インタビュー

技術職から未経験でマーケティング職に転身。マーケティングの面白さにハマる(ホットリンク・室谷 良平さん)

技術職から未経験でマーケティング職に転身。マーケティングの面白さにハマる(ホットリンク・室谷 良平さん)

BtoB企業のマーケティング担当者に、これまでのキャリアや仕事のやりがいについてインタビューする連載企画「マーケのキャリア」。今回は、株式会社ホットリンクでマーケティング本部長を務める、室谷良平さんにお話を伺いました。

高専(高等専門学校の略。5年間一貫の技術者教育を行う高等教育機関)を卒業し、大手医療機器メーカーの技術職としてシステムの品質管理業務に従事していた室谷良平さんは、社会人4年目にスタートアップへの転職を決意。未経験でマーケティングの世界に飛び込みました。その後、人材系ベンチャーで獲得型マーケティングの経験を積み、2019年に株式会社ホットリンクへマネージャーとして入社。現在はマーケティング本部長としてBtoBマーケティング・広報・インサイドセールスを統括しています。未経験からマーケティング職への転身を果たし、マーケティングチームを率いる存在となった室谷さんのキャリアをひも解きます。

  • 株式会社ホットリンク マーケティング本部長 室谷良平(むろや・りょうへい)

    株式会社ホットリンク マーケティング本部長

    室谷良平(むろや・りょうへい)

    1988年生まれ。北海道長万部町出身。函館高専情報工学科卒。オリンパスメディカルシステムズ株式会社の技術職からキャリアスタート。その後、SaaSのスタートアップ企業や、人材系ベンチャー企業のマーケティング職を経て、2019年に株式会社ホットリンクに入社。企業のSNSマーケティングを支援すべく、SNS活用のメソッド開発やコンサルティングにも従事。Google Dance Tokyo、Google Webmaster Comference Tokyo、タワーレコード運営のSNS講座など、講演実績も多数。特にデジタルマーケティングを駆使した事業のグロースのほか、仕組みづくりや組織のグロースも得意とする。著書に 『1億人のSNSマーケティング』、『現場のプロが教える! BtoBマーケティングの基礎知識』がある。Twitter:@rmuroya

目次

室谷さんのキャリアアップのポイント

  • 技術職から未経験でマーケティング職に転身
  • メンバーの凸凹を生かしながらチームで成果を出すことを意識
  • 書籍出版などにより、自分のノウハウを幅広く発信

SNSマーケティングの会社としては認知度がほぼゼロ。伸び代しかない環境での新たな挑戦

株式会社ホットリンク マーケティング本部長 室谷良平(むろや・りょうへい)さん

ーー株式会社ホットリンクに入社したきっかけを教えてください。

未開拓の領域に挑戦したいと思い始めていたときに、経営陣に声をかけてもらったのがきっかけですね。

前職では、人材紹介サービスのいわゆる「獲得型マーケティング」に従事していました。獲得型マーケティングは、WebサイトのCVR改善やSEO、リスティング広告の運用などを通して、主にニーズが顕在化している顧客を獲得する手法です。あらゆる施策を実行に移し、充実感はあったのですが、あるとき「獲得型マーケティングは一通りやり切ったな」と思いました。

一方ホットリンクはちょうどそのとき、新たにSNSマーケティング支援を強化しようとしているタイミングだったのです。元々はSNSのデータ分析を祖業とする会社だったのですが、顧客のSNSマーケティング支援ニーズが高まってきていました。

SNSはブランディングの要素が強い「認知型マーケティング」の領域です。獲得型マーケティングが顕在顧客向けであるのに対して、認知型マーケティングの対象は見込み顧客や潜在顧客。SNS活用に注目が集まり出していた時期でもあったため、新たなマーケティング領域も熟達したいと思い、思い切って転職を決意しました。

ーー実際に入社してみて、いかがでしたか。

「仕事の振り幅が大きくて面白いな」というのが第一の感想です。それまで人材系しかやってこなかったのですが、ホットリンクではクライアントワークで食品や化粧品、アパレルなど、BtoCのさまざまなジャンルに関わる機会があります。これまでは事業会社の経験しかなかったのですが、BtoBマーケティングのほか、SNSマーケティング支援のクライアントワークに取り組めるのも新鮮でした。

転職の際にはBtoCとBtoBの垣根は特に意識していませんでしたね。焦点はあくまで、マーケティングについて広くマスターしていきたいという思いでした。

ーー入社したのは、ちょうどマーケティング本部が立ち上がった時期ですよね。

そうですね。マネージャーとして入社し、インサイドセールスを含めて5,6人のメンバーでマーケティング本部が設立されました。当時の最重要課題は、とにかく「ホットリンク」という名前を世に知らしめること。注力事業をソーシャルリスニングからSNSマーケティング支援へと舵を切ったばかりなので、SNSマーケティングの企業としては認知度がほぼゼロだったわけです。

認知を高めていかないと案件もないわけですから、あらゆることを地道にやりまくりました。CVR向上施策としてのWebサイトのLPOはもちろん、記事の執筆やホワイトペーパーの作成も自分で担当。とにかく、顧客から信頼してもらえるようなコンテンツをたくさん作らなければという一心でしたね。

ーー立ち上げ期に苦労は感じませんでしたか。

いや、純粋に楽しくやっていましたよ。もう伸び代しかないので(笑)。

自分もCEOやCMOに声をかけてもらうまでは、正直なところ、ホットリンクという会社を知りませんでした。自社サイトも魅力的とは言い難く、リスティング広告運用も磨き上げられていない。あらゆる課題が山積していたわけです。

でも逆に言うと、基本を押さえて施策を実行していけば、必ず伸びるという確信がありました。だからこそ、上司の仕事を奪うくらいの意識で、戦略を作ってみたり、アプローチ方法を提案したり、かなり積極的に動いていましたね。その結果もあってか、入社後半年で部長職、さらにその後本部長職を拝命しました。現在は、BtoBマーケティング・広報・インサイドセールスの部門を統括しています。

技術職から未経験でマーケティング職へ

株式会社ホットリンク マーケティング本部長 室谷良平(むろや・りょうへい)さんプロフィール

ーー現在、マーケティングの第一線で活躍している室谷さんですが、キャリアのスタートは技術職だったと伺いました。

そうですね。元々小学生の頃から理数系の教科が得意で、パソコンをいじるのが好きだったのです。大学を目指すには経済的に余裕がなかったこともあり、中学校を卒業した後、就職に有利な高専の情報工学科に進みました。特に意識が高い学生でもなく、将来の夢などもなかったので、とりあえず学校に来た求人の中で一番知名度のある企業を選んで就職し、技術職として医療機関向けの内視鏡業務支援システムの品質管理などを担当していたんですが、3年もするとパターンが読めてきて業務に飽きてしまって。もっと自分が得意な企画や発想力を生かせる仕事、社会にインパクトを与えられる仕事、人の心を動かせる仕事がしたいと思い、いろいろ探していたときに知ったものの1つがマーケティングでした。

「マーケターになりたい」という大層な思いはありませんでした。むしろ入り口は、「マーケティングって面白そうだな」くらいの温度感だったと思います。元々「何かになりたい」「何かでありたい」という「to be」の欲はあまりなく、「何かをしてみたい」という好奇心に突き動かされて進むタイプなのです。面白そうだからマーケティングをやってみようという、それだけの理由で転職を決意しました。

ーーマーケティング未経験での転職活動はいかがでしたか。

キツかったですね。マーケティング関連のあらゆる求人を手当たり次第探していたのですが、未経験を受け入れてくれる企業があまりなく、学歴フィルターを痛感したり、本当に悔しい思いをたくさんしました。

それでも、スマートフォンに特化したネットリサーチサービスを展開するスタートアップになんとか出会い、マーケティングに携わるようになりました。ただ、社長と自分を含めて社員が2名の会社だったので、業務範囲はマーケティングに限らず、サービス運営や営業、マーケティング、広報などフロント活動全般でした。リスティング広告、ASO、SEO、ヤフトピ狙いの調査リリース、展示会など、手当たり次第に施策を行ったのを覚えています。深く専門的にマーケティングに取り組み始めたのは、次の人材系ベンチャーに入ってからです。この会社でのマーケティング経験が、キャリアの大きな土台となりました。

ーーキャリアを積む中で、失敗したことはありますか。

たくさん失敗しましたよ。特にGoogleのSEO関連では、誰にも負けないくらい失敗してきました(笑)。印象に残っているのは、人材会社で働いていたときのhttps化(常時SSL化)における失敗です。自社サイトのリンクをhttpからhttpsへ切り替える、「リダイレクト」という動作処理をした際、設定を間違えてGoogleの評価が一気に下降し、サイトの検索順位がとんでもないことになってしまいました。名誉のためにも、その後求人ビッグワードの上位表示を回復させるなど、成功施策もたくさんあることを付け加えておきます(笑)。

でも、どんなに失敗しても落ち込むことはありません。もちろん悲しくなるときはありますが、あくまで失敗は試行錯誤の一過程です。良い学習機会だと思って、次に生かせば良いだけですから。

マーケティングとは、人を理解すること

株式会社ホットリンク マーケティング本部長 室谷良平(むろや・りょうへい)さん

ーーマーケティングの仕事のやりがいを教えてください。

やりがいとは少し違うかもしれませんが、面白いと思うのは仮説が当たった瞬間ですね。新たな施策がピタッとはまって、見込み通りの効果が出たときはうれしいです。もちろん仮説なので、当たらないこともあるわけですが、また次の仮説に生かせますし。

マーケティングの施策には、いろいろなパラメーターが関わってきます。だからこそ、「こういった仕組みになっているのか」という発見があると本当に楽しい。本を読んだり、人に聞いたり、自分で実践したりしながら、日々学んでいます。

マーケティングは結局のところ、人を理解することがすべてなのです。マーケティングの対象は人なので、人のことを知れば知るほどマーケティングを極めていけるというか。例えば、人の脳はサボりがちだという事実も、マーケティングに生かせますよね。脳はとにかくカロリーを消費しやすいので、生存のためにできるだけセーブする癖がある。それを知っていると、どんなにマーケティングコンテンツを作ったところで、顧客に自分に関係があることだと思ってもらえない限りはスルーされるだろうと予測できるわけです。ならば顧客のライフスタイルを想像した上で、まずは関心を持ってもらえるような見せ方にしよう。それがつまり、マーケティングにおける「自分ごと化」のノウハウです。

人の特性が分かると、最適なマーケティングコミュニケーションが見えてくる。だから、一見マーケティングとは関係ない、心理学や脳科学の本も好んで読んでいます。

マーケティングがうまくいくかは、経営トップ次第

ーー現在は本部長としてチームを率いる立場になっていますが、何か変化はありましたか。

特に変化はなかったですね。元々「to be」の意識があまりない上に、本部長になる前から上流工程の視点を持って仕事をするようにしていました。ただ、チームをいかにうまく機能させるかということは、常に考えてきました。チーム全体の成果こそがマネジメントの成果ですから。

それぞれのメンバーには個性、つまり得意不得意の凸凹があります。だからこそ、各メンバーの凸を存分に生かし、チーム全体で各メンバーの凹をカバーできるようにしたい。各メンバーが凸を発揮して自発的に新しい挑戦をし、成果を出せたときは、達成感を味わえます。

ーーマーケティングメンバーのキャリアを教えてください。

現時点では、中途で入ってきたメンバーばかりなのですが、マネジメントラインに進む人もいれば、スペシャリストラインに進む人もいます。個人的には、必ずしもマネジメントラインで昇進するのが正解だとは思っていないですね。職人として凸を発揮できるのであれば、スペシャリストのキャリアパスもあるべきだと考えています。

細かいキャリアパスの設計やキャリアアップに向けた環境は、まだまだ整備が必要なところもありますが、個人の適性に合ったキャリアを歩んでもらえるようにしていきたいですね。

マーケティング施策実行までの流れとポイント

ーーマーケティング部門は、経営層や他部署の理解が得られにくいという声も聞きますが、御社ではいかがですか。

むしろ当社は逆です。経営者自身がSNSマーケティングの重鎮なので、マーケティングの仕事への理解がありますし、社内の他部署もマーケティングに協力的で、自ら必要な情報を提供してくれます。

マーケティングは、トップの理解がないと動きません。そもそもマーケティングにはお金がかかりますから、予算をもらえないことには何もできない。たとえ予算をもらったとしても、他部署から情報がもらえなければ施策も打てないのです。マーケティング側から提案した施策がスピーディーに実行できる今の環境は、本当に恵まれていると思いますね。

「SNSマーケティングといえばホットリンク」を目指して

ーー今後の目標を教えてください。

マーケティング本部の目標は、「SNSマーケティングといえば」の第一想起を取りに行くことです。SNSマーケティングで困ったら、まずはホットリンクに相談するというような存在になることを目指しています。

SNSマーケティングはとても変化が早い領域です。技術革新がとてつもない早さで進み、顧客のニーズも日々移り変わります。競合企業の参入も多く、競争環境も一定ではありません。だからこそ、「当社こそがSNSマーケティングのリーディングカンパニーだ」という自負を持ちつつも、常に業界の動向に目を光らせ、クライアントへの価値提供を図っていきたいと考えています。

また、SNSマーケティングのノウハウを多くの方に知ってもらうため、書籍出版などの発信活動もさらに積極的に行っていきたいですね。自分は元々、自分のノウハウやメソッドを社外に発信することはあまり意識していなかったのですが、前職の頃のセミナー登壇などで思いのほか反響をいただいて。自分の知見を必要としてくれる人がもっといるかもしれないと思い、積極的に発信活動を始めました。

主にセミナーやSNSで情報発信をしていたのですが、それだけだとどうしても接点を持てない層がいます。そこで本が有効です。自分は運よく知り合いから共著として本を出しませんかと声をかけてもらい、これまでに2冊の書籍を出版できました。現在ホットリンクで準備している新刊のメインメッセージは、「バズらせることは本質ではない」。現場でマーケティングに携わる方はもちろん、SNSという接点をあまり重要視していなかった経営層の方にも届けたいと考えています。

ーー最後に一言、メッセージをお願いします。

ここまでマーケティングについてたくさん語ってきましたが、実は自分の場合、「マーケター」というアイデンティティは一切ありません。そもそもマーケティングはプロモーションだけではなく、とても幅広いですよね。平たく言えば総合格闘技、商売に必要なことは全部やれば良いと思っているので、「マーケター」という枠で自分をとらえたことがないのです。

今マーケティングに関わっている人も、これから携わりたいと考えている人も、マーケティングに対してはそれぞれのイメージを持っていると思います。でも、一度枠にとらわれずにいろんなことに挑戦してみると、また新たな世界が広がっているかもしれません。

ーーありがとうございました!

室谷さんのある日のスケジュール

7:30 起床。朝はコーヒーのみ。準備して子どもたちを保育園へ送る
9:00 始業(リモートワーク)、メールチェック、Slack通知確認
10:00 ビジネスサイドでのmtg
11:00 思考業務(コーヒーを飲んだりチョコを食べながら)
13:00 マーケ部門のメンバーと1on1
14:00 経営陣のmtg
15:00 セミナー資料作成や施策レビュー(コーヒー飲んだりチョコを食べながら)
18:00 退勤
18:30 晩御飯
19:00 子とお風呂や遊ぶ
21:00 子を寝かしつけ
22:00 寝落ちしなければ読書や業務の続き、または晩酌
0:00 就寝

キャリアを培ったと思えるおすすめ書籍

  • 矢沢永吉「成りあがり」
  • スティーブン・R・コヴィー「7つの習慣」
  • 森岡 毅「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門

株式会社ホットリンク
事業内容:SNSマーケティング支援事業
本社所在地:東京都千代田区富士見一丁目3番11号 富士見デュープレックスビズ 5階
設立年:2000年6月26日
代表取締役グループCEO:内山 幸樹
従業員数:約106人
https://www.hottolink.co.jp/

【取材・執筆:山田奈緒美、編集:BeMARKE編集部】

取材のご依頼について

BeMARKEによる取材をご希望の方は取材依頼フォームよりご連絡ください


この記事に関連するお役立ち資料

あわせて読みたい

この記事を書いた人

BeMARKE編集部
BeMARKE編集部

BeMARKE(ビーマーケ)は、BtoBマーケティングの課題解決メディアです。 BtoBマーケティングのあらゆる局面に新しい気づきを提供し、リアルで使える「ノウハウ」を発信します。

SNS:TwitterYouTube

BeMARKEナビゲーターが
無料で相談にのります。

  • 自社に合う
    サービスを
    知りたい
  • 施策の
    進め方が
    わからない
  • Webで
    引き合いを
    増やしたい
  • 営業活動の
    DXを
    進めたい
BeMARKEナビゲーター