基本ノウハウ
あらゆる現場で活用されている「コンテンツ」は、BtoBビジネスにおいても、売上に影響する重要な要素です。しかし、実際に「コンテンツ」がどういう意味なのかと問われると、うまく説明できない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、コンテンツの意味、BtoBビジネスにおいてコンテンツの質が重要な理由、またコンテンツの種類や関連用語について解説します。
コンテンツは、直訳すると「内容」や「中身」を指します。
2004年に施行されたコンテンツ促進法においては、映画、音楽、演劇、文芸、写真、漫画、アニメーション、プログラムなど、「人間の創造的活動により生み出されるもののうち、教養又は娯楽の範囲に属するもの」と定義されています。ただし、これは法律上で保護・活用の対象を指定するための定義であり、実際に使用される現場では解釈に幅があります。
ビジネスの現場におけるコンテンツは、主に「顧客に提供されることを前提とした、メッセージ性や主張を持つ価値ある情報」といった意味合いで使われています。それも、情報の具体的な中身そのものを指す場合が多く、ガワにあたる媒体やツール(テレビ番組にとってのテレビ、Webサイトにとってのインターネットなど)はコンテンツと呼びません。
また、単に情報が手元にあるだけでは、コンテンツとは呼びません。例えば、「自社のとある製品が10万個売れた」という手つかずの事実データそのものは、コンテンツではありません。「10万個売れた」というデータをユーザーに知ってもらうために文章化して記事にする、動画にして配信するなど、データを加工して公開することで初めてその情報をコンテンツと呼べるようになります。
BtoBビジネスにおいて、良質なコンテンツを公開することは重要な意味を持っています。理由は主に2つあります。
1つは、企業が製品・サービスの質だけで売上を伸ばせなくなったためです。「良い製品を作れば売れた」昔と異なり、現在では情報収集段階で目にとまらなかった製品は検討対象にすら上がりづらくなっています。そのため、顧客のニーズが顕在化するより前に製品・サービスの認知を得る必要が生じたのです。製品・サービスの認知を得るためには、良質なコンテンツによって集客を図る必要があります。
また、似たような機能の製品・サービスが氾濫したことで、他社との差別化を図りづらくなったことも売上を伸ばしづらくなった要因です。他社との差別化のために、企業は顧客への提供価値を高めるため、製品に付随してコンテンツの魅力を強化しなければならなくなったのです。
もう1つの理由は、BtoB製品がBtoC製品と比較して複雑な内容になりやすいことから、顧客へ分かりやすい製品情報の提供が求められているためです。BtoBの製品・サービスは、企業向けゆえに設定が複雑だったり、手続きも煩雑であったりするケースが少なくありません。コンテンツを利用して、取引前から製品の特徴や用途を顧客に積極的に発信することで、顧客が安心して購買活動を行えるような環境づくりが大切なのです。
コンテンツは応用がきき、いろいろな用語にプラスする「◯◯コンテンツ」の形でコンテンツの種類を表します。本章では、以下の代表的なコンテンツについて解説します。
Webコンテンツは、Web上で扱われるコンテンツ全般を指します。Webで閲覧できるすべての情報はWebコンテンツといえるため、非常に広範囲です。
例としては、以下が挙げられます。
Web業界で単に「コンテンツ」と呼ぶときは、Webコンテンツを指す場合が多くなっています。また、Web業界の顧客は、とりわけ企業のWeb上の発信内容を重視すると考えられるため、Webコンテンツの質が受注に影響する可能性が高いといえるでしょう。いかに顧客を惹きつけられるコンテンツを制作できるかが重要です。
デジタルコンテンツは、複製が可能なデジタルデータで構成されている、文章・画像・音楽・動画などのコンテンツを指します。PC、スマートフォン、タブレットなどのデジタル端末を利用して閲覧が可能です。
例としては、以下が挙げられます。
デジタルコンテンツは娯楽性が高い消費者向けのコンテンツという文脈で利用されることが多く、従来のアナログコンテンツ(オフラインで購入可能だった書籍、CD・DVD、家庭用ゲームなど)がデジタル化して提供されるようになったものといえます。
モバイルコンテンツは、スマートフォンやタブレットなど、モバイル端末での利用を想定したコンテンツを指します。
例としては、以下が挙げられます。
総務省が2021年に公開した「情報通信白書」によると、スマートフォンによるインターネット利用率は68.3%であり、PCを上回っています。また、GoogleはWebサイトの評価についてモバイル版に適応したサイトの検索順位を引き上げる「モバイルフレンドリーアップデート」を表明しており、モバイル対応していないサイトは検索順位を下げられてしまう状況です。
BtoBではまだPCでの閲覧が多いとされていますが、環境の変化にしたがって、今後ますますモバイルコンテンツの重要性は増していくでしょう。
動画コンテンツは、Web上で公開されている、ユーザーへ情報やメッセージを発信するための動画を指します。映像で情報を伝えられるため、多くの情報を短い時間で伝えられ、視聴者が見る時間を選べる点がメリットです。
例としては、以下が挙げられます。
YouTubeなど無料で動画投稿が可能なプラットフォームが定着したことや、動画の視聴&撮影&編集が手軽にできるスマートフォンなどの流行によって、動画コンテンツをビジネスに取り入れるハードルは大きく下がりました。動画コンテンツのビジネス市場は年々拡大傾向にあり、企業が自社のPRに動画コンテンツを制作するのもごく当たり前になっています。
有料コンテンツは、顧客が閲覧または利用するために金銭の支払いが発生するコンテンツを指します。
例としては、以下が挙げられます。
支払い方法としては、月額課金でサイト内のコンテンツを自由に利用できるサブスクリプション型と、閲覧・利用したいコンテンツのみ料金を支払う買い切り型の2通りです。付加価値が高いと考えられるコンテンツを一部有料化し、無料コンテンツから誘導する手法も多く見られます。
キラーコンテンツは、一般的には、特定の製品・サービスにおいて集客力のある人気のコンテンツを指します。Webマーケティングの分野では、コンバージョンや売上に寄与する重要なWebコンテンツという意味合いです。
Webマーケティング分野における例としては、以下が挙げられます。
キラーコンテンツを制作する場合は、商談履歴や受注履歴などから顧客のニーズに応えられるコンテンツの仮説を立て、実践と検証を繰り返しながら内容をブラッシュアップしていく必要があります。
マーケティング分野において、コンテンツという表現はたびたび利用されています。コンテンツに関する下記3つのマーケティング用語を解説します。
コンテンツマーケティングは、顧客にとって有益で質の高い情報を自社のWebコンテンツで継続的に発信することで集客・定着をねらい、ファンを増やして受注につなげるマーケティング手法を指します。
顧客に自社製品・サービスへの関心を深めてもらい、顧客側から問い合わせなどの接触を期待するインバウンド型のマーケティングと相性が良く、BtoB企業にとっては有力な手法です。ただし、継続的なコンテンツの制作には多くのコストがかかることもあり、制作体制の整備や費用の工面、アイデア出しなど、中長期的な目線で計画を行う必要があります。
コンテンツマーケティングについては、以下の記事で詳しく解説しています。
コンテンツSEOは、質の高い情報を発信することで検索エンジンの評価を高め、集客をねらう手法を指します。コンテンツマーケティングの施策の一部です。
コンテンツSEOは、多くの場合、自社が保有するメディア(オウンドメディア)での記事公開という形で行われます。顧客がどのような課題感を持って検索を行うのかを分析し、顧客が検索するだろうキーワードに沿って課題解決のための記事を制作し、集客をねらうのです。記事が顧客の課題意識に沿った良質なコンテンツだとGoogleやYahooなどの検索エンジンから評価されれば、検索順位が上がり、メディアの集客力が増すことになります。
コンテンツ化とは、手を加えられていなかった情報や、公開されていなかった知識・技術・ノウハウなどを、魅力的に加工して価値を持たせ、顧客が見られる状態にすることです。
例えば、営業部門内でのみ共有されていた営業の成功事例について、体系的に整理し、Webサイトで1カテゴリとして写真なども加えて公開するといったことが、「コンテンツ化」にあたります。
顧客にとって需要がある独自の知識やノウハウは、ただ蓄積されているだけでは価値を持ちません。有益な情報を顧客に見える形に整えて公開することで、新しいビジネスチャンスにつなげられます。また、知識をコンテンツ化することで、顧客に対してだけでなく、社員の研修や学びの共有にも利用できます。積極的にコンテンツ化を行っていきましょう。
本記事では、コンテンツという言葉の意味についてまとめました。
誰しもが、Webの発展によって、コンテンツの発信者にも受け取り手にもなる時代です。Web上に公開されたコンテンツは、企業にとって大きな資産といえます。自社の特性を生かした良質なコンテンツの制作を心がけ、マーケティングや営業など、あらゆる場面にコンテンツを活用していきましょう。