基本ノウハウ
多くの企業がブランディングや集客などを目的に、オウンドメディアで自社の考えやメッセージを発信しています。一方で残念ながら運営に失敗し、閉鎖してしまうメディアも一定数存在します。それらのメディアはなぜ失敗してしまったのでしょうか。
そこで本記事ではメディア運営の失敗を避けるために、オウンドメディアのよくある10の失敗原因および失敗を避ける4つのポイントなどを解説します。
最初にオウンドメディアのよくある10の失敗原因を解説します。
「集客を目的とするコンテンツ」と「ブランディングを目的とするコンテンツ」では、内容・方向性が全く異なります。そのため、目的を明確にしない状態でオウンドメディアを立ち上げてしまうと、コンテンツにブレが生じ、失敗リスクが高まります。
加えて、目指すべき目的が曖昧な状態では、成果が上がらない期間に「何のために運用しているのか」「この作業に何の意味があるのか」と運用者・制作者は考え出し、チームのモチベーションおよび生産性が大きく低下する恐れもあります。
十分な社内コンセンサスが取れていないままオウンドメディア運営を始めてしまうと、「これだけ資金を投じているのにまだ成果は出ないのか」と批判が上がったり、コンテンツ制作のための人的リソースを確保しづらくなったりする恐れがあります。
メディア運営開始前に、メディアの目的や意義、途中経過などを全従業員に適宜周知して、社内コンセンサスを取るようにしましょう。
オウンドメディアで成果が出るまでには、一定の時間が必要です。時間を掛けてコンテンツの制作・効果検証・改善を繰り返すことで、ようやく成果に繋がるためです。
そのため、短期間で成果を出すつもりでいると、立ち上げ間もない時期にもかかわらず「なかなか結果が出ない」と感じ、モチベーションが低下してしまう恐れがあります。
メディア運営においては、短期間の結果に一喜一憂せず、長い目でサイトを育てていきましょう。
オウンドメディア運営業務は、コンテンツの企画・制作のほか、サイトの現状分析・課題抽出・改善業務など、多岐にわたります。運営のための人材が不足していると、これらの業務が滞り、失敗リスクが高くなります。
例えばコンテンツ制作に携わる編集者やライターの人員が十分でないと、十分な量のコンテンツを制作できない、または質の低いコンテンツを量産する事態にもなりかねません。
そのため、メディアを失敗させないためには、十分な運営体制を構築することが大切です。社内で人材を確保できないようであれば、外注も検討しましょう。
ペルソナとは「自社サービス・商品を利用するユーザー像」を指します。簡単に言うと、ペルソナ=ターゲットです。
ペルソナの定義が曖昧なままオウンドメディアの立ち上げおよび運用を進めてしまうと、ユーザーからは“どんな人に何を伝えたいのか、よく分からないメディア”だと思われてしまいます。それでは当然、良い結果は望めません。
どのサービス・商品でも、開発・運用する際にはペルソナの細かい設定が重要ですが、オウンドメディアも例外ではありません。メディア自体のペルソナはもちろん、記事ごとにもペルソナを設定することが大切です。
質はもちろんのこと、オウンドメディア運営においてはコンテンツの数も重要です。コンテンツの数が少なすぎると流入数も少なくなり、検索エンジンから高い評価を受けられないリスクがあるためです。
とくにメディア立ち上げ期にはコンテンツの質だけでなく数も意識して、サイトの規模を拡大する方が結果に繋がりやすい傾向があります。「10~30程度コンテンツを投稿したのに結果が出ない」からといって制作をストップするのではなく、まずは100記事程度のコンテンツ投稿を目指しましょう。
オウンドメディア運営において、質の高いコンテンツを作ることは、成果を出す上で極めて重要です。逆に言うと、ユーザーが価値を感じないコンテンツを制作していては、成果を出すのは難しいでしょう。
・ユーザーの知りたいことに答えていないコンテンツ
・不必要・不確定な情報ばかりを載せているコンテンツ
・内容が薄いコンテンツ
コンテンツ制作時には「ユーザーは何を求めているのか」を突き詰めて考えることが重要です。
SEOを意識したコンテンツ制作では通常、上位表示を狙う検索キーワード(検索エンジンに入力する語句)を選定した上で、執筆作業に取り掛かります。
しかしこの検索ワードの選択が適切でないと、読んで欲しいユーザー層にコンテンツは届かず、またコンテンツが届いたユーザーには「思っていた内容と違う」と思われ、すぐに離脱してしまう恐れがあります。
「検索数が少ない(ない)検索キーワード」や「自社の商品・サービスと接点の薄い検索キーワード」などは選択しないことが重要です。
ユーザーは何らかの情報を求めてコンテンツにアクセスしています。その点、コンテンツの内容が自社の宣伝ばかりでは、ユーザーに「ここには求める情報はない」と判断され、早々に離脱されてしまいます。
加えて「宣伝ばかりで嫌だな」と思われ、企業イメージの低下にも繋がりかねません。ユーザーに価値を提供することを軸として、「宣伝は商品・サービス紹介ページの言及に留める」「まとめ部分に宣伝を差し込む」などの工夫をするようにしましょう。
コンバージョンとは、資料請求や問い合わせ、商品購入など、オウンドメディアが目標とするアクションをユーザーが行う状態を指します。
PV数(=ページ閲覧数)増加を目的とする場合は別として、コンバージョンに繋がる導線を設計していない、または導線が分かりづらいと、コンバージョン数は低下します。例えば問い合わせページまでの階層を深くしすぎると、途中で問い合わせをあきらめるユーザーが増えてしまうでしょう。
このようにコンバージョンへの導線設計は、メディアの失敗リスクと深い関連があります。どのユーザーにとっても分かりやすいコンバージョンに向けた導線設計を行いましょう。
続いて、オウンドメディアで失敗を防ぐために押さえておきたい4つのポイントを解説します。
オウンドメディア運営にあたっては「メディアの目的を明確にすること」が極めて重要です。【失敗原因1】明確な目的を据えずに運用をスタートするでも触れた通り、目的を明確にしないとコンテンツにブレが生じるリスクが高まるほか、モチベーション・生産性の低下を招きやすいためです。メディアの目的には例えば「ブランディング」「採用(リクルーティング)」「集客」などが挙げられます。メディア運営開始前に、必ず自社の実情に応じた目的を据えましょう。
せっかくオウンドメディアを立ち上げても、多くのユーザーにコンテンツを見てもらわなければ良い結果は望めません。最低限、コンテンツを検索エンジン上で上位表示させるための「SEO対策」や、Twitter・Facebookなどでコンテンツ公開を通知する「SNS活用」を行い、より多くのユーザーにコンテンツを届ける施策を実施しましょう。そのほか、プレスリリースやメールマガジンを用いて、ユーザーとの接点強化・メディアの認知拡大を図るのも有効です。
【失敗原因4】運営のための人材不足で述べた通り、人材が足りていないとメディア運営業務が滞り、良いコンテンツを多く発信することが難しくなります。例え、短期的には少人数で業務を回せていたとしても、中長期の運用が前提のオウンドメディアには、一定の人員が必要です。
そのため、ある程度の費用を掛けてでも、十分なリソースのある運営体制を整えましょう。場合によっては外注も行いリソースに余裕を持たせることで、コンテンツの質・量の改善、サイトの課題分析などに人員と時間を掛けられるようになります。
質の高いコンテンツの継続的な発信は、オウンドメディア運営成功の大きなポイントです。
「質の高いコンテンツ」には自然とユーザーがアクセスし、ファンになってくれる人も増えます。また、【失敗原因6】コンテンツの数が少ないでは、「メディア立ち上げ期には量を意識する方が結果は出やすい」と述べましたが、それでも一定の質は必要であり、低品質のコンテンツを発信していては結果が出ません。逆に質の低いコンテンツばかりでは「読んでも意味がない」とユーザーが離れてしまうでしょう。
加えて、コンテンツの「継続的な更新」も重要です。更新頻度が少ないと「どうせ新コンテンツは更新していない」とユーザーに思われ、徐々にメディアへのアクセスが止まってしまうためです。
手間と時間は掛かりますが、「ユーザーが求める情報がある」「他メディアにはない情報を発信している」といった、質の高いコンテンツを継続的に発信するようにしましょう。
最後に、オウンドメディアの失敗を避けることで得られる3つの効果を解説します。
企業自身が保有するオウンドメディアは、比較的自由に情報発信できる点が特徴です。そんなオウンドメディアを通して、ユーザーに自社の考えやメッセージを伝えることで、ブランドイメージの構築・強化が図れます。
なお、オウンドメディアには多様な属性・フェーズのユーザーがアクセスします。そのため、潜在顧客や既存顧客、優良顧客など、顧客のフェーズにあわせたコンテンツを発信することで、さまざまな状態のユーザーと接点をもつことができます。ごとにブランディングを行うことも可能です。
ブランディング効果にも関連しますが、オウンドメディアで商品・サービスの特別な価値および魅力を伝えられれば(=ブランディングができていれば)、その価値・魅力を求めてユーザーは商品・サービスを購入することが予想できます。加えて、検索エンジンからメディアへの流入が増えれば、商品・サービスの知名度は向上し、ひいては売上アップに繋がります。
広告で集客する場合、出稿の度に相応のコストがかかります。さらに出稿を止めると、集客効果は低下するため、継続的に出稿しなければなりません。
その点、オウンドメディアを上手に活用することで、広告費をかけずに検索エンジンやSNSからの集客も可能になります。
なお、広告費の削減のほか、広告に依存しない集客体制を整えたい企業にとっても、オウンドメディア活用は有効です。
オウンドメディア運営の失敗を防ぐためには、まずは失敗原因を把握した上で、本記事でも紹介した「メディアの目的を明確にする」「質の高いコンテンツを継続的に更新する」など、具体的な施策を講じることが重要です。そして、失敗を避けることができれば、「売上アップ」や「広告費の削減」など具体的な成果が期待できます。
一方で、メディアを軌道に乗せるためには一定の時間が必要です。社内コンセンサスを十分に取り、リソースの余裕を持った運営体制を整えた上で、メディア運営をスタートさせましょう。