基本ノウハウ
企画書は、企画内容を関係者へ伝える際に必要な書類です。しかし、「企画書の書き方が分からない」「企画書が通らないどころか、最後まで読んでもらえない」と悩んでいる方も多いでしょう。
本記事では、分かりやすい企画書の書き方や記載項目はもちろん、テンプレートサイトや参考になる本もあわせて解説します。企画書の基本的な書き方を知りたい方や、一発OKをもらえるような企画書に仕上げたい方はぜひ参考にしてみてください。
まずは、企画書の概要や目的を解説します。企画書と混同しやすい提案書との違いも、あわせて見ていきましょう。
企画書の目的は、社内の関係者から納得や賛同を得ることです。つまり、社内向けのコミュニケーションツールとして企画書は作成されます。企画書が作成されるきっかけは、主に次の3つです。
また、社内の課題についても企画書をあらかじめ作成することで、より堅実的な議論が可能となります。具体的な記載事項は、次項の「2.【5STEP】分かりやすい企画書の書き方」をご参照ください。
提案書は、企画書と混同しやすいビジネス文書です。この2つの違いはターゲットや目的、記載する内容にあります。
企画書 | 提案書 | |
---|---|---|
主なターゲット | 社内 | 社外(顧客) |
目的 | 企画内容への賛同を得る | 顧客の課題を整理し、解決策を示す |
内容 | 具体的なアクションプラン | アイデアの方向性 |
多くの場合、提案書をもとに顧客と面談したあと、浮かび上がった課題と解決策を社内で協議します。協議内容を整理し、書面化したものが企画書です。
企画書は提案書よりもさらに具体性が増した内容であり、実行に向けた賛同を得る書類と覚えておくと良いでしょう。
企画書は、企画内容について相手から賛同を得るために作成します。賛同を得る上で必要なのは、分かりやすく説得力のある論理展開です。
ここでは、分かりやすい企画書の書き方を5つのステップに分けて解説します。
【1】現状分析
【2】目的とゴール
【3】具体的な内容
【4】スケジュール
【5】収支
現状分析とは、社内や社外が今どうなっているか、何が課題かを知ることです。分析対象は社内のリソースや問題点などの内部環境だけでなく、市場や顧客などの外部環境も該当します。
具体的な分析手法については、次項の「3.企画書の書き方におけるコツや注意点」をご参照ください。
目的とゴールを決定する段階では、現状分析で抽出された課題に対して、どのように解決していくか明示する必要があります。
目的とゴールの明確化は、企画の方向性を定める上で欠かせません。また、目的とゴールをあらかじめ言語化しておくことで、関係者と共通認識を持って議論を進めやすくなります。
具体的な内容に記載する項目は、主に次の3つです。
つまり、訴求する相手や製品・サービスを決め、具体的な施策を記載します。ここでは、提案書よりもさらに具体性が増したアクションプランが必要です。
例えば、提案書で企業向け説明会の開催を提案したとしましょう。提案をもとに企画書を作成する際には、次のような具体的な内容を記載します。
上記はあくまでも簡単な例であり、企画の内容によってはさらに詳細なターゲット選定や実施方法の多様化も必要でしょう。
スケジュールは、納期から逆算して決定します。社内のリソースを踏まえるのはもちろん、予期せぬトラブルに備えて余裕を持ったスケジュールを検討しましょう。このとき、複数のマイルストーン(中間目標地点)を設定すると進捗状況を確認しやすく、納期遅れを防げます。
また、「【3】具体的な内容」をいつ実施するかというタイミングの設定も重要です。タイミングによっては企画の効果が倍増、あるいは半減する可能性があるため、社内で十分に協議して慎重に見極めましょう。
収支は、企画書の読み手にとって最も気になる項目と言っても過言ではありません。
支出では、原材料費や人件費など項目ごとに予算を計算し、予算不足や無駄な出費を防ぎます。収入はどの部分でいつ収入を得られるか、採算がつくのかを明記することが大切です。
相手からの賛同をスムーズに得られるよう、収支は可能な限り細かく記載し、説得力のある内容を示しましょう。
相手に納得してもらい、賛同を得られる企画書に仕上げるためには、相手が知りたいことを知りたい順番で示し、かつ読みやすい見た目にする必要があります。そこで大切なのが、次の2点です。
企画書の基本的な書き方を押さえた方は、さらに分かりやすい内容に仕上げるためにそれぞれチェックしていきましょう。
フレームワークとは、分析や問題解決などの方法をまとめた枠組みです。フレームワークは、ビジネスのあらゆる場面で活用できます。企画書を作成する際に活用できるフレームワークは、主に次の3つです。
3C分析は自社をとりまく環境を分析するフレームワークであり、「【1】現状分析」で活用できます。3C分析の内容と順番は、次の通りです。
下記の中から、いずれかのCを追加した4C分析や5C分析で、より詳細に分析するケースも少なくありません。
3C分析で明確になった情報は次項のSWOT分析に落とし込むことで、現状分析の精度をさらに高められます。
SWOT分析は内部環境と外部環境を分析するフレームワークであり、「【1】現状分析」と「【2】目的とゴール」で活用できます。SWOT分析の内容は、次の4つです。
このうち、強みと弱みが内部環境、機会と脅威が外部環境にあたります。なお、機会は景気の変動や社会のトレンドなど、ビジネスチャンスについて分析する項目です。また、脅威は競合他社の動きや市場の停滞など、自社ビジネスの成功をさまたげる要因について分析します。
SWOT分析では3C分析の情報を取り入れることで、自社が取るべき方向性をより正確に見極められるでしょう。ただし、企画の目的やゴールを明確にしてから分析しないと、どこを強みと考えるかがぶれてしまいます。効果的な戦略を立案するためにも、目的とゴールは必ず言語化しておきましょう。
SWOT分析について詳しくは「SWOT分析のやり方とは?効果的に実施するためのポイントや事例を紹介」で解説していますので、ぜひご覧ください。
6W2Hは情報を正確かつ漏れなく整理・確認するためのフレームワークであり、「【2】目的とゴール」から「【5】収支」で活用できます。6W2Hの内容と、企画書に落とし込んだ際の例は次の通りです。
6W2H | 内容 |
---|---|
Why(なぜ) | 企画を提案する理由 |
What(何を) | 企画の内容 |
Where(どこに) | 想定する市場 |
Whom(誰に) | 企画のターゲット |
Whene(いつ) | 企画を実施するタイミング |
Who(誰が) | 企画の実行者 |
How(どのように) | 具体的な方法 |
How much(いくらで) | 企画の実施に必要な費用 |
6W2Hを活用すれば企画書に必要な情報をあますことなく言語化できます。企画書の作成中はもちろん、作成後も抜け漏れがないか6W2Hに当てはめて最終チェックすると良いでしょう。
企画書のデザインを考える上で大切なのは、見やすさ・読みやすさです。最後まで読んでもらった上で賛同を得られるような企画書に仕上げる上で、押さえておきたいポイントは次の3つになります。
企画書の文字や行間で意識したいポイントは、次の通りです。
フォントの種類 | ワードは明朝体 スライドはゴシック体(メイリオやヒラギノ角ゴファミリー) |
フォントの色 | 基本的には黒か白、注目してほしいところに目立つ色 |
フォントサイズ | タイトル・見出しなど要素ごとに統一する (例:スライドの見出しは32~28pt、本文は20~14ptが見やすい) |
行間 | 1.1~1.2ほど |
左右の余白 | 0.3~0.5cmほど |
スライドのフォントでゴシック体がおすすめな理由は、可読性が高い点にあります。ゴシック体では文字のウロコ(とめやはらい)が表現されず、横と縦の線の太さがほぼ均一です。そのため、プロジェクターで投影して文字が小さくなっても、読みやすさが変わりません。
また、行間のゆとりや左右の余白は見栄えが良くなり、安定感のある印象を与えます。情報の詰め込みがないため、相手にとっても読み進めるハードルが格段に下がるでしょう。
複数の情報を並べるときは、横並びよりも箇条書きを用いた方が読みやすくなります。箇条書きの数は、3〜5つがおすすめです。これは人が瞬時に記憶できる数は7±1、あるいは4±1というマジカルナンバーの理論に基づきます。
また、箇条書きごとに余白を設けるとグルーピングが明確になり、視認性がさらに高まるでしょう。
企画書では、シンプルな図やグラフを積極的に活用し、読み手の理解を促すことも大切になります。文字だけでは理解しにくい上、途中で読むのをあきらめてしまう場合が多いためです。
グラフはさまざまな種類がありますが、次のように使い分けると分かりやすいでしょう。 また、余計な目盛り線や単位などは省き、最も注目してほしいところだけ大きく太く表示すると、伝えたいメッセージを強調できます。
図解は形や配色に留意し、矢印を効果的に活用してみてください。例えば、新しいサービスの導入イメージを伝えたいときは、鮮やかな色やスタイリッシュな形を用いると良いでしょう。サービスを導入することで得られる明るい未来を、無意識に印象付けられます。
企画書に記載する項目やコツを見ると、思わず「自分に書けるのか不安」と思う方もいるでしょう。そのような方は、企画書の書き方に慣れるまでテンプレートを活用するのがおすすめです。企画書の書き方にある程度慣れた方も、テンプレートを見ることで新たな改善点を見つけられます。
ここでは、企画書のテンプレートサイトを3つ見ていきましょう。
Microsoft公式テンプレートは、パワーポイント形式のテンプレートを掲載しているサイトです。企画書はもちろん、企画書に記載する各項目のテンプレートも集まっています。
デザインは、シンプルなものから洗練されたものまで多種多様です。企画書をはじめ、ビジネス文書全般を1つのサイトで効率的に探したい方は、一度利用してみてはいかがでしょうか。
テンプレートBankは、販促や営業など用途別に企画書テンプレートが分けられているサイトです。サブカテゴリは、次の8つが設けられています。
企画内容に合わせてテンプレートを使い分けたい方は、ぜひチェックしてみてください。
bizoceanは、企画書をはじめとしたさまざまなビジネス文書のテンプレートを掲載しています。2022年9月時点で、登録会員は330万人を超えるほどの人気サイトです。2.9万点中2.7万点が無料で利用でき、そのうち約1,000件が企画書のテンプレートとして公開されています。
テンプレートは、会員の評価やダウンロード数も閲覧可能です。良いテンプレートがどれか分からないという方でも、評価や人気の高いものを選べばまず間違いないといえます。
企画書の書き方については本を読んで基礎からじっくり学びたい方や、何度も読み返しながら少しずつスキルを身につけたい方もいるでしょう。
最後に、企画書の書き方が学べる本としておすすめな3冊について解説します。
「まねして書ける企画書提案書の作り方」は文例が豊富であり、タイトル通りまねするだけで一定レベルの企画書が仕上げられます。
最も特徴的なのが、商品開発や販促企画などさまざまな企画書の見本が50点も載っている点です。自分が書きたい企画書と方向性が近いものが見つかれば、内容を書き換えるだけで企画書が完成できます。
企画書をはじめて書く方や、具体的な文例を知りたい方におすすめな1冊といえるでしょう。
「A4一枚から始める資料作成術」は、企画書をはじめとしたビジネス文書をA4、かつ1枚でまとめる方法が記載されている本です。
著者自身が日本企業と外資系企業の勤務経験があり、論理展開や記載事項など求められる内容の違いを踏まえた上で企画書の書き方を解説しています。現状分析などで必要なデータ検索も効率的かつ正確な方法を紹介しており、より実践的な知識や技術の習得が可能です。
特に、企画書の書き方はある程度把握しているものの、より効率的に作成できないか悩んでいる方におすすめな1冊になっています。
「プレゼン上手の一生使える資料作成入門」は、図解が豊富で読みやすい本です。見開きページでビフォーアフターの作例が掲載されているため、どの点がNGなのか、そしてどのように改善すれば良いかが一目で分かります。
書籍自体が1つのプレゼン資料のように感じるほど、全ページ通して非常に分かりやすい内容です。企画書のデザインやストーリー展開で悩んでいる方は、ぜひ一度手に取ってみてはいかがでしょうか。
企画書は、主に社内の関係者から企画内容に対する賛同を得るために作成する書類です。提案書よりも、具体的かつ詳細なアクションプランの記載が求められます。
とはいえ、単に情報を詰め込むだけでは賛同を得るどころか、企画書を最後まで読んでもらえません。フレームワークを活用した説得力のある論理展開や、見やすさ・読みやすさに配慮したデザインが必要になります。
企画書の書き方が分からない、あるいは書き慣れていない方はテンプレートサイトを利用したり、本を読んで学ぶのも良いでしょう。分かりやすく一発OKをもらえるような企画書を完成させたい方は、今回解説したコツを早速実践してみてください。