セミナーレポート

BtoBマーケにおけるコンテンツの役割とは?無形性とサロゲイツ(代替品)から読み解く|スケダチ高広氏講演レポート

BtoBマーケにおけるコンテンツの役割とは?無形性とサロゲイツ(代替品)から読み解く|スケダチ高広氏講演レポート

2023年12月6日に株式会社Bizibl Technologies主催のイベント「ウェビナーマーケターミートアップ #2」が開催されました。イベントの特別企画である、株式会社スケダチ代表 高広伯彦氏による招待講演「BtoBマーケティングにおけるコンテンツの役割 ~無形性のマーケティングとSurrogates~」の内容をレポートします。

  • スケダチ 代表、社会構想大学院大学 特任教授 高広 伯彦(たかひろ・のりひこ)

    スケダチ 代表、社会構想大学院大学 特任教授

    高広 伯彦(たかひろ・のりひこ)

    博報堂、電通、Googleや外資系アドテク企業等にて広告/マーケティング/デジタル領域の事業に20年以上関わる。2009年、広告ビジネス開発領域のコンサルティングや、各種マーケティングコミュニケーションの企画やコンサルティングを行う「スケダチ」創業。2012年には共同創業者として日本初のインバウンドマーケティング領域及びB2Bデジタルマーケティングの支援企業「マーケティングエンジン」を立ち上げ、代表就任。2014年からは再びスケダチの事業にフォーカスをし、企業の各種マーケティング支援及びマーケティングサービス事業者の事業開発支援などを行っている。また、社会構想大学院大学にて特任教授としてマーケティングやコミュニケーション戦略に関しての教鞭をとっている。著書に『次世代コミュニケーション・プランニング』、『インバウンドマーケティング』(共にソフトバンクパブリッシング)など。京都大学博士(経営科学)。

目次

なぜ人は「形がない・触れないもの」を購入できるのか

私が「サービス」という領域を研究するなかで興味深いと思っているのが、サービスという“形がない・触れないもの”をなぜ人は購入できるのかということです。

例えばスーパーマーケットではお客様が商品を手に取りお金を払う、ということが当たり前に行われています。しかしサービスは購入前に手に取ることができない。それにも関わらずなぜ購入できるのか。

この問いはBtoBビジネスにも通じる部分があるのではないでしょうか。なぜならBtoB商材はSaaSをはじめ無形物を扱うことが多く、有形物であっても購買プロセスにおいては形のないものを売っているのと同じともいえるからです。

スケダチ 代表、社会構想大学院大学 特任教授 高広伯彦 氏
スケダチ 代表、社会構想大学院大学 特任教授 高広伯彦 氏

サービス研究の古典では、サービスには「IHIP」という4つの特徴があると考えられています。

  • Intangibility 無形性
  • Heterogeneity 異質性
  • Inseparability 不可分性
  • Perishability 消滅性

そのなかで今回は「Intangibility(無形性)」に着目しBtoBビジネスとの関連性について解説します。

無形物を購入する際の問題点

まずプロダクトには物理的に商品が存在するものと、物理的に存在しないものがあります。

物理的に存在しないものは触れることができません。例えば旅行や理美容室、マッサージなどの各種サービスがあります。

これら形のないものを購入するときのステップを考えてみましょう。

美容室で髪の毛を切りに行く場合であれば、美容室に入った瞬間にお金払うことが決まってますよね。しかしその時点ではまだサービスを受けていない。それにも関わらずなぜお金を払うことを決められるのか。

形のないものを購入するときには次のような問題があります。

  • 触れないので試せない
  • 何が得られるのかイメージできない
  • 物理的なものがないので「納品」されるものがない
  • 物理的なものがないので売るアイテムを信用するしかない
  • “それ”を得られるのは、支払いや契約後なのでリスクを感じやすい
無形成 intangibility とは

つまり、このような触れない商品・サービスは、買う側のお客様にとってはサービスを買う前に価値を見極めて、値段が見合うかを考えなければならないというリスクがあるということです。

BtoBビジネスには触れない商品・サービスが多いのです。

触れないことによるお客様の不安やリスクをどのように軽減するかというと、例えばインサイドセールスや営業がお客様と接する際に、商品・サービスの説明をしますよね。その過程を経て契約、サービス導入につながるわけです。

無形物を購入する際のリスクを軽減する「サロゲイツ」

サービス産業でいえば、例えば旅行のパンフレットや美容室のヘアカタログがあります。

美容室におけるヘアカタログ

こういった情報を事前に提供することで、お客様が購買によって何を得られるのかを明確にできるのです。また事前に口コミや評価を見ることで、サービス提供元を信用できるのか判断することもあるでしょう。

これらの情報のことを、サロゲイツ(代替品)といいます

サロゲイツは、無形物を購入する際の不安やリスクを解消するために「あなたが得られる商品・サービスはこれです」「私たちはこれを提供します」という約束・誓約の役割を担います

この役割をサロゲイツと名付けたのはセオドア・レビットという、フィリップ・コトラーと双璧をなすマーケティング界のレジェンド研究者です。

無形性の度合いというのは顧客を獲得することの大きな決め手となる」といっています。

BtoBビジネスの商材は、最終的に納品されるのは有形物であったとしても、販売の段階ではお客様ごとにカスタマイズするケースが多いため、この観点が重要です。

BtoBマーケティングにおいてコンテンツが必要な理由

お客様とサービス提供者の共同作業によってサービスが成立する

お客様ごとにカスタマイズするケースが多いということは、お客様から情報をいただきながらサービス提供側も情報を出す必要があるということです。

デジタル時代のB2Bマーケティングにおけるコンテンツの意味

例えば美容室で髪の毛を切ってもらうときに、まずは美容師に要望を伝えますよね。美容師がいきなり切り始めることはない。またお客様側も美容室におけるマナーを理解した上でサービスを受けます。

このようにサービスという観点から見ると、お客様とサービス提供者が共同作業をすることでサービスが成立しているといえます。

お客様とサービス提供者の情報交換という観点は、BtoBビジネスにおいても重要です。

基本的にBtoBの場合は、商品・サービスに触れない状態でお客様とコミュニケーションし購買の意思決定をしていただかなくてはなりません。

商品・サービスに触れない、「無形性」を補完するために、コンテンツが必要になるということです。これがサロゲイツとして機能するイメージです。

お客様に、コンテンツを通じて「あなたはこれを入手できますよ」ということを、提供側が約束するのです。

スケダチ 代表、社会構想大学院大学 特任教授 高広伯彦 氏

ウェビナーにおけるサロゲイツ

例えばウェビナーでは商品・サービスを紹介する役割だけではなく、サービス提供者の顔が見えるということが重要です。

BtoBマーケティングは関係性のマーケティングだといわれることがあります。お客様と関係を構築する際にサービス提供者の顔が見えるということが、サロゲイツとしての役割を果たしているといえます。

またウェビナーで担当者の顔が見えることによって、信頼関係の構築に役立つという面もあります。

購入後に商品価値を最大化させるために

また購入後に商品のバリューや価値を最大限に発揮するためには、お客様に適切に商品を使っていただく必要があります。購入後にもコンテンツが必要になるということです。

BtoBビジネスはサービス業に学ぶことが多い

このように、BtoBビジネスはサービス産業から学ぶことが非常に多いといえます。無形物を売っているサービス産業では、いかにして商品・サービスの情報をお客様に届けるかということに注力されています。

無形性の商品を売るためにどのようなコンテンツを提供すべきか、それをサロゲイツとしてどのように機能させるかということを理解し実行することが重要です。

【イベント主催:株式会社Bizibl Technologies 】


この記事に関連するお役立ち資料

この記事を書いた人

鈴木 舞
鈴木 舞 | BeMARKE編集長

BeMARKE編集長。これまで15年以上Webメディア運営・コンテンツ制作に携わる。前職では美容系Webメディア編集長としてサイト規模を2年で28倍の2,800万PVに成長させる。2022年より現職。BeMARKEのコンテンツ編集・制作方針や計画の策定、取材・執筆などを担当。

著者の最新記事

もっと読む >

あわせて読みたい