基本ノウハウ
ChatGPTはビジネス・プライベート問わず、利用する方が増えています。マーケティングに携わる従業員も、自分の仕事で有効活用できる部分はないか模索しているところでしょう。
本記事ではChatGPTを生かせるマーケティング業務や、活用アイデアを解説します。同分野における利用状況や、高精度の回答を得るコツもあわせて紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
ChatGPTをマーケティングに生かすためには、同ツールの得手不得手を理解しておく必要があります。具体的な内容は、下表の通りです。
得意なこと | 苦手なこと |
---|---|
・過去の情報を踏まえた質疑応答 ・データの整理や抽出、簡略化 ・アイデア出し |
・正確な情報提供や計算 最近の出来事に関する質疑応答※1 |
※1:学習に使用したデータは2021年9月まで/ただし有料版(GPT-4)であればブラウジング機能によって最新情報も参照可能
上記を踏まえると一連のマーケティング業務でも、ChatGPTを有効活用できるものとできないものがあると推測されます。各工程の適性と注意点は、下表の通りです。
マーケティング業務 | ChatGPTの適性 | 注意点 |
---|---|---|
【1】情報収集・整理 | ○ | 情報の正確性・鮮度を中心にチェックする |
【2】分析 | ◎ | より精度の高い回答を得るために、事前情報(制約条件)を細かく入力する |
【3】戦略設計 | ○ | アイデアの壁打ち・相談役として利用し、鵜呑みにしない※2 |
【4】コンテンツの作成 | ◎ | 【1】~【3】と同様 |
【5】施策の実行と改善 | ◎ | 【3】と同様 |
※2:過去の情報をもとに回答を出力しており、独自性に欠く上、場合によっては著作権侵害にあたる可能性があるため
具体的な活用アイデアは、「3.ChatGPTのマーケティング活用アイデア【プロンプトテンプレート付き】」を参考にしてみてください。なおChatGPTによって生まれるBtoBマーケティングの変化について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてチェックしましょう。
関連記事:「ChatGPT活用がBtoBマーケにもたらす変化と活用法とは?株式会社ウィット 渥美氏に聞く」
国内の主要企業では運用ルールを設定した上で業務に活用する、あるいは独自開発した生成AIの利用を検討しているところが増えています。実態調査によると、ChatGPTをマーケティング業務で活用したことがある担当者は全体の約3割でした。利用してみたいと考えている担当者は、約半数にものぼっています。
同調査では実際の活用シーンにも言及されており、そのうち最も多いのは次の3つです。
上記以外にも、文章の校正やテキストサマリーの作成などで利用しているマーケターも少なくありません。またChatGPTの利用経験がない方に活用したいシーンを尋ねたところ、TOP3は次の3つになったとのことです。
なおChatGPTを活用できていない理由としては、次の2つがトップになっていました。
逆に言えば、正しい使い方を学習できる機会があれば積極的に取り組みたい、マーケティング業務を効率化させたいという方が多いといえます。
Webマーケティングなど新しい手法が増えている近年、ChatGPTを有効活用できるかどうかは企業の生産性はもちろん、売上拡大にも大きく影響するでしょう。
ここではマーケティング業務を次の5つに分け、それぞれの活用例とプロンプトテンプレートを解説します。
なおChatGPTのログイン方法や、ビジネスシーンでの基本的な使い方について知りたい方は、こちらの記事もぜひ参考にしてみてください。
関連記事:「【図解25枚】ChatGPTの使い方|日本語・スマホでの始め方から注意点まで解説」
また以下の3パターンは、下記の記事で詳しく解説しています。
BtoBマーケティングにおけるChatGPTの活用例を知りたい方は、あわせてチェックしてみてください。
関連記事:「ChatGPTをBtoBマーケにどう生かすのか?活用の3つの具体例と今後の展望」
情報収集・整理の工程では、次のような作業でChatGPTを利用できます。
以下のテキストを○○してください。
#テキスト:"""テキストを挿入"""
○○→要約/要点を抽出/リストor表へ変換
例えばインターネット広告費の概況について、テキストから表へ変換するよう指示した場合、下図のような回答が出力されました。
質問から回答までにかかった時間は、ほんの数秒です。特に情報源が長文であればあるほど、ChatGPTの要約や変換機能は労力削減に大きく寄与してくれるでしょう。
なおマーケティングで活用するデータの集め方やおすすめのソースについて知りたい方は、こちらの記事もあわせてチェックしてみてください。
関連記事:「顧客分析とは?データの集め方から活用できるフレームワークまで解説」
分析の工程では、次のような作業でChatGPTを利用できます。
あなたはプロの○○です。以下のサービス内容をもとに□□のSWOT分析を行い、結果を箇条書きで書いてください。
#サービス内容:
・
・
・
…(必要に応じて追記)
○○→マーケター/事業コンサルタントなど
□□→サービス名
例えば当メディアのSWOT分析を行うよう指示したところ、下図のような回答が出力されました。
実際の画面では上記に続き、他の項目(弱みや機会など)についても記載されています。サービス内容などの事前情報をさらに詳しく記載すると、より精度の高い回答の取得が可能になるでしょう。
なおデータ分析については、こちらの記事でも解説しています。ChatGPTを活用する前に基本を振り返りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
関連記事:「【目的別】顧客データ分析の方法9選|契約件数1.5倍!活用事例も解説」
戦略設計の工程では、アイデア出しやセールスポイントの作成などでChatGPTを利用できます。
あなたはプロの○○です。以下のサービス内容をもとに、□□のキャッチコピーと効果的な導線を挙げてください。
#サービス内容:
・ターゲット
・特徴:
・利点:
…(必要に応じて追記)
○○→マーケター/事業コンサルタントなど
□□→サービス名
例えばCRMセブンという架空の製品に関する戦略設計を指示したところ、下図のような回答が出力されました。
実際の画面では上記に続き、事例紹介やチャットサポートなど多様な導線について提案してくれています。【2】分析と同様に事前情報を詳細に記載することで、より具体的な差別化戦略の回答も期待できるでしょう。
SEO対策やWeb広告の運用など、各種コンテンツの作成でもChatGPTは役立ちます。具体的な活用アイデアは、主に次の5つです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
キーワード抽出の工程では、ペルソナ設定や関連キーワードのリスト化などでChatGPTを利用できます。
あなたはプロの○○です。キーワード「□□」に関する記事を書きたいため、想定される読者のペルソナを教えてください。
○○→マーケター/ライターなど
□□→キーワード
例えば「CRM おすすめ」のペルソナ設定について指示すると、下図のような回答が出力されました。
また同キーワードと関連性の高い言葉について、以下のプロンプトテンプレートを活用しながらリスト化を依頼しました。
上記のペルソナを踏まえ、「CRM おすすめ」と関連性の高いキーワードを箇条書きで列挙してください。
その結果下図を含め、25個列挙してくれています。回答の最後には「CRMツールの選定や利用における機能や利点に重点を置いており、上記のペルソナが記事を読む際に重要視するポイントを反映しています」との記載もありました。
リスト化したものはキーワードプランナーなどでボリュームを調査し、コンテンツに含めるか否か判断すると良いでしょう。
競合調査の工程では、狙いたいキーワードや比較対象などを入力します。
あなたはプロの○○です。キーワード「□□」で検索し、上位表示された10記事からユーザーニーズの高い見出しや内容を、優先順位の高いものから箇条書きで列挙してください。
○○→マーケター/事業コンサルタントなど
□□→キーワード
例えば「CRM おすすめ」の競合調査について指示すると、下図のような回答が出力されました。
10個ほど列挙してくれたため、1.について深掘りするよう再度指示したところ、以下のような回答が得られました。
このようにChatGPTでは競合が取り扱っている内容を把握できるため、必須項目の抽出や差別化ポイントの検討に役立てられます。
テキスト作成の工程では、次のような作業でChatGPTを利用できます。
あなたはプロの○○です。キーワード「□□」の記事を書きます。以下の条件に従い、読者の興味を引くような導入文を書いてください。
#条件:
・ターゲット:
・解説する内容:
・文字数:
…(必要に応じて追記)
○○→マーケター/ライターなど
□□→キーワード
例えば「CRM おすすめ」をキーワードにした記事の導入文を作成するよう指示すると、下図のような回答が出力されました。
「他の案も教えてください」と再度質問すると、また違った回答を得られます。複数の案を見比べ選択する、あるいはそれぞれの良い点をつなぎあわせるのも1つの方法です。
次のような挿入画像のアイデア出しでも、ChatGPTは活躍します。
あなたはプロの○○です。以下の条件に従い、読者の目を引くようなサムネイル画像のアイデアを教えてください。
#条件:
・ターゲット:
・タイトル:
・コーポレートカラー:
…(必要に応じて追記)
○○→マーケター/デザイナーなど
例えばサムネイル画像のアイデアを提案するよう指示すると、下図のような回答が出力されました。
実際の操作画面では上記を含め5つのアイデアが提示され、要素の配置やデザインの理由についても言及しています。画像の作成を依頼するときはもちろん、デザイナー側がクリエイティブ面について言語化・整理したいときにも役立つでしょう。
ChatGPTはQ&Aを作成し、ユーザーの疑問を先回りして解決することも可能です。
あなたは○○です。□□に関するよくある質問を、以下の条件に従って教えてください。
#条件:
・ターゲット:
・出力形式:
・その他:
…(必要に応じて追記)
○○→プロのマーケター/カスタマーサポートの部門長など
□□→サービス名
例えばCRMに関するよくある質問について、カテゴリ別に列挙するよう指示すると、下図のような回答が出力されました。
実際の画面では上記に続き、データ管理やカスタマイズに関するQ&Aが記載されています。また最後には「ご不明な点がございましたら、お気軽にサポートチームにお問い合わせください」という文言も追加されました。
各項目のアンサーについても回答を取得すると、ほぼ人の手を介さずにQ&Aコーナーの文章が完成します。ファクトチェックや自社サービスに合わせた内容への変更は必要ですが、アウトラインのイメージを固める上では十分役立つでしょう。
ChatGPTは施策の実行と改善の工程でも、マーケティング担当者の力になってくれます。例えば既存記事のリライトでは、次のような作業でChatGPTが役立ちます。
あなたはプロの○○です。以下の条件に従い、□□のサイトマップを作成してください。
#条件:
・
・
・
…(必要に応じて追記)
○○→マーケター/プロダクトマネージャーなど
□□→サイトの種類
例えばコーポレートサイトのサイトマップを作成するよう指示した場合、下図のような回答が得られました。
またセグメントメールの文言や、広告コピーにおけるバリエーションの追加にも有効です。その分ABテストといった効果測定も効率化でき、PDCAサイクルをより素早く回せます。ABテストについて基礎知識を振り返りたい方は、こちらの記事もぜひ参考にしてみてください。
関連記事:「ABテストとは?意味がない?注意点・具体的なやり方からおすすめのツールまで紹介」
最後にChatGPTのプロンプトで高精度の回答を得るコツについて、3つ解説します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ChatGPTは指示内容を詳細に書くほど、より精度の高い回答の出力が可能です。具体的には、次に挙げる4つの要素を盛り込みましょう。
基本的な要素 | 内容 | 例 |
---|---|---|
命令 | ChatGPTに依頼したい内容を記載する | ・以下の文章を要約してください ・以下の条件に従い、○○を作成してください など |
文脈 | 前提情報を提示する | ・あなたはプロのマーケターです ・ターゲットはBtoB企業のマーケティング担当者です など |
入力データ | こちらから提示する情報や文章から回答を得たいときに記載する | ・要約したい文章 ・翻訳したい文章 など |
出力形式 | 回答の仕方を指定する | ・リスト ・表 など |
参照:Prompt Engineering Guide|Elements of a Prompt
特に「文脈」はアイデア出しをする際、よりニーズに合った回答を得る上で必須の項目です。自身の仕事内容や顧客層などを振り返りながら、ChatGPTの成果を最大化させるプロンプトの作成を試みましょう。
「#」や「"""」といった記号で文章を区切ると、ChatGPTは命令文を認識しやすくなり回答の精度が上がります。例えば要約を指示する際のプロンプトは、次の通りです。
以下のテキストを要約してください。
#テキスト:"""(要約したい文章を挿入)"""
特に前提情報や指示内容が多くなる場合は、記号を上手に活用して命令文を正しく認識してもらうようにしましょう。
下記の調査によると、「正確な答えを得るためにステップバイステップで確かめてください」というプロンプトが最も精度が高いと分かっています。
参照:Prompt Engineering Guide|Automatic Prompt Engineer (APE)
段階的に考えさせることで、より筋の通った結果を出力できるとのことです。必要に応じて追加の質問をする、あるいはChatGPT自身に疑問点を提示させて、抜け漏れのない回答に近づけましょう。
ChatGPTはあらゆるマーケティング業務にも役立ち、業務の大幅な工数削減や生産性向上が期待できます。実際すでに約3割の担当者が、コンテンツの作成や顧客データの分析などにChatGPTを活用しているとのことです。
ただし回答の精度を上げるためには、使用者側の質問力を鍛える必要があります。ChatGPTに伝える前提条件を整理することはもちろん、命令文を正しく認識し、論理的な思考で答えを導けるようなプロンプトの入力が大切です。
マーケティング担当者もChatGPTの使い方を身に付け、有効活用していきましょう。