インタビュー

顧客ニーズをいち早くつかみ事業を転換。株式会社パルサーのデジタルマーケ推進の軌跡

顧客ニーズをいち早くつかみ事業を転換。株式会社パルサーのデジタルマーケ推進の軌跡

業績を伸ばし続けるBtoB企業のマーケティング戦略における“転換点”について企業担当者に聞く本企画。今回お話しを伺うのは、無人化・セルフ化機器販売事業、リース・レンタル事業、オウンドメディア事業、デザイン事業を行う株式会社パルサーです。コロナ禍をきっかけに事業方針を転換したという同社のマーケティング戦略とはどのようなものだったのか。

その背景と戦略策定に至るまでの道のりや組織づくりに対する考え方について、株式会社パルサー クリエイティブ事業部 部長 沼田勇生さんにお話しを伺いました。

目次

10年以上前からデジタルマーケ施策としてWebサイトを複数運営

ーーまず御社の事業内容を教えてください。

1989年創業の宮城県仙台市に本社を置く会社です。「無人化・セルフ化の総合商社」を目指し、業界最大級である50種類以上の機種の中から「こんなことができたらいいな!」という店舗さまのさまざまな問い合わせに対応しています。取り扱う商材は、自動販売機、券売機、セルフレジ、無人店舗など。飲食店を中心に、ホテル・病院・道の駅・神社・保育園など約3,000店舗に導入実績があります。

株式会社パルサー クリエイティブ事業部 部長 沼田勇生氏
株式会社パルサー クリエイティブ事業部 部長 沼田勇生氏

株式会社パルサーの前身となる有限会社パルコでは券売機の卸売事業を営んでいました。事業を行うなかで、既存のお客さまからのご要望にお応えし券売機の提供や修理、保守対応も行うようになりました。

その時に制作したWebサイトが弊社のメディア事業の原点です。SEO対策として「中古 券売機 仙台」というキーワードでアクセスを集めていました。しかしサイト運用を担っていた会社が途中で事業から撤退してしまったことから、社長自ら情報発信を行っていました。それが、2011年に生まれた「券売機JP」の前身となるWebサイトです。当時はWebサイトにお問い合わせがあると社長が一人で営業を担当していました。

その後、2014年以降には「自動販売機JP」「ランチde就活」「Web Palco」等を公開し、2018年には「セルフレジJP」を立ち上げました。最新のプロジェクトとして、2023年に「無人店舗JP」をローンチしました。

弊社は商社としてメーカーから商材を仕入れ、それを必要とするお客さまへ提供します。その最初の接点となるのが自社運営のWebサイトです。ビジネス上の重要なポイントとしてWebサイト運営を位置づけてきました。

コロナ禍をきっかけに事業方針を転換。デジタルマーケ強化へ

ーーこれまでの変遷のなかで最もインパクトの大きい“転換点”となる時期はいつでしたか。

2020年、新型コロナウィルスが世界中に広まり始めた時期です。2020年4月の初めての緊急事態宣言により、飲食店が大幅に営業を制限され、券売機の需要が大きく減少しました。

その一方で「非接触・非対面」の販売方法が世間の注目を集めはじめ、自動販売機への関心が高まりました

2020年4月に緊急事態宣言が出てから数ヶ月後にはアクセスは前年比で40~50%アップ。それにあわせて自動販売機JPへの問い合わせも増加し、前年比で約2倍の問い合わせ数を獲得しました。

自動販売機JP Webサイト
自動販売機JP Webサイト

この時期を境に弊社のメイン事業はこれまでの券売機事業から自動販売機事業へとシフトしていきましたWebサイトからのリード獲得にも注力すべくデジタルマーケティングも強化する方針を採用しました。

問い合わせが増えるにつれリードの質が課題に

自動販売機JPのアクセスや問い合わせが増える一方で、資料請求のみやとりあえず価格だけ聞きたい、といった購入意思の低い問い合わせも増え、営業チームが対応に追われる状況となりました。そこで、我々はリードの質も重視することにしました。

Webサイト改善により確度の高いリードを絞り込む

自動販売機JPのお問合せフォームでは「お問い合わせ種別」の3項目を配置し、営業がお客さま対応する際の優先度を判断できる項目を作成しました。お問い合わせの段階で、質や確度を判断できないかという観点で試した施策です。

Webサイト改善施策の図

また、どのサイトにも必ずあるヘッダーのお問い合わせボタンをなくす、問い合わせフォーム自体をなくす、といった大胆な施策も行いました。さらに、問い合わせフォーム内に赤文字で目立つように注意事項を掲載することで、ユーザーの理解促進のサポートをしていました。

より購入に至る確度が高いユーザーからのお問い合わせに絞るためにも、導線やインターフェースの設計に工夫を凝らすことで、リードの質を向上することができました。もちろん検索順位が下がるリスクのある施策でしたので、期間を設けてABテストしたり段階的に変更・改善したりと、細心の注意を払いながら進めていきました。この経験は現在のWebサイト運営でも生きていると感じます。

営業の対応負担を減らすためにも、よく質問される内容をQ&Aにまとめ、製品カタログをWebサイトからダウンロードできるようにしました。Webサイト上で可能な限り情報を開示し、お客さまが営業に直接問い合わせることなくWebサイト内で解決できる状態を目指しました

競争が激化するなか法人向けの情報拡充で差別化を

最近では自販機を単に導入するだけではなく、法人が新たなビジネス展開や販路の拡大として自販機を導入するケースが増えてきています

自販機の導入を検討するお客さまは、より具体的な製品情報や付加価値を求めています。そのためこれまで以上に、自販機の提供だけではなく、自販機を通じていかにお客さまのビジネス目標の達成のお役に立てるかということが求められています。

また需要がピークだった2021年〜2022年までとは異なり、現在ではさらに競争も激化しています。自販機を導入する際に必要な情報をWebサイト上で提供することが重要です。

「顧客解像度」を上げるため営業とマーケの連携を強化

営業とマーケの連携不足が課題

Webサイトの重要性が高まるなか、これまで以上に「顧客解像度」を上げる必要性を感じていました。しかし営業とマーケティングチームとのコミュニケーションや情報共有が不足していたことで、お客さまの声や要望を聞き取りWebサイトに反映させることができずにいました。

当時の状況を振り返ると、目の前の目標やお客さま対応に追われて「お客さまの視点」に立つことの優先度が下がっていたように思います。また、営業とマーケティングチームが協力して課題解決することの重要性を認識できていなかったことも要因のひとつです。

そのため営業との連携を強化し、お客さまのニーズをより具体的に把握する体制を整えることが急務となりました。

株式会社パルサー クリエイティブ事業部 部長 沼田勇生氏

またWebサイトで情報発信しお客さまへのアプローチを行う一方で、その成果を営業活動において最大限に生かすことができていないことも課題でした。

営業とマーケティングチームの動きを一本化し、Webサイトで得られた情報をお客さまとの関係構築や営業活動に生かす必要がありました。

チーム間連携強化により、お客さまに寄り添ったアプローチを実現

ーー組織連携の課題解決のためにどのような取り組みをされましたか。

営業とマーケティングチームで定期的にミーティングを行うことにより、お客さま層やニーズを把握することができました。

また、営業からのフィードバックやお客さまとの対話を通じて要望を直接受け取ることができるようになり、それらをマーケティング施策やWebサイト改善に生かすことでお客さまに寄り添ったアプローチを実現しました。

PDCAサイクルを回す体制を構築。施策精度を上げ成果につなげる

組織の課題としては、マーケティング施策を実施しても振り返りを行うリソースが足りず、PDCAサイクルを回すことができていなかったことも挙げられます。

その課題を解決するため、現在ではクリエイティブ事業部内で週1のミーティングを実施し、チーム内での情報共有や意見交換を促進することで、効率的かつ効果の高いマーケティングを展開しています。

またクリエイティブ事業部内で改善を行った際には、次の週に経過報告を行うことで、大まかな施策の方向性の確認や次のアクションにつなげることができました。

データ分析力強化も

さらに、GA4(グーグルアナリティクス4)とGTM(グーグルタグマネージャー)を活用したデータ分析により、マーケティング活動を推進しています。これにより、ウェブサイトのトラフィックやユーザーの行動を把握することができ、より効果的なマーケティング戦略を立案・強化することができます。データ主導のアプローチを採用することで、的確な意思決定を行い成果を最大化しています。

多様化する顧客ニーズをスピーディにとらえ付加価値を提供

ーー“転換点”を経た今後の展望について教えてください。

新型コロナウィルスの影響を受けて、私たちのビジネスは大きく変化しました。これまでの券売機事業から自動販売機事業へのシフトは、外部環境の変化とお客さまのニーズの変化を反映したものであり、この経験は私たちにとって大きな学びとなりました。

株式会社パルサー クリエイティブ事業部 部長 沼田勇生氏

この転換点を経て、私たちは今後もお客さまのニーズを敏感に捉え、それに対応する商品やサービスを提供することに注力していきます。特に、自動販売機市場ではニーズの多様化と競争の激化が進んでいます。そのため、私たちはお客さまが必要とする情報や付加価値を提供することに重点を置き、競争力のあるマーケティング施策を展開していきます

さらに、デジタルマーケティングの活用についても、今後の展望は大きいです。データ分析を活用したマーケティング戦略は、お客さまのニーズをより深く理解し、それに対応する商品やサービスを提供するための重要な手段です。私たちはこれからもデータ分析を活用したマーケティング戦略を強化していき、お客さまにとって最適な商品やサービスを提供していきます。

ーーありがとうございました!

会社情報

株式会社パルサー
事業内容:無人化・セルフ化機器販売事業、リース・レンタル事業、オウンドメディア事業、デザイン事業
所在地:【仙台本社】宮城県仙台市泉区加茂1丁目48番4号 加茂ビル2階
【東京支店】東京都墨田区千歳3丁目15番17号 糸井ビル1階北
設立:平成元年2月
代表取締役:阿部 章
https://plsr.jp/
https://jidohanbaiki.jp/
https://kenbaiki.jp/
https://self-regi.jp/
https://mujintenpo.jp/


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この記事を書いた人

鈴木 舞
鈴木 舞

BeMARKE編集長。これまで15年以上Webメディア運営・コンテンツ制作に携わる。前職では美容系Webメディア編集長としてサイト規模を2年で28倍の2,800万PVに成長させる。2022年より現職。BeMARKEのコンテンツ編集・制作方針や計画の策定、取材・執筆などを担当。

X(旧Twitter):@maisuzuki_bmk

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