基本ノウハウ
UGCが注目を集めていますが、企業のマーケティングにどう活用すれば良いか、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。消費者のUGCに対する信頼性は高まっており、うまく活用することで企業の信頼性を確保しつつ、売上向上にも効果を発揮します。
本記事ではUGCとはどのようなものか、メリット、導入時の注意点、成果を出すためのポイントについて解説します。
UGCとは「User Generated Contents」の頭文字を取ったもので、ユーザー自身が生成したコンテンツのことです。具体的には以下のものが挙げられます。
TwitterやInstagramなどの投稿が代表的ですが、それ以外にもUGCの幅は広く、これらのサイトの投稿内容についてのコメントなどもUGCの1つです。
UGCはスマホにより、ユーザーが高品質な投稿を簡単にできるようになってから、年々注目度が集まってきました。ここではなぜUGCが注目されるようになったのか、その背景を紹介します。
UGCが注目されるようになった背景としては、広告への嫌悪感が消費者に広がっていることが挙げられます。
マイボイスコム株式会社が2020年に行った調査※1によると、インターネット広告が表示された際に行ったことは、「広告を閉じた」「広告を間違えてクリックした」が直近1年間に広告表示されたユーザーの行動の各4割弱に上り、年々増加傾向にあることが分かりました。
広告を発信する側が伝えたい情報と、広告を見る消費者が欲しい情報に対して乖離が広がっており、広告が消費者にマイナスの影響を与えていることが分かります。
※1:マイボイスコム株式会社「【 インターネット広告 】に関するアンケート調査(第3回)」
UGCそのものの持っている価値はここ数年で高まってきました。アメリカのOlapicによると、生活者の63%が商品の購入前にUGCをSNSで探しているという結果※2が出ています。
このためUGCをうまく活用することで、商品購入を後押しできる可能性があるのです。
※2:excite ニュース「アライドアーキテクツ、「企業のUGC活用における実態調査 2021」を実施」より
新型コロナウイルスの感染拡大も、UGCの重要性に拍車をかけています。アライドアーキテクツ株式会社が2020年に実施した調査※3によると、SNSの利用頻度は増加傾向にあり、外出時間を少しでも減らすためにUGCを調べている方が増加している傾向にあることが分かりました。
※3:echoes「ニューノーマル時代、企業はSNSをどう活用すべき?「新型コロナがもたらした【新しい生活様式】における消費者のSNS利用実態調査」結果発表」より
近年のデジタル広告市場が変化し、広告規制が強化されるようになったことも大きな要因の1つです。さまざまな商品が数多く登場しているため、消費者の選択肢がこれまでよりも大幅に増えました。
また1つの商品やサービスに変化が求められるようになり、細かい広告の数を増やす必要性も出ています。UGCはうまく活用できれば、自社でのコンテンツ生産の労力を抑えられつつ広告活動ができるため、注目を集めています。
UGCを取り入れるメリットとしてはどのようなものがあるのか、次で解説します。
UGCは信頼感と親しみを感じてもらいやすい点がメリットです。発信者がサービスの提供元ではないことで、信頼性があると感じられつつも、実際に使ったリアルな感想を聞けるということがその要因として挙げられます。
有名人を使った広告の場合には、自分が使っているイメージが持てないというケースもあります。しかしUGCは日常で関わる一般の方であり、自分に近い立ち位置から発信しているとも感じられます。
UGCはユーザーが自発的に発信する情報のため、コストがかからない点が特徴です。近年ではマーケティング施策の企画立案でも、多数の視点や表現の幅が求められるようになり、大きな負担になっていました。
しかしUGCであれば、コンテンツを大量に生み出せつつも、使用者のリアルな目線により、広告会社が気がついていない視点から発信できるケースもあります。
UGCはマーケティングだけではなく、商品開発にも役立ちます。UGCは良い面も悪い面も含めて率直な感想が生まれやすいため、商品の課題が収集しやすく、新しい商品開発へのヒントがもらえる可能性もあります。
UGCはさまざまなメリットがありますが、自社で直接コンテンツが生み出されるわけではないため、適切な管理体制が整えられていないとトラブルが起きる可能性があります。ここではUGCを取り入れる際の注意点について解説します。
UGCを利用する際には、著作権への配慮が重要です。UGCを自社サイトのコンテンツとして利用する際には、事前に許諾を得ている場合を除いて、原則としてユーザーに対して直接利用許諾を取る必要があります。
ただしFacebookやInstagramのシェアやWebサイトへの埋め込みについては、まだ明確な規制やガイドラインは決まっておらず、一般的に許容されている状態です。しかし問題ないようであっても、許可を取って掲載するのが望ましいといえるでしょう。事前に確認を取ることで、信頼性の確保にもつながります。
UGCがTwitterやInstagramなどのプラットフォームからの投稿である場合、著作権以外にプラットフォームの利用規約も確認が必要です。
このためUGC投稿であっても、インフルエンサーなどに広告料を払って依頼する場合には、企業とインフルエンサーとの関係性や提供したものについての情報開示が必要です。
UGCを利用する際に、注意したいのがステルスマーケティング(ステマ)との混合を回避することです。ステルスマーケティングとは、企業から何らかの金銭を受け取ったことを隠したまま、UGCのようにコンテンツをつくることです。
UGCだと思っていたものが、ステルスマーケティングだと発覚した場合、消費者からの信頼を損なう可能性があるだけではなく、炎上リスクも生まれてしまいます。そのため金銭など何らかの報酬や商材の提供をインフルエンサーに対して行った場合には、紹介元のUGCに金銭などの報酬が発生していることを明記するよう、インフルエンサーに伝えておくことが重要です。
UGCをインフルエンサーに投稿してもらう際には、企業の用意した台本ではなく、インフルエンサー本人の意思を尊重して依頼するようにしましょう。
医薬品や医療機器、化粧品、医薬部外品、健康食品などの業界がUGCを利用する際には、薬機法への配慮をする必要があります。薬機法は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(旧:薬事法)の略称で、これらの業界に対する広告のルールを定めたものです。
ユーザーが自発的に生成しているコンテンツの状態であれば、薬機法の影響を受けることはありません。しかし企業がUGCをWebサイトなどのコンテンツに利用する場合には、企業の表現物として扱われ、薬機法の規制の対象になるため注意が必要です。
表現について細かい規制があり、UGCをそのまま利用すると、薬機法に抵触する可能性が高いため、事前に確認した上で利用してください。
UGCを具体的に活用する事例として、TwitterとInstagramを利用した事例をそれぞれ紹介します。
TwitterはSNSの中でも利用者が多く、拡散性が高いSNSの1つです。短い文章を気軽に投稿しやすいため、事前に準備をしておくことで、バズを狙って起こすこともできます。また既存のファンや顧客とのコミュニケーションが取りやすいことも特徴の1つです。
TwitterでUGCを活用する際には、まず自発的に共有したくなるような商品開発を進めることです。商品開発を進めつつ、ハッシュタグなどを活用して投稿を呼びかけ、ユーザーに投稿を呼びかける動きを進めます。
自社公式アカウントがある場合には、積極的に運用し、ユーザーの投稿のリツイートやコメントを積極的に促すと効果的な運用ができるでしょう。
Instagramは画像を中心に投稿できるSNSで、近年ではいわゆる「インスタ映え」のような投稿だけではなく、日常の風景が投稿されることも増えています。2019年には月間アクティブユーザー数が3,300万人となり、Facebook以上の利用者数を誇るSNSです。
InstagramでUGCを生み出す方法としては、キャンペーンを利用する方法か、リポストを誘致することが挙げられます。キャンペーンを利用する方法とは専用のハッシュタグを利用し、Instagramへ投稿してもらうことで、インセンティブを獲得する手法です。リポストの誘致とは、企業がユーザーのUGCをリポストすることを明記し、認知度を高める方法です。
近年ではキャンペーンよりもリポストの誘致を行う方が、効果が高い傾向にあります。
UGC運用を成功させるためには、いくつかの方法があります。ここではどのような7つのポイントを解説します。
UGCを活用しようと思ったら、まず運用目的を定めることが重要です。UGCの利用目的によって、利用するプラットフォームや利用すべきUGCの方向性、マーケティング施策の内容が変わります。
例えば商品やサービスの認知を拡大させたい場合には、ハッシュタグを積極的に活用すべきですし、ファンとの交流を目的にする場合には、積極的に投稿や利用者へのコメントを行う必要があります。
UGCは数が非常に多いため、適切に利用するためには、収集手段や収集方法を考えて運用することが大切です。サービスに関係するキーワードを闇雲に集めようとしても効率が悪く、十分なコンテンツを集めるのは難しいでしょう。
手軽に利用しやすい方法としてはハッシュタグが挙げられます。ハッシュタグであれば、その企業が欲しい情報を自然と集めることが可能です。UGCを集めるためのツールもあるため、そのようなツールを使用するのもおすすめです。
UGCは商品やサービスの性質によって、活用しにくいものもあります。具体的にはBtoBのサービスや、コンプレックスに触れる商品はUGCが生まれにくいでしょう。また資格やスクールなどは画像や動画で成果が伝わりにくいため、共有はされない傾向にあります。ただし、会社がアンケートなどで集めることは可能です。
その反面、画像や動画映えしやすいアパレル系や食べ物、音楽は、UGCと相性が良いため、積極的に活用しやすいでしょう。
UGCはSNS上でシェアする、Webサイトで活用するなどコンテンツとして利用可能です。どの媒介で利用するかによってその後の効果が変わり、利用する内容は同一であっても反応は全く違います。このため利用目的に合わせて活用方法を決め、試行錯誤をしながら、より良い活用方法を模索するのが良いでしょう。
UGCを集める際には、ネガティブな意見も集まります。ネガティブレビューは公開しにくい心理が働きやすいですが、適切な対応をすることで逆に信頼性が高まることもあります。ネガティブなものだからとないがしろにせず、ユーザーの意見を公開しつつ、真摯に対応するようにしましょう。
このようなネガティブレビューを収集し、対応していくことで改善点の発見にも役立ちます。
UGCを利用したことでどのような効果があったのか測定し、運用方法を改善していくことも重要です。UGCを活用する前と後で、売り上げへの変化を確認します。
UGCの中には法律に抵触する可能性があるものもあるため、法律に違反しないようマニュアルの整備や法律家との相談し、対策することが必要不可欠です。間違って法律に抵触した投稿を共有してしまうと、炎上するリスクや信頼性を損なう事態に発展する可能性があります。
薬機法が代表的ですが、薬機法以外にもさまざまな要素が考えられるため、必要に応じて法律家に相談しながら、適切な対応を検討するようにしましょう。
UGCはうまく利用することで、自発的に拡散がされ、信頼性や売上の向上にもつながります。ただし運用して成果を出すためには、事前に目的を定め、適切な体制を整えなければ、逆効果になる可能性もあるでしょう。
本記事を参考に、UGCを活用する手順や注意点を把握し、適切な運用体制を整える参考にしてください。