インタビュー

専門家に聞く「営業とマーケティング部門のすれ違いが起きる要因と解決策」

専門家に聞く「営業とマーケティング部門のすれ違いが起きる要因と解決策」

BtoBマーケティング課題の解決策やノウハウを専門家に語っていただく企画シリーズ。今回は「営業とマーケティング部門のすれ違いが起きる要因と解決策」をテーマに、営業支援ツール「Mazrica Sales」の提供を通じて営業の属人化問題解消や営業活動の効率化実現を支援している、株式会社マツリカのGrowth Marketing Division Manager 根本翔一氏に話を伺いました。

地道なアプローチと個人の経験が鍵となる旧来型の営業で売上を立ててきたBtoB企業は、営業部門とマーケティング部門のすれ違いが起こりやすく、営業が属人化します。「Webマーケティングでリードを獲得しても、営業がそのリストを活用しない」といったような悩みを抱えている企業の担当者に向けて、根本氏が営業とマーケティングの連携を阻害する状況が起きる要因と解決策、さらには、営業組織改革の方法について紹介します。

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目次

営業とマーケティングの連携を阻む4つの状況

画像:株式会社マツリカGrowth Marketing Division Manager 根本翔一氏
根本翔一氏(Growth Marketing Division Manager)

営業・マーケティング間の連携がスムーズにいかないBtoB企業には、共通する4つの状況が発生しています。

1つ目は、営業担当者がマーケティング担当者への不信感を抱いている状況です。
マーケティング部門から提供されてきた見込み顧客・問い合わせ情報の精度が低く、営業をかけても売上につながらない事例が多発したため、営業がマーケティングへの不信感を抱いてしまいます。

2つ目は、マーケティング施策の手詰まりが起きている状況です。
マーケティング部門でせっかく一定基準の見込み顧客を獲得しても、営業がアプローチをしてくれないことが続くと、PDCAを適切に回せません。状況の改善が図れず、悪循環が起きてしまいます。

3つ目は、経営層がマーケティングをあまり理解していない状況です。
マーケティング業務の重要性について経営層の理解が十分に得られていないと、非現実的な予算と目標が立ってしまうことがあります。そうした場合、マーケティング担当者もモチベーションが下がってしまったり、コスト重視で質の担保が不十分なリード獲得に走りがちで、営業担当者のマーケティング担当者に対する不信感につながってしまいます。

4つ目が、組織にデータドリブンが浸透していない状況です。
データに基づいた効果検証や意思決定を行う組織風土がない場合、共通の指標をもとに議論ができないため、各部門間の連携も難しくなります。

悪い状況を生む3つの要因

このような状況は、3つの要因によって起こると考えられます。

1つ目は、マーケティング部門における顧客解像度の粗さです。
BtoB企業はBtoCと異なり、実際にビジネスを行う中でしか顧客のニーズや状況を把握することができません。マーケティング担当者の顧客接点が少ないと、顧客起点で施策を考えるのが難しくなり、リードの精度も落ちやすくなります。

2つ目は、共通言語となる指標の欠如です。
特に部門ごとに使用するプラットフォーム・ツールが分かれている場合、お互いに異なる数字を見て施策を行っている可能性があります。共通の指標を持てていないと、営業とマーケティングの相互理解が進まず、両部署のアウトプットがかみ合わないため、ズレが生じます。

3つ目が、営業活動の分業化です。
営業のプロセスモデル「The Model」に代表されるように、近年は多くの企業で営業活動の細分化・分業化を進めてきました。興味喚起からリード獲得までを「マーケティング」、リードにアプローチを行ってアポイントを取るまでを「インサイドセールス」、実際の商談を「セールス」、顧客サポートを「カスタマーサクセス」という形で分けていて、顧客に製品・サービスを使っていただくまでに多くの人材が携わっています。

このような分業がうまくいけば、営業の効率化と顧客満足度の向上、売上拡大に効果が現れます。しかし、各ポジションのKPIごとに施策が部分最適化してしまい、営業フロー全体としては最適化されていないという弊害が発生することも。分業化が進みすぎていると、部門間の確執も起きやすく、スムーズな連携とはほど遠い状況に陥りやすいのです。

営業・マーケティング間の連携を強化する4つの施策

施策1:「リード獲得から売上発生までのフロー」を組織横断的にチェックする

状況の改善には、何よりも「オペレーションを横ぐしでチェックする」ことが大切です。顧客満足度ないし売上を最終的な指標として、各部門の施策をひとつひとつ洗い出し、それらの推移率をまとめます。その結果をもとに、流れや施策が最適かを判断していくのです【下画像参照】。

▼案件ボード

画像:案件ボード(Mazrica Sales)

【説明】ツールを活用しながら部門間の壁を越え、案件ごとの推移率。※画像はMazrica Salesの機能の一部(株式会社マツリカ提供)

▼ダッシュボード

画像:ダッシュボード(Mazrica Sales)

【説明】売上の推移を把握することが、営業・マーケティング間の連携を強化する上で大事だ。※Mazrica Salesの機能の一部(株式会社マツリカ提供)

部門間の連携だけでなく、各部署を俯瞰で見ることのできる組織を置くのも有効です。弊社にも「Ops(オプス)」と称した部署があり、そこでは営業やマーケティングの流れの分析、新しい施策の検討を行っています。

施策2:営業・マーケティング間で共通のKPIを持つ

そのような取り組みの中でもし、進捗率の悪いポイントが見つかったら、それは営業とマーケティングで共通のKPIを持ったほうが良いサインかもしれません。KPIを両部署で合わせていくことで、必然的に目線が統一され、コミュニケーションも活発化、相互理解が生まれていきます。

施策3:CRMを導入し、KPIを統一する

KPIの統一には、各部門の状況をリアルタイムで把握できるCRMの活用をおすすめします。CRMは顧客獲得から受注まで、顧客とのやり取りの情報をすべて残すことができるプラットフォームです。

CRMをこれから導入する場合、営業活動の全工程に対応できるツールかを見極めながら、現場にとって使いやすいものを選ぶのが良いでしょう。

導入にあたっては、営業とセールスがマストで押さえる数字を決め、まずはその数値の入力とデータ管理を徹底するという形で小さく運用を始めると、スムーズな浸透を図れます。また、CRMの担当者を置くことも一案です。弊社の顧客でも、CRMの担当を置くことや特定部署でスモールスタートすることで導入に成功している企業が多数あります。

参考:CRMとは?意味や機能・おすすめの顧客管理ツールをわかりやすく解説(Senses Lab.)

施策4:部署横断型の定期ミーティングで相互理解を深める

部署間の相互理解を深め、マーケティング担当者の顧客解像度を上げるには、部署横断型のミーティングを週1回程度開催することも有効です。必ずしも全メンバーが出席する必要はなく、マネジャーレベルが互いの部署のミーティングに相互に出席するだけでも良いでしょう。

その際、「専門性が高い」と思われやすいマーケティング担当者のほうから歩み寄る姿勢を持つことも大切です。ミーティングの中では、営業課題に対してマーケティング部門ができることを積極的に発信したり、CRMに記録された情報から読み取るのが難しい顧客や商談に関する定性情報について質問したりすると、施策の連動がとりやすくなります。

具体的には、リードソースごとの成約に関する営業側の所感や進捗率が悪いポイントに対する営業側の状況などをヒアリングすることで、マーケティング施策へ生かしやすくなります。

さらに、マーケティング部門が顧客インタビューや商談への同席、営業部門の架電記録を定期的にチェックするといった取り組みも顧客解像度を上げる手助けとなります。

組織の根本的な変化には「データドリブン」と時には「トップダウン」が鍵

画像:株式会社マツリカGrowth Marketing Division Manager 根本翔一氏

BtoB企業である弊社では、営業とマーケティングの連携において、ランチを共にするといったソフトなコミュニケーションも大切にしながら、お互いに相談しやすい体制を構築しています。

また、営業とマーケティングの橋渡しとなる人材を置くことも効果があるように思います。実際に私自身がセールス経験を持つマーケターとして業務を行っていますが、セールスの状況がよく分かっているからこそ、コミュニケーションがとりやすいと感じる面もあります。数字を見ることが好きな営業担当者がいれば、その方を一定期間マーケティング部門に配属することで、両部署の相互理解が進むのではないでしょうか。

そして、組織を根本的に変えていくためには、ボトムアップでの組織変化が難しい場合、やはりトップダウンでの現場の意識改革も重要となります。営業とマーケティングが連携した際の費用対効果など、中長期計画も含めたさまざまな場面でメリットの提示を行うことで、現場の理解が得やすくなります。

最終的には、データドリブンで意思決定を行う組織に変わっていくことが大切です。そのような文化がない場合、まずは業務効率化やペーパーレスに向けた取り組みからデジタル化をスタートすると良いでしょう。営業やマーケティングなどさまざまな部門でデータをもとに議論と連携を行い、全社的な取り組みの効率化と最適化につながっていきます。
※記載の内容は2023年3月時点の情報です。

まとめ

  •  BtoB企業において営業・マーケティング間の連携がスムーズにいかないとき、現場レベルでは両部署間の業務がかみ合っていないことがある。経営レベルでは、データドリブンで意思決定をする文化がない、マーケティングへの理解が浅いといった課題が挙げられる。
  • マーケティング部門の顧客解像度の粗さ、部門間の共通指標がないこと、営業活動の分業化による弊害が発生していることが、営業・マーケティング間の連携を難しくしている。
  • 「リード獲得から売上発生までのフロー」を組織横断的にチェックする体制づくりが大前提。その上でCRMを活用した部署間のKPI統一や部署横断型の定期ミーティングを行う。
  • 組織を根本から変化させるためには、データドリブンの意思決定を推進し、場合によってはトップダウンで現場の意識改革を行うことが重要となる。

【取材・執筆:市岡光子、株式会社YOSCA、編集:BeMARKE編集部】

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