インタビュー
米企業のOpenAIが開発したAIチャットサービス「ChatGPT」の追加機能「Webブラウジング機能」は、具体的にどのように活用できるのでしょうか。前回は株式会社ウィットの代表取締役・渥美英紀氏に「ChatGPT Webブラウジング機能のBtoBマーケでの活用可能性」についてお話しいただきました。今回は後編として、さらに「SEO分析やマーケ・営業現場での活用可能性」について詳しくご説明いただきます。
渥美氏は15年以上にわたってBtoBマーケティングに関する研究やコンサルティングに従事されており、ChatGPTのBtoBマーケティング活用にも早くから注目し、独自に研究を進めてこられました。今回は実際のWebサイト記事をChatGPTでSEOの観点で分析しながら、実例とともに解説していただきます。
→ 前編をまだお読みではない場合はこちらもあわせてお読み下さい。
※米OpenAIは7月3日(現地時間)、Webブラウジング機能「Browse with Bing」を一時的に無効化することを発表しました。続報をお待ちください。
今回はBeMARKEサイト内の記事をChatGPTのWebブラウジング機能に読み込ませ、SEOの観点からChatGPTに評価・分析させます。
#役割
あなたはSEO対策の専門家です。
#指示
以下のURLをクロールして
https://be-marke.jp/articles/knowhow-queryparameter
GoogleのSEO対策にけるE-E-A-Tの観点から
それぞれの観点で0~5のスコアをつけて
#出力
観点|スコア|根拠|改善案
の表組みで出して
ChatGPTには、SEO対策の専門家やコンサルタントの役割を与えました。具体的な指示内容としては、「このページをクロールしてください」という指示をブラウジングモードで指定しています。今回の指定された記事は、BtoBマーケティングの記事であり、GoogleのSEO対策におけるE-E-A-T(Experience(経験)・Expertise(専門性)・Authoritativeness(権威性)・Trustworthiness(信頼性))の観点から、それぞれ0点から5点のスコアを付けてくださいと指示を出しました。また、出力形式は表組みで提供してくださいと依頼しています。
今回のプロンプトの注意点をまとめると以下のようになります。
以下は、指定された記事に対する評価結果です。記事の分析がE-A-Tになっています。E-E-A-Tが反映されていない2011年ぐらいの情報がベースになっているためでしょう。ただしExperience(経験)の観点を指定し入力すれば評価が追加されます。また表組みでという指示は反映されなかったようです。
指示通りのアウトプットを得るには工夫が必要ですが、今回のようなシンプルな指示でもスコア化できる点は評価できるでしょう。
1. 専門性(Expertis)
スコア:4
根拠:記事はクエリパラメータについて詳細に説明しており、設定方法について具体的なガイダンスを提供しています。これは、作者がこのテーマについて深い知識を持っていることを示しています。
改善案:より具体的な例やケーススタディを提供することで、記事の専門性をさらに強化できます。
2. 権威性(Authoritativeness)
スコア:3
根拠:記事はBeMARKE編集部によって書かれており、BeMARKEはBtoBマーケティングの課題解決メディアとして認識されています。具体的な作者の名前や資格は明記されていません。
改善案:記事の作者の資格や経験について具体的に記述することで、記事の権威性を高めることができます。
3. 信頼性(Trustworthiness)
スコア:4
根拠:記事は信頼性の高い情報を提供しており、その指導は一貫性があり、明確なステップバイステップの指示が含まれています。これは記事が信頼できることを示しています。
改善案:外部ソースへのリンクや参照を含めることで、記事の信頼性をさらに強化することができます。
本格的なSEO分析には独自のプロンプトの追加が必要かもしれませんが、まずは簡易的であっても基本の分析を大量に行いたい場合にWebブラウジング機能は使えるのではないでしょうか。
ーー記事をSEO観点から分析した改善案に関して、もう少し詳しく解説いただけますか。
E-E-A-Tの観点で得られた結果を基に、ChatGPTにより具体的な改善案を出してもらうこともできます。「それぞれの観点から改善点を、具体的に提示して」と聞いてみました。
先程の出力より具体的な改善策が示されています。
専門性では「実世界の例をもっと提示してください」と表示されています。記事ではクエリパラメータの一般的な使用方法について詳しく説明していますが、具体的なビジネスケースやクエリパラメータが成功をもたらした事例を追加すると良い、ということです。
すぐに実践できる改善案を簡単に得られるため、執筆者への追加記事制作やリライトの指示出し業務を効率化できるでしょう。
同じプロンプトで違う記事を分析させるとどういう回答を得られるか見てみます。
評価結果では、今回も表組みが上手く表示されなかったものの詳細な分析内容が出力されました。
専門性は4点となっています。こちらはインタビュアーの山下さんの記事ですね。「深い知識と理解を示しています」といわれています。BtoBマーケティングについての概念や具体的な手法に関して、初学者に向けBtoBマーケターとしての見解とともに示している記事として評価されています。
権威性のスコアは4点でした。記事には作者のプロフィールや専門性の背景も記載されており、権威性の要素も含まれているとしています。しかし記事やサイトが受けた賞や認定、権威あるソースからの引用等による明確な権威性の証拠が見つからないようです。
信頼性の評価は、3.5点が付けられました。サイトのデザインがプロフェッショナルであることや、記事の具体性が評価されています。しかし記事の引用ソースや文献の情報提供が欠けていることが、評価ポイントを下げたようです。テキスト量の増加だけでなく、外部認証や実績の重要性が高まっている傾向が感じられます。
ーー記事の改善案も聞いていただけますか。
同じチャット内で続けて「改善案を、具体的に提示して」と指示してみます。
専門性に関しては、記事執筆者のプロフィールを具体的に書き実績を数字で出したり受賞歴やメディア出演実績などを追記したりすることで改善できるとしています。
権威性については、自社のブランドやWebサイトが業界内でどのように認定されているかという情報を示すと良いと出ています。
信頼性は情報源や引用元を明記することで高められるとしています。Webサイト全体として、プライバシーポリシーや利用規約、連絡先情報などを明記することでユーザーからの信頼を得ることができる、と出ました。
今回示された改善案は初めて知るというよりは「やはりそうか」というレベルだとは思います。しかし客観的な評価を得ることでそれを基にさらに改善業務を進めやすくなるでしょう。
SEOコンサルティング会社の若手の方々は、1年目や2年目にWebサイトや記事の調査に取り組むことが多いと思われます。今回の実例紹介のようにChatGPT Webブラウジング機能を活用することで、工数削減の可能性が見えるのではないでしょうか。
また各社ごとに独自の分析項目や強みが存在するため、SEOやWeb関連のコンサルティング会社の方々も、細かい評価ポイントや改善点を考慮しながらプロンプトを作成していることでしょう。各社の得意分野に合わせて活用可能なプロンプトができていくと、さらにWebブラウジング機能の利用方法の幅が広がると思います。
ーーChatGPTによるより具体的な業務効率化の可能性を教えていただけますか。
ChatGPTのWebブラウジング機能には、業務の効率化の可能性を一番に感じています。以下の3点の可能性に関して解説しましょう。
ChatGPTのWebブラウジング機能はWebサイトの分析だけでなく、企業情報の調査にも活用できる可能性があります。特にBtoBマーケティングの現場においては、アプローチしたい企業の情報をWebサイトから調査・収集することは大事な営業ステップになっています。Webブラウジング機能では、
などへの活用が期待できます。
現状、実業務での活用はまだまだであるものの、記事分析実践例のように各業務で使えるプロンプトは見えてきています。ChatGPT活用事例を組み合わせることで実業務での活用が期待できるでしょう。プロンプトの成功例をつなぎあわせていくと、情報収集のスピードアップや自動化までが実現されるのではないでしょうか。
ChatGPTを使い例えば以下の3ステップを行えば、「パーソナライズされたメールが自動で作成から返信」までできるようになるかもしれません。
ChatGPTを活用することで工数を掛けずにパーソナライズ化されたアプローチができるようになるでしょう。
MAを使って実施していた以下のようなこともChatGPTでできるようになれば、高額なシステムや設備投資をしなくても、中小企業でもできるようになるかもしれません。
おそらく近い将来に、ChatGPT Webブラウジング機能のスピードや正確性などが改善されるでしょう。同時にChatGPTを使うためのプラグインやAPIの開発が進み、ChatGPT活用を専門にするサービスが出てくると思われます。ChatGPT Webブラウジング機能が使いやすくなることで、Webサイトの分析においても以下の利用ができると思います。
ChatGPTを活用することで、優れた営業マンの手法を他のメンバーに提供し、業務の標準化とレベルアップを図ることができるようになるでしょう。
優秀な営業マンの新規提案前の行動から抽出したいポイントを考えてみました。
例えば優秀な営業マンのメール文章をChatGPTに分析してもらい、挨拶文や返信などのメールを同じポイントを押さえた形で出力できるようにします。他の方も同じパターンのメールを使えるようになり、営業部全体でメールの書き方に関するナレッジの共有が可能になります。業務の標準化が進むだけでなく、個々の業務レベルの向上にも貢献することが期待できるでしょう。
また優れた営業担当とそうでない担当の差は、事前準備の量と質に大きく左右されることが多いのです。この点でChatGPTの活用により、アウトバウンドコールや商談前の情報収集の方法が標準化されることで、誰でも事前準備のクオリティを向上でき組織全体のボトムアップが可能になります。
ーー企業や営業担当にとって、ChatGPT Webブラウジング機能の活用は未来への期待を感じさせますね。
ChatGPT Webブラウジング機能のポテンシャルはとても高いと思います。現在出来ることとして、まずは業務の標準化に取り組まれてはいかがでしょうか。標準化の3STEPを紹介します。
属人化していた業務をこの機会に標準化することは、組織全体の業務の効率化に最も大きなインパクトをもたらすと考えられます。業務の属人化やブラックボックス化が起こりやすい領域を特定し、標準化に取り組んでみてはいかがでしょうか。
イメージしやすい応用例をご紹介します。
応用例:
メールマーケティング
営業活動
ChatGPTの性能向上や、こちらが意図した出力を可能にするプロンプトの開発によって、さらなる改善策を見つけることもできるでしょう。
将来的には、ChatGPTを活用した営業プロセスの自動化や効率化が進むことで、組織全体の時短が実現される、より複雑な分析までできるようになるなど二次的な成果も生まれる可能性があります。ChatGPTの活用は、業務分析や効率化を最大限に引き出すために今後重要になっていくでしょう。ぜひ今の段階で、さまざまなアプローチを試してみていただければと思います。
インタビューの内容は動画でもご覧いただけます。
渥美英紀(あつみ・ひでのり)
株式会社ウィット代表取締役。BtoBのさまざまな業界の売上アップ・ブランド強化・営業改善など250以上のプロジェクトを担当。特にリード獲得や売上アップに高い成功確率を誇る。著書に、自身のノウハウをまとめた「ウェブ営業力」(翔泳社、2009)、 「Webマーケティング基礎講座」(翔泳社、2011)がある。2017年には「BtoBウェブマーケティングの新しい教科書」(翔泳社)を上梓。アクセスログ解析システム、メール配信システムなどの開発も手掛けたことから、ウェブマーケ ティングの遂行に不可欠かつ広範囲な分野について専門性を生かした"総合的"かつ"現場に根差した"ウェブマーケティング支援を得意とする。
ChatGPTを活用したBtoBのウェブマーケティング(株式会社ウィット)
note:ChatGPTを活用したBtoBのウェブマーケティング