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インサイドセールスの皆様、目標がストレッチし商談数が足りないという経験をしたことはありませんか? 会社から求められる売上目標、受注目標、商談獲得目標達成に向けてアプローチ数を増やすと、「リストがすぐに枯れて恒常的に営業活動ができない」という経験があるインサイドセールスの責任者様も多いと思います。
そこで、インサイドセールスにおけるアウトバウンド型の新規顧客開拓(BDR:Business Development Representative)施策の戦略策定から実行までをトータルで支援している、RECERO株式会社の前田が、リスト枯渇という悩みから解放され、商談獲得を増やすためのアプローチ手法である「アウトバウンドによるナーチャリング」について解説していこうと思います。
受注が足りない/商談が足りないという課題の根本にあるのは、そもそもインサイドセールスのリストが枯渇していることだと思っています。質の良いリードが少ない中で商談を創り出し、目標達成するのは至難の業です。そこでSaaSやITサービスを提供されている企業のインサイドセールス担当の方が抱えがちなお悩みについてまとめてみました。
ナーチャリングは「インバウンドリードに対しての活動だ」とイメージされる方も少なくないと思います。我々としては、ナーチャリングはアウトバウンドでも可能だと思っていますし、むしろアウトバウンドでこそナーチャリングをすべきだと思っています。
アウトバウンドでアプローチを行う際、起点からその後のストーリーを設計しておかないと、顧客とのコミュニケーションが“点”になってしまうというケースがよく見られます。(これがアウトバウンドで失敗する大きな要因となっていると私は思っています)
アウトバウンドにおいてもインバウンドと同様に、顧客との複数回のコミュニケーションを前提とした"線”でのコミュニケーションが求められます。
ナーチャリングを行わずに点でコミュニケーションを行うことが、リストが枯渇していく一番の原因なのです。
アウトバウンドにおいてよくある4つのアンチパターンは以下です。
意外と皆さんの会社や過去の活動に当てはまるのではないでしょうか?
BDRでのアプローチをしていくと決めた際によくやってしまいがちなのが、とにかく活動量を増やしてアポイントの獲得を目指してしまうことです。短期的な効果を追求することで、結果的に失敗するケースを多く見てきました。
BDRの特長の1つは、自社がアプローチ先を選定できることです。顧客になってもらいたい企業をこちら主導で決められるにもかかわらず、ターゲット選定を十分に設計せずにアプローチを進めてしまうのは悪手だといえます。
ターゲットを絞る上では、過去の商談分析や受注分析を行い、どんなニーズを持っている顧客であれば自社の商品を使ってもらえるのかを解像度高くイメージすることが重要です。BDRは成果が出るまでに一定の期間を要するため、ターゲット戦略を練ってからアプローチ開始することをおすすめします。
営業として成果を求めることは重要ですし、なるべく短期の成果が望ましいことは一ミリも否定しません。ただ、短期的な成果を求めすぎてしまうことの弊害が2つあります。
1つ目は顧客体験が悪くなってしまうことです。短期的成果のみを求めると、営業が強引かつドライになりやすく、顧客に対して良くない印象を与える営業活動になってしまう可能性が高くなります。また目の前の商談獲得に奔走するがあまりニーズがない顧客との商談をとってしまい、商談をしても受注ができないことも起こり得ます。
2つ目はリストが枯渇してしまうことです。1点目の理由とも通ずる部分が多いのですが、短期的成果を求めすぎるとターゲットリストを短期的に効率よく“刈り取る”ような意識になってしまうことが多くあり、そうなると顧客と「商談できるかできないか」の2択になってしまい、今すぐに商談ができない顧客への価値提供を怠ってしまうことが往々にして起こります。
十分にナーチャリングを行っていれば期間をあけてアプローチした際に商談化できたかもしれないにもかかわらず、その機会を逃してしまいます。提案機会を逃すだけではなく、「商談できるかできないか」の2択のようにリストを“焼き畑化”してしまうと、ターゲットへのアプローチが1周しただけで貴重な顧客リストを失ってしまいます。
アウトバウンドでのナーチャリングを行う上で一番重要なことはアプローチ前の準備です。具体的には自社が最も優先的にターゲットとする企業群の絞り込みです。弊社にて支援を行った会社の場合は以下のような点を意識してターゲット設定をしました。
先にも書いたように、BDRでは自社のソリューションがFitする“根深いニーズがある”企業に狙いを絞ることもとても重要です。大手企業への導入が決まったとしても、まずは試験的に小さく導入するケースも多々あります。注意しなければいけないのは、大手に導入されたとしても、活用されなければアカウント追加もなく、すぐに解約されて大きな売上を見込むこともできないということです。
実際に小売/飲食業界向けSaaS企業での支援にて、弊社がどんな絞り込みをしたのかを以下に提示します。
ターゲット企業が固まったらいよいよアプローチを開始していきます。しかしアプローチにおいても、ターゲット企業すべてに対し均等にアプローチするのではなく、顧客の状況に合わせて濃淡をつけていくことが重要です。
具体的には、検討の主体となるキーマンに接触できているか、現状の運用における課題/ニーズが明確になるか、検討時期や予算が合っているかなどをもとに、優先的に追っていくべき顧客かどうかをスコアリングしていきます。
アウトバウンドの営業においては、担当者と初回接触した時点で商談が獲得できるケースは少ないです。そこで、重要なのは次回アクションの日時や内容の擦り合わせをすることです。サービスに興味を持っていただいたものの、すぐ検討にはならない場合はまずはサービス資料や導入事例集などを送付していく流れが一般的です。
この段階で「資料確認いただいて部内でのご検討にはどれくらいお時間必要でしょうか」などと聞いた上で、「次回は〇〇日の〇〇時ごろに改めてご連絡させていただいても良いでしょうか?」など明確に次回のアクション日時と内容を確定させることが重要です。
特に温度感が高いケースであれば、同業他社の話を聞いていたりしますし、最近はテレワークで出社日が少ない方も多いので、接触できた機会で詳細まで詰めていくことができれば他社と大きな差をつけられます。
定期連絡におけるポイントは先方の状況を聞いた上で、「では〇〇日ごろにこちらからご連絡させていただきます」と切り出していくことです。
ここでは先方の状況を把握しつつこちら側主導で提案してあげることが重要です。次回アクションまでの期間が空いてしまう場合は、用意するまでに時間はかかるものの先方にとって価値のある情報などを「宿題(タスク)」として持ち帰って、いつまでに共有しますと伝えておくのも効果的です。
最後に意識すべきは誰と商談するかです。特に大手商談の場合は、ニーズがある企業との商談を創出したとしても、適切な担当者と商談ができないと稟議の途中で検討が止まってしまい、案件を前に進めることができないケースが多くあります。検討が途中で止まってしまうことを防ぐために、対象企業へのアプローチ部署や担当者が適切なのかを検証したり、可能な限り「導入検討推進者」の同席をしてもらうよう打診することが重要です。
「誰と商談するのか」を強く意識して商談創出することで、商談の受注率を高めることが可能です。商談のテクニックや資料をブラッシュアップすることも重要ですが、商談の設定にもぜひご注目いただきたいです。
今回はアウトバウンドによるナーチャリングについて解説しました。皆様がこれからBDRを行う際や、大手企業との商談獲得施策を強化する際などにご活用いただけたらと思います。
インサイドセールス、特にBDRのノウハウがなく自社での立ち上げが難しい場合、体制が整備されている外部のリソースを用いて立ち上げを行うこともおすすめです。
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