Tips

問い合わせメールのデータ分析で重要な3つの指標と業務改善への活用例

問い合わせメールのデータ分析で重要な3つの指標と業務改善への活用例

顧客ニーズの把握や対応業務の効率化を目的に、問い合わせメールの分析に着手したいと考えている方も多いでしょう。しかし、手元にあるデータをやみくもに集計しただけでは、役に立つ分析結果は得られません。
本記事では、株式会社ラクスが提供するメール共有・問い合わせ管理システムの「メールディーラー」が、問い合わせデータの収集・分析・活用の方法を前後編で紹介しています。

後編の今回は、データ分析で着目すべき指標や分析の方法、分析結果をどのように業務に生かすべきかを、具体的な事例を交えて解説します。「そもそも問い合わせの記録をデータとして残せていない」という方は、前回の記事で詳しく説明しておりますので、あわせてご参照ください。

前回記事:問い合わせメールの分析できてる?データ収集から分析・活用例まで解説

目次

問い合わせ内容や対応の分析から得られる効果

顧客からの問い合わせは貴重な情報源です。問い合わせ内容や自社の対応を分析することで得られる効果を、品質改善および業務効率の視点から整理しましょう。

顧客の新たなニーズを発見できる

顧客から寄せられた問い合わせを分析すると、売り手視点では気が付きにくい顧客の新たなニーズを発見できる可能性があります。
問い合わせの内容を分析して、顧客が現状どのような課題を抱えているのか、自社が提供する製品に何を期待しているのかを把握できれば、製品開発やマーケティングの訴求内容、営業トークの改善にも生かせます。

実店舗およびECでのフラワーショップを経営している株式会社日比谷花壇様は、問い合わせメールの分析をサイト改善に役立てています。サイトの利用方法に関する問い合わせ件数を集計することで、コンテンツの見直しや説明文の修正など、サイト改善のための指標として活用しています。
 出典:株式会社日比谷花壇様の導入事例/メールディーラーより

顧客満足度の向上につながる

問い合わせの内容から顧客の不満を読み解けます。製品への不満だけでなく、スタッフ対応の質に対する不満が見つかることもあるでしょう。
優秀なスタッフの一連の対応を分析することで、成功の法則が見つかるかもしれません。個人のスキルや勘に頼った属人的な対応から脱却し、部門全体の成果を底上げができるのです。

業務効率の改善につながる

問い合わせデータを分析することで、「こんな質問にはこの回答」と模範解答が積み上げられていきます。その結果、問い合わせに対する回答を対応スタッフが個別に考えたり調べたりする必要がなくなります。顧客に回答するまでにかかる時間が短縮されて、効率が上がります。

問い合わせデータ分析で重要な3つの指標

問い合わせを分析するために最も基本的な指標は、以下の3つです。

  • 問い合わせ件数
  • 解決率
  • 初回回答するまでにかかった時間

これらの指標に、「問い合わせ内容別」「担当者別」「顧客属性別」といった軸を掛け合わせて分析します。

▼問い合わせ件数

問い合わせの内容ごとに分類して定点観測を行います。
例えば、サポートが必要な技術的な問題、価格や契約に関する問い合わせ、機能や使い方に関する質問、製品改善提案などに分類します。単純な質問に対応リソースがとられている場合は、説明書やサイトの情報を見直すことで改善が図れるでしょう。

▼解決率

あらゆる問い合わせ対応部署において最も重要視される指標です。全体の数字とともに、対応者ごとの数字を定点観測することで、社員教育に活用できます。

▼初回回答

この回答までにかかる時間は顧客満足度に直結するため、優先的にチェックすべき指標です。この指標を改善するためには、部門全体の体制を見直す必要があるかもしれません。

問い合わせデータ分析の方法

問い合わせデータの分析方法について、代表的な2種類をご紹介します。

方法1:KPI分析

KPIとは、Key Performance Indicatorを略した言葉で、日本語では「重要業績評価指標」と訳されます。最終の事業目標であるKGI(Key Goal Indicator)を達成するための中間指標として設定されるのがKPIです。KPI分析を行うことで目標の達成度を可視化でき、目標達成までのプロセスを明確にできます。

問い合わせデータ分析で設定するKPIは、「顧客満足度を向上させる」「レスポンスを早くする」といった定性的なものではなく、「初回回答までの時間を3時間から2時間にする」など、数値目標に落とし込むべきです。
KPIを設定するためには、一定期間データを収集して現状を正確に把握する必要があります。解決率や問い合わせ件数、初回回答までの時間などを数値化し、それぞれ現状からどのように改善したいのかを考え、数値目標を設定しましょう。

KPIを設定したら達成のための行動プランを構築し、実際に改善に取り組みます。定期的に指標をチェックして達成具合を確認しましょう。数値が改善していなければ原因を考え、さらに対策を検討・実施することで、PDCAを回しましょう。

ネットショップ運営における豊富なノウハウを生かしたEコマース支援事業を手掛けるセレクチュアー株式会社様では、実際にメール対応にかかった時間を集計。そのデータをもとに、対応時間の目標設定を行い、顧客対応のスピード向上を実現しています。
出典:セレクチュアー株式会社様の導入事例/メールディーラーより

方法2:VOC分析

VOC分析のVOCとは、Voice of Customerを略した言葉です。つまりVOC分析は、顧客から寄せられるさまざまな意見を分析するということです。前述の通り、顧客からの問い合わせ内容は、同じ商品やサービスに対するものでもさまざまな内容に分類できます。このようなVOCをまとめて、どのような問い合わせが多いのか、どんな傾向があるのかを調べるのがVOC分析です。

VOC分析を行うと、商品やサービスに対する顧客の評価やニーズを浮き彫りにできます。顧客のニーズを満たすことで商品やサービスを改善すれば、顧客満足度が向上し、結果的に業績の伸長にも役立ちます。

VOC分析を実施する際には「4Aサイクル」と呼ばれる顧客マネジメント手法が有効です。

  • Accept:顧客の声を収集する
  • Analyze:収集した声を分析する
  • Acknowledge:分析した結果を共有する
  • Act:共有された内容をもとに改善策を実行する

顧客の声はトレンドなどによって常に変化します。一度分析して満足するのではなく、これらの工程を常に循環させられるよう、体制や環境を整えましょう。

問い合わせ分析結果の活用例

問い合わせの分析は、先ほどもご説明した通り業務効率の改善には欠かせないものです。しかし、データ分析はそれ単体では価値を発揮しません。得られたデータを解き明かし、実行できる施策に落とし込んではじめて、業務改善が実現します。
いくつか具体例をご紹介しますので、参考にしてみてください。

同じような問い合わせが多い→FAQを改善して対応効率化

VOC分析の結果、同じような内容の問い合わせが多いと分かることがあります。例えば「使えるクレジットカードの種類を教えてほしい」「エラー番号が出ているがなんのエラーか知りたい」などの質問は、どこの問い合わせ部門でも多く寄せられるのではないでしょうか。

もしサイトにFAQを用意していないのであれば、作成することで顧客が問題を自己解決しやすくなります。すでにFAQがあるのに活用されていないのであれば、FAQまでの導線が悪いことを疑う必要があります。商品ページのお問い合わせボタンのすぐ上にFAQボタンを設置する、ボタンの色を目立つものに変えるなどしてみると良いでしょう。
顧客用ではなく、社内専用のFAQを作成することでも、すぐに回答を探し出せるようになり、問い合わせ対応の効率化を図れます。

メールディーラーのFAQページ"

参考:メールディーラーのFAQページ

対応に時間がかかっている→スタッフの教育強化・運用の見直し

KPI分析の結果、対応に時間がかかっていると分かった場合には、問い合わせの運用体制に問題があると考えられます。解決するには、次のような対策を検討するといいでしょう。

スタッフの教育強化

対応に時間がかかっている場合には、そもそもスタッフの対応時間に対する意識レベルが、低いことが考えられます。とくにこれまで対応時間を指標とせず、測定していなかった場合には、スタッフが「対応が遅い」と認識していない可能性があります。
この場合、指標として数値目標を掲げるだけで意識が変わり、対応時間が改善されることが少なくありません。まずは現在かかっている時間を数字として認識させた上で、期限を定めて目標を達成するように、意識改革をすすめましょう。

対応テンプレートの作成

スタッフ教育を強化しても対応スピードが改善しない場合には、対応の流れのなかでどこに時間がかかっているのかを精査する必要があります。
顧客からの問い合わせに対する対応内容をスタッフそれぞれが考え、それに時間がかかっているようなら、対応テンプレートを作成することで対応時間を短縮できます。

例えば顧客から電話で問い合わせがあった際に必ず聞かなければならない内容は、誰でも同じことが質問できるように、テンプレート化してフォームを作っておきましょう。
上から順番に質問し、入力も手入力ではなくプルダウンメニューから選べるようにしておけば、時間短縮につながります。メール対応の場合には、よくある質問に対しての返信テンプレートを作成しておくことで、スタッフが個別に回答を考える必要がなくなります。新人スタッフもベテランと同じ対応が可能になるため、回答品質を一定のクオリティに保てることもメリットです。新人教育にかける時間やコストの削減にも役立ちます。

想定外の要望が発生している→製品開発・マーケティングへの活用

これまであまり寄せられなかったような新たな内容の問い合わせが増えている場合は、現在公開しているFAQやマニュアルでは対応できなくなっていると考えられます。内容を再度見直し、よく聞かれる質問を追加しましょう。

また、新しい内容の問い合わせが増えているということは、顧客の新たなニーズが発生している可能性が考えられます。今後のマーケティングや製品開発に生かせないかという点も踏まえ、他部門とも情報を共有することが大切です。

問い合わせデータ分析で業務改善を実現!

問い合わせデータの分析は、業務効率化や顧客満足度の向上、製品開発への活用など、たくさんのメリットがある重要な取り組みです。集めたデータをただ集計するのではなく、目的意識をもってデータを分析しましょう。価値ある示唆を見つけられるはずです。本記事を参考に、問い合わせデータの分析を始めてみてはいかがでしょうか。

BeMARKE編集部より

貴社の得意領域やあなたのノウハウ・ナレッジをBeMARKEで発信してみませんか?

現在、BtoBマーケター・セールス担当者向けに、ノウハウやナレッジを披露していただける専門家の方を募集しています。
【募集要項】
■対象:BeMARKE読者に気づきや学び、課題解決に役立つ情報提供が可能な方。
■条件:月1回以上の執筆が可能であること。
■費用:記事掲載料請求はありません。無料での掲載が可能です。
■注意事項:自社サービスのプロモーションを主目的とした内容は掲載できかねます。
【申込み・お問い合わせフォーム】https://be-marke.jp/contact


この記事を書いた人

株式会社ラクス メールディーラー
株式会社ラクス メールディーラー

「メールディーラー」は、メールの対応状況を見える化し、返信漏れや二重返信を防止するメール共有管理サービスです。問い合わせ管理のノウハウやメール対応に関するお役立ち情報の提供により、顧客対応に関わる方々の支援を行っています。

著者の最新記事

もっと読む >

あわせて読みたい