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CXとは?CXを向上させるメリットや取り組み事例をBtoC・BtoB企業別に解説

CXとは?CXを向上させるメリットや取り組み事例をBtoC・BtoB企業別に解説

マーケティング業務にあたり、覚えておきたい「CX(カスタマー・エクスペリエンス)」。CS(カスタマー・サティスファクション)やUX(ユーザー・エクスペリエンス)といった混同しやすい用語もあるため、正確な理解が大切です。またCXを向上させることで、競合他社との差別化やリピーターの獲得など、売上向上にもつなげられます。本記事ではCXの意味やCX向上に取り組むBtoC・BtoB企業事例などについて解説します。

目次

1.CX(カスタマー・エクスペリエンス)とは|顧客体験価値

CX(カスタマー・エクスペリエンス)は、日本語で「顧客体験価値」とも訳され、「ある商品・サービスの購入前~購入時~購入後、すべての過程で顧客が体験したこと」を指します。例えば、あるマーケティングツールを購入した担当者Aさんが以下のような体験をしたとします。

  • 購入前:マーケティングツールの導入事例集が参考になった
  • 購入時:ツールは操作性が高く、使いやすい
  • 購入後:アフターフォロー・メンテナンスが手厚い

このとき、上記3つの過程の各体験をまとめて「CX」と呼びます。

CS(カスタマー・サティスファクション)との違い

CXと混同しやすい用語に、「顧客満足度」とも訳される「CS(カスタマー・サティスファクション)」があります。両者の意味の違いは以下の通りです。

  • CX:ある商品・サービスに関して、顧客が受けたすべての体験
  • CS:ある体験に対する顧客の満足度。改善事項を認識するために使われる

前述のマーケティングツールを購入した担当者Aさんが、先の例と違い以下のような体験をしたとします。

  • 購入前:マーケティングツールの導入事例集が参考になった
  • 購入時:ツールは使いづらかった
  • 購入後:アフターフォロー・メンテナンスは充実していた

このとき購入前・購入後のCSは高いが、購入時のCSは低いため、CXは必ずしも高くならないでしょう。CX向上のためには購入時のCS改善が必要なことも分かります。

このように、CXは顧客が受けたすべての体験であるのに対し、CSはその体験の価値を測るための基準やものさしである、という関係にあります。

UX(ユーザーエクスペリエンス)との違い

「UX(ユーザー・エクスペリエンス)」もCXと混同しやすい用語です。両者は、CXが「顧客がしたすべての体験」であるのに対し、UXは「個々の体験」という違いがあります。

また同じ例を使ってみてみましょう。前述のマーケティングツールを購入した担当者Aさんが以下のような体験をしたとします。

  • 購入前:マーケティングツールの導入事例集が参考になった
  • 購入時:ツールは操作性が高く、使いやすい
  • 購入後:アフターフォロー・メンテナンスは手薄で不満に感じた

UXは「購入前に導入事例集が参考になった」「購入時のツールが使いやすい」といった個々の体験を指します。一方、CXは購入前~購入時~購入後すべての体験のことを言います。「UXが積み重なったものがCX」と覚えておきましょう。

2.CXを向上させるメリット

CXを向上させる具体的なメリットを3つ解説します。

競合他社との差別化が図れる

とくにスペックで差を付けるのが難しい、またはコモディティ化した商品・サービスを扱う企業にとってCX向上は、競合他社との差別化にもつながります。商品・サービスのスペックは競合他社とそう変わらないにしても、例えばアフターフォローの充実に取り組み、CXを向上させることで、競合他社にはない価値を顧客は感じてくれるようになるためです。顧客に素晴らしい体験を提供すれば、CXは向上し、スペック以外の項目で競合他社との差別化を図ることができるでしょう。

良質な口コミの発信者を増やせる

CXの向上は、良質な口コミ発信者の増加にも寄与します。現在、商品・サービス購入前に、口コミサイトやSNSなどで口コミを調べてから意思決定をする消費行動が一般化し、9割以上の消費者が類似商品の比較検討などを実施しているというデータ※1もあります。つまりある商品・サービスを購入するかどうか、口コミの影響力が非常に強くなっているのです。CXを向上させることは、価値の高い体験をしたポジティブな口コミを発信する消費者を増やすことにつながり、結果的に売上にも好影響を及ぼすようになります。

※1:KDDIエボルバ「EC・通販ユーザー動向調査レポート2021年度版」より

リピーターを獲得できる

CX向上は、リピーター獲得にもつながります。CXを向上させるということは、顧客に高い体験価値を提供するということです。そして価値の高い体験をした顧客は同様の体験を求め、再び同じ商品・サービスを購入するリピーターとなります。

「パレートの法則(2対8の法則)」を参考にすると、売上の8割は優良顧客であるリピーターが占めると考えられます。パレートの法則とはイタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが発見した法則で、「上位20%が全体の80%を決める法則」のことです。この法則をビジネスにあてはめ、「全顧客のうちの20%の上位顧客(リピーター)が売上の80%を生み出している」と言われています。CX向上は、そんな重要なリピーターの確保にも寄与するのです。

3.CXを向上させる有効な3つの施策

前章ではCX向上の重要さを説明してきました。ここではCXを向上させる具体的な3つの施策を解説します。

デジタル化を推進する

デジタル化を進めることで、CX向上につなげられます。

例えばお客様サポートとして、従来の電話による対応に加え、AIチャットボットを実装することで、わざわざ電話をしなくてもサイト上で疑問を解決できる顧客を増やすことが可能です。また電子契約サービスを導入することで、顧客は郵送の手間や紙の保管コストが削減されます。

このようにデジタル化の推進により、顧客の多様なニーズに応えられるようになり、その結果CXは向上します。

CX推進部を立ち上げる

CXを向上させるには、組織を横断してCXを推進する部署の立ち上げも有効です。現状、部署間によって、CX向上に対する意識の差が生じている組織も少なくないでしょう。例えば、いくら商品・サービスの機能を向上させたとしても、アフターフォローが充実していなければ、CX向上にはつながりません。

そこでCX推進部を設けることで、部署間を横断したCX向上の戦略を設計できる体制を整えられます。例えばCX推進部に「CX向上の文化」を組織全体に行き渡らせる役割を与えることで、部署間のCXに対する温度差の改善につなげられるでしょう。

コンタクトセンターの質を上げる

顧客との窓口になるコンタクトセンターの質は重要です。

コンタクトセンターへの連絡は、疑問や不満などネガティブな思いを抱える顧客が多くを占めます。そのような顧客に対し、「マニュアル対応しかしない」「人員が足りずなかなか電話に出られない」では、顧客にさらに負のイメージを与えることになります。

一方、逆に感情に寄り添った対応ができれば、CXは向上するでしょう。少なくともCXを低下させないために、コンタクトセンターへの投資は十分な水準で行うことが大切です。

4.CX向上に取り組むBtoC企業事例

CX向上に取り組むBtoC企業の事例を3社紹介します。

株式会社ホワイトプラス

株式会社ホワイトプラスはビジョンに「新しい日常をつくる」を掲げ、Webやアプリから注文可能なネット宅配クリーニングサービス「リネット」を展開しています。

同社は顧客からの声を定量的に可視化し、その声を基にサービスを改善することで、顧客満足度の高い(CXの高い)サービスの提供を目指しました。

具体的にはクリーニングの品質・接客品質の強化を図るために、前者は「キレイさ」「シワのなさ」などの数値を基に、後者は「受電率」や「問い合わせ率」などの数字を基にサービス改善に努めています。

参照:CX Lab.『サブスク型宅配クリーニング「リネット」から届く”心のインフラ”とCX(顧客体験)』より

株式会社DROBE

株式会社DROBEはスタイリストが顧客に最適なファッションアイテムを提案・お届けする「DROBE(ドローブ)」を提供している企業です。

同社は「DROBE」に誰でも簡単に利用できるような工夫を施し、CX向上に取り組んでいます。

具体的には、同サービスのやり取りを、大半の顧客が使い慣れているLINEで完結させるようにしています。またサービスを利用するためだけにアプリをインストールする必要をなくしたり、ホーム画面に「次に起きること・次にやること」を表示させたりと、顧客のニーズに細やかに応えることで、CX向上につなげています。

参照:CX Lab.『ファッションアイテムをオンラインで「パーソナルスタイリング」!DROBEが広げる試着の新しいカタチとは?』より

株式会社バルクオム

株式会社バルクオムは、メンズスキンケアブランド「BULK HOMME(バルクオム)」を展開する企業です。同社はCX向上施策として、コールセンターへの問い合わせのうち、特定の事務手続きを、マイページ上で自身で解決できるようにする、あるいはAIオペレーターで対応できるようにしました。そして余った人的リソースを、解約を検討している顧客に向けることで、より顧客の悩みに寄り添った対応ができるようになり、継続率は4倍に増加しました。

参照:CX Lab.「カスタマーサクセスの挑戦!継続率を4倍に向上させたバルクオムの顧客体験とは?」より

5.CX向上に取り組むBtoB企業事例

続いて、CX向上に取り組むBtoB企業の事例を3社見ていきましょう。

freee finance lab (フリーファイナンスラボ)株式会社

freee finance lab (フリーファイナンスラボ)株式会社は、「請求書ファイナンス」など資金繰りや決済に関わるサービスを提供している企業です。同社はCXを向上させるために、スムーズにサービスを開始できる仕組みを整えました。具体的には、規定掲示や個人情報同意の表現をシンプルに分かりやすくし、またチェックボックスを1つ減らすなど、顧客のストレスを減らす工夫を徹底して行ったのです。その結果、顧客に「スムーズなサービス開始体験」を提供できるようになりました。

参照:CX Lab.「スモールビジネスに「マジ価値」を届ける|freee finance labが作りだした顧客体験」より

株式会社オンリーストーリー

株式会社オンリーストーリーは国内最大級の決裁者マッチングプラットフォーム「チラCEO」を運営している企業です。決裁者を結びつけるサービスを展開している同社は、専属の担当者が毎月1回オンラインミーティングを行って、決裁者を直接紹介したり、決裁者限定オンラインイベントの活用支援を行ったりしています。「人」を介したサポートを行うことで、CX向上を図っています。

参照:CX Lab.『決裁権のある経営層に直接マッチング。「ONLY STORY」が叶える新しいBtoBマーケティング!』より

クラウドサーカス株式会社

クラウドサーカス株式会社は、デジタルマーケティングツール「Cloud CIRCUS(クラウドサーカス)」を提供している企業です。同社はサービス利用時に顧客が抱く「分からない」を即時解決することで、顧客の「使いたい」「試してみたい」という気持ちを維持させ、より良い顧客体験を提供する環境を整えることに注力しています。さらに最適な顧客体験を、「ユーザーがサポートに問い合わせて問題解決ができることではなく、ユーザーが迷うことなく問題が発生しない状態を作ること」だと考え、設定手続きをチュートリアルによって、ストレスなくスムーズに完了できるようにするなどの改善を行っています。

参照:CX Lab.「SaaSユーザーの離反を防ぐ!Fullstar(フルスタ)が届ける顧客体験(CX)とは?」より

6.まとめ

CXとは、商品・サービスに関わるすべての顧客体験を指します。CXを向上させることで、競合他社との差別化やリピーターの獲得などのメリットがあります。

本記事で紹介したCX向上に取り組む企業事例も参考にしながら、CX向上に有効な「デジタル化の推進」や「CX推進部の立ち上げ」などの施策を、自社の事情に合わせて検討してみてはいかがでしょうか。


この記事を書いた人

BeMARKE編集部
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BeMARKE(ビーマーケ)は、BtoBマーケティングの課題解決メディアです。 BtoBマーケティングのあらゆる局面に新しい気づきを提供し、リアルで使える「ノウハウ」を発信します。

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