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近年、カスタマーサクセスツールを導入する企業が増えています。
その背景には、「顧客満足度の向上」「アップセル活動の促進」「顧客との長期的な関係性構築」などさまざまな理由があります。
本記事では、カスタマーサクセスの基本から、おすすめのツールや選び方をご紹介いたします。
カスタマーサクセスとは、顧客が製品やサービスを通じて成功体験を得られるように支援する取り組みのことを指します。
カスタマーサクセスが注目されている背景には、ビジネスモデルの変化があります。
これまでは、買い切り型の製品やサービスが主流でした。
しかし近年では、SaaSなどのサブスクリプションサービス(月額や年額など一定の料金を払う期間利用ができるサービス)が主流になってきています。サブスクリプションサービスは、月額費用が比較的低く設定されていることが一般的です。そのため、できるだけ長くサービスを利用してもらい、利益を得る必要があります。
そこで注目され始めたのが、顧客の成功体験を創出することを目的にした組織である「カスタマーサクセス」です。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いは2点あります。
まず1つ目は目的の違いです。
カスタマーサクセスは、「顧客の成功体験を創出する」ことを目的とする一方、カスタマーサポートは、顧客の質問や相談の対応といった「顧客の課題解決」が目的になります。
2つ目は、アプローチ方法の違いです。
カスタマーサクセスは、顧客に対して主体的に定期連絡や面談を通じて利用状況を把握し、製品やサービスの活用を通じた成功体験を促していきます。
一方でカスタマーサポートは、企業から顧客へアプローチを行うというより、顧客からの問い合わせへの対応を行うため、アプローチ方法が受動的か能動的かといった違いがあります。
カスタマーサクセスを実施する6つのメリットを解説します。
解約率とは、一定期間内にサービスの解約をした顧客の割合を表す指標です。
解約率が下がるということは、製品やサービスを長期に渡り利用いただけているということなので、顧客一人あたりから得られる利益もその分増えます。
長期間利用してもらうためには、顧客に製品やサービスを有効活用してもらうための支援や、顧客が抱える課題を解決するための知識提供などが重要になります。
カスタマーサクセスでの支援を充実させることで、利用顧客の満足度向上、ひいては利用期間の維持・延長により、解約率を低減できます。
LTV(顧客生涯価値)とは、一人の顧客から得られる利益のことを指します。
LTVを向上させるためには、お客様に長くサービスを利用してもらうことが重要です。カスタマーサクセスの支援により、顧客が製品やサービスを通じて成功体験を積むことで、サービスを利用するメリットを感じ、長く利用してもらいやすくなります。
長く利用してもらえるということは、その分解約率も抑制されるので、結果的にLTVの向上につながります。
アップセルとは、顧客が利用している製品やサービスよりも「上位モデル(プラン)」の利用を提案することで、クロスセルとは顧客が利用している製品やサービスの「関連製品(サービス)」を提案することをいいます。
提案する商材は異なるものの、いずれも顧客単価向上を目的として実施するものです。
カスタマーサクセスは、アップセルとクロスセルの促進において重要な役割を果たします。
例えば、顧客が既存の商品やサービスを十分に理解し、価値を享受できるようにサポートができれば、新たなアップグレードや関連商品に興味を持ちやすくなります。また、カスタマーサクセスは直接顧客とのやり取りを行うため、ニーズや要望を常に把握できます。そのため、適切なタイミングでアップセルやクロスセルの提案を行うことができ、顧客の満足度とロイヤルティを高めることができます。
オンボーディングとは、顧客にいち早くサービス・商品の使い方や機能に慣れてもらうためにサポートするプロセスのことを指します。
オンボーディングがうまくいかないと、顧客が商品やサービスをうまく利用できず、フラストレーションがたまったり、あまり利用できずに解約してしまう可能性があります。そのため、いかにオンボーディングを成功させるかが重要になります。
カスタマーサクセスで細やかに支援することで、オンボーディングが向上し、ひいては解約率の抑制や顧客満足度の向上につながります。
カスタマーサクセスは、顧客と直接やり取りをする場面が多く、顧客の要望やニーズをタイムリーに把握できます。それを開発にフィードバックすることで、顧客のニーズや要望に応えたサービス・製品の改善が可能になります。
顧客が成功するために必要な機能や機能の不足点を特定し、対応することで顧客満足度を向上させることができます。
カスタマーサクセスは、顧客が製品やサービスを最大限に活用し、顧客が求めている成果達成のための支援を行います。
定期的なコミュニケーションや問題解決の支援を通じて、顧客との関係を強化していくことで、ロイヤルカスタマーの創出にもつながります。
カスタマーサクセスツールとは、サービス・製品の利用促進やLTVの最大化を促すためのツールのことを指します。
カスタマーサクセスツールにはさまざまな機能が付帯しており、顧客の利用データからヘルススコアを算出してくれる機能や、コミュニケーションの自動化、タスク管理などがあります。
カスタマーサクセスツールはいくつかのカテゴリーに分類されます。
今回は代表的な4つのカテゴリーを紹介いたします。
問い合わせ対応タイプのツールは、問い合わせの対応状況を可視化できたり、複数チャネルからの問い合わせを一元管理できたりと、顧客からの問い合わせや要望を漏れなく効率的に対応することに特化したツールです。
また、問い合わせの内容ごとに分類し集計・分析することもできるため、顧客のニーズや課題を把握しやすく顧客フォローに役立ちます。
コミュニティ構築タイプのツールは、サービス提供企業と顧客、また顧客間のコミュニケーションを促し、コミュニティを形成することができるツールです。
近年は、顧客ロイヤルティを高める手法として、コミュニティサイトの運用が注目を集めています。良い口コミが広がれば新規顧客の獲得へとつながる可能性もあるため、こういったコミュニティを構築しておくメリットは大きいと言えます。
オンボーディング管理タイプのツールは、顧客自身で悩みを解決できる環境を構築することに特化したツールです。
利用している顧客ごとに必要なサポートをシナリオ化して表示する機能などを提供しているので、サービスや商品の取り扱いや操作が複雑だったり、顧客数が多く対応する側のリソースが足りていなかったりする場合に有効なツールです。
すべての顧客に対して十分なオンボーディングができていない場合、こうしたツールを利用することで、商品やサービスの利用ハードルを下げ、長期的な継続につなげることが可能です。
顧客満足度計測ツールは、顧客の満足度や感情を定量的および定性的に評価するためのツールです。
カスタマーサクセスにおいて重要な顧客ロイヤルティの調査を効率的に実施できます。
さらに、アンケート機能のあるツールを導入すれば、時間やコストを最小限にしたお客様アンケートの実施が可能です。
カスタマーサクセスツールと言ってもさまざまなタイプがあり、目的や用途によって選ぶべきツールは異なります。
カスタマーサクセスツールを選ぶ際のポイントを3つご紹介します。
まずは、自社が強化すべき要素を明確にしましょう。自社が強化したいのが、問い合わせ対応の効率化なのか、それともコミュニティの構築なのかによって、選ぶべきタイプのツールが異なります。
導入してみたけど、自社が抱える課題を解決できない、機能が足りないとなってしまっては、費用はもちろん導入までの社内調整やメンバーの教育などにかかった時間的コストもムダになってしまいます。
まずはツールを導入して何を強化したいのかを明確にすることが大切です。
強化すべき要素が決まったら、次は必要な機能を洗い出しましょう。
例えば、問い合わせ対応を効率化したい場合に選ぶべきは問い合わせ対応タイプのツールになりますが、同じタイプのツールだとしても提供している機能は異なります。
自社の運用にとって、欠かせない機能は何か、+αであると良い機能など、さまざまな観点から必要な機能を洗い出し、適切なツールを選ぶようにしましょう。
高額なツールを選択すると、コストが予算を超過し、企業の財務状況に影響を与える可能性があります。逆に、安価なツールを選択すると、必要な機能が不足している可能性があり、顧客サポートの質や効果が低下する恐れがあります。
適切なコストのツールを選択することで、コストと効果のバランスの取れた効果的なカスタマーサクセスを実現できます。
前述の4つのカテゴリー別に、おすすめのカスタマーサクセスツールを紹介します。
「メールディーラー」は株式会社ラクスが提供しているメール共有システムです。
メールディーラーでは、チームでの情報共有がよりスムーズになるのはもちろん、電子メール・電話・チャット・LINE公式アカウントを一元管理することができるため、顧客からの問い合わせ対応業務全体を効率化し生産性を向上させることができるツールです。
メールディーラーの特徴
※1 出典:ITR「ITR Market View:メール/Web/SNSマーケティング市場2024」
メール処理市場:ベンダー別売上金額推移およびシェア(2009~2023年度予測)
「Zendesk」は米国Zendesk社が提供するカスタマーサクセスツールです。
全世界で20万社以上に導入されているサービスで、カスタマーサービスに特化したサービスを提供しています。
一般的な問い合わせ管理からソーシャルメディアなど、サポートチャネルを一元管理できます。
「commmune(コミューン)」は、コミューン株式会社が運営するカスタマーサクセスプラットフォームです。
企業ごとに最適な顧客ポータルを、ノーコードで構築・管理できます。
「coorum(コーラム)」は、株式会社Asobicaが提供するユーザーコミュニティの作成を通じて、ロイヤル顧客とつながる場を実現する、ロイヤル顧客プラットフォームです。
コミュニティ内での投稿や閲覧履歴などは、コンテンツと紐付けられリアルタイムで可視化。また、顧客インサイトの分析や、満足度やロイヤリティ向上につなげる施策の検討に活用できます。
「SmartCore」は、株式会社イーストゲートが提供する会員管理システムです。
会員データベース管理、会員サイト管理など、会員情報の管理と団体ポータル運営に必要な機能が揃ったカスタマーサクセスツールです。
「Onboarding」は、株式会社STANDSが提供する利用顧客に対してガイドを表示し、ガイドに沿って操作してもらうことで、視覚的にサービスの機能や使い方を紹介するプロダクトツアーツールです。
プロダクトツアーを活用することで、サービスの価値を顧客に感じやすくなってもらうことが出来るため、オンボーディングプロセスの効率化に繋がります。
「Fullstar」は、クラウドサーカス株式会社が提供するノーコードでチュートリアルを作成することができるツールです。
オンボーディングやオンゴーイング時に顧客が悩むポイントなどにチュートリアルを設置することでカスタマーサクセスの稼働を最小限にできます。
「Mazrica Sales」は、株式会社マツリカが提供する営業支援ツール、通称SFAです。
Excelなどで管理している営業データを集約し管理することができるため、営業管理にかかる工数を圧縮できます。
「Ambassador Relations Tool」は、株式会社コンファクトリーが提供する無料で使用することができる顧客管理システムです。
顧客情報や商談情報を管理できるCRM機能をはじめ、マーケティングオートメーション、メールマーケティング、顧客分析などの便利な機能が揃っています。
「EmotionTech」は、株式会社エモーションテックが提供する感情データの解析技術で最適な意識決定ができるようになるツールです。
顧客からのアンケートの結果を分析することで、サービスや製品の改善点とはどこにあるのかを具体的に見つけ出すことが可能になります。
※すべての画像出所および情報参考先は各紹介文冒頭のサービスサイトより
カスタマーサクセスツールは、問い合わせ対応の効率化に特化したものやコミュニティ構築ができるタイプのツールなど、さまざまな種類があります。
ツール選びを失敗しないためには、自社で強化すべき要素やどのような機能が必要かを明確にすることが大切です。
自社に合ったカスタマーサクセスツールを導入し、カスタマーサクセスを成功に導きましょう。
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