。顧客に関する新たな情報が得られたら、忘れずに都度更新しましょう。
次に、集めた情報をもとに顧客の悩みや課題について仮説を立てます。ここでは、データベースの情報だけでなく、顧客が会話の中でふと漏らした話、顧客を取り巻く業界、社会環境などを踏まえて情報を分析し、仮説を立てることが重要です。
ステップ2で立てた仮説をもとに、顧客に役立ちそうな情報を発信します。この段階では、仮説の検証と顧客からの信頼醸成を同時に行います。顧客が仮説どおりの悩みを抱えていれば、営業担当者は「自社に役立つ情報を提供してくれる存在」として信頼されるようになるでしょう。
信頼感が増したところでヒアリングを繰り返せば、顧客からより深い情報が得られます。ここでのポイントは、ヒアリングによって顧客に課題への気づきを促すことです。顧客自身も気づいていない潜在ニーズを引き出し、明確化するところまで伴走します。
課題が明確になったら、ようやく商品提案へと進みます。自社商品を提案する際には、あくまでソリューションとしてその商品が役立つことを伝えるようにします。単に商品を売るのではなく、いわば課題解決のための仕組みを提案するのです。ノウハウや活用法も合わせて伝えるようにしましょう。
ソリューション営業の目的は、顧客と長期的な信頼関係を築くことです。顧客が実際に商品をうまく使いこなせているか、課題解決に役立てているかなど、商談成立後もヒアリングを続けましょう。アフターフォローすることで顧客情報がさらに充実し、関係性もより深まります。
最後に、ソリューション営業に必要な3つのスキルを紹介します。
1つ目のスキルは、情報収集・管理力です。情報収集力には、さまざまな資料から顧客や業界の情報を集めてくる調査力だけでなく、顧客から情報を引き出すヒアリング力も含まれます。
また、情報を効率的に管理するには、属人的なスキルを高めるよりも「CRM(顧客管理)」や「SFA(営業支援)」を導入して効率化を図るのも一案です。
2つ目のスキルは、論理的思考力です。まず、集めた情報をもとに仮説を立てる上で、論理的思考が必要です。さらに、課題に対する解決策を提示する段階でも「自社商品がソリューションになる」と説得的に伝えるには、論理的思考が礎になります。
3つ目のスキルは、ヒアリング力です。これは、ソリューション営業への移行ステップを通して全般的に必要となるスキルです。
ソリューション営業で必要なヒアリング力は、顧客の要望を聴取する力だけでは不十分です。顧客への丁寧なヒアリングで信頼感を高め、潜在的なニーズを引き出し、課題解決を導く、高度なヒアリング力を身に付けましょう。
今回は、御用聞き営業のデメリットと、御用聞きから脱却してソリューション営業へと移行する方法について解説しました。顧客の選択肢も情報源も豊富な時代において、既存顧客の要望をかなえることで成り立っていたかつての営業スタイルはもはや通用しなくなっています。営業に行き詰まりを感じている方は、御用聞き営業を脱却してソリューション営業への一歩を踏み出してみてください。ソリューション営業には、効率的な情報収集・管理力、論理的思考力、高度なヒアリング力など、さまざまなスキルが必要です。1つずつ習得を目指しましょう。