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スタートアップが多角化経営によって成果を出すために必要なこと

スタートアップが多角化経営によって成果を出すために必要なこと

多角化経営とは、企業が成長するために、自社の参入している市場以外の新しい市場に挑戦することを指します。さまざまなメリットがあるものの、投資コストがかかってしまうため率先して行うスタートアップ企業は少ないという現状があります。

しかし、スタートアップの9割は10年以内に倒産すると言われており、変化の目まぐるしい現代、安定した経営のためにも、早い段階から多角化経営に取り組むことが重要になっていきます。

今回は、株式会社Lis(リス)のCEOである浅井さんに「スタートアップが多角化経営によって成果を出すために必要なこと」を伺いました。

目次

スタートアップが多角化経営することのメリット

なぜスタートアップが、複数事業を展開すべきなのか、その理由は3つあります。

1つ目は「リスクが分散できる」から、2つ目は「収益拡大につながる」から、3つ目は「社員のモチベーション向上につながる」からです。

【1】リスクの分散

事業の柱を複数個つくることで、常に1つの事業が頓挫しても会社が潰れないようリスクを分散することができます。特に市場の変化が目まぐるしく、外部要因が変わりやすい令和の時代では、スタートアップの生き残り戦略としてこの変化に強い体制をつくることが重要になります。

当社の事例を見てみると、創業当初は営業支援事業「Lisアップ」から事業を開始しました。1期目の終わりには、年商が1億円に到達するなど快調に創業1期目を終えたのですが、2期目はそうはいきませんでした。

原因としては、緊急事態宣言による「営業ニーズの減少」と、終わりの見えないコロナ禍での「人件費の負担増加」でした。

自社だけに限ったことではなく、緊急事態宣言の際、同じように1つの基幹事業に頼りきりであった会社の多くはコロナによるダメージを大きく受けました。

当社はその時に、いち早く体制を整えるため、新規事業として営業フリーランス人材のマッチング事業を開始し、何とか2期目を乗り越え3期目には黒字化を果たすことができました。

このように、1つの事業がダメになっても会社が潰れないよう、別の事業の柱を伸ばしていく体制をつくることはかなり重要です。

【2】収益拡大につながる

上記のように、ビジネスにおいて現状維持のままでは収益が拡大できないばかりか、事業は縮小していくケースが多くみられます。

戦後、電子製品のハード領域で世界各国から高い評価を得た日本でしたが、その技術の多くは現在、他国で安価で再現され、世界中に出回るようになりました。また、ほぼ同時期にハードからソフトへのトレンドシフトが爆発的に進み、乗り遅れた多くの大手日本企業は、次なる生き残り戦略の一手を見つけ出すことに苦戦しました。

しかし、富士フイルム やソフトバンクなど、「カメラから化粧品へ」「PCソフトからブロードバンドへ」というように、基幹事業の軸を変えた企業は、事業の縮小を免れ、収益を拡大しました。

当社の場合も、創業2期目ですでに廃業の危機をむかえ、2期目の期末に思い切って営業フリーランスマッチング事業「リスキャリア」と、営業フリーランス養成講座「SALES TECH ACADEMY」を開始しました。

この事業の多角化が功をなし、2期目では赤字だった売り上げも、3期目では初年度の1億円を大きく上回り、3.5億円まで伸ばすことに成功しました。

【3】社員のモチベーション向上

3つ目は社員のモチベーションの向上につながるからです。主力事業が一つの企業は、社員のキャリアの選択肢や将来的なポストが限定されてしまうというデメリットがあります。2つ以上の事業を展開する多角化経営では様々なキャリアの可能性が生まれるため、社員のモチベーション維持・向上につながります。

当社の場合、経営陣やメンバーの多くは、「いい意味で飽き性」な気質がありました。多くのメンバーは今まで営業のトッププレイヤーとして活躍してきたこともあり、「新しい領域で力試しをしてみたい。会社の収益をさらに飛躍的に上げていきたい」という気質があり、新規事業を始める際は基本的に前向きな意見が多かったです。さらに、会社が挑戦することにメンバーも新しい領域で学ぶ機会が格段に増えます。これが日々の業務のモチベーションの向上に繋がっていた部分も大きかったです。

スタートアップが多角化経営することのデメリット

では次に、スタートアップが多角化経営をする際のデメリットを紹介します。

デメリットの1つ目は「リソースが分散されること」、2つ目は「コストがかかること」3つ目は「企業イメージが定まりにくくなること」です。

【1】リソースが分散される

多角化経営では複数の事業にリソースを割く必要があるため、特に人的リソースが分散してしまいます。当社でも初めの方はメンバーがいくつかの事業を兼任することになり、現場の体制を整えるまでに多くの時間と労力を必要としました。

多角化経営に取り組む際は、新規事業開発に注力しすぎ、既存事業を中途半端にしてしまうようでは良くないため、あくまでも既存事業の伸びしろを確保しながら進めることが重要になると思います。既存事業とのバランスを考慮しながら新規事業にどれくらいのリソースを投入するか、しっかり管理していかなければいけません。経営層として、早い段階で注力すべき事業をきっちりと見定め、リソースの配分が適正に振り分けられているかを随時チェックすることが重要です。

【2】コストがかかる

多角化経営では、新規事業への投資として資金面でもコストがかかります。ある程度の資金が必要であることを考慮しておく必要があります。また、新規事業がすぐに軌道に乗るとは限らないため、​​長期的な視点で見ていかなければいけないということも念頭に置いておきましょう。

スタートアップの場合、なるべく初期費用を抑えた事業を展開し初動のコストに対するリスクヘッジをしておく必要があります。

当社の場合、コロナ禍で資金面の投資が難しかった時期は、人材やスクール事業といった、初期費用が少なく粗利の多い事業に絞って展開を進めていました。

【3】企業イメージが定まりにくくなる

複数の事業を展開していると、サービスの一貫性がなくなり企業イメージが曖昧になってしまうことがあります。新たな事業を展開していく多角化経営ですが、展開の仕方によっては「何をやっている会社かわからない」という印象を与えてしまう可能性があります。

当社も多くの事業を展開していく中で、自社のコアとなる部分に立ち返る必要性がでてきました。初期に定めていたミッションである「営業領域のDXカンパニーとなる」と事業戦略が紐づかない部分はでてきてしまったのです。そこで、当社の場合はミッションを改訂しました。多角化経営をする際は、会社のMVVをきっちり定め、理想の企業イメージを固めておくことも重要です。

Lisが短期間で複数事業を成長させるために実践したこと

では、ここからは実際に複数事業を猛スピードで成長させたLisの経験から、気をつけるべきことをお伝えしていきたいと思います。複数の事業を成長させる際に気をつけるべきことは4つあります。

【1】自社の強みを理解する

【2】市場の流れを読む

【3】理念を大切にすること

【4】チームワークと組織づくりを大切にすること

【1】自社の強みを理解する

まずは新規事業の種を見つけたら、「それは自社の強みを生かせる領域なのか」を判断します。

例えば、当社の強みは「人材の営業力」と「既存の営業支援事業でのクライアントとの繋がり」です。

私を含む経営陣はいずれも、社員数1000名を超えるような営業会社で、圧倒的1位という成果を出し続けてきたスタープレイヤーたちです。この人材の強みを考えると、いくら市場が伸びるからといって「SaaSプロダクトやアプリ開発」をLisが始める、ということはなかなか想像できないですよね。

また、自社の強みを理解する際には「既存事業とのシナジー」を考えることも重要です。当社の場合、すでに既存事業の顧客がおりましたが、コロナによる需要の低下から、既存のサービスではお客様に支援ができなくなってしまっていたのです。逆に、既存のお客様の今のニーズを叶えるサービスさえつくれれば、それは当社の強みになりうると考えました。

【2】市場の流れを読む

市場の流れを読む方法はいくつかありますが、おすすめなのはミクロとマクロを使い分ける方法です。

ミクロでいうと、「実際のお客様の声を聞きにいく」「周りの業界人の話を聞いたり、業界の著名人の著作を読む」などです。マクロでいうと「ニュースや新聞を読み、常に市場のトレンドにアンテナを貼っておく」「経済の流れや景気の動向から、日本や世界の情勢や経済の動きを予測する」などができます。

当社の場合、まずは、今ある「人材の営業力」という強みを生かしつつ、「既存の顧客」に営業支援以外にどんな領域で事業を伸ばせるかを考えました。そこで上記のような方法で市場の流れを読み、「営業のニーズが多様化する時代に、企業にとって流動的な営業人材のニーズがあり、人材にとっても流動的でパラレルなスキルの習得のニーズが増えている」ということがわかりました。そこで始まったのが、当社の新規事業である人材事業の「Lisキャリア」とスクール事業の「SALES TECH ACADEMY」です。

【3】理念を大切にすること

最後に大切なのは、「自社の理念に沿っているか」「MVVに反していないか」という部分です。

Lisはこれまで、多くの新規事業の可能性を模索し、取り組んでまいりました。それまでは1つの事業の中での方向性のみでしたが、より新しいことに挑戦していく中でもちろん現場の業務も増えていきます。日々の仕事に忙殺され、メンバーがモチベーションを高く保ちきれず停滞した時期もありました。

そんな中、「どんな基準で、どんな方向性で新規事業を選びすすめていくのか」を、現場レイヤーが納得できる粒度で、会社の未来像から落とし込む必要性があります。全社としての大目標、ミッションから「今この新規事業が必要なんだ」と思えるかどうかが、最後の事業選びの肝になるといえます。

【4】チームワークと組織づくり

新規事業の立ち上げにおいて必要な要素は数多くあります。私が最も大切なのは「チームワーク」だと感じています。

当社の場合は最短1ヶ月で新規事業を立ち上げたのですが、このスピード感で成せた背景としては、ひとえに「挑戦を恐れずに全社一丸となって事業をのばしていく」というメンバーの意識のおかげだと思います。

このようなチームワークを作り上げるために、組織づくり戦略として、社員インタビュー記事を社内向けに公開しそれぞれのメンバーの過去の経歴や会社への思いをシェアしたり、MVVの改訂に全メンバーを巻き込み1泊2日の合宿でバリュー会議を行ったり、バリューの改訂に合わせた評価制度の見直しを行ったりしました。

個人の時代だと言われる今だからこそ、こうした一体感を生み出すための組織づくりこそが、今後の企業の生き残り戦略として重要になるのではないでしょうか。

BeMARKE編集部より

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この記事を書いた人

浅井央
浅井央 | 株式会社Lis CEO

新卒でWEB広告代理店に入社、元キーエンスの上司の下で営業を徹底的に学び、その後プルデンシャルに入社。成績上位10%にのみ与えられるトップ営業マンに表彰される。営業に強みを持っていたこと、そしてなによりも莫大な数の人が営業に関する悩みを抱えていることから、1人でも多くの営業の悩みを解決できればと思い株式会社Lisを3年前に立ち上げる。

株式会社Lis(リス)
営業支援をはじめとし、営業フリーランス人材のマッチング事業や、生成AI活用人材のリスキリング事業を行うスタートアップベンチャー。

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