基本ノウハウ
ビジネスシーンでメールのやりとりをする中で、「インラインにて失礼いたします」というフレーズを見かけたことはありませんか?「インライン」とは、もともとIT業界で使用されてきた用語です。ビジネスメールにおいても、インライン形式でのやりとりのメリットが大きいため、最近では冒頭のようなフレーズを添えた「インラインメール」が一般化しています。この記事では、インラインメールの意味から、メリット・デメリット、インラインメールのやり方、注意点まで解説します。
インラインメールとは、相手から届いたメールのテキストの一部を返信メールのテキストに引用して、回答などを記載する返信方法のことです。「インラインメール」の他に、「ぶら下がりメール」とも呼ばれます。
ビジネスメールにおける「インライン」とは、何を意味しているのでしょうか。
「in line(インライン)」は本来、「直線に並んだ」を意味する形容詞です。これが転じて、IT業界で「その場に埋め込む」という意味で使われるようになりました。メールにおける「インライン」も、この用法に由来しています。
つまり、「インラインにて失礼します」は、「本来であればすべての本文をこちらで書かなければならないのですが、省略して申し訳ありません」と、わびる意味をもつフレーズなのです。
インラインメールは、例えば次のようなメールです。
株式会社●●
製造部 ■■様
いつもお世話になっております。
株式会社△△の××です。
先日お問い合わせいただいた機器Aに関する回答です。
インラインにて失礼いたします。
>仕様の詳細が分かる資料はございますでしょうか。
弊社カタログデータを添付いたします。機器Aの仕様の詳細は10~11頁をご覧ください。
>納品可能な時期はいつ頃になりますでしょうか。
〇年〇月下旬を予定しております。
>次回の打ち合わせのお時間は何時ごろがよろしいでしょうか。
>10:00-11:30
>13:30-15:00
13:30-15:00でお願いいたします。
今後とも、何卒よろしくお願い申し上げます。
「>」で始まる部分が、相手のメールのテキストを引用した部分です。インラインメールでは、このように相手のメールのテキストをそのまま引用して、その下に回答を記載します。
インラインメールには、次の3つのメリットがあります。
まず、返信の内容が分かりやすいというメリットがあります。
インラインでメールを作成すると、相手の質問項目ごとに回答を記載するため、おのずと内容が整理されます。相手も、過去に送ったメールを参照することなく、問い合わせに対する回答を一目で確認できます。
インラインメールを使うと、3人以上のメールのやりとりでも内容を共有しやすいというメリットがあります。
複数人がやりとりに関わっていると、誰がどんな質問を送り、誰が何を回答したのかをたどりにくくなります。また、やりとりに関わる人数が増えるほど、過去のメールを検索して参照する手間も増えてしまいます。
インラインメールを活用すれば、質問者・回答者が誰であったかを含め、やりとりの経緯をスムーズに共有できます。複数人が関わるメールでは、インラインメールのメリットは一層大きいといえます。
本文の内容を見落としにくいという点も、インラインメールの大きなメリットの1つです。
ビジネスメールでは、やりとりの回数をミニマムにするために、1つのメールに複数の質問内容が含まれていることが往々にしてあります。よって、一から返信メールを作成しようとすると、うっかり質問を見落としたり、回答を失念したりしかねません。
また、質問を送った相手側も、1つのメールに複数の内容がひと続きの文章で書かれていると、回答を見落とすおそれがあります。
インラインメールでは、メール作成者は相手のメールから質問部分を抽出しなければなりません。その上で、質問項目ごとに引用して回答しますので、質問の見落としや回答漏れを防げます。インラインメールを受け取った側も、質問項目ごとに回答を確認できるため、回答の見落としも起きにくくなるでしょう。
インラインメールには、メリットだけでなくデメリットもあります。
インラインメールには、メールの本文が長くなりやすいというデメリットがあります。
インラインを使わないメールでは通常、質問内容を要約して記載するのに対して、インラインメールでは相手の質問部分をそのまま引用します。質問部分が冗長だった場合でもそのまま引用するので、返信メールもその分長くなります。
また、インラインのやりとりが何往復か続くと、引用部分の追加が重なり、メールの本文が一段と長くなってしまいます。
インラインを使わない方が、かえって簡潔なメールになるケースもあることを覚えておきましょう。
インラインが多用されると、本文が長くなるだけでなく、伝わりにくくなるというデメリットもあります。
「インラインの返信に対してインラインで返信する」というやりとりが続くと、メールの大半をインライン部分が占めてしまい、メールで伝えたい内容がかすんでしまいます。
また、インライン部分を示す「>」(不等号)が本文中にいくつも表示されると、メール自体が見づらくなり、読み手に負荷がかかります。
インラインメールは、あくまでメールの内容を端的に伝えるための方法です。インラインを使う方が相手に伝わりやすいかどうかを見極めた上で、使用しましょう。
ビジネスシーンでは、インラインメール自体を不快に感じる人もいます。
相手の感情を読み取りにくいメールでのやりとりは、なるべくトラブルを生まないよう心がけたいものです。インラインメールで返信する際は、後ほど紹介する「インラインメールの注意点」に留意してメールを作成しましょう。
続いて、GmailやOutlookでインラインメールを作成する手順について解説します。
Gmailでのインラインメールの機能では、引用箇所は灰色のバー「|」で示されます。引用箇所を「>」で示したい場合は、こちらで紹介した引用機能を使わずに、引用箇所をコピー&ペーストして手動で「>」を入力してください。
Outlookでは、自動で「>」をつける設定ができます。以下の方法で設定しておくと便利です。
最後に、インラインメールの注意点にも触れておきます。
デメリットで紹介した通り、ビジネスでやりとりをする相手の中には、インラインメール自体を不快に感じる人もいるかもしれません。そこで、あらかじめインラインで返信することをわびておくと安心です。
インラインで返信する際は、ビジネスメールのマナーとして、「インラインにて失礼いたします」「インラインにて回答いたします」など、断りを入れておきましょう。
インラインで引用する部分は、最低限にとどめます。
インラインメールの一番の目的は、相手の質問事項に対して簡潔に回答を伝えることです。インラインメールが長文になってしまっては本末転倒ですので、必要箇所のみポイントを押さえて引用しましょう。
なお、引用部分の記載の変更は厳禁です。変更するとトラブルを招きかねません。たとえ誤字・脱字があったとしても、そのまま引用してください。
インライン部分の文頭に「>」をつけて、どこが引用部分であるかを明示します。
「>」は、引用部分とそうでない部分を明確に分けるための記号ですので、Googleの引用機能のように灰色のバーで示しても問題ありません。ただし、「■」や「●」といった記号は文字化けのリスクがあります。記号を用いる場合は、「>」で統一しておくのが無難です。
ビジネスシーンにおいて、メールは重要なコミュニケーションツールです。そして、ビジネスメールで円滑にコミュニケーションする上でのポイントは、「相手にとって読みやすいかどうか」です。インラインメールは、相手の問い合わせや意見に対して、ピンポイントで回答や見解を伝えられる、分かりやすい形式のメールです。多忙なビジネスパーソン間のやりとりにおいて、相手への配慮を表すコミュニケーション手段ともいえます。今回ご紹介した注意点を踏まえつつ、ぜひインラインメールを活用してみてください。